市況ニュースでは、ときどき「VIX指数が急上昇」「恐怖指数が警戒水準とされる20を上回った」といった表現を見かけます。日本版の「日経平均VI」が取り上げられることもあります。名前は聞いたことがあっても、何を測っている数字なのかは意外とわかりにくいものです。
結論から言えば、VIXは「株価の高さ」ではなく「これから株価がどれくらい揺れそうか」という、投資家の予想を数字にしたものです。この記事では、その仕組みと読み方を3つのポイントに分けて整理します。
ポイント1: VIXは「予想される揺れの大きさ」
VIX指数は、米シカゴのオプション取引所Cboeが算出している指数で、正式名称を「Cboeボラティリティー・インデックス」といいます。「ボラティリティー」は値動きの大きさ(変動率)のことです。
VIXが示しているのは、S&P500種株価指数が今後30日間にどれくらい大きく動きそうかという、市場の見込みです。過去の値動きを集計したものではなく、「これから」についての予想である点が大きな特徴です。
日本の「日経平均VI(日経平均ボラティリティー・インデックス)」も考え方は同じで、日本経済新聞社が日経平均株価の今後30日間の予想変動率として算出しています。
ポイント2: もとになっているのは「オプションの値段」
では、その「予想」はどこから来るのでしょうか。もとになっているのは、株価指数のオプションの価格です。
オプションは、「決められた価格で買う(売る)権利」を売り買いする取引です。たとえば「株価が大きく下がったときに、あらかじめ決めた価格で売れる権利」は、相場の急落に備える保険のような役割を持ちます。
保険と同じで、先行きが不安なときほど、この「権利」の値段は高くなります。多くの投資家が急な値下がりに備えようとして買いが集まるからです。VIXは、こうしたさまざまな条件のオプション価格をまとめて計算し、「市場参加者がどれくらいの揺れを見込んでいるか」を1つの数字に置き換えています。
ポイント3: 株価が下がると上がりやすい → 「恐怖指数」
VIXは、株価が急に下がる場面で大きく上がりやすいという性質があります。下落への備えを求める動きが強まるからです。このため「恐怖指数」というニックネームで呼ばれ、日経平均VIも「日本版恐怖指数」と呼ばれることがあります。
歴史的には、2008年の金融危機や2020年3月のコロナショックの際に、VIXの終値が80を超える水準まで上がりました。一方で、相場が落ち着いている時期には10台にとどまることも多くあります。ニュースでは「20」がひとつの目安として語られることが多く、20を上回ると市場の不安が高まっている、と表現されがちです。ただし、これは公式の基準ではなく、あくまで慣習的な目安です。
ニュースを読むときの3つのコツ
「水準」と「変化」の両方を見る。 「VIXが15から25へ急上昇」のように、どこからどこへ動いたかで受け止め方は変わります。低い水準でも、短期間で急に上がれば警戒が強まっているサインと受け止められます。
株価の「方向」を当てる数字ではない。 VIXが高いことは「大きく動きそう」という予想を示すだけで、この先上がるか下がるかを示すものではありません。不安が高まった後に相場が持ち直すこともあれば、さらに下がることもあります。
株価と逆に動きやすいが、いつもではない。 一般に株価が上がる局面ではVIXは下がりやすく、下がる局面では上がりやすい傾向があります。ただ、株価が上がりながらVIXも上がるような場面もあり、決まった法則ではありません。
まとめ
- VIX指数は、S&P500の今後30日間の予想変動率を表す数字。日経平均VIはその日本版。
- もとになっているのはオプションの価格で、先行き不安が強いほど高くなる。
- 急落時に上がりやすいことから「恐怖指数」と呼ばれる。
- 高い・低いは市場の不安の大きさを示すもので、株価の上げ下げを予言するものではない。
市況ニュースで「VIX」や「恐怖指数」という言葉を見かけたら、「いま投資家はどれくらい揺れを警戒しているのか」を測る温度計だと考えると、記事の意味がぐっとつかみやすくなります。
出典
- Volatility Index Methodology: Cboe Volatility Index - Cboe(PDF)
- VIX Index introduction - S&P Dow Jones Indices
- Wall Street's fear gauge closes at highest level ever, surpassing even financial crisis peak - CNBC
- 日経平均ボラティリティー・インデックス - 日経平均プロフィル
- 日経平均ボラティリティー・インデックス先物取引の利用のコツ - 日本取引所グループ(PDF)
- 日経平均VIとは|見方・目安・特徴などをわかりやすく解説 - OANDA証券