8日の東京株式市場は、日経平均株価が前日比1,130円51銭(1.70%)安の6万5,269円33銭と、3日ぶりに大幅反落しました。外国為替市場で円が一時1ドル=152円台後半と約半年ぶりの円高・ドル安水準まで急伸し、自動車や電子部品など輸出関連株に売りが広がっています。前日に1,378円高となった反動の利益確定売りも重なり、大引けにかけて下げ幅を広げる展開となりました。

8日の東京市場 終値 前日比
日経平均株価 65,269.33円 -1,130.51(-1.70%)
TOPIX 4,050.33 -75.47(-1.83%)
売買動向(東証プライム)
売買高 約21億株
売買代金 8兆4,774億円
値上がり銘柄の比率 23.2%
値下がり銘柄の比率 74.5%
8日の為替(東京市場) 水準
ドル円(一時) 152円台後半(2月中旬以来の円高水準)
ドル円(正午時点) 153円34〜36銭(前日17時比 2円20銭の円高)
8日午前に発表された国内指標 結果 前回・備考
4-6月期GDP改定値(実質・年率) +1.4% 速報値+1.1%から上方修正
4-6月期GDP改定値(実質・前期比) +0.4% 3四半期連続のプラス
7月 実質賃金 +2.4% 7カ月連続のプラス
7月 現金給与総額 43万6,401円(+4.7%) 3%以上の伸びは6カ月連続
7月 経常収支 2兆9,889億円の黒字(前年同月比+15.6%) 2カ月ぶりの黒字
8月 景気ウォッチャー調査・現状判断DI 46.4 前月比+0.7、4カ月連続上昇
8月 景気ウォッチャー調査・先行き判断DI 48.3 前月比+2.5、5カ月連続上昇

何があった?

主役は前日に続いて為替でした。

円は8日の東京市場でも買いが止まらず、一時1ドル=152円台後半と、2月中旬以来およそ半年ぶりの円高・ドル安水準をつけました。時事通信によると、正午時点では153円34〜36銭と、前日17時時点から2円20銭の円高です。7日に155円の節目を明確に上抜けたことで円買いの勢いが増し、日本経済新聞は主要通貨に対して「全方位的な円買い圧力」がかかったと伝えています。9月に入ってからの6営業日で、対ドルの高値と安値の値幅は7円を超えました。

買い材料が重なった格好です。日銀の利上げ加速観測に加え、日米の通貨当局がともに円安の是正に前向きだとの受け止めが広がり、これまで積み上がっていた円の売り持ちが巻き戻されました。片山財務相は円高進行について「対応方針は一切変わらない」と述べています。

株式市場はこの円高を受けて売りに押されました。日経平均は前日比556円15銭安の6万5,843円69銭で寄り付き、前日の大幅高の反動で利益確定売りが先行しました。その後いったんプラス圏を回復する場面もありましたが、後場に円が152円台まで急伸すると売り圧力が強まり、大引けにかけて下げ幅を広げて安値引けとなっています。中東情勢をめぐる不透明感も警戒され、8日夜に休場明けとなる米国市場の動向を見極めたいとして、積極的な売買は手控えられました。

下げは市場全体に及びました。東証プライム市場では値上がり銘柄が23.2%にとどまり、値下がり銘柄が74.5%と全体の4分の3を占めています。TOPIXの下落率は1.83%と、日経平均の1.70%を上回りました。前日は日経平均が2.12%高だったのに対してTOPIXは0.55%高にとどまり、値がさの半導体株が指数を押し上げただけという構図でしたが、この日は逆に全体が売られています。

業種別では、情報・通信業、石油・石炭製品、鉱業が上昇した一方、ガラス・土石製品、輸送用機器、電気機器が下落しました。個別ではソフトバンクグループ、ニトリホールディングス、KDDI、出光興産などが上昇し、TDK、ファーストリテイリング、キオクシアホールディングス、トヨタ自動車、ホンダ、ソニーグループ、ファナックなどが下落しています。日本インタビュ新聞によると、上昇したソフトバンクグループ1銘柄で日経平均を272円74銭押し上げており、これがなければ下げ幅はさらに大きかった計算になります。前日に9%高となったキオクシアHDが反落したことも象徴的で、円高局面では前日までの物色の中心がそのまま売りの対象になりやすいことがうかがえます。

注目ポイント

見逃せないのは、この日の朝に発表された国内指標がおおむね良好だった点です。

内閣府が発表した4-6月期のGDP改定値は、実質で前期比0.4%増、年率換算で1.4%増となり、8月公表の速報値(年率1.1%増)から上方修正されました。設備投資の下振れが縮小したことが主因で、3四半期連続のプラス成長を維持しています。ただし市場予想は年率1.8%増だったため、上方修正ではあるものの予想には届かなかった形です。

厚生労働省が発表した7月の毎月勤労統計では、物価変動を除いた実質賃金が前年同月比2.4%増と7カ月連続のプラスになりました。現金給与総額は1人あたり43万6,401円で4.7%増、3%以上の伸びは6カ月連続です。夏季賞与の伸びが寄与しました。財務省が発表した7月の経常収支は2兆9,889億円の黒字(前年同月比15.6%増)で、2カ月ぶりの黒字です。内訳では貿易収支が3,999億円の赤字でしたが、第一次所得収支が4兆2,896億円の黒字と全体を支えました。

内閣府の8月の景気ウォッチャー調査では、現状判断DIが46.4と前月から0.7ポイント上昇して4カ月連続のプラス、先行き判断DIも48.3と2.5ポイント上昇して5カ月連続のプラスとなり、基調判断は「持ち直しの動きがみられる」へ上方修正されました。

ここに、この日の相場を読み解く鍵があります。景気指標が良好であること自体は企業業績にとってプラス材料ですが、同時に「日銀が利上げしやすい環境が整った」という解釈にもつながります。利上げ観測は円高を招き、円高は輸出企業の円換算の売上高・利益を目減りさせます。つまり良い経済指標が、為替を通じて株式市場には逆風として働く局面だったということです。17〜18日の日銀金融政策決定会合を控えるなか、今後も指標の強弱が為替経由で株価に跳ね返る構図は続きやすいと考えられます。

今週後半の日程も確認しておきます。9日には中国の8月消費者物価指数・生産者物価指数、10日にはECB(欧州中央銀行)理事会と米8月生産者物価指数、オラクル・アドビの決算、11日には米8月消費者物価指数(CPI)と日本のメジャーSQ(特別清算指数)算出が控えます。翌週には15〜16日の米FOMC(連邦公開市場委員会)、17〜18日の日銀金融政策決定会合が並びます。8日夜には米国市場がレーバーデーの休場明けで取引を再開するため、7日までの海外の動きをまとめて織り込む展開になる可能性があります。

ひとこと解説

「安値引け」とは何かを整理しておきます。その日の取引時間中の最も安い水準、あるいはそれに近い水準で終値がついた状態を指します。逆に高い水準で終わることを「高値引け」と呼びます。一般に、大引けにかけて下げ幅を広げて安値引けとなった日は、その日のうちに売りが出尽くさなかった可能性があるとみなされ、翌日以降の地合いを慎重に見る材料の一つとして扱われます。もっとも、これはあくまで経験則であり、翌日の値動きを保証するものではありません。

「値上がり・値下がり銘柄数」を見る意味についても触れておきます。指数の騰落率だけでは、市場全体が動いたのか、一部の銘柄が指数を動かしただけなのかが分かりません。この日は東証プライムで値下がりが74.5%を占め、下げが広範囲に及んだことが数字から確認できます。前日7日は日経平均が2.12%高だったにもかかわらず値下がり銘柄が5割を超えていました。指数の数字と銘柄数の内訳を合わせて見ることで、相場の実像に近づけます。

円高が輸出企業の業績に効く仕組みも押さえておきましょう。海外で1万ドルの製品を売る企業を考えます。1ドル=155円なら円換算の売上高は155万円ですが、1ドル=152円になると152万円に減ります。売った数量は同じでも、円に直したときの金額が減るわけです。多くの輸出企業は決算の前提となる想定為替レートを公表しており、実際の為替がその前提より円高に振れると、期中の業績予想が下方に修正される可能性が意識されます。この日、輸送用機器(自動車など)や電気機器が売られたのは、こうした計算が働いたためです。一方で、原材料やエネルギーを輸入する企業や内需中心の企業にとっては、円高はコスト面の負担が軽くなる方向に働きます。この日に情報・通信業が上昇したことには、そうした側面もあると考えられます。

出典