9日の米国市場は主要3指数がそろって3営業日続落しました。米国とイランの攻撃の応酬が激しさを増し、国際指標の北海ブレント原油先物が1バレル=101ドル台に乗せたことに加え、米長期金利が約2年10カ月ぶりの水準まで上昇したことが重荷になりました。10日の東京市場は日経平均株価が374円安で寄り付き、3営業日続落となっています。

9日の米国市場(終値) 終値 前日比
ダウ工業株30種平均 52,380.66ドル -405.41(-0.77%)
S&P500種株価指数 7,636.36 -37.16(-0.48%)
ナスダック総合指数 26,253.34 -168.07(-0.64%)
フィラデルフィア半導体株指数(SOX) 11,931.32 +43.45
9日の商品・金利 水準 前日比・備考
北海ブレント原油先物 101.21ドル +3.36%(5月以来の高値)
WTI原油先物 96.05ドル +3.25%
米10年債利回り 4.84% 一時4.857%(2023年11月以来の高水準)
米30年債利回り 5.292%
9日のNY為替 終値 値幅
ドル円 153円80銭 153円09銭〜153円80銭
ユーロドル 1.1620ドル 1.1620〜1.1654ドル
9日の東京市場(終値) 終値 前日比
日経平均株価 65,142.78円 -126.55(-0.19%)
TOPIX 4,046.64 -3.69(-0.09%)
10日の主な予定(日本時間) 内容 市場予想(前回)
10時30分 増田日銀審議委員が福井県で金融経済懇談会・記者会見
15時00分 ドイツ8月消費者物価指数 2.9%
21時15分 ECB政策金利発表・ラガルド総裁会見 2.65%(2.40%)
21時30分 米新規失業保険申請件数(先週) 20.5万件(20.6万件)
21時30分 米8月生産者物価指数(PPI) 5.2%(4.7%)
23時00分 米8月中古住宅販売件数 -1.6%(-1.7%)
終日 OPEC月報

何があった?

9日の米国市場は、前日から続く「原油高と金利上昇」の構図がさらに強まる一日でした。

中東情勢は一段と緊迫しました。財経新聞によると、米中央軍(CENTCOM)がイランの石油タンカーを無力化したと発表した一方、イラン革命防衛隊は米艦船と商船を攻撃したと主張しています。エネルギーの供給網そのものが攻撃対象になっているとの受け止めが広がり、原油相場は大きく上昇しました。国際指標の北海ブレント原油先物は前日比3.36%高の1バレル=101.21ドル、米国産標準油種のWTI先物は3.25%高の96.05ドルで取引を終え、いずれも5月以来の高値水準です。前日には節目とされた100ドルが視野に入っていたブレントは、実際に大台を超えてきました。

もうひとつの重荷が、米長期金利の上昇です。米財務省は既発国債の買い戻しオペレーションを発表しましたが、規模は最大60億ドルでした。通常の20億ドルの3倍にあたる増額ではあるものの、市場が期待していた水準には届かなかったと受け止められ、米国債は大幅に下落(利回りは上昇)しました。米10年債利回りは一時4.857%と2023年11月以来の高水準を付け、終値ベースでも4.84%程度。米30年債利回りは5.292%まで上昇しています。原油高によるインフレ再燃への警戒と、国債需給への不安が重なった形です。

株式市場は、この二つを嫌気して終日さえない展開でした。ダウ工業株30種平均は405.41ドル(0.77%)安の52,380.66ドル、S&P500種株価指数は37.16ポイント(0.48%)安の7,636.36、ナスダック総合指数は168.07ポイント(0.64%)安の26,253.34と、3指数がそろって3営業日続落しています。日本経済新聞によると、ダウ平均は取引時間中に一時400ドルを超える下げとなる場面がありました。

ただし、ここでも中身は一様ではありませんでした。セクター別では原油高の恩恵を受けやすいエネルギーと、金利上昇が収益にプラスに働きやすい銀行が上昇し、金利上昇が逆風となる不動産管理・開発が下落しています。個別では、新しいAI技術「ミューズ」が好感されたメタ・プラットフォームズが6.55%高と目立ちました。インテルは1.69%高、バンク・オブ・アメリカは0.44%高。一方、新製品を発表したアップルは0.27%安、アルファベットは2.08%安でした。買収をめぐって米司法省が追加調査に入ると報じられたフォックスとロクは下落しています。半導体関連は堅調で、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は43.45ポイント高の11,931.32と5営業日続伸しました。

為替市場では、ドル円は方向感を欠いたあと、終盤にドル買いが優勢となりました。フィスコによると、いったん153円09銭まで下落したものの、国債買い戻しの規模を受けた長期金利の上昇でドル買いに転じ、153円80銭で引けています。ユーロドルは1.1620ドルでした。

東京市場に目を移すと、9日の日経平均株価は前日比126円55銭(0.19%)安の6万5,142円78銭と小幅に続落しました。TOPIXは3.69ポイント(0.09%)安の4,046.64です。日本経済新聞によると、日中は一時500円あまり上げる場面もありましたが、中東情勢の悪化を受けた原油高が重荷となり、買いの勢いは続きませんでした。電線株の一角が買われたことは支えになったと伝えられています。

注目ポイント

10日の東京市場は、売り先行でのスタートとなりました。

前日の米株安と原油高を受け、シカゴ日経225先物は大阪取引所比1,085円安の6万4,175円で終了。ナイトセッションでは6万4,150円まで売られる場面もありました。実際の寄り付きは日経平均が前日比374円25銭安の6万4,768円53銭、TOPIXが15.24ポイント安の4,031.40。共同通信によると9時15分時点では6万4,755円66銭と、前日比387円12銭安で推移していました。円相場は1ドル=153円30銭台です。

朝方の動きを業種別に見ると、石油・石炭製品、鉱業、電気・ガス業、空運業、サービス業が上昇し、その他製品、非鉄金属、建設業、小売業、精密機器が下落しました。原油高が追い風になる業種と、コスト増や景気減速の影響を受けやすい業種で明暗が分かれる展開です。個別ではパナソニックホールディングス、レーザーテック、太陽誘電、りそなホールディングスなどが上昇する一方、三井金属、丸紅、古河電気工業、フジクラ、住友電気工業などが下落しました。

もっとも、朝方の下げ幅はシカゴ先物が示していた水準ほどではありません。前夜の米国市場でSOX指数が5営業日続伸したことや、円高の進行が一服していることが下支えになっているとみられます。財経新聞は、11日の9月限先物・オプション特別清算指数(メジャーSQ)算出を控えてヘッジ目的の売りが入りやすく、押し目を拾いにくい地合いになりやすいと指摘していました。テクニカル面では6万5,046円あたり(25日移動平均線からマイナス1シグマ)や6万3,830円(同マイナス2シグマ)が意識されやすい水準として挙げられています。

日中の材料としては、10時30分から増田日銀審議委員が福井県で金融経済懇談会に出席し、その後記者会見を行います。来週17〜18日に日銀の金融政策決定会合を控えるなかでの発言となるため、内容が円相場や金利に影響することがあります。

海外に目を向けると、日本時間の夜が本番です。21時15分にECB(欧州中央銀行)が政策金利を発表し、ラガルド総裁の記者会見が続きます。そして21時30分に米8月生産者物価指数(PPI)。市場予想は前年同月比5.2%と、前回の4.7%から加速する見込みです。原油高が企業間の取引価格にどう表れているかを確かめる材料として関心が高く、11日の米消費者物価指数(CPI)の前哨戦とも位置づけられます。原油の需給見通しを示すOPEC月報も同日に公表される予定です。

今後の日程を整理すると、11日に米8月CPIと日本のメジャーSQ、15〜16日に米FOMC(連邦公開市場委員会)、17〜18日に日銀の金融政策決定会合が控えます。原油高がインフレ指標にどこまで表れるかが、来週の金融政策をめぐる見方を左右しやすい局面が続きます。

ひとこと解説

「国債の買い戻しオペ」がなぜ株価に効くのかを整理しておきます。米財務省が実施する買い戻し(バイバック)は、すでに発行済みの国債を政府が市場から買い取る仕組みです。買い手が増えれば国債の価格は上がり、価格と反対に動く利回り(金利)は下がりやすくなります。9日は買い戻しの規模が最大60億ドルと発表されましたが、市場が期待していた水準に届かなかったため、逆に「買い支えは思ったほど厚くない」と受け止められ、国債価格が下落=利回りが上昇しました。長期金利が上がると、企業の資金調達コストが増えるうえ、株式より安全とされる債券の魅力が相対的に高まるため、株式には売り圧力がかかります。発表そのものではなく、発表と事前期待とのギャップが値動きを生む——市場でよく起きるパターンです。

PPI(生産者物価指数)とCPI(消費者物価指数)の違いにも触れておきます。PPIは企業が商品やサービスを出荷・販売するときの価格、つまり「川上」の物価を測る指標です。これに対してCPIは、私たちが小売店やサービスで実際に支払う「川下」の物価を測ります。原油のような原材料価格の上昇は、まずPPIに表れ、時間差をおいて企業が販売価格に転嫁することでCPIに波及していくのが一般的な流れです。そのため、PPIはCPIの先行指標として読まれることがあります。ただし、企業がコスト増を自社の利益を削って吸収すればCPIには表れにくくなり、その場合は物価ではなく企業収益のほうが圧迫されます。PPIが上がったときは「物価に転嫁されるのか、企業が飲み込むのか」という二つの経路のどちらに向かうかが焦点になります。

メジャーSQとは何かも知っておくと、この時期の値動きを理解しやすくなります。SQは特別清算指数(Special Quotation)の略で、日経平均先物やオプションの取引を最終的に決済するための基準値です。毎月第2金曜日に算出されますが、3月・6月・9月・12月は先物とオプションの両方の期日が重なるため「メジャーSQ」と呼ばれ、関係する取引の規模が大きくなります。今回は11日がその日にあたります。SQの前後は、ポジションを整理するための売買や、価格変動に備えたヘッジ取引が増えるため、企業業績や景気とは直接関係のない需給要因で相場が動きやすくなる傾向があります。値動きの理由を探すときに、こうした「制度・需給側の事情」も背景にあると知っておくと、過度に意味を読み込まずに済みます。

出典