4日の米国市場は主要3指数がそろって反落しました。朝方に発表された8月の雇用統計で非農業部門雇用者数が前月比16万2,000人増と市場予想を大きく上回り、9月の利上げ観測が再燃したためです。米10年債利回りは一時4.81%まで上昇し、政策金利の影響を受けやすい2年債利回りは2025年1月以来の高水準をつける場面がありました。一方、東京市場は同じ4日に日経平均が806円46銭高と5営業日ぶりに反発しています。7日はレーバーデーで米国市場が休場となるため、東京市場は手掛かりに乏しい展開になりやすい一日です。

4日の米国市場 終値 前日比
ダウ工業株30種平均 53,414.25ドル -271.86(-0.51%)
S&P500種株価指数 7,718.60 -29.11(-0.38%)
ナスダック総合指数 26,506.99 -77.07(-0.29%)
8月の米雇用統計 結果 市場予想
非農業部門雇用者数 +16.2万人 +5.3万人
失業率 4.1% 4.1%
4日の金利・為替 水準 前日比
米10年物国債利回り 一時4.81% +0.05%
米2年物国債利回り 2025年1月以来の高水準をつける場面 上昇
ドル円(NY市場) 高値156円75銭 — 安値155円34銭 上下に振れる展開
ユーロドル 1.1627ドル — 1.1585ドル ドル高方向
ユーロ円 181円64銭 — 180円23銭 — 181円43銭 往って来い
4日の東京市場(前営業日) 終値 前日比
日経平均株価 65,020.94円 +806.46(+1.26%、5営業日ぶり反発)
TOPIX 4,103.23 +1.19(+0.03%)
7日の主な予定(日本時間) 内容 市場予想
14時00分 日本7月景気動向指数・先行CI 118.0(前回116.5)
14時00分 日本7月景気動向指数・一致指数 120.3(前回118.5)
15時00分 ドイツ7月鉱工業生産 +0.2%
18時00分 ユーロ圏4-6月期GDP改定値 +1.0%(前回+1.0%)
未定 中国8月外貨準備高 3兆4,300億ドル
終日 米国・カナダ市場は休場(レーバーデー)

何があった?

4日の相場を動かしたのは、8月の米雇用統計でした。

非農業部門雇用者数は前月比16万2,000人増と、市場予想の5万3,000人増を大きく上回り、3月以来の大きな伸びとなりました。失業率は4.1%と市場予想通りでした。内訳では飲食店が5万9,000人増、地方政府の教育部門が4万2,000人増と伸びた一方、情報産業は2万3,000人の減少となっています。7月分が2万3,000人の減少と5カ月ぶりのマイナスだっただけに、労働市場の減速懸念がいったん後退した形です。

問題は、この数字が金融政策の見通しを反対方向に押した点でした。米連邦準備制度理事会(FRB)は現在、インフレ再燃を警戒して利上げの可能性を排除していません。雇用が想定以上に強ければ、利上げに踏み切る余地も広がります。CMEグループのFedWatchによると、9月15〜16日のFOMC(連邦公開市場委員会)で0.25%引き上げられる確率は、前日の49.4%から60.2%へ上昇しました(財経新聞集計)。日本経済新聞は4日夕時点で58%程度、前日は49%程度と伝えており、算出時点によって幅はありますが、5割前後から6割程度へ切り上がったという方向感は共通しています。

金利はこれを素直に織り込みました。米10年債利回りは前日比0.05%高い4.81%を一時つけ、政策金利により敏感な2年債利回りは2025年1月以来の高い水準をつける場面がありました。金利上昇は株式の評価にとって逆風となり、主要3指数はそろって小幅ながら下落しています。もっとも下落率はダウが0.51%、S&P500が0.38%、ナスダックが0.29%と限定的で、パニック的な売りにはなっていません。

前日3日には、ウォラーFRB理事が「インフレの鈍化が続くなら9月は据え置きを支持する」と述べたことで利上げ観測が後退し、3指数がそろって1%超上昇していました。わずか1営業日で見方が振り戻された格好で、市場が指標のたびに大きく揺れやすい状態にあることがわかります。

為替市場も方向感が定まりませんでした。ドル円は雇用統計を受けたドル買いで一時156円75銭まで上昇しましたが、その後は根強い日銀の利上げ観測と、円安是正に向けた当局の対応への警戒感から円が買い戻され、155円34銭まで押し戻されています。日米それぞれの利上げ観測が逆向きに効いており、綱引きの状態です。

一方、東京市場は4日に日経平均が806円46銭高の6万5,020円94銭と5営業日ぶりに反発しました。前日の米国株高と長期金利の上昇一服を受け、AI・半導体関連株が指数を押し上げています。ただしTOPIXは1.19ポイント高の4,103.23とほぼ横ばいにとどまりました。急速な円高進行で自動車など輸出関連が敬遠され、値上がり銘柄は全体の半数程度にとどまったと伝えられています。日経平均の大幅高が市場全体の強さを表していたわけではない点は、押さえておきたいところです。

注目ポイント

7日の東京市場は、米国がレーバーデーで休場になるため、海外からの新しい材料が入りにくい一日になります。米国市場が休みの日は日本株の売買代金も細りやすく、値動きが一方向に振れやすい面があります。

材料としては、4日の米雇用統計をどう消化するかが軸になります。米金利上昇は一般に株式の重荷になりますが、金利上昇はドル高・円安方向にも働きやすく、輸出関連にとってはプラスに作用する面もあります。4日の東京市場では円高が輸出関連の重荷になっていただけに、為替の水準がどちらに振れるかで物色の中身が変わりやすい局面です。

国内では14時に7月の景気動向指数が発表されます。先行CIの市場予想は118.0(前回116.5)、一致指数は120.3(前回118.5)と、いずれも改善が見込まれています。

今週のスケジュールを整理しておくと、8日に4-6月期GDP改定値と中国の8月貿易収支、9日に中国の8月消費者物価指数・生産者物価指数、10日にECB(欧州中央銀行)理事会とラガルド総裁の記者会見、米8月生産者物価指数、そして11日に米8月消費者物価指数(CPI)が控えます。11日は日本のメジャーSQ(先物・オプションの特別清算指数)算出日でもあります。

最大の焦点は11日の米CPIです。ウォラー理事が判断材料として名指ししたのがこの指標であり、翌週15〜16日のFOMCに向けた織り込みを決める位置づけになっています。さらにその翌日、17〜18日には日銀の金融政策決定会合が開かれます。日米の金融政策イベントが1週間のうちに並ぶ構図で、その手前にあたる今週は様子見ムードが強まりやすいとの見方が出ています。ダイヤモンド・ザイは今週の日経平均の予想レンジを6万3,500〜6万6,500円としています。

ひとこと解説

「良い経済指標」で株が下がる理由を整理しておきます。雇用が想定以上に増えたのは経済にとって前向きな数字ですが、4日の米国株は下落しました。これは、株価が「今の景気」だけでなく「将来の金利」を織り込んで動いているためです。景気が強すぎるとインフレ圧力が残り、中央銀行が金利を引き上げる可能性が高まります。金利が上がると、企業が将来生み出す利益を現在価値に割り引く際の率が上がり、理論上の株価は下がります。加えて、預金や債券の利回りが上がれば、リスクを取って株式に投資する動機も相対的に弱まります。「グッドニュース・イズ・バッドニュース」と呼ばれるこの反応は、中央銀行が引き締め方向にある局面で繰り返し現れます。逆に、景気減速が明確になれば「利下げが近い」という連想で株が買われることもあり、指標の良し悪しと株価の方向は必ずしも一致しません。

メジャーSQとは何かについても触れておきます。SQは「Special Quotation(特別清算指数)」の略で、日経平均先物やオプションといった派生商品の最終的な決済価格を決めるための数値です。毎月第2金曜日に算出されますが、3月・6月・9月・12月は先物とオプションの両方の期限が重なるため「メジャーSQ」と呼ばれ、関係する取引金額が大きくなります。今週は11日がこれにあたります。SQに向けては、ポジションの整理に伴う売買が現物株にも波及し、値動きが荒くなったり売買代金が膨らんだりすることがあります。企業の業績とは関係のない需給要因で指数が動く日がある、と知っておくと相場を読み違えにくくなります。

レーバーデーが相場の節目とされる理由も付け加えておきます。米国のレーバーデーは9月の第1月曜日で、事実上の夏休みの終わりを意味します。市場関係者が本格的に持ち場へ戻り、9月以降の運用方針を組み直す時期にあたるため、この前後で相場の流れが変わりやすいと言われてきました。もちろんこれは経験則であって、必ず何かが起きるという性質のものではありません。ただ、今年は直後の週に米CPI、その次の週に日米の金融政策決定会合が並んでおり、材料の面でも節目になりやすい日程ではあります。

出典