9日の米国株式市場は、前日に主要3指数がそろって下落した流れを引き継いで取引が始まります。中東情勢の緊迫を背景にWTI原油先物は日本時間9日夜に1バレル95ドル台へ上昇し、米10年物国債の利回りも4.81%台と高止まりしています。日本時間10日午前2時には米財務省の10年債入札が予定され、11日には8月の消費者物価指数(CPI)、来週には米連邦公開市場委員会(FOMC)が控えます。

前日8日の米国株(終値) 終値 前日比
ダウ工業株30種平均 52,786.07ドル -628.18(-1.17%)
S&P500種株価指数 7,673.52 -45.08(-0.59%)
ナスダック総合指数 26,421.41 -85.58(-0.32%)
フィラデルフィア半導体株指数(SOX) 11,887.87 +152.61
8日の米国株の主な個別銘柄 終値 前日比
インテル 104.47ドル +9.05%
アルコア 51.74ドル +3.54%
キャタピラー 822.48ドル +1.04%
メタ・プラットフォームズ 613.48ドル -0.53%
アップル 316.22ドル -1.17%
9日の米金利・商品(日本時間20時前後) 水準 備考
米10年債利回り 4.81%台 「5%台が視野に入る水準」(外為どっとコム)
WTI原油先物 1バレル95ドル台 8日のNY終値は94.04ドル(+1.52ドル、+1.64%)
9日の為替(日本時間20時時点) 水準 取引レンジ
ドル円 153円73銭 153円10銭〜153円73銭
ユーロドル 1.1643ドル 1.1621〜1.1643ドル
ユーロ円 178円81銭 178円26銭〜178円81銭
米株価指数先物(日本時間9日13時30分時点) 水準 前日比
S&P500先物 7,685.50 +5.00
ナスダック100先物 29,584.25 +45.50
NYダウ先物 -26ドル
今夜の主な予定(日本時間) 内容
20:00 米MBA住宅ローン申請指数(結果:前週比-2.7%、前回+0.8%)
21:00 メキシコ8月CPI(予想:前年同月比+3.30%)
10日 02:00 米財務省 10年債入札
10日 02:00 ナーゲル独連銀総裁 講演
米引け後 クーパー・カンパニーズ 第3四半期決算
10日まで 米共和党大会(テキサス州ダラス)

何があった?

前日8日の米国市場は、序盤と終盤で表情が変わった一日でした。

寄り付き後はハイテク株が支えとなってまちまちの動きでしたが、対イラン攻撃の応酬が激化して原油相場が上昇すると、インフレ再燃への警戒が広がって相場は売りに転じます。長期金利の上昇もこれに拍車をかけ、終盤にかけて下げ幅が拡大しました。ダウ工業株30種平均は628ドル18セント(1.17%)安の5万2,786ドル07セント、S&P500種株価指数は45.08ポイント(0.59%)安の7,673.52、ナスダック総合指数は85.58ポイント(0.32%)安の2万6,421.41で取引を終えています。

もっとも、下げ方には偏りがありました。セクター別では自動車・自動車部品やエネルギーが上昇し、下落したのは消費者サービスです。半導体関連は堅調で、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は152.61ポイント高の1万1,887.87と上昇しました。個別ではインテルが9.05%高の104.47ドルと大きく買われ、資源高を受けてアルコアが3.54%高、キャタピラーも1.04%高となっています。一方、アップルは1.17%安の316.22ドル、メタ・プラットフォームズは0.53%安の613.48ドルでした。ダウが1%を超えて下げた一方でナスダックの下落率が0.3%台にとどまったのは、こうした構成の違いが表れたためです。

原油の上昇は9日も続いています。WTI原油先物は8日のニューヨーク市場で1バレル94ドル04セント(前日比1ドル52セント高、1.64%高)まで上昇し、日本時間9日の欧州時間にはフィスコによると95ドル台に浮上しました。イランのカーグ島付近での爆発が伝えられたことに加え、中東での攻撃の応酬が供給不安を強めている状況です。カーグ島はイランの原油輸出の大部分を担う積み出し拠点にあたります。

米国債市場では利回りの上昇が続いています。米10年債利回りは9日の欧州時間に4.81%台で推移しました。外為どっとコムは、5%台が視野に入る水準だとしたうえで、米国債市場を「嵐の前の静けさ」と表現しています。10日からは米財務省による国債の買い戻し(バイバック)が拡大して始まる予定で、大規模な社債・国債の発行と重なることで需給が読みにくくなる可能性が指摘されました。

為替市場では、ドル円が日本時間9日20時時点で153円73銭と小じっかりの動きでした。取引レンジは153円10銭〜153円73銭です。8日のニューヨーク市場の終値は153円99銭でしたので、日中はいったん円高方向に振れたあと水準を戻した形になります。金利上昇と原油高がドルを支える一方、原油高と米金利上昇に一服感が出たことで過度なドル買いも抑えられた、というのがフィスコの見立てです。前日に152円89銭まで円高が進んだあとの持ち直し局面が続いています。

日本時間20時に発表された米MBA住宅ローン申請指数は前週比2.7%減と、前回の0.8%増からマイナスに転じました。住宅ローン金利の指標となる長期金利が高い水準にあることが、申請の伸びを抑えている構図です。今夜は主要な米経済指標の発表は少なく、企業決算もクーパー・カンパニーズの第3四半期決算が引け後に予定される程度で、材料としては金利と原油に関心が集まりやすい日程となっています。

注目ポイント

今夜の焦点は、日本時間10日午前2時の米10年債入札です。

国債の入札は、その時点で投資家がどれくらいの利回りなら米国債を買いたいと思っているかを映します。応札が低調で、想定より高い利回りでなければ買い手がつかないという結果になれば、長期金利にはさらに上昇圧力がかかります。逆に需要が堅調であれば、4.8%台という水準に一定の買いが集まっていることの確認になり、金利上昇に歯止めがかかる可能性があります。10日から国債の買い戻しが拡大するタイミングと重なることもあり、注目度は普段より高い入札です。

もう一つは、原油高がどこまで株式市場に響くかという点です。原油高は二つの経路で株式に効いてきます。一つは企業のコスト増、もう一つは物価指標の押し上げを通じた金融政策への影響です。前日8日の値動きは、まさに後者が意識されて売りが広がったものでした。ただし前述のとおり、8日はエネルギー関連や自動車・自動車部品が上昇し、半導体関連も堅調でした。原油高そのものが恩恵となる業種もあるため、市場全体が一方向に動くとは限りません。フィスコは今夜の相場について、中東情勢の悪化が続けば売り先行となる可能性があるとしつつ、AI関連銘柄が下支えになりうるとして「下げ渋り」を見込んでいます。

週後半の日程も意識される局面です。10日には米8月の生産者物価指数(PPI)と欧州中央銀行(ECB)理事会があり、米国ではオラクル、アドビ、コパートの決算が引け後に予定されています。アップルの新製品イベントも日本時間10日午前2時からです。そして11日には米8月CPIが発表されます。原油高が実際の消費者物価にどこまで表れているかを確かめる材料として、今週最大の関心事と言えます。

その先には来週の中央銀行イベントが控えます。15〜16日に米FOMC、17〜18日には日銀の金融政策決定会合です。9月FOMCについて日本経済新聞は、利上げと据え置きの見方が市場で拮抗していると伝えています。11日のCPIの結果次第で、この綱引きがどちらかに傾く可能性があります。

外為どっとコムはこの日のドル円の想定レンジについて、上限を8日の高値である154円42銭、下限を年初来安値の152円10銭としています。ベッセント米財務長官の発言や、公表が待たれる財政健全化策の内容も、金利と為替を動かす材料として挙げられました。なお9日の東京市場では日経平均株価が126円55銭安の6万5,142円78銭と続落しており、日米ともに方向感の出にくい状態が続いています。

ひとこと解説

国債入札がなぜ株式市場のニュースになるのかを整理しておきます。国は財政を賄うために国債を発行し、定期的に入札で投資家に売り出します。このとき、買い手が集まらなければ発行条件を投資家に有利にする、つまり利回りを高くしないと売れません。入札結果が「低調」と伝えられると長期金利が上昇し、それが株式市場に波及します。金利が上がると、企業の借入コストが増えるほか、安全資産である国債の利回りが魅力的になって株式から資金が移りやすくなるためです。とくに、将来の利益成長を期待して買われている成長株は、金利上昇の影響を受けやすいとされます。入札の需要を測る指標としては、応札額を落札額で割った「応札倍率」や、入札で決まった利回りが直前の市場実勢からどれだけずれたか(テール)などが使われます。

**国債の買い戻し(バイバック)**についても触れておきます。これは政府(財務省)が、すでに発行して市場に出回っている国債を買い戻す仕組みです。目的は主に、取引が少なくなって値がつきにくくなった銘柄を市場から回収し、国債市場全体の流動性を保つことにあります。中央銀行が金融政策として行う国債買い入れとは、目的も主体も異なる点に注意が必要です。ただ、市場から国債を吸い上げるという点では需給に影響しうるため、新規発行が大量に予定されている局面では、その両方が金利にどう作用するかが読みにくくなります。

MBA住宅ローン申請指数は、米抵当銀行協会(Mortgage Bankers Association)が毎週水曜に発表する指標で、住宅ローンの申請件数の増減を示します。新規購入と借り換えの両方が含まれ、住宅市場の勢いを比較的早く映す先行指標として見られています。住宅ローン金利は米10年債利回りと連動して動くことが多いため、長期金利が高い局面では申請が減りやすくなります。今回のマイナス転化も、金利水準の高さが背景にあるとみるのが自然な読み方です。週次のデータは振れが大きいので、単週の増減より数週間の流れで見るほうが実態をつかみやすい指標でもあります。

出典