7日の米国市場はレーバーデー(労働者の日)で株式・債券とも終日休場となり、今朝は米国株の終値がありません。手掛かりの乏しい一日でしたが、為替市場では円が大きく動き、一時1ドル=154円台と2月下旬以来およそ半年ぶりの円高・ドル安水準をつけました。東京市場は日経平均株価が前週末比1,378円90銭高と大幅に続伸し、4営業日ぶりに6万6,000円台を回復しています。

7日の米国市場 状況
株式・債券市場 レーバーデーのため終日休場(8日から取引再開)
7日の東京市場 終値 前週末比
日経平均株価 66,399.84円 +1,378.90(+2.12%)
TOPIX 4,125.80 +22.57(+0.55%)
7日の欧州市場(終値) 終値 前営業日比
英FTSE100種総合株価指数 10,822.13 -8.96
ドイツ株価指数(DAX) 26,006.53 -39.87
7日の為替(欧州市場終盤) 水準 7日15時時点比
ドル円 154円35銭 1円45銭の円高
ユーロ円 179円44銭 1円51銭の円高
ユーロドル 1.1625ドル +0.0011ドル
7日の欧州金利 水準 前営業日比
英10年物国債利回り 5.172% +0.039%
独10年物国債利回り 3.384% +0.045%
8日の主な予定(日本時間) 内容 市場予想(前回)
8時30分 日本7月毎月勤労統計・現金給与総額 3.8%(4.0%)
8時30分 日本7月実質賃金総額 1.9%(2.2%)
8時50分 日本4-6月期GDP改定値(年率) +1.8%(速報+1.1%)
8時50分 日本4-6月期GDPデフレーター 2.6%(2.6%)
8時50分 日本7月国際収支・経常収支 2兆8,490億円(-923億円)
14時00分 日本8月景気ウォッチャー調査・現状判断 46.2(45.7)
14時00分 日本8月景気ウォッチャー調査・先行き判断 45.8
未定 中国8月貿易収支 1,233.0億ドル(1,123.4億ドル)
夜間 米7月消費者信用残高、NY連銀8月消費者期待調査

何があった?

7日の主役は株ではなく為替でした。

円は7日の取引を通じてじりじりと買われ、夕方以降に上昇ペースが速まって一時1ドル=154円台をつけました。2月下旬以来、およそ半年ぶりの円高・ドル安水準です。欧州市場の終盤には154円35銭前後と、7日15時時点から1円45銭の円高で推移しました。1日で2円近く動いた計算になります。

背景として、報道では主に3つが挙げられています。第一に、日銀の利上げ観測です。17〜18日の金融政策決定会合で利上げが実施されるとの見方が強まり、日米の金利差が縮まるとの思惑が円買いにつながりました。第二に、ベッセント米財務長官が先週、日本政府に対して「リフレ政策はやめるべきだ」と伝えたと報じられたことです。日米双方の当局が円安の是正に前向きだと受け止められ、円を売り持ちにしておくことのリスクが意識されました。第三に、「有事のドル買い」の後退です。日本経済新聞は、イラン外務省報道官がホルムズ海峡の航行をめぐる交渉について「最終段階にあり、数日内に合意する見込み」と述べたことで、中東情勢の緊張緩和への期待が広がったと伝えています。

見逃せないのは、水準そのものが持つ意味です。朝日新聞によると、これまでの政府・日銀による円買い介入では1ドル=155円台が「壁」として意識されてきました。今回はその水準を下抜けたことになります。市場では「7月末からの為替介入もはね返した155円の壁を突破したことで、買い戻しが進めにくくなった」との指摘が出ていました。テクニカルな節目を割ったことで、円安方向に戻りにくくなった面があるということです。

一方の株式市場では、7日の東京市場が大きく上昇しました。日経平均は前週末比1,378円90銭(2.12%)高の6万6,399円84銭と大幅に続伸し、4営業日ぶりに6万6,000円台を回復しています。前場後半には一時1,647円(2.53%)高の6万6,668円71銭まで買われる場面もありました。売買高は約20億2,000万株です。

けん引したのは半導体関連でした。前週末4日にフィラデルフィア半導体株指数(SOX)が3.37%上昇していたことに加え、米マイクロン・テクノロジーが先端メモリーを増産するとの報道が伝わり、AI(人工知能)関連の需要が続くとの見方が買いを呼びました。キオクシアホールディングスが9.31%高、レーザーテックが7.26%高となり、ソフトバンクグループ、アドバンテスト、東京エレクトロン、キオクシアHDの4銘柄だけで日経平均を約1,212円押し上げたと伝えられています。

ただし、市場全体が強かったわけではありません。TOPIXの上昇率は0.55%にとどまり、東証プライム市場では値下がり銘柄が850を超えて全体の5割超を占めました。業種別では海運、ガラス・土石製品、電気機器、非鉄金属など17業種が上昇した一方、水産・農林、医薬品、銀行、サービス業など16業種が下落しています。日経平均の1,378円高という数字は、値がさの半導体株が指数を押し上げた結果という側面が強く、市場の広がりを伴った上昇ではなかったことは押さえておきたいところです。

欧州株はまちまちでした。英FTSE100は8.96ポイント安の10,822.13、ドイツDAXは39.87ポイント安の26,006.53と小幅に反落しています。CNBCによると、フランスのCAC40は0.33%高、イタリアのFTSE MIBは0.25%高と上昇し、セクターでは石油・ガスが1.29%高と最も堅調だった一方、ヘルスケアは0.94%安、金融サービスは0.91%安でした。原油相場の上昇がエネルギー株を支え、後期臨床試験で心血管イベントの抑制効果を示せなかったと発表したノバルティスの下落がヘルスケアの重荷になった構図です。欧州債は売られ、英10年債利回りが5.172%、独10年債利回りが3.384%へそれぞれ上昇しました。

注目ポイント

8日の東京市場で意識されやすいのは、円高が企業業績の見方にどう跳ね返るかです。

一般に円高は、輸出企業や海外で稼ぐ企業にとって円換算の売上高・利益を目減りさせる方向に働きます。逆に、原材料やエネルギーを輸入する企業、内需中心の企業にとってはコスト面の負担が軽くなる方向に働きます。7日の東京市場は円が154円台に入る前の段階で半導体主導の上昇となっていたため、円高をまだ十分には織り込んでいない可能性があります。値がさの半導体株と、為替の影響を受けやすい輸出関連や内需株とで、物色の方向が分かれるかどうかが一つの見どころです。

国内では朝方に指標の発表が並びます。8時30分に7月の毎月勤労統計が発表され、現金給与総額は前年同月比3.8%増(前回4.0%増)、物価変動を除いた実質賃金は1.9%増(同2.2%増)が見込まれています。8時50分には4-6月期のGDP改定値が発表され、年率換算で前期比1.8%増と、8月に公表された速報値の1.1%増から上方修正されるとの予想です。同時刻に7月の国際収支も発表され、経常収支は2兆8,490億円の黒字(前回923億円の赤字)が見込まれています。14時には8月の景気ウォッチャー調査があり、現状判断が46.2(前回45.7)、先行き判断が45.8と予想されています。

これらは日銀の政策判断とも結びつく指標です。実質賃金がプラスを保ち、GDPが上方修正されるなら、17〜18日の会合で利上げに動きやすい環境という解釈につながりやすくなります。逆に賃金や景況感が想定より弱ければ、足元で強まっている利上げ観測がいったん和らぐ可能性もあります。為替が敏感に反応しやすい局面である点は意識しておきたいところです。

海外では中国の8月貿易収支が発表されます。市場予想は1,233.0億ドルの黒字(前回1,123.4億ドル)です。8日夜には米国市場が休場明けの取引を再開します。

今週後半の日程も確認しておきます。9日に中国の8月消費者物価指数・生産者物価指数、10日にECB(欧州中央銀行)理事会と米8月生産者物価指数、オラクル・アドビの決算、そして11日に米8月消費者物価指数(CPI)と日本のメジャーSQ(特別清算指数)算出が控えます。翌週には15〜16日の米FOMC(連邦公開市場委員会)、17〜18日の日銀金融政策決定会合が並びます。日米の金融政策イベントを目前にした週であり、指標一つひとつへの反応が大きくなりやすい地合いです。

ひとこと解説

「有事のドル買い」とは何かを整理しておきます。戦争や地政学的な緊張が高まると、投資家はリスクの高い資産を減らし、安全と考えられる資産に資金を移します。このとき買われやすい通貨の代表が米ドルです。米国債という世界最大級の安全資産の存在、貿易や金融取引の決済で米ドルが広く使われていること、有事の際にドルの現金需要が高まりやすいことなどが理由とされます。裏を返すと、緊張が和らげば、その分だけドルを持っておく理由が減り、買われていたドルが売り戻されます。7日に円高が進んだ一因として中東情勢の緊張緩和期待が挙げられているのは、この巻き戻しが起きたためです。なお、円もかつては有事に買われる通貨とされてきましたが、日米金利差が大きく開いた近年はその性質が弱まっているとの見方が一般的です。

GDPの「改定値」(2次速報)がなぜ出るのかについても触れておきます。GDPはまず四半期終了後およそ1カ月半で速報値(1次速報)が公表されますが、この時点では企業の設備投資などの一部データが揃っていません。その後、財務省の法人企業統計をはじめとする追加データが利用できるようになった段階で計算し直したものが改定値です。今回のように速報値から上方修正・下方修正されることは珍しくありません。改定値は「新しい出来事」ではなく「同じ期間の測り直し」なので、市場の反応は速報値ほど大きくならないのが通常です。ただし修正幅が予想と大きく食い違えば、景気の実勢に対する見方が変わり、金融政策の見通しにも影響します。

指数の上昇率と「市場の広がり」の違いも知っておくと役に立ちます。7日の日経平均は2.12%上昇しましたが、TOPIXは0.55%高にとどまり、東証プライムでは値下がり銘柄のほうが多い状態でした。日経平均は225銘柄の株価を単純に足し合わせて調整した指数のため、株価の高い「値がさ株」の値動きが指数全体に強く効きます。一方、TOPIXは時価総額を加重して算出するうえ、対象銘柄数もはるかに多いため、市場全体の姿を映しやすい指数です。両者が大きく乖離しているときは、「一部の銘柄が指数を押し上げただけで、多くの銘柄は下がっている」という状態を疑ってみると、相場の実像をつかみやすくなります。

出典