「あなたには、他人に好かれたい、認められたいという強い欲求があります」——1948年、39人の学生に配られた性格診断は全員同じ文面でした。それでも当たり具合の評価は、5点満点の平均4.26でした。
まず、次の四つを読んでみてください。
- あなたには、自分を批判的に見るところがあります。
- 使われないままの能力が、あなたにはかなり残っています。
- 外から見ると規律正しく自制的ですが、内側では不安になったり心配したりしがちです。
- ときどき、自分の決断が本当に正しかったのか、深刻に疑うことがあります。
半分くらいは当たっている、と感じたなら普通です。これは1948年の冬、カリフォルニアの心理学者バートラム・フォアラーが、自分の授業を受けていた学生に配った13行のうちの4行です。学生たちは全員、同じ紙を受け取っていました。
診断の中身は、駅の売店の占い本だった
フォアラーはまず「Diagnostic Interest Blank」という、それらしい名前の性格検査を学生に受けさせます。1週間後、ひとりずつに「あなたの結果」と称する紙を返しました。そして、この診断が自分の基本的な性格をどれだけ言い当てているかを、0点(非常に悪い)から5点(素晴らしい)で採点させます。
39人の平均は4.26。ほとんどの学生が4か5をつけていました。13の項目それぞれについて自分に当てはまるかを○×で答えさせると、平均10.23項目が「当てはまる」でした。
そのうえでフォアラーは、全員の紙が同一であることを明かします。文面は彼が新聞スタンドで買った占星術の本から拾い集めたもので、学生の回答は一度も読まれていませんでした。翌1949年、この顛末は『Journal of Abnormal and Social Psychology』に「個人的妥当化の誤り——だまされやすさの教室内デモンストレーション」という論文として発表されます。
面白いのは、13行のなかに「性的な適応に問題を抱えたことがある」という、1940年代なら踏み込んだ部類に入る一文が混ざっていたことです。それでも学生たちは、自分の内面を言い当てられたと受け取りました。誰にでも当てはまる文は、書き方しだいで、誰にも見せていない話に化けます。
人を見るのが仕事の人でも、結果は変わらなかった
これが学生の未熟さの話でないことは、ロス・スタグナーの調査が示しています。彼が対象にしたのは人事担当者、つまり他人の性格を見立てて採否を決めるのが仕事の人たちでした。性格検査を受けてもらい、回答とは無関係な——星占いと筆跡診断から作った——文面を返したところ、半数以上がそれを的確だと評価し、明確に「違う」と答えた人はほとんどいませんでした。この報告は1958年に『Personnel Psychology』へ「人事担当者のだまされやすさ」として載っています。
この現象に「バーナム効果」という呼び名をつけたのは、1956年のポール・ミールです。「誰にでも何かしら用意がある」を売りにした興行師P・T・バーナムから取りました。
効き目を左右する条件も、その後の研究で少しずつ見えてきます。1972年のスナイダーとラーソンは、同じ文章でも「あなた個人のために作りました」と言って渡したほうが、「人一般に当てはまる話です」と言って渡すより高く評価されることを示しました。中身ではなく、宛名のほうが効いている、ということになります。
好意的な内容ほど受け入れられやすい、という傾向も報告されていますが、これには反論があります。好意的な文はそもそも大多数の人に事実として当てはまりやすいので、「褒められると信じる」のか「単に本当のことが多い」のか、区別できていないのではないか、という指摘です。
「あなた専用」の一言は、いつでも効くわけではない
では、宛名さえ書けば何でも信じてもらえるのか。ここは怪しくなってきています。
2023年のCHI(ヒューマン・コンピュータ・インタラクション分野の国際会議)で発表された研究は、システムの推薦——いわゆるレコメンド——に「あなたのために選びました」というラベルを付けても、推薦の質の評価はほとんど上がらなかったと報告しました。フォアラーの教室で起きたことが、そのままアプリの画面で再現されるわけではないようです。
1985年にディクソンとケリーが過去の実験を総覧したときも、結論は「文が曖昧なときには一貫して起きる」という条件つきのものでした。効果の大きさは、文の一般性、自分に関係ありそうかどうか、内容の好意性、そして診断の出どころによって動く。バーナム効果は、いつでもどこでも人を騙せる万能の鍵ではなく、条件がそろったときに開く錠です。
そう考えると、占いや性格診断との距離感も決めやすくなります。読んで当たっていると感じること自体は、おかしなことでも恥ずかしいことでもありません。ただ、その「当たっている」という手ごたえは、診断の精度を保証してはくれない。フォアラーの学生39人も、全員が同じ手ごたえを感じていました。
参考にした資料
- Bertram R. Forer (1949)「The fallacy of personal validation: A classroom demonstration of gullibility」『Journal of Abnormal and Social Psychology』44巻1号
- Ross Stagner (1958)「The gullibility of personnel managers」『Personnel Psychology』
- Paul E. Meehl (1956)「Wanted — A Good Cookbook」『American Psychologist』
- C. R. Snyder & G. R. Larson (1972) 「A further look at student acceptance of general personality interpretations」『Journal of Consulting and Clinical Psychology』
- D. H. Dickson & I. W. Kelly (1985)「The 'Barnum effect' in personality assessment: A review of the literature」『Psychological Reports』57巻
- 「'Specially For You' — Examining the Barnum Effect's Influence on the Perceived Quality of System Recommendations」CHI Conference on Human Factors in Computing Systems 2023
- Wikipedia「Barnum effect」「Bertram Forer」