「業種別では非鉄金属、電気機器が上昇し、電気・ガス業、石油・石炭製品が下落しました」。市況ニュースの終盤には、こうした業種別の一覧がほぼ毎日登場します。ひとつひとつの銘柄名を知らなくても、この一覧を読めるようになると、その日の相場で何が起きたのかがぐっとつかみやすくなります。この記事では、業種という分け方のしくみと、その並びから読み取れることを順に見ていきます。

業種とは「同じような商売をしている会社のまとまり」

株式市場に上場している会社は、日本だけで3,800社を超えます。これを一社ずつ追うのは現実的ではないため、市場では「似たような商売をしている会社」をまとめて扱う習慣があります。このまとまりが業種、あるいはセクターです。

日本の株式市場では、証券コード協議会が定める分類にもとづき、東証が上場企業を33の業種に分けています。これが「東証33業種」と呼ばれるものです。具体的には次のとおりです。

水産・農林業、鉱業、建設業、食料品、繊維製品、パルプ・紙、化学、医薬品、石油・石炭製品、ゴム製品、ガラス・土石製品、鉄鋼、非鉄金属、金属製品、機械、電気機器、輸送用機器、精密機器、その他製品、電気・ガス業、陸運業、海運業、空運業、倉庫・運輸関連業、情報・通信業、卸売業、小売業、銀行業、証券・商品先物取引業、保険業、その他金融業、不動産業、サービス業。

JPX総研は、TOPIXの構成銘柄をこの33業種に分けて指数化した「東証業種別株価指数」を算出・公表しています。ニュースで「業種別騰落率」として出てくる数字は、この指数の前日比です。つまり、ある業種が1%上昇したというのは、その業種に属する会社の株価を時価総額で加重平均した指数が1%上がった、という意味になります。

33はやや細かすぎるという場面もあるため、これを17にまとめた「TOPIX-17シリーズ」も用意されています。食品、エネルギー資源、建設・資材、素材・化学、医薬品、自動車・輸送機、鉄鋼・非鉄、機械、電機・精密、電気・ガスといった区分で、業種別の上場投資信託(ETF)などで使われています。

なぜ同じ業種の株は同じ方向へ動くのか

同じ業種に入っている会社は、売っているもの、仕入れているもの、競争している相手、そして影響を受ける外部条件が似ています。だからひとつのニュースが業種全体に同じ向きの影響を与えることが多くなります。

たとえば為替です。輸送用機器や電気機器には、製品の多くを海外で売っている会社が集まっています。円安が進めば、海外で稼いだ売上を円に換算したときの金額が膨らむため、業績が改善する方向に働きます。すると同じ日に、この業種の多くの銘柄が同じように買われることになります。

原油価格も分かりやすい例です。石油・石炭製品は原油を精製して売る会社が中心なので、原油価格の変化がそのまま損益に響きます。一方、空運業や陸運業にとって燃料は費用ですから、原油高は逆風になります。同じ原油というひとつの材料が、業種によって正反対の意味を持つわけです。

金利も業種を分けます。銀行業や保険業は、集めたお金を運用して利ざやを得るしくみなので、金利の上昇は収益の改善につながると受け止められやすい業種です。反対に、不動産業や電気・ガス業は借入金の規模が大きく、金利が上がると支払い利息の負担が増えます。金融政策の会合がある日に、銀行と不動産が逆方向に動く光景がしばしば見られるのは、このためです。

「景気敏感」と「ディフェンシブ」

業種を大きく2つに分ける言い方として、景気敏感業種とディフェンシブ業種があります。

景気敏感業種は、景気の良し悪しで業績が大きく振れる業種です。鉄鋼、非鉄金属、化学、機械、海運業、証券・商品先物取引業などが代表格です。景気が良くなれば工場が増設され、材料が売れ、荷物が運ばれ、株の売買も増えます。反対に景気が冷えると、これらの需要は真っ先に減ります。シクリカル(循環的)という言い方をすることもあります。

ディフェンシブ業種は、景気に関係なく需要が大きくは変わらない業種です。食料品、医薬品、電気・ガス業、陸運業、情報・通信業などが挙げられます。景気が悪くても人は食事をし、薬を飲み、電気を使い、電車に乗ります。業績が景気に左右されにくいぶん、相場全体が下げる局面では相対的に売られにくく、逆に相場が大きく上がる局面では出遅れやすい、という傾向が語られます。

ただし、この分類は絶対的なものではありません。たとえば電気・ガス業はディフェンシブの代表とされますが、燃料価格が急騰したり、金利が上がって借入負担が重くなったりすれば、はっきりと売られます。「景気には鈍感だが、別の要因には敏感」という業種は少なくありません。ラベルを覚えるより、その業種が何によって儲け、何を費用として払っているのかを思い浮かべるほうが、値動きの理由に近づけます。

業種別の一覧から何が読めるか

業種別騰落率を見るときに役立つ視点をいくつか挙げます。

上がった業種と下がった業種に共通点があるか。 上位に電気機器、精密機器、機械などが並び、下位に電気・ガス業、不動産業が並んでいれば、その日は輸出関連が買われ、内需や金利に弱い業種が売られた、という構図が浮かびます。共通点をひとつ見つけると、その日の主役だった材料(為替、金利、原油など)の見当がつきます。

上げ下げの幅がどれくらいか。 上位が1〜2%台で、下位も1〜2%台という日は、業種によって明暗が分かれた「入れ替わりの相場」です。一方、ほぼ全業種が同じ方向に1%以上動いている日は、個別の事情ではなく相場全体を動かす大きな材料があった日です。

指数の動きと業種の顔ぶれが噛み合っているか。 日経平均が大きく上がった日でも、上昇した業種が2つか3つしかないことがあります。これは株価水準の高い一部の銘柄が指数を押し上げた形で、市場全体が上がったわけではありません。日経平均とTOPIXが逆方向に動く日は、たいていこのパターンです。業種別の一覧は、指数の数字だけでは見えないこの「広がりの有無」を教えてくれます。

業種を見るときの注意点

業種という分類は便利ですが、そのまま鵜呑みにすると誤解も生みます。

ひとつは、同じ業種の中身が均一ではないことです。たとえば電気機器には、半導体製造装置の会社も、家電の会社も、電子部品の会社も入っています。半導体関連が急騰した日に「電気機器が上昇」と報じられても、家電の会社まで上がったとは限りません。業種の中でも、さらに細かい商売の違いによって動きは分かれます。

もうひとつは、業種の分類が会社の現在の姿と必ずしも一致しないことです。分類は主たる事業にもとづいて決められますが、事業内容が長い年月のうちに変わっても、分類がすぐに変更されるとは限りません。「なぜこの会社がこの業種に?」と感じる例が出てくるのは、こうした事情によります。

そして、ある業種が上がったからといって、その業種の銘柄を買えばよいという話ではありません。業種別の一覧は、起きたことを整理するための地図であって、これから起きることの予告ではないという点は、押さえておきたいところです。

まとめ

  • 東証は上場企業を33の業種に分類し、業種ごとの株価指数を算出・公表している。ニュースの業種別騰落率はこの指数の前日比。
  • 同じ業種の会社は、為替・原油・金利といった外部条件から似た影響を受けるため、同じ日に同じ方向へ動きやすい。
  • 景気で業績が振れる業種を景気敏感、振れにくい業種をディフェンシブと呼ぶが、ディフェンシブでも金利や燃料価格には強く反応する。
  • 上がった業種と下がった業種の共通点を探すと、その日の相場を動かした材料が見えてくる。
  • 業種の中身は均一ではなく、分類は地図であって予告ではない。

出典