ニュースでは毎日「日経平均は◯◯円高」「TOPIXは◯◯ポイント安」と伝えられます。同じ日本の株式市場を表す数字なのに、上がり幅がまるで違う日があります。たとえば2026年7月31日の東京市場は、日経平均が4.03%高だったのに対し、TOPIXは1.29%高でした。同じ市場を見ているのに、なぜ3倍近い差がつくのでしょうか。
答えは「どちらかが間違っている」ではなく、2つの指数が別々の計算方法でつくられているからです。この記事では、日経平均・TOPIX・NYダウ・S&P500という代表的な4つの指数のしくみを整理します。
そもそも「株価指数」とは何か
株価指数は、たくさんの会社の株価をひとつの数字にまとめたものです。市場には数千の銘柄があり、1社ずつ見ていては全体の様子がわかりません。そこで代表的な銘柄を選び、決まったルールで平均して1本の数字にします。
まとめ方には大きく2つの流儀があります。株価平均型と時価総額加重型です。ここが理解できると、冒頭の「差」の正体が見えてきます。
株価平均型 — 「株価が高い会社」の声が大きい
株価平均型は、その名のとおり採用銘柄の株価を足して割る方式です。日経平均株価とNYダウがこのタイプにあたります。
このしくみだと、株価そのものが高い銘柄ほど、指数への影響力が大きくなります。株価5万円の会社が5%動いたときと、株価500円の会社が5%動いたときでは、指数を動かす力がまるで違うということです。会社の規模(時価総額)が大きいかどうかは、直接には関係しません。
もっとも、実際の計算は単純な平均ではありません。日経平均は日本経済新聞社が算出しており、東京証券取引所プライム市場の225銘柄を対象に、「採用株価(株価×株価換算係数)の合計 ÷ 除数(じょすう)」という式で求めます。
- 株価換算係数: 特定の1銘柄の影響が過大にならないよう、株価水準を調整するための数字です。新しく採用される銘柄は原則1ですが、株価が突出して高い場合には0.1〜0.9の値が設定されます。
- 除数: 株式分割や銘柄の入れ替えがあると、企業の実態は変わっていないのに合計株価だけが変わってしまいます。そのたびに除数を修正することで、前日との連続性を保つしくみです。
NYダウ(ダウ工業株30種平均)も同じ株価平均型で、こちらは米国を代表する30銘柄で構成されます。銘柄数が少ないぶん、1社の値動きが指数に与える影響は相対的に大きくなります。
時価総額加重型 — 「会社の規模」の声が大きい
もう一方の時価総額加重型は、会社の規模に応じて重みをつける方式です。TOPIXとS&P500がこのタイプです。
時価総額とは「株価 × 発行済株式数」で、その会社の市場での大きさを表します。時価総額の大きい会社ほど指数への影響力が大きく、小さい会社の影響は小さくなります。株価が5万円でも発行済株式数が少なければ、指数への影響は限定的です。
実際には、多くの指数が浮動株(ふどうかぶ)調整を加えています。創業家や親会社、取引先などが長期保有していて市場で売買されない株を除き、実際に市場で流通している分だけを重みの計算に使う考え方です。TOPIXもS&P500もこの方式をとっています。
TOPIXはJPX総研が算出する日本市場の指数です。構成銘柄は見直しの途中にあり、2025年1月末に完了した第一段階で約2,200銘柄から約1,700銘柄に絞り込まれました。2026年10月からは第二段階が始まり、基準を下回る銘柄のウエイトが8回に分けて段階的に引き下げられる予定です。
S&P500は米国の代表的な約500社で構成され、米国株全体の動きを見る指標として広く使われています。
4つの指数を並べてみる
| 指数 | 国 | 方式 | 銘柄数 | 算出 |
|---|---|---|---|---|
| 日経平均株価 | 日本 | 株価平均型 | 225 | 日本経済新聞社 |
| TOPIX | 日本 | 時価総額加重型(浮動株調整) | 見直し中(第一段階後 約1,700) | JPX総研 |
| NYダウ | 米国 | 株価平均型 | 30 | S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス |
| S&P500 | 米国 | 時価総額加重型(浮動株調整) | 約500 | S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス |
冒頭の「差」の正体
ここまでくると、7月31日の東京市場で起きたことが説明できます。この日は米国の半導体株が急反発した流れを受けて、半導体関連や値がさ株(株価水準の高い銘柄)に買いが集中しました。日経平均はこうした銘柄の影響を強く受けるため、4.03%高と大きく上昇しました。
一方でこの日、東証プライム市場の値上がり銘柄は612、値下がり銘柄は922と、下げた銘柄のほうが多かったのです。市場全体で見れば必ずしも一様に買われたわけではなく、そのため幅広い銘柄を反映するTOPIXの上昇は1.29%にとどまりました。
つまり、日経平均とTOPIXの差は「上昇が市場全体に広がっているか、一部に集中しているか」を測るヒントになります。両者が同じ方向に同じくらい動いていれば市場全体の動き、日経平均だけが突出していれば一部の銘柄が牽引した動き、と読み分けることができます。
覚えておきたいこと
- 株価指数には株価平均型と時価総額加重型があり、影響力の決まり方が違う。
- 日経平均とNYダウは株価平均型。株価の高い銘柄の影響が大きい。
- TOPIXとS&P500は時価総額加重型。会社の規模が大きい銘柄の影響が大きい。
- 同じ日の2つの指数の差は、値動きが市場全体に広がっているかどうかを見る手がかりになる。
指数はあくまで市場を要約した数字です。「今日は上がった/下がった」だけでなく、どの指数がどれだけ動いたかを見比べると、その日の相場の性格が少しだけ立体的に見えてきます。このサイトの日々の市況記事でも、日経平均とTOPIXの数値は毎回並べて掲載しています。
参考:
- 日経平均株価 算出要領(日本経済新聞社)
- TOPIX等の指数見直しについて(JPX総研)
- 次期TOPIX構成銘柄数はなぜ減少しているのか(ニッセイ基礎研究所)
- 東証大引け 日経平均は大幅続伸 AI・半導体に海外勢の買い(日本経済新聞)
※本記事は指数のしくみに関する一般的な解説であり、特定の金融商品や銘柄の推奨ではありません。制度やルールの詳細は必ず公式情報をご確認ください。