9日の東京株式市場は、日経平均株価が前日比126円55銭(0.19%)安の6万5,142円78銭と小幅に続落しました。前場は原油高を追い風に石油や非鉄金属などの資源関連が買われ、一時500円を超える上昇となる場面もありましたが、後場に入ると買いが続かず、下げに転じて取引を終えています。中東情勢の悪化に伴う原油高と、日銀の利上げペースが加速するとの観測が、投資家心理の重荷になりました。
| 9日の東京市場 | 終値 | 前日比 |
|---|---|---|
| 日経平均株価 | 65,142.78円 | -126.55(-0.19%) |
| TOPIX | 4,046.64 | -3.69(-0.09%) |
| 売買動向(東証プライム) | 値 |
|---|---|
| 売買高 | 23億29万株 |
| 売買代金 | 9兆2,303億円 |
| 値上がり銘柄の比率 | 38.6% |
| 値下がり銘柄の比率 | 59.2% |
| 9日の日経平均の主な水準 | 値 |
|---|---|
| 寄り付き | 65,087.22円(前日比182.11円安) |
| 大引け | 65,142.78円(同126.55円安) |
| 9日の東京市場の為替(12時時点) | 水準 | 備考 |
|---|---|---|
| ドル円 | 153円51銭 | 8日NY終値(153円98銭)比で47銭程度の円高 |
| ユーロ円 | 178円54銭 | — |
| ドル円の東京時間レンジ | 153円25銭〜154円01銭 | — |
| 9日午前に発表された中国8月物価統計 | 結果 | 備考 |
|---|---|---|
| 消費者物価指数(CPI・前年同月比) | +0.8% | 市場予想+0.8% |
| コアCPI(前年同月比) | +1.0% | — |
| 生産者物価指数(PPI・前年同月比) | +3.8% | 上昇幅が拡大 |
何があった?
この日の東京市場は、上下に振れながら結局ほとんど動かなかった一日でした。
寄り付きは前日比182円11銭安の6万5,087円22銭。前日の米国市場でダウ平均が628ドル安と続落し、原油高によるインフレ再燃への警戒が広がっていたことを引き継ぎ、売りが先行しました。
ところが売りが一巡すると、様相が変わります。相場を押し下げた原油高そのものが、今度は買い材料として働きました。石油や資源関連の銘柄に資金が向かい、非鉄金属に分類される電線株にも買いが入って、日経平均は前場中盤にプラス圏を回復。一時は500円を超える上昇となりました。前日の米国市場でフィラデルフィア半導体株指数(SOX)が4営業日続伸していたことも、半導体関連の下支えになっています。
しかし後場に入ると、この買いは続きませんでした。上げ幅を徐々に縮め、終盤にはマイナス圏へ。日本経済新聞によると、一時500円以上上昇したものの買いの勢いが続かず、終値は下げに転じています。財経新聞は、中東情勢の悪化による原油高に加えて、日銀の利上げペース加速観測が投資家心理の重荷になったと伝えました。
もっとも、下げ幅は126円にとどまっています。東証プライム市場では値下がり銘柄が59.2%と全体の6割近くを占め、値上がりは38.6%でしたが、TOPIXの下落率は0.09%と日経平均(0.19%)を下回りました。前日の8日が日経平均1,130円安・TOPIX1.83%安という全面安だったのに比べれば、この日は明らかに落ち着いた動きです。売買代金は9兆2,303億円と、前日の8兆4,774億円から膨らみました。値動きの小ささのわりに商いは活発だったことになります。
内訳を見ると、この日の相場の性格がよく分かります。上昇したのは非鉄金属、石油・石炭製品、鉱業。いずれも原油高・資源高が業績にプラスに働く業種です。下落したのは証券・商品先物取引業、サービス業、小売業でした。個別では、ソフトバンクグループ、フジクラ、イビデン、TDK、レーザーテック、住友電気工業、古河電気工業、村田製作所、ファナック、住友金属鉱山、三菱商事などが上昇。一方でアドバンテスト、ファーストリテイリング、東京エレクトロン、任天堂、KDDIなどが下落しました。日本経済新聞は、アドバンテストの下げが目立ったのは前日に円相場が1ドル=152円台後半まで円高に振れた影響とみられる、と伝えています。
為替市場では、円が底堅く推移しました。Myforexによると、ドル円は9時台に153円25銭まで下押ししたあと153円80銭台まで持ち直しましたが、日経平均の上げ幅縮小に合わせて再び153円40銭台へ。12時時点で153円51銭と、8日のニューヨーク終値(153円98銭)より47銭程度の円高水準でした。東京時間のレンジは153円25銭〜154円01銭です。円買いのきっかけとして伝えられたのは、ベッセント米財務長官の発言でした。円相場への介入に関して「私には明確な見通しがある」と述べたことが、円安を進めにくくする材料と受け止められています。前日に155円を明確に下抜けてからは、155円台を回復できない状態が続いています。
海外の材料としては、中国国家統計局が発表した8月の物価統計がありました。消費者物価指数(CPI)は前年同月比0.8%上昇と市場予想通り、コアCPIは1.0%上昇です。生産者物価指数(PPI)は3.8%上昇と上昇幅が拡大しました。ニッセイ基礎研究所は、CPIについて国際市況の上昇を受けたガソリンや金の値上がり、天候不順による生鮮野菜の値上がりを、PPIについては国際原油・非鉄金属価格の上昇を受けた関連業種の値上がりや、電子回路・VR機器などの需要増を挙げています。ここでも原油が効いている構図です。
注目ポイント
この日の相場でいちばん重かったのは、原油そのものよりも、原油が金融政策に及ぼす影響への警戒でした。
日銀は17〜18日に金融政策決定会合を開きます。市場ではここでの利上げがかなり織り込まれていますが、それだけではありません。日本経済新聞によると、金融市場では日銀の利上げペースが「3カ月に1回」へ加速するとの見方が広がっています。日銀は今年6月の会合で利上げを決めており、9月に再び利上げとなれば約3カ月間隔での追加利上げです。従来の利上げ間隔は平均で半年弱でしたから、ペースの明確な加速を意味します。
この観測を後押ししているのが、まさに原油高です。中東情勢の緊迫化で原油価格が高騰すると、輸入に頼る日本の物価は上振れしやすくなります。物価上振れリスクが意識されれば、中央銀行は金融引き締めに傾きます。加えて、ベッセント米財務長官が日本の金融政策に言及したことで、米国が日銀の利上げを後押ししているとの見方も市場で広がりました。前場に買われた資源関連と、後場に効いてきた利上げ観測は、同じ原油高という一つの出来事の裏表だったことになります。
株式市場にとって、日銀の利上げは単純な悪材料ではありません。金利上昇は銀行など金融業の収益にはプラスに働きますし、利上げが進む背景に賃金と物価の好循環があるなら、それ自体は経済が正常化している証拠でもあります。ただし、借入コストの上昇は企業一般の負担になりますし、金利が上がれば債券の相対的な魅力が高まって株式から資金が抜けやすくなります。さらに、日米金利差が縮まれば円高が進み、輸出企業の採算が悪化します。この日にアドバンテストなど値がさの輸出関連が売られたのは、その連想が働いた面があります。
今週から来週の日程は引き続き詰まっています。10日には米8月生産者物価指数(PPI)とECB(欧州中央銀行)理事会、11日には米8月消費者物価指数(CPI)と日本のメジャーSQ(特別清算指数)算出、そして15〜16日に米FOMC、17〜18日に日銀会合が控えます。11日のCPIは、原油高がどこまで実際の物価に表れているかを確かめる材料として注目されやすい局面です。メジャーSQに向けては、先物とオプションの精算に絡んだ売買で相場の振れが大きくなることがあります。
日経平均は6万5,000円台での小競り合いが続いています。9月に入ってからは1,378円高、1,130円安、126円安と、日々の値幅そのものは大きいものの、水準としてはほぼ元の場所に戻っています。方向感を決める材料が、来週のFOMCと日銀会合まで持ち越されている状態と言えそうです。
ひとこと解説
日経平均とTOPIXの下落率が違うのはなぜかを整理しておきます。この日は日経平均が0.19%安、TOPIXが0.09%安と、TOPIXのほうが下げが小さくなりました。二つの指数は計算方法が異なります。日経平均は225銘柄の株価を単純に平均する方式(株価平均型)に近く、株価水準の高い「値がさ株」の影響を強く受けます。一方TOPIXは東証プライム市場のほぼ全銘柄を、時価総額(株価×発行済み株式数)の大きさで重み付けして計算します。この日はファーストリテイリングや東京エレクトロン、アドバンテストといった値がさの銘柄が下げた一方、非鉄金属や石油など株価水準がそれほど高くない業種が上昇しました。値がさ株の下げは日経平均に強く効き、TOPIXにはそれほど効かない——結果として下落率に差が出たわけです。二つの指数の差を見ると、「市場全体が下がったのか、一部の大型株が下げただけなのか」を見分ける手がかりになります。
「原油高が資源株の買い材料になる」構図についても触れておきます。原油高は経済全体としてはコスト増ですが、原油や金属を掘り出したり精製したりして売る側の企業にとっては、売る製品の値段が上がることを意味します。この日に石油・石炭製品や鉱業、非鉄金属が上昇したのはこのためです。ただし業種内でも事情は分かれます。原油を輸入して精製する会社は、在庫の評価益が出る一方で仕入れコストも上がります。市場が「原油高=石油株買い」と単純に反応する局面は多いものの、実際の業績への影響は企業ごとに異なる点は押さえておきたいところです。なお、この日に買われた電線株が非鉄金属に分類されるのは、電線の主原料が銅であるためで、銅相場の上昇が連想されやすい位置にあります。
PPI(生産者物価指数)とCPI(消費者物価指数)の違いも知っておくと役に立ちます。CPIは消費者が買う商品やサービスの価格を測る指標で、家計が実感する物価に近いものです。PPIは企業が出荷する段階の価格、つまり生産者側の物価を測ります。原材料やエネルギーの値上がりは、まずPPIに表れ、企業がそのコストを製品価格に転嫁するにつれて遅れてCPIに波及するのが一般的な流れです。中国の8月統計でPPIの上昇幅が拡大したことは、国際的な原油・非鉄金属の値上がりが生産段階の価格に効いてきていることを示しています。10日に発表される米国のPPIと11日のCPIをセットで見る意味も、ここにあります。生産段階でどれだけ圧力がたまっているかを見れば、消費者物価の先行きを推し量るヒントになるためです。
出典
- 日経平均大引け:前日比126.55円安の65142.78円 - 財経新聞
- 日経平均株価終値126円安 原油高警戒、電線株買いは支え - 日本経済新聞
- 日経平均は続落、買い先行もマイナス圏に転落 - 財経新聞
- 【株式市場】日経平均は126円安で続落、原油高と日銀利上げ観測が重荷、電線株は堅調 - 日本インタビュ新聞
- 東証続落、終値126円安 米原油先物価格上昇が重荷 - 共同通信
- 東京外国為替市場概況・12時 ドル円、戻り限定的 - Myforex
- 東京外国為替市場概況・8時 ドル円、売り先行 - Myforex
- ドル円午前の為替予想、NY勢復帰も155円回復ならず 米財務長官の発言が重しに - 外為どっとコム
- 日銀利上げペース、市場予想は「3カ月に1回」へ加速 - 日本経済新聞
- 中国の物価関連統計(26年8月)~国際商品高を受け、CPIは持ち直し、PPIは上昇幅が拡大 - ニッセイ基礎研究所
- 【指標】8月中国CPI(前年比)+0.8%、予想+0.8%ほか - Myforex
- 日経平均大引け:前日比1130.51円安の65269.33円(8日) - 財経新聞