7日の東京株式市場で日経平均株価は大幅に続伸し、前週末比1378円90銭(2.12%)高の6万6399円84銭で取引を終えました。米マイクロン・テクノロジーが先端メモリーを増産すると伝わったことでAI関連産業への期待が強まり、値がさの半導体関連株に買いが集中しました。ただし東証プライムでは値下がり銘柄が全体の56.9%を占めており、指数の大幅高と市場全体の温度感には差がありました。

7日の東京市場 終値 前週末比
日経平均株価 66,399.84円 +1,378.90(+2.12%、続伸)
TOPIX 4,125.80 +22.57(+0.55%)
日経平均の一日の推移 水準
寄り付き 65,600.42円(+579.48)
前引け 66,460.11円(+1,439.17)
上げ幅 一時1,600円超
終値 66,399.84円(+1,378.90)
売買動向(東証プライム) 水準
売買高 20億2,987万株
売買代金 8兆377億円
値上がり銘柄の比率 40.7%
値下がり銘柄の比率 56.9%
業種別騰落率(上位) 騰落率
海運業 +3.06%
ガラス・土石製品 +2.49%
電気機器 +2.14%
非鉄金属 +2.01%
情報・通信業 +1.94%
業種別騰落率(下位) 騰落率
水産・農林業 -1.36%
医薬品 -1.27%
銀行業 -1.17%
サービス業 -1.05%
その他製品 -1.02%
前週末4日の米半導体株 終値 前日比
フィラデルフィア半導体株指数(SOX) 11,735.262 +383.133(+3.37%)

何があった?

7日の相場を動かしたのは、米マイクロン・テクノロジーが先端メモリーを増産すると伝えられたことでした。生成AIの計算処理に欠かせない広帯域メモリー(HBM)をはじめとする先端メモリーは世界的に品薄の状態が続いており、増産の報道は「AI関連産業の成長がまだ続く」という見方を補強する材料として受け止められました。日本経済新聞は投資家の関心を「雇用統計よりマイクロン」と表現しています。

伏線は前週末の米国市場にありました。4日の米国株は主要3指数がそろって反落しましたが、半導体株だけは別で、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は前日比3.37%高の11,735.262と大きく上昇していました。指数全体の下落と半導体セクターの上昇が同居していたわけで、東京市場は後者に反応した形です。

寄り付きから買いが先行し、日経平均は579円48銭高の6万5600円42銭でスタートしました。その後も買いが広がって上げ幅は一時1,600円を超え、前引けは1,439円17銭高の6万6460円11銭。後場は高値圏でもみ合い、終値は1,378円90銭高の6万6399円84銭でした。6万6000円台を回復したのは9月1日以来、4営業日ぶりとなります。

指数を押し上げたのは、ごく一部の値がさ株でした。前引け時点の集計では、アドバンテストの寄与度が386円17銭、ソフトバンクグループが371円69銭と、この2銘柄だけで日経平均を約757円押し上げていました。ほかに東京エレクトロン、イビデン、キオクシアホールディングス、レーザーテック、TDK、ディスコといった半導体・電子部品関連が買われ、キオクシアホールディングスは9%高となりました。

半導体以外では、原油市況の上昇を背景に海運や非鉄金属といった市況関連にも資金が向かいました。原油相場は米国とイランの応酬が再燃したことで供給不安が意識され、WTI原油先物は91ドル台と前週に約9%上昇しており、この流れが業種別騰落率で海運業を上昇率トップに押し上げています。ガラス・土石製品、非鉄金属が続いたのも同じ市況関連の文脈です。

一方、売られた側もはっきりしていました。水産・農林業、医薬品、銀行業、サービス業、その他製品が下落率の上位に並び、個別ではソニーグループ、コナミグループ、バンダイナムコホールディングス、中外製薬、リクルートホールディングスなどが軟調でした。銀行株の下落は、この日の相場が「金利上昇を追い風にする銘柄」ではなく「AI関連の成長期待」で動いていたことを示しています。

為替市場では、ドル円が東京時間に155円80銭から156円28銭のレンジで推移し、156円台を維持しました。米国市場がレーバーデーで休場だったため新規の手掛かりに乏しく、方向感の出にくい一日でした。株式市場についても、米国が休場で海外投資家の参加が細るなかでの上昇だった点は割り引いて見る必要があります。

注目ポイント

この日の相場で最も特徴的だったのは、日経平均が2.12%上昇したにもかかわらず、東証プライムでは値下がり銘柄が56.9%と過半を占めたことです。TOPIXの上昇率も0.55%にとどまりました。上昇が半導体を中心とする一部の大型株に極端に偏っていたことになります。売買代金は8兆377億円と、前週末4日の8兆3,282億円をやや下回りました。

今週は日米の重要イベントが続きます。8日に日本の4-6月期GDP改定値と中国の8月貿易収支、9日に中国の8月消費者物価指数・生産者物価指数、10日にECB(欧州中央銀行)理事会とラガルド総裁の記者会見および米8月生産者物価指数、そして11日に米8月消費者物価指数(CPI)が発表されます。11日は日本のメジャーSQ(先物・オプションの特別清算指数)算出日にもあたります。

最大の焦点は11日の米CPIです。前週末に発表された8月の米雇用統計が市場予想を大きく上回ったことで9月の利上げ観測が再燃しており、CPIの結果は15〜16日のFOMC(連邦公開市場委員会)に向けた織り込みを大きく左右します。さらに17〜18日には日銀の金融政策決定会合が控えます。この日の相場は金融政策とは別の軸で動きましたが、週の後半に近づくほど金利をめぐる材料の比重が増すことになります。

ひとこと解説

**SOX指数(フィラデルフィア半導体株指数)**について整理しておきます。米国の主要な半導体関連企業で構成される株価指数で、正式にはPHLX Semiconductor Sector Indexといいます。日本の半導体関連株はこの指数の動きに連動しやすいため、東京市場の朝の相場観を作る際に真っ先に確認される指標のひとつです。4日の米国市場ではダウやS&P500が下落する一方でSOXは3.37%上昇しており、この日の東京市場が「米国株安」ではなく「米半導体株高」に反応したのは、この乖離があったためです。指数全体の方向だけを見ていると相場の反応を読み違えることがある、という一例です。

HBM(広帯域メモリー)とAI相場のつながりにも触れておきます。HBMはDRAM(データを一時的に記憶する半導体メモリー)を何層にも積み重ねて、データのやり取りの速度を大きく高めたメモリーです。生成AIの学習や推論では膨大なデータを高速でやり取りする必要があるため、演算を担う半導体と組み合わせて使われます。技術的な難度が高く生産できる企業が限られることから供給が需要に追いつかず、増産や設備投資のニュースがAI関連銘柄全体の材料になりやすい構造があります。今回の相場でメモリー関連だけでなく半導体製造装置や電子部品まで広く買われたのは、こうした連想が働いたためです。

「指数は上がったのに値下がり銘柄のほうが多い」現象の読み方についても説明しておきます。市場全体でどれだけ多くの銘柄が上昇に参加しているかを示す考え方は「市場の広がり(マーケット・ブレッドス)」と呼ばれます。この日のように、指数が大きく上げても値上がり銘柄が40.7%にとどまる状態は、広がりが乏しい上昇と表現されます。少数の大型株が指数を持ち上げている構図なので、その銘柄群に売りが出た場合は指数の反落も大きくなりやすい、という性質があります。逆に、指数の上げ幅が小さくても値上がり銘柄が7割を超えるような日は、広がりのある上昇と見ることができます。指数の数字だけでなく、値上がり銘柄の比率や売買代金をあわせて確認すると、その日の上昇や下落がどういう性質のものだったかを判断しやすくなります。

出典