11日の東京株式市場は、日経平均株価が前日比1,259円61銭(1.93%)安の6万4,011円34銭と大幅に反落しました。原油相場の急伸と日米の金利上昇が景気や企業業績への逆風と受け止められ、下げ幅は一時2,000円を超えて8月4日以来の安値水準まで沈みました。9月限のメジャーSQ算出日にあたり、売買代金は8兆7,000億円台に膨らんでいます。

11日の東京市場 終値 前日比
日経平均株価 64,011.34円 -1,259.61(-1.93%)
TOPIX 4,028.30 -26.28(-0.65%)
JPXプライム150指数 1,685.51 -12.60(-0.74%)
11日の日経平均の主な水準
寄り付き 64,276.82円(前日比994.13円安)
安値 63,208.63円(同2,062.32円安)
大引け 64,011.34円(同1,259.61円安)
売買動向(東証プライム)
売買高 23億7,251万株
売買代金 8兆7,129億円
値上がり銘柄数 509(32.7%)
値下がり銘柄数 986(63.4%)
変わらず 58
11日の業種別騰落(値上がり上位) 騰落率
保険業 +2.25%
海運業 +1.28%
輸送用機器 +1.14%
鉱業 +0.87%
卸売業 +0.21%
11日の業種別騰落(値下がり上位) 騰落率
非鉄金属 -3.52%
電気機器 -2.03%
石油・石炭製品 -1.54%
サービス業 -1.29%
化学工業 -1.21%
11日の債券市場(引け) 水準
長期国債先物(9月限) 125円74銭(寄付125円86銭、高値125円95銭、安値125円68銭)
新発2年債利回り 1.829%
新発5年債利回り 2.259%
新発10年債利回り 2.973%(一時3.000%)
新発20年債利回り 3.796%
11日の東京市場の為替・商品 水準
ドル円 153円96銭〜154円61銭(朝方154円61銭→午後153円96銭)
WTI原油先物 前日に一時104ドル台(約4カ月ぶり高値)、アジア時間は101ドル近辺に失速

何があった?

前日10日の米国市場で主要3指数がそろって4営業日続落したことを受け、東京市場は朝方から売りが先行しました。寄り付きは994円13銭安の6万4,276円82銭。その後も下げ幅を広げ、前場から後場前半にかけて6万3,200円台まで下落し、一時は2,062円32銭安と2,000円を超える下げとなりました。

売りを誘った材料は主に3つです。第一に原油高です。中東情勢の緊迫が長期化するとの見方に加え、サウジアラビアの8月の原油生産が1990年以来の低水準に落ち込んだと伝わり、米国産標準油種(WTI)の先物は前日に一時1バレル=104ドル台と約4カ月ぶりの高値を付けました。第二に金利上昇です。米8月の生産者物価指数(PPI)の加速を受けて米10年債利回りは4.9%台と2023年10月以来の高水準にあり、国内でも新発10年物国債利回りが一時3.000%と節目に乗せました。第三に為替と原油の組み合わせです。円安と原油高が重なることで、資源をほぼ輸入に頼る日本の企業のコスト負担が増すとの警戒が広がりました。

もっとも、アジア時間に入って原油と米金利がいずれも伸び悩むと、株価は下げ渋りました。ドル円は朝方の154円61銭から午後には153円96銭まで水準を切り下げ、WTIも101ドル近辺に押し戻されています。日経平均は大引けにかけて6万4,000円台を回復して取引を終えました。

業種別では、非鉄金属が3.52%安と下落率トップ。電気機器も2.03%安となり、アドバンテストや東京エレクトロン、キオクシアホールディングス、イビデンといったAI・半導体関連が総じて売られました。ソフトバンクグループ、ファナック、村田製作所も下落しています。一方、金利上昇が追い風と受け止められた保険業が2.25%高で上昇率トップとなり、東京海上ホールディングスが買われました。海運業や輸送用機器も堅調で、トヨタ自動車、ホンダ、デンソー、任天堂、KDDIなどが上昇しています。

注目ポイント

指数間の差が大きく開きました。 日経平均が1.93%安となる一方、TOPIXは0.65%安にとどまりました。値がさの半導体関連が集中的に売られた一方で、保険・自動車・海運など時価総額の大きい内需・輸送関連が買われたことが、この差につながっています。値下がり銘柄は東証プライムの63.4%で、指数の下げ幅ほど市場全体が一様に売られたわけではありません。

メジャーSQ算出日でした。 売買代金は8兆7,129億円と前日の8兆3,803億円から増加しています。3月・6月・9月・12月のSQ日は先物とオプションの期限が重なり、ポジション整理の売買が上乗せされるため、値動きと売買代金がふくらみやすくなります。この日の値幅の大きさをすべて材料要因に帰すのは早計で、需給要因がどの程度効いたかは切り分けが難しい点に留意が必要です。

日本の長期金利が3%に到達しました。 新発10年物国債利回りは一時3.000%を付け、引けは2.973%でした。原油高と円安によるインフレ圧力への警戒が国内債にも波及した形です。

今夜は米8月CPIが発表されます。 日本時間21時30分に公表予定で、市場予想は前年同月比3.4%(前回3.4%)です。前日のPPIが予想を上回った直後だけに、米金利と原油の動向とあわせて反応が注目されます。

ひとこと解説

金利が上がると保険株や銀行株が買われやすいのはなぜかを整理しておきます。この日は全体が大きく下げるなかで保険業が2.25%高と上昇率トップになりました。生命保険会社や損害保険会社は、契約者から預かった保険料を国債などで長期運用し、将来の保険金支払いに備えています。金利が上がれば、新たに買う債券から得られる利息が増えるため、運用収益の改善につながると考えられます。銀行も、貸出金利と預金金利の差(利ざや)が広がりやすくなるという似た構図を持ちます。ただし、保有済みの債券は金利上昇によって時価が下がるため、決算上は評価損として表れる面もあります。「金利上昇=金融株にプラス」と単純化されがちですが、実際は保有資産の構成や負債の年限によって影響の出方が企業ごとに異なります。市場が短期的にどう反応するかと、実際の業績にどう効くかは、分けて見る必要があります。

長期金利の「3%」という節目についても触れておきます。長期金利とは一般に新発10年物国債の流通利回りのことで、住宅ローンの固定金利や企業の社債の発行条件など、幅広い金利の基準になります。日本の長期金利は長らく1%を大きく下回る状態が続いてきたため、3%という水準は歴史的に見れば高い部類に入ります。節目の数字そのものに経済的な意味があるわけではありませんが、市場参加者の意識が集まりやすく、到達の前後で値動きが荒くなることがあります。金利が上がると、将来の利益を現在価値に割り引く際の「割引率」が大きくなるため、成長期待で買われている銘柄ほど理論上の評価が下がりやすくなります。この日にAI・半導体関連が大きく売られた背景のひとつには、この関係があります。

原油高と円安が重なると何が起きるのかも押さえておきましょう。日本は原油をほぼ全量輸入に頼っています。原油がドル建てで値上がりすると、円で支払う輸入代金が増えます。そこに円安が加わると、同じドル建て価格でも円換算の負担がさらに膨らみます。つまり、原油高と円安は日本にとって輸入コストを二重に押し上げる関係にあります。国全体で見ると、輸出品の価格に対する輸入品の価格の比(交易条件)が悪化し、稼いだ所得が海外に流出する形になります。企業にとっては原材料費や輸送費の上昇として、家計にとってはガソリンや電気・ガス料金の値上がりとして表れます。この日、株式市場が原油と為替の動きに敏感に反応したのは、この経路が意識されたためです。逆に言えば、原油が落ち着くか円高に振れれば、警戒が和らぐ方向に働きます。


出典