4分間のスピードデートを2,000回ぶん聞き直したところ、1回あたり質問を1つ増やすと、20回のデートで1回多く「また会いたい」が返ってくる計算になりました。ただし効いたのは相手の話を掘り下げる質問だけで、質問の数そのものはむしろ逆効果だ、という反論も出ています。

「話していて楽しかった」と言われる人は、たいてい、そんなに話していません。逆に、こちらが面白い話をたくさん披露できた日ほど、相手の反応は薄かったりする。心当たりがあるなら、それはおそらく気のせいではありません。

自分の話には、お金を払う価値がある

前提として、人は自分の話がしたい生き物です。ペネベーカーらが2003年にまとめたところでは、日常の発話の30〜40%が、自分の主観的な経験を人に伝えることに使われています。

2012年、ハーバード大学のダイアナ・タミールとジェイソン・ミッチェルが、それがどのくらい「したい」ことなのかを測りました。『PNAS』に載った5つの実験です。fMRIの中で自分の意見や好みを答えているとき、側坐核や腹側被蓋野——報酬に反応する中脳辺縁ドーパミン系と呼ばれる回路——の活動が強まりました。

そして、お金を使ったほうの実験です。「自分について答える」「他人について答える」という選択肢に違う謝礼をつけ、自分の話を選ぶともらえる額が減るようにしました。それでも参加者は、手に入るはずの報酬の平均17%を手放して、自分について話すほうを選んだと報告されています。聞き上手は、相手が身銭を切ってでも欲しがっているものを、無料で配っていることになります。

2,000回のデートを聞き直す

2017年に『Journal of Personality and Social Psychology』へ発表されたファンらの研究では、まず見知らぬ二人をオンラインで15分間チャットさせました。片方に「質問を9つ以上する」または「4つ以下に抑える」と指示する。2つの実験で600人以上が参加し、質問を多くした側のほうが好かれました。指示された本人は、それが好感につながるとは思っていなかったそうです。

続いて実際の恋愛の場です。スピードデートイベントから110人ぶんの録音を集めると、一人あたり15〜19回、4分ずつ相手を替えていて、会話は合計2,000回を超えました。文字起こしを6種類に分類したところ、いちばん多かったのは相手の答えをさらに掘り下げる「フォローアップ質問」で、全体の44%です。著者らの計算では、1回のデートあたり質問を1つ増やすと、20回のうち1回、多く「また会いたい」が返ってくることになります。

ただし、質問なら何でもいいわけではない

この研究には、2019年に厳しい反論がつきました。

アヴラハム・クルーガーとトーマス・マロイが、同じ『JPSP』誌上でスピードデート部分の分析に異議を唱えたのです。会話は二人でするものなので、質問の数をその人の性質として扱うのは無理がある、というのが出発点でした。社会的関係モデルという手法で、話し手・相手・その組み合わせ・性別の効果を切り分け直すと、質問行動のばらつきのうち約3分の1はその人自身で説明できるものの、別の約3分の1は「その相手との組み合わせ」で決まっていました。そのうえで、種類を問わず質問を増やすことは二度目のデートを申し込まれる確率をむしろ下げていた、と報告しています。「また会いたい」と答えることは「好き」と同じではない、とも。

ファンらは、検証している変数が違う、そのデータに使えない手法を選んでいる、と反論を返しました。決着はついていません。ただ、両者を並べて残るのは「質問をたくさんすればいい」ではなく「相手が言ったことを受けて掘り下げる質問だけが効く」というあたりでしょう。用意してきた質問を順番に消化していくのは、たぶん違うほうに入ります。

順番に、少しずつ

聞くだけでなく、自分も打ち明けたほうがいいのかどうか。

スーザン・スプレッチャーらが2013年に報告した実験では、初対面の学生をペアにして、片方が決められた項目を打ち明け、もう片方は聞くだけ、という時間を作り、そのあと役割を交代させました。一巡目の直後に測ると、好意や親近感は聞き役のほうが高く出ます。ところが交代して二巡目が終わると、その差は消えていました。しかも、長くまとめて話してから交代するより、こまめに交代しながら打ち明け合うほうが好意は高い。キャッチボールという比喩は、わりと文字どおりだったようです。

1994年のコリンズとミラーのメタ分析も、似た三角形を描いています。よく打ち明ける人は好かれやすい。人はもともと好きな相手に多く打ち明ける。そして、自分が打ち明けた相手を、打ち明けた結果として好きになる。どこが入口でも回りはじめる構造です。

この回路を45分で強制的に回してみせたのが、アーサー・アロンらの1997年の実験です。初対面の二人に、少しずつ踏み込んでいく36個の質問を渡して交互に答えてもらうと、終わったあとの親密さの評価は、当たり障りのない雑談をしていた条件より高くなりました。のちに「36の質問で恋に落ちる」として広まったものです。ただしアロンら自身は、これが作るのは一時的な近さで、忠誠心や関与のように時間のかかるものまでは生まれないだろう、と論文の中で断っています。同じ論文の残り2つの実験では、価値観の合うペアにしても、「たぶん気が合いますよ」と期待させても、親密さに差は出ませんでした。効いたのは、順番に打ち明け合ったという事実だけです。

聞き上手が好かれるのは、うまく振る舞っているからというより、相手が自分でやりたがっていることの場所を空けているからなのかもしれません。ただし黙って受け止め続ければいいわけでもなくて、こまめに順番を回し、直前に聞いた話をもう一段だけ掘る。技術と呼ぶには、ずいぶん地味な部類です。

参考にした資料

  • Tamir, D. I., & Mitchell, J. P. (2012)「Disclosing information about the self is intrinsically rewarding」PNAS 109(21), 8038–8043
  • Pennebaker, J. W., Mehl, M. R., & Niederhoffer, K. G. (2003)「Psychological aspects of natural language use」Annual Review of Psychology 54, 547–577
  • Huang, K., Yeomans, M., Brooks, A. W., Minson, J., & Gino, F. (2017)「It doesn't hurt to ask: Question-asking increases liking」Journal of Personality and Social Psychology 113(3), 430–452
  • Kluger, A. N., & Malloy, T. E. (2019)「Question asking as a dyadic behavior」Journal of Personality and Social Psychology 117(6), 1127–1138
  • Yeomans, M., Brooks, A. W., Huang, K., Minson, J., & Gino, F. (2019)「It helps to ask: The cumulative benefits of asking follow-up questions」Journal of Personality and Social Psychology 117(6), 1139–1144
  • Sprecher, S., Treger, S., Wondra, J. D., Hilaire, N., & Wallpe, K. (2013)「Taking turns: Reciprocal self-disclosure promotes liking in initial interactions」Journal of Experimental Social Psychology 49(5), 860–866
  • Collins, N. L., & Miller, L. C. (1994)「Self-disclosure and liking: A meta-analytic review」Psychological Bulletin 116(3), 457–475
  • Aron, A., Melinat, E., Aron, E. N., Vallone, R. D., & Bator, R. J. (1997)「The experimental generation of interpersonal closeness: A procedure and some preliminary findings」Personality and Social Psychology Bulletin 23(4), 363–377
  • Harvard Business School Working Knowledge「Asking Questions Can Get You a Better Job or a Second Date」