朝型か夜型かには、遺伝がそれなりに関わっています。ただ、一人ひとりの遺伝子の差が動かす時間は意外と小さく、年齢や浴びる光のほうが大きく効く場面もあります。

夜の7時台には眠くなり、朝は4時台に目が覚める。本人にとってはそれがふつうで、無理をしているわけでもない。1990年代の終わり、アメリカのユタ州で、そんな体質の人が何世代にもわたって続く家系が見つかりました。

この家系を調べたのは、ルイス・プタチェクやイン=フイ・フーらのグループです。2001年に『Science』に載った論文で、この家系の人たちは「PER2」という時計遺伝子のたった1か所に変異を持っていたことが報告されました。睡眠、体温、メラトニンのリズムが、まるごと約4時間前にずれていたのです。家族性睡眠相前進症候群と呼ばれる、とても珍しい体質です。

極端な例ですが、「何時に眠くなるか」が体のなかの部品で決まっている面があることを示した発見でした。

双子と70万人のデータが示したこと

人それぞれの、朝寄り・夜寄りの傾向をクロノタイプと呼びます。これが遺伝とどれくらい関係するのかは、まず双子の研究で調べられてきました。一卵性と二卵性の双子で似かたを比べると、朝型・夜型の個人差のうち、遺伝で説明できる割合はおよそ4割から5割と推定されています。オランダの双子と家族を使った研究では44〜47%、アメリカの退役軍人の双子の研究では42%といった数字です。

次の段階が、遺伝子そのものを直接調べるやり方でした。2019年、イギリスのエクセター大学のサミュエル・ジョーンズらは、UKバイオバンクと遺伝子検査会社23andMeの利用者、合わせて69万7,828人のデータを解析し、朝型であることに関係する遺伝子の領域を351か所見つけて『Nature Communications』に発表しました。それまでに知られていたのは24か所でしたから、一気に増えたことになります。見つかった領域には体内時計の遺伝子のほか、目の網膜で働く遺伝子も多く含まれていました。

ただ、この論文には拍子抜けするような数字も入っています。手首につける活動量計で実際の睡眠を測った約8万6千人について、朝型の遺伝子をいちばん多く持つ上位5%と、いちばん少ない下位5%を比べると、眠る時間帯の差は平均でおよそ25分でした。

遺伝の影響はたしかにある。けれど、ふつうの人どうしで比べると、遺伝子の差が動かす時間はこのくらい、とも言えます。双子研究の「4割」と、遺伝子から説明できる部分のあいだには、まだ埋まっていない隙間があることも研究者自身が認めています。

20歳ごろにいちばん夜型になる

遺伝より大きく効いて見えるのが、年齢です。ミュンヘン大学のティル・レネベルクらは、約2万5千人のドイツの人たちに、仕事や学校のない日に何時に寝て何時に起きるかを答えてもらいました。その中間の時刻を年齢ごとに並べると、子どもは朝型で、10代に入るとどんどん後ろへずれていき、20歳前後で最も遅くなる。そこから先は、歳を重ねるにつれて少しずつ前に戻っていきました。

2004年に『Current Biology』に載ったこの研究は、20歳ごろの折り返しを「思春期の終わりの生物学的な目印」と提案しています。高校生や大学生が朝に起きられないのは、生活の乱れだけではなく、人生でいちばん夜型の時期にいるせいでもあるわけです。

もう一つ大きいのが光です。コロラド大学のケネス・ライトらは2013年、ふだん街で暮らしている人たちに夏のキャンプを1週間してもらいました。懐中電灯もスマホも使わず、日の出と日の入りと焚き火だけの暮らしです。日中に浴びる光はふだんの4倍ほどになり、戻ってきたときには、眠りを促すメラトニンが出はじめる時刻が約2時間早まっていました。とくに夜型だった人ほど大きく前にずれ、朝型の人との差が縮まったと報告されています。小規模な実験ではありますが、体内時計が光でかなり動くことをよく示しています。

「朝が弱い」の責め方を変える

レネベルクらは2006年、休日と平日で眠る時間帯が大きくずれる状態に「社会的時差ぼけ(ソーシャル・ジェットラグ)」という名前をつけました。夜型の人は、平日は社会の時計に合わせて早起きし、休日に体の時計へ戻る。毎週、海外旅行をしているような負担がかかっている、という見方です。

朝型・夜型は「生まれつきだからどうにもならない」ものでも、「気合いで直せる」ものでもなさそうです。遺伝で傾きはつくけれど、年齢で動き、光で前後にずれる。

朝起きられない自分を責める前に、夜の明かりと朝の光を少し見直してみる、というくらいがちょうどいいのかもしれません。なお、生活に支障が出るほど眠る時間がずれている場合は、睡眠の病気が隠れていることもあるので、睡眠外来などの専門家に相談してください。

参考にした資料

  • Toh, K. L., Jones, C. R., He, Y., Eide, E. J., Hinz, W. A., Virshup, D. M., Ptáček, L. J., & Fu, Y.-H. (2001). An hPer2 phosphorylation site mutation in familial advanced sleep phase syndrome. Science, 291, 1040–1043.
  • Jones, S. E., et al. (2019). Genome-wide association analyses of chronotype in 697,828 individuals provides insights into circadian rhythms. Nature Communications, 10, 343.
  • Roenneberg, T., et al. (2004). A marker for the end of adolescence. Current Biology, 14(24), R1038–R1039.
  • Wright, K. P., Jr., et al. (2013). Entrainment of the human circadian clock to the natural light-dark cycle. Current Biology, 23(16), 1554–1558.
  • Wittmann, M., Dinich, J., Merrow, M., & Roenneberg, T. (2006). Social jetlag: misalignment of biological and social time. Chronobiology International, 23(1-2), 497–509.
  • クロノタイプの遺伝率をまとめた双子研究のレビュー(PMC掲載)、コロラド大学ボルダー校のニュースリリース