10日の米国株式市場は、前日9日に主要3指数がそろって3営業日続落した流れを引き継いで取引が始まります。日本時間21時30分に発表された米8月の生産者物価指数(PPI)は前年同月比5.4%上昇と前月の4.7%から加速し、同21時15分には欧州中央銀行(ECB)が0.25%の利上げを決めました。引け後にはオラクルとアドビの決算、日本時間11日午前2時には米財務省の30年債入札が控えます。

前日9日の米国株(終値) 終値 前日比
ダウ工業株30種平均 52,380.66ドル -405.41(-0.77%)
S&P500種株価指数 7,636.36 -37.16(-0.48%)
ナスダック総合指数 26,253.34 -168.07(-0.64%)
フィラデルフィア半導体株指数(SOX) 11,931.32 +43.45
9日の商品・金利 水準 前日比・備考
WTI原油先物 1バレル96.05ドル +3.25%(7営業日続伸、約3カ月半ぶり高値)
北海ブレント原油先物 1バレル101.21ドル +3.36%(5月以来の高値引け)
米10年債利回り 一時4.857% 2023年11月以来の高水準
米レギュラーガソリン全米平均 1ガロン4.2245ドル
米8月PPI(10日21時30分発表・米労働統計局) 結果
最終需要 前月比 +0.4%
最終需要 前年同月比 +5.4%
最終需要財 前月比 +1.1%
最終需要サービス 前月比 +0.1%
食品・エネルギー・商業サービスを除く指数 前月比+0.3%、前年同月比+4.7%
ガソリン +4.2%
ディーゼル燃料 +24.1%
原油 +5.2%

事前の市場予想は前月比+0.4%、前年同月比が+5.2%(外為どっとコム)〜+5.3%(Myforex)でした。7月の前年同月比は+4.7%、前月比は±0.0%です。

米新規失業保険申請件数(10日21時30分発表・米労働省) 結果
初回申請件数(9月5日までの週・季節調整済み) 20万6,000件(前週改定値から-1,000件)
4週移動平均 20万6,000件(-1,500件)
継続受給者数(8月29日までの週) 177万4,000人(-1,000人)
保険失業率(同) 1.2%(前週から変わらず)
ECB政策金利(10日21時15分発表・9月16日から適用) 変更後 変更幅
預金ファシリティ金利 2.50% +0.25%
主要リファイナンスオペ金利 2.65% +0.25%
限界貸付ファシリティ金利 2.90% +0.25%
9日のニューヨーク為替(終値・レンジ) 水準
ドル円 153円80銭(安値153円09銭〜高値153円80銭)
ユーロドル 1.1620〜1.1654ドル
ユーロ円 178円35銭〜178円77銭
米株価指数先物(10日13時30分時点) 水準 前日比
S&P500先物 7,656.00 +12.25
ナスダック100先物 29,427.75 -21.00
NYダウ先物 +168ドル
今夜の主な予定(日本時間) 内容
21:15 ECB政策金利発表(結果:0.25%利上げ)
21:30 米8月PPI、米新規失業保険申請件数(いずれも発表済み)
21:45 ラガルドECB総裁 記者会見
23:00 米8月中古住宅販売件数(予想:398万件、前月比-1.6%)
23:00 米7月卸売売上高
11日 01:00 EIA週間石油在庫統計
11日 02:00 米財務省 30年債入札
米引け後 オラクル、アドビ 決算発表
米共和党大会(テキサス州ダラス)最終日

何があった?

前日9日の米国市場は、原油と金利の二つが同時に効いた一日でした。

対イラン紛争の激化を受けて原油相場が上昇し、寄り付き後から売りが優勢となります。WTI原油先物は1バレル96ドル05セントと前日比3.25%高で7営業日続伸し、約3カ月半ぶりの高値をつけました。北海ブレント原油先物も101ドル21セント(3.36%高)と5月以来の高値引けです。全米のレギュラーガソリン平均小売価格は1ガロン4.2245ドルに達しています。

これに債券市場の動きが重なりました。米財務省がこの日、償還までの期間が10〜20年の国債について最大60億ドルの買い戻しを発表しましたが、規模が市場の期待に届かなかったと受け止められ、米国債相場は続落。10年債利回りは一時4.857%と、2023年11月以来の高水準まで上昇しました。9日実施の10年債入札では最高落札利回りが4.834%と、2007年以降で最も高い水準になっています。

株式市場では、ダウ工業株30種平均が405ドル41セント(0.77%)安の5万2,380ドル66セント、S&P500種株価指数が37.16ポイント(0.48%)安の7,636.36、ナスダック総合指数が168.07ポイント(0.64%)安の2万6,253.34と、そろって3営業日続落しました。もっとも中身は一様ではなく、セクター別ではエネルギーと銀行が上昇し、不動産管理・開発が下落しています。フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は43.45ポイント高の1万1,931.32と小幅に上昇しました。個別では、メタ・プラットフォームズが新しいAI技術「ミューズ」を好感して6.55%高の653ドル69セントと大きく買われた一方、アップルは折りたたみ式iPhoneの発表を受けても0.27%安の315ドル34セントと小幅に下げています。

為替市場では、ドル円が153円80銭で取引を終えました。この日の安値は153円09銭で、長期金利の上昇を受けて終盤にかけてドル買いが優勢となった形です。10日の東京市場でもドル円は153円台半ばから後半で推移し、日経平均株価は128円17銭高の6万5,270円95銭と3営業日ぶりに反発しました。

そして今夜、二つの材料が相次いで出ています。

一つ目は米8月のPPIです。米労働統計局によると、最終需要の前月比は0.4%上昇、前年同月比は5.4%上昇となりました。7月の前年同月比4.7%から加速しており、事前予想(前年同月比+5.2〜5.3%)をやや上回る結果です。内訳を見ると、最終需要財が前月比1.1%上昇したのに対し、最終需要サービスは0.1%上昇にとどまりました。押し上げているのはエネルギーで、ガソリンが4.2%、ディーゼル燃料が24.1%、原油が5.2%それぞれ上昇しています。食品・エネルギー・商業サービスを除く指数は前月比0.3%、前年同月比4.7%の上昇でした。同時に発表された新規失業保険申請件数は9月5日までの週で20万6,000件と、前週の改定値から1,000件の減少です。

二つ目はECBの政策決定です。ECBは主要3金利をいずれも0.25%引き上げ、預金ファシリティ金利を2.50%、主要リファイナンスオペ金利を2.65%、限界貸付ファシリティ金利を2.90%としました(9月16日から適用)。声明では「中東の紛争がインフレ圧力を生み続けており、インフレ率は長期にわたって目標を大きく上回る状態が続く見通し」だとしたうえで、今後は会合ごとにデータを見て判断し、特定の金利の道筋をあらかじめ約束することはしないと説明しています。日本時間21時45分からはラガルド総裁の記者会見が予定されています。

注目ポイント

今夜の焦点は三つに整理できます。

一つ目は、PPIの内容がどう受け止められるかです。今回の結果は、エネルギー価格の上昇が生産者段階の物価にはっきり表れていることを示しました。一方で、サービス価格の前月比は0.1%上昇にとどまっており、値上がりが幅広い品目に及んでいるというよりは、原油関連に集中している構図が読み取れます。この「集中しているのか、広がっているのか」という点は、11日に発表される8月の消費者物価指数(CPI)で改めて確認されることになります。CPIの市場予想は前年同月比3.4%と、7月から横ばいの見込みです。原油高が消費者段階までどの程度届いているかが、来週15〜16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)に向けた見方を左右しやすい局面です。9月のFOMCについては、利上げと据え置きの見方が市場で拮抗していると報じられています。

二つ目は、日本時間11日午前2時の30年債入札です。前日の10年債入札では最高落札利回りが2007年以降で最も高い水準となりました。年限の長い30年債は、遠い将来の物価や財政の見通しをより強く映すため、インフレ懸念が高まっている局面では需要が読みにくくなります。応札が低調で想定より高い利回りが必要になれば長期金利にはさらに上昇圧力がかかり、逆に堅調であれば現在の利回り水準に買い手がいることの確認になります。財務省による国債の買い戻しが拡大するタイミングと重なっている点も、需給を複雑にしています。

三つ目は、引け後に予定されるオラクルとアドビの決算です。オラクルは2027年度第1四半期の決算を発表する予定で、市場予想は売上高が約191億ドル、調整後の1株当たり利益(EPS)が約1.73ドルとされています。会社側は前年同期比27〜29%の増収と調整後EPS1.72〜1.76ドルという見通しを示していました。アドビは2026年度第3四半期の決算で、市場予想は売上高が約66億9,000万ドル、Non-GAAPベースのEPSが約6.09ドルです。会社側の見通しは売上高66億7,000万〜67億2,000万ドル、Non-GAAP EPS6.05〜6.10ドルとなっています。いずれもAI関連の投資や需要が業績にどう表れているかが関心を集めやすい銘柄で、結果は時間外取引や翌日の相場に波及することがあります。

今夜の相場について、フィスコは「下げ渋り」を見込んでいます。中東情勢と原油高が引き続き重荷になる一方、翌日のCPIを見極めたいというムードが広がれば、過度な下げは抑えられるとの見立てです。ただし、PPIがコア指数を含めて加速すれば来週のFOMCでの利上げ観測を後押しし、ハイテク株に売りが広がる可能性も指摘されていました。このほか23時には8月の中古住宅販売件数(予想398万件、前月比1.6%減)の発表があります。

ひとこと解説

PPI(生産者物価指数)とCPI(消費者物価指数)の違いを整理しておきます。PPIは企業が商品やサービスを出荷・提供する段階の価格を、CPIは消費者が買う段階の価格を測る指標です。原材料やエネルギーの値上がりは、まず生産者の段階に表れ、時間をかけて小売価格に転嫁されていくのが一般的な流れとされます。そのためPPIは「CPIの先行指標」と説明されることがあります。ただし、企業がコスト増をどこまで価格に上乗せするかは、競争環境や需要の強さによって変わります。PPIが上がったからといってCPIが同じ幅で上がるとは限りません。今回のように上昇がエネルギーに集中している場合は、燃料費の比重が大きい業種とそうでない業種とで、影響の出方が変わってくる点も踏まえて見る必要があります。

「最終需要」という区分についても触れておきます。米国のPPIは、原材料から完成品まで生産の各段階を分けて集計しており、ニュースで「PPI」として報じられるのは通常この「最終需要(final demand)」の指数です。さらに、価格の振れが大きい食品・エネルギーと、卸売・小売のマージンを表す「商業サービス」を除いた指数が、基調的な動きを見る目的で併せて公表されます。今回、最終需要全体が前年同月比5.4%上昇だったのに対し、この除外後の指数は4.7%上昇でした。二つの差は、足元の上昇にエネルギー価格がどれだけ寄与しているかの目安になります。

中央銀行の「利上げ局面」が国をまたいで重なることの意味も押さえておきたいところです。今回のECBの利上げは、中東情勢に端を発するエネルギー価格の上昇が物価を押し上げている、という点で、日銀が直面している状況と共通の背景を持ちます。エネルギー価格は世界共通の要因であるため、多くの国の中央銀行が同じ方向に動きやすくなります。もっとも、各国の経済の強さや通貨の事情は異なるため、利上げの速さや幅は揃うとは限りません。ECBが今回、特定の金利の道筋をあらかじめ約束しない(pre-commitではない)と明言したのは、先行きの不確実性が大きいことの裏返しでもあります。金利差は為替を通じて各国の物価にも跳ね返るため、どの中央銀行がどのペースで動くかは、株式市場にとっても他人事ではありません。

出典