相手の行動を見ると、人はその人の置かれた状況より「その人の性格」を原因と考えがちです。条件を知らされていても、この傾向はなかなか消えません。
44.1点。10点から70点までのものさしで、真ん中の40点をわずかに上回るだけの数字です。ただ、これがどんな場面で出た数字かを知ると、少し見え方が変わります。読み手は「この文章は、書き手が自分で立場を選んだものではない」と知らされていました。それでも書き手の本心を、文章の側に寄せて見積もっていたのです。
くじで決まった立場の作文を読む
1967年、デューク大学のエドワード・ジョーンズとヴィクター・ハリスは、学生たちに短い作文を読ませる実験をしました。テーマはキューバのカストロ政権。冷戦のさなかのアメリカで、カストロを擁護するのはかなり少数派の立場です。
作文には二つの前置きがついていました。ひとつは「書き手は擁護か批判かを自由に選んだ」。もうひとつは「書き手は試験の課題として、擁護(または批判)の立場で書くよう指定された」。読み手の学生は作文を読んだあと、書き手が本当はカストロをどう思っているかを、10点(強く反対)から70点(強く支持)で推測します。
自由に選んだ場合の結果は予想どおりで、擁護の作文なら59.6点、批判の作文なら17.4点でした。自分で選んで書いたのなら、文章がそのまま本心だと受け取るのは自然です。
おもしろいのは、立場を指定された場合です。理屈で言えば、書き手は選べなかったのだから、作文の中身から本心はわかりません。ところが擁護の作文は44.1点、批判の作文は22.9点と、はっきり差がつきました。自由に選んだ場合ほどではないにせよ、読み手は「こう書いているのだから、少しはそう思っているのだろう」と判断していたわけです。
名前がついたのは10年後
この傾向に「根本的な帰属の誤り」という名前をつけたのは、スタンフォード大学のリー・ロスで、1977年のことです。人の行動の原因を考えるとき、性格や意図といった内側の要因を大きく見積もり、状況の力を小さく見積もってしまう。日常に置き換えると、待ち合わせに遅れてきた友人を見て「だらしない人だな」と思う一方で、自分が遅れたときは電車の遅延のせいにする、という場面です。
なぜそうなるのかは、いくつか説明があります。目の前で動いているのは人なので、その人に注意が向きやすいこと。状況のほうは見えにくく、相手がその日どんな事情を抱えていたかは、たいてい知りようがないこと。まず「この人はこういう人だ」と決めてから、余裕があれば状況の分を差し引く、という順番で頭が働くので、急いでいたり疲れていたりすると差し引きが甘くなる、という説もあります。
「根本的」と言い切れるのか
名前に「根本的」とついていますが、この呼び方には昔から異論があります。
ひとつは文化差です。マイケル・モリスとカイピン・ペンは1994年、1991年にアメリカで起きた2件の銃撃事件について、英語の新聞と中国語の新聞の報道を比べました。英語の新聞は犯人の性格や気質に原因を求める書き方が多く、中国語の新聞は人間関係や社会的な状況に目を向ける書き方が多かったといいます。性格を原因と見る癖は、どこでも同じ強さで出るわけではないようです。
もうひとつは、冒頭の「他人は性格、自分は状況」という対比そのものです。これは行為者・観察者バイアスと呼ばれ、根本的な帰属の誤りとセットで語られてきました。しかしバートラム・マレが2006年に100本を超える研究をまとめ直したところ、この対比を支持する証拠はごく弱く、平均するとほとんど差がないという結果でした。他人を性格のせいにしがちなことと、自分を状況のせいにしがちなことは、分けて考えたほうがよさそうです。
さらに、相手の普段の様子を知らないまま判断しなければならない状況では、行動から性格を推測するのはそれなりに理にかなった推論だ、という見方もあります。「誤り」というより、情報が足りないときの近道と言ったほうが近いのかもしれません。
それでも、ジョーンズとハリスの実験が示したことは残ります。状況をわざわざ教えられても、人はそれを十分には割り引けない。誰かの言動にカチンときたとき、「この人はそういう人だ」と決める前に、その人が選べなかったものは何かを一度考えてみる。それだけで、受け取り方はけっこう変わります。
参考にした資料
- Jones, E. E., & Harris, V. A. (1967). The attribution of attitudes. Journal of Experimental Social Psychology, 3, 1–24.
- Ross, L. (1977). The intuitive psychologist and his shortcomings. Advances in Experimental Social Psychology, 10.
- Morris, M. W., & Peng, K. (1994). Culture and cause: American and Chinese attributions for social and physical events. Journal of Personality and Social Psychology, 67(6), 949–971.
- Malle, B. F. (2006). The actor-observer asymmetry in attribution: A (surprising) meta-analysis. Psychological Bulletin, 132(6), 895–919.
- Walker, D., Smith, K. A., & Vul, E. (2015). The "fundamental attribution error" is rational in an uncertain world. Proceedings of the Cognitive Science Society.
- Carleton College 心理学科の教材ページ「Jones & Harris (1967)」(実験の数値の確認に使用)