今週(9月14日〜18日)の東京株式市場を振り返ります。日経平均株価は週間で1007円61銭高と、3週ぶりに反発しました。前週の下げ幅が1009円60銭でしたから、2週間かけて下げた分のうち、直近1週間分をほぼそのまま取り戻した計算になります。今週の主役は2つの中央銀行でした。16日に米連邦準備制度理事会(FRB)が3年2カ月ぶりの利上げを決め、18日には日銀が政策金利を1.25%程度へ引き上げています。同じ週に日米がそろって利上げに動くのは異例ですが、株式市場はこれを下げずに通過しました。まずは数字から見ていきます。

日付 日経平均終値 前営業日比 TOPIX終値 前営業日比
9/14(月) 63,492.99円 -518.35(-0.81%) 4,058.21 +29.91(+0.74%)
9/15(火) 63,484.10円 -8.89(-0.01%) 4,037.16 -21.05(-0.52%)
9/16(水) 63,923.00円 +438.90(+0.69%) 4,061.72 +24.56(+0.61%)
9/17(木) 64,136.25円 +213.25(+0.33%) 4,094.19 +32.47(+0.80%)
9/18(金) 65,018.95円 +882.70(+1.38%) 4,091.14 -3.05(-0.07%)

週間では、日経平均は前週末(9月11日)の終値64,011円34銭から**1,007円61銭高い65,018円95銭(+1.57%)で1週間を終えました。TOPIXは4,028.30から4,091.14へ62.84ポイント高(+1.56%)**です。株探によると、週間の安値は26週移動平均線(6万3,859円)に達する場面がありました。

米国市場の週間騰落 9月11日終値 9月18日終値 週間の変化
NYダウ工業株30種 52,573.29ドル 51,682.64ドル -890.65(-1.69%)
S&P500種株価指数 7,656.98 7,650.50 -6.48(-0.08%)
ナスダック総合指数 26,333.04 26,522.55 +189.51(+0.72%)
米国市場の日々の終値 NYダウ S&P500 ナスダック総合
9/14(月) 52,421.20(-152.09) 7,619.98(-37.00) 26,186.41(-146.62)
9/15(火) 52,093.11(-328.09) 7,585.73(-34.25) 25,981.57(-204.84)
9/16(水) 51,461.90(-631.21) 7,551.81(-33.92) 25,978.43(-3.15)
9/17(木) 51,778.04(+316.14) 7,637.76(+85.95) 26,418.30(+439.87)
9/18(金) 51,682.64(-95.40) 7,650.50(+12.74) 26,522.55(+104.25)
9月16日のFOMC(米国時間) 内容
政策金利(FF金利の誘導目標) 3.50〜3.75% → 3.75〜4.00%(0.25%引き上げ)
採決 賛成12・反対0
位置づけ 2023年7月以来、約3年2カ月ぶりの利上げ
ドットチャート(中央値) 2026年末・2027年末とも4.00〜4.25%
9月18日の日銀金融政策決定会合(11時54分公表) 内容
無担保コールレート(オーバーナイト物)の誘導目標 1.00%程度 → 1.25%程度
採決 賛成7・反対2(浅田統一郎委員、佐藤綾野委員)
補完当座預金制度の適用利率 / 基準貸付利率 1.25% / 1.5%
適用開始 翌営業日の9月24日から
位置づけ 1995年以来、31年ぶりの高い政策金利水準
金利・為替(週末18日) 水準 備考
米10年物国債利回り 5.00% 週前半の15日に一時5.041%(2007年7月以来の高水準)
新発10年物国債利回り 2.975%(前日比-0.015%) 日銀の利上げ当日にむしろ低下
ドル円(東京・16時28分) 157円26〜27銭(同+1円58銭) 日中高値157円31銭
ドル円(NY) 157円96銭 → 156円60銭へ下落して引け 欧州序盤に一時158円05銭
原油(9月18日の清算値) 水準 前日比 週間
WTI原油先物 100.30ドル -1.6% ほぼ横ばい
北海ブレント原油先物 103.87ドル -0.9% 1%弱の下落(3週ぶりの週間安)
週内に発表された主な指標 結果 市場予想・前回
米・新規失業保険申請件数(9/12までの週) 19万6,000件 予想20万8,000件、前回20万6,000件
米・フィラデルフィア連銀製造業景況指数(9月) 37.8 予想30前後、前回47.4
米・住宅着工件数(8月、年率) 127万5,000件(前月比-2.6%) 前回130万9,000件(改定)
日本・全国消費者物価指数(8月、総合) 前年同月比+1.9% 予想+2.0%
同・生鮮食品を除く総合(コア) 前年同月比+1.7% 予想+1.8%
年初来騰落(9月18日時点) 騰落率
ラッセル2000 +15.2%
ナスダック総合指数 +14.1%
S&P500種株価指数 +11.8%

何があった?

週の入り口でつまずいたのは、AI関連でした。 14日(月)の日経平均は518円35銭安の6万3,492円99銭と続落しています。週末にアンソロピックのダリオ・アモデイCEOが「最先端AIの開発ペースを業界全体で落とすべきだ」と提言し、オープンAIのサム・アルトマンCEOも賛同したこと、あわせてオープンAIが年内の上場を見送る考えを示したことが材料でした。ただしこの日は指数と中身が大きくずれています。東証プライムでは値上がり1,218・値下がり307と約8割の銘柄が上昇し、TOPIXは29.91ポイント高と反発しました。日経平均だけが下げたのは、構成比の大きいAI・半導体関連が売られたためです。同じ日の米国市場でも3指数がそろって反落しましたが、エヌビディアが3.4%安となる一方、AIとの競争懸念が後退したソフトウエア株やサイバーセキュリティ株が買われ、クラウドストライクは13.8%高、パロアルト・ネットワークスは13%高となっています。

15日(火)から16日(水)にかけて、市場の関心は完全に金利へ移りました。 15日の日経平均は前場に一時600円超上昇して6万4,000円台に乗せたものの、国内の長期金利が3.030%まで上がったことで上げ幅をすべて失い、8円89銭安と小幅に3日続落しています。同日の米国市場では、米10年債利回りが取引中に5.041%と2007年7月以来の水準まで上昇しました。金利上昇は家計の借り入れコストに直結するため、チポトレ・メキシカン・グリル(5.9%安)やダラー・ツリー(5.4%安)といった消費関連株の下げが目立っています。暗号資産の市場ルールを定める「CLARITY法案」が米上院で前に進まなかったことからビットコインは7万5,000ドル台まで下落し、コインベース・グローバルは10.1%安となりました。

そして16日(水)、FRBが動きます。 FOMCは全会一致でFF金利の誘導目標を0.25%引き上げ、3.75〜4.00%としました。利上げは2023年7月以来、約3年2カ月ぶりです。声明は「インフレは高止まりしている」としたうえで、今回の措置が2%目標への「より時宜を得た回帰」を支えると説明しました。ウォーシュ議長は会見で、FRBは原油のような個別の価格ショックを単独で止めることはできないとしつつ、「個別の価格に影響を与えることはできないが、相対価格の変化が(物価全体に)広がらないようにすることはできるし、そうする」と述べています。同時に公表されたドットチャートの中央値は、2026年末・2027年末とも4.00〜4.25%でした。米国市場ではダウが631ドル21セント安と大きく下げましたが、ナスダック総合指数は3.15ポイント安とほぼ横ばいで、反応は指数によって分かれています。

17日(木)は、利上げを消化した買い戻しの一日でした。 東京市場では日経平均が寄り付きに720円58銭高まで買われ、大引けは213円25銭高と続伸しています。半導体株が伸び悩んで上げ幅は縮みましたが、値上がり銘柄は1,289と全体の8割を超え、TOPIXの上昇率(0.80%)が日経平均(0.33%)を上回りました。米国市場では原油安と長期金利の低下が支えとなり、ダウが316ドル14セント高、ナスダック総合が1.7%高と反発しています。インテルの陳立武(リップブー・タン)CEOがメモリー需要の強さに言及したことでマイクロン・テクノロジーが5%超上昇し、半導体株全体に買いが広がりました。この日発表の新規失業保険申請件数は19万6,000件と予想を下回っています。

週の最後、18日(金)に日銀が利上げを決めました。 11時54分に公表された決定内容は、無担保コールレート(オーバーナイト物)の誘導目標を1.25%程度へ引き上げるというものです。1995年以来、31年ぶりの高い政策金利水準にあたります。採決は賛成7・反対2で、浅田統一郎委員と佐藤綾野委員が反対しました。反対票が2票出たことが「ハト派的」と受け止められ、為替市場では逆に円が売られています。ドル円は東京市場で一時157円31銭まで円安が進み、日経平均は後場に上げ幅を1,300円あまりへ広げて12時49分に6万5,436円57銭をつけました。大引けは882円70銭高の6万5,018円95銭で、10日以来の6万5,000円台回復です。売買代金は約10兆4,000億円と約1カ月ぶりの高水準でした。

もっとも、この日も指数と中身はそろっていません。値下がり銘柄は1,003と値上がり(511)の2倍近くに達し、TOPIXは3.05ポイント安と小幅に下落しています。上げを作ったのは円安の恩恵を受けた半導体関連で、アドバンテスト1銘柄で日経平均を436円86銭押し上げました。一方、電気・ガス業は2.24%安、石油・石炭製品は1.88%安と、原油高の一服とコスト面の思惑から資源・公益関連が売られています。

米国市場では、18日はクアドラプル・ウィッチングでした。 株価指数先物・株価指数オプション・個別株オプションなどが同時に満期を迎える四半期に一度の日で、今回はFOMCと日銀会合の直後に重なりました。取引開始前にはバークシャー・ハザウェイが、96歳のウォーレン・バフェット氏の会長退任と名誉会長就任を発表しています。後任の会長には長男のハワード・G・バフェット氏(71)が就きました。市場は方向感を欠き、ダウが95ドル40セント安、S&P500が12.74ポイント高、ナスダック総合が104.25ポイント高とまちまちで引けています。AP通信によると、この日も米10年債利回りが5.00%まで上がったことが重荷となり、値下がり銘柄のほうが多い一日でした。ビットコインは売り方の買い戻しで6%上昇し、8万1,000ドル台を回復しています。

為替では、NY市場に入って流れが変わりました。米8月の鉱工業生産・設備稼働率と景気先行指数がいずれも予想を下回ってドル買いが後退したところに、「日銀がレートチェックを実施した」との報道が伝わり、円が買い戻されています。ドル円は欧州市場序盤の158円05銭から、一時156円60銭付近まで下押しして週を終えました。

注目ポイント

  • 今週の最大の観察点は、「日米そろって利上げしたのに株は下げなかった」ことです。 日経平均は週間1,007円高、ナスダック総合も0.7%高で終わりました。株探は、今週が日米の利上げを乗り越えての反発だったことから、現状までの高金利はひとまず消化済みだと指摘しています。もっとも、消化されたのは「今回の利上げ」までで、次の一手はまだ織り込みの途中です。CME FedWatchが示す10月28日のFOMCでの利上げ確率は、17日時点で約55%と半々に近い水準にとどまっています。

  • 利上げの当日に日本の長期金利が下がった点は、今週いちばん意外な動きでした。 18日の新発10年物国債利回りは2.975%と、前日より0.015%低下しています。三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩氏は、日銀の声明に利上げを続ける姿勢が明示されたことで「ビハインド・ザ・カーブ」(物価上昇に金融政策が追いつかない状態)への懸念が後退し、長期金利の上昇圧力が和らぐとの見方を示しました。政策金利を上げたことが、かえって長い年限の金利を落ち着かせたという構図です。

  • 一方で、日米の指数の明暗はきれいに分かれました。 ダウは週間1.69%安、S&P500は0.08%安とほぼ変わらず、ナスダック総合だけが0.72%高です。金利上昇に弱いはずのハイテク指数が最も強かったのは、週初のAI関連売りからの戻りが大きかったためで、市場全体が強かったわけではありません。年初来ではナスダック総合が14.1%高、S&P500が11.8%高、ラッセル2000が15.2%高となっています。

  • 原油はようやく一服しました。 ブレント原油は3週ぶりの週間下落となり、WTIは週間でほぼ横ばいです。サウジアラビアが攻撃で損傷した東西パイプラインの能力を数日内に約半分回復させる方針を示したこと、オマーン沖での船舶間の積み替えによる追加供給が始まったことが背景にあります。前週は原油が金利を押し上げ、その金利が株を押し下げるという連鎖が相場を支配していただけに、この一服は17日以降の株高を下支えした一因と見られます。ただし水準は1バレル=100ドルを上回ったままです。

  • 東京市場は19日から5連休に入ります。 21日が敬老の日、22日が国民の休日、23日が秋分の日で、取引再開は24日(木)です。連休中も欧米市場は動くため、休み明けは5営業日分の海外の値動きをまとめて織り込むことになります。日銀の新しい誘導目標1.25%が適用されるのも24日からです。ザイ・オンラインが伝える来週(9月24〜25日)の日経平均の予想レンジは6万3,000〜6万7,000円で、連休中の原油相場や長期金利、欧米市場の動向に左右される展開が見込まれています。

ひとこと解説

「政策金利を上げたのに、長期金利が下がる」のはなぜでしょうか。 一見すると矛盾していますが、この2つは別の金利です。政策金利は中央銀行が直接決める「ごく短い期間のお金の値段」で、日銀が18日に1.25%程度へ引き上げたのはこちらです。一方、長期金利(日本では新発10年物国債の利回り)は市場での国債の売買によって決まり、「これから10年間、平均するとどれくらいの金利と物価になりそうか」という市場参加者の予想が反映されます。

つまり長期金利には、将来の利上げの分があらかじめ織り込まれています。中央銀行が物価上昇に対して動きが遅いと見られていると、「いずれもっと大幅な利上げが必要になる」という警戒から長期金利が先回りして上がります。これが「ビハインド・ザ・カーブ」と呼ばれる状態です。逆に、今回のように中央銀行がきちんと動き、今後も続ける姿勢を示すと、「後手に回るリスクは小さい」と受け止められて長期金利の上昇圧力が和らぐことがあります。利上げそのものより、それをどう説明したかのほうが長期金利には効く、というわけです。

もう一つ、今週初めて出てきた言葉が「レートチェック」です。 これは、通貨当局(日本では財務省と日銀)が民間の金融機関に対して、為替相場の水準や取引の状況を電話などで問い合わせる行為を指します。それ自体は情報収集にすぎず、実際に円を買う「為替介入」とは別のものです。

それでも市場が敏感に反応するのは、レートチェックが介入の準備段階として行われることがあり、「当局が今の水準を問題視している」というメッセージとして受け取られるためです。18日のNY市場では、この報道をきっかけに円の買い戻しが強まり、158円台をつけていたドル円が156円台半ばまで下げました。当局が実際に介入したかどうかは後日公表される実績で確認するしかありませんが、水準が節目に近づいたときには、こうした言葉が相場を動かす材料になることを覚えておくと、為替のニュースが読みやすくなります。

出典