日本時間2日22時30分に始まる米国市場は、前日に主要3指数がそろって3日続落した流れを引き継いでスタートします。日本時間21時15分に発表された8月のADP全米雇用報告は3万8000人増と、市場予想の4万8000人増を下回りました。ホルムズ海峡でのタンカー攻撃を受けてWTI原油先物は前日に90.55ドルまで急伸しており、引け後にはブロードコムなど半導体・IT大手の決算発表が控えています。
| 9月1日の米国市場(前営業日終値) | 終値 | 前日比 |
|---|---|---|
| ダウ工業株30種平均 | 52,766.88ドル | -419.02(-0.79%、3日続落) |
| S&P500種株価指数 | 7,631.47 | -54.67(-0.71%、3日続落) |
| ナスダック総合指数 | 26,099.77 | -271.12(-1.03%、3日続落) |
| 2日夜の主な予定(日本時間) | 内容 | 市場予想 | 前回 |
|---|---|---|---|
| 21時15分(発表済み) | 米8月ADP全米雇用報告 | +4.8万人 | +4.4万人 |
| 22時45分 | カナダ中銀 政策金利発表 | — | — |
| 23時00分 | 米7月製造業新規受注(前月比) | +0.6% | -0.3% |
| 3日3時00分 | FRB ベージュブック(地区連銀経済報告) | — | — |
| 発表された指標 | 結果 | 市場予想 | 前回 |
|---|---|---|---|
| 米8月ADP全米雇用報告 | +3.8万人 | +4.8万人 | +4.4万人 |
| 2日の主な決算予定(米国時間) | 企業 |
|---|---|
| 寄り付き前 | ブラウン・フォーマン |
| 引け後 | ブロードコム、ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)、ネットアップ |
| 2日の株価指数先物(日本時間13時30分時点) | 水準 | 前日比 |
|---|---|---|
| S&P500先物 | 7,634.75 | -8.00 |
| ナスダック100先物 | 29,048.00 | -77.50 |
| NYダウ先物 | — | -13ドル |
| 金利・商品・為替 | 水準 | 備考 |
|---|---|---|
| 米10年物国債利回り(9月1日) | 4.803% | 2025年1月以来の高さ |
| 米10年物国債利回り(2日21時09分、日本経済新聞) | 4.780% | 前日比-0.0186 |
| 米30年物国債利回り(9月1日) | 5.275% | — |
| WTI原油先物10月限(9月1日終値) | 90.55ドル | +4.79(+5.59%)、レンジ86.24〜90.64ドル |
| WTI原油先物(2日20時32分時点) | 89.49ドル | -0.76(-0.8%) |
| ブレント原油先物11月限(2日20時32分時点) | 94.48ドル | -0.19(-0.2%) |
| ドル円(2日の東京市場) | 159円43銭〜160円39銭 | 欧米時間の予想レンジは159.100〜160.400円 |
| 新発10年物国債利回り(日本、2日) | 一時3.015% | 1996年9月以来の高さ |
何があった?
1日の米国市場は主要3指数がそろって3営業日続けて下落しました。ダウ工業株30種平均は419.02ドル(0.79%)安の52,766.88ドル、S&P500種株価指数は54.67ポイント(0.71%)安の7,631.47、ナスダック総合指数は271.12ポイント(1.03%)安の26,099.77で取引を終えています。
売りの直接のきっかけは中東でした。米中央軍がイラン革命防衛隊を標的とした攻撃の開始を発表したことに加え、ホルムズ海峡を航行中の大型原油タンカー2隻が相次いで飛来体による攻撃を受けたと報じられ、原油の供給リスクが一気に意識されました。ニューヨーク・マーカンタイル取引所のWTI原油先物10月限は前日比4.79ドル(5.59%)高の1バレル90.55ドルで取引を終え、時間外を含めた取引レンジは86.24〜90.64ドルに広がっています。原油高がインフレ再燃の連想を呼び、米10年物国債利回りは4.803%、30年物は5.275%へと上昇しました。
セクター別では明暗が分かれています。フィスコによれば、上昇したのはテクノロジー・ハード・機器とエネルギーで、野村證券の集計ではエネルギーが1.54%高だった一方、一般消費財が1.89%安と最も売られました。自動車・自動車部品も下落しています。個別ではアップル、モデルナ、メルク、メドトロニックが上昇し、エヌビディアやチャーター・コミュニケーションズが下落しました。原油高で恩恵を受ける業種と、金利上昇や消費への影響が意識される業種とで、売買の向きが逆になった形です。
日本市場では、この構図がさらに強く出ました。2日の日経平均株価は1,889円70銭(2.85%)安の6万4325円64銭と大幅に3日続落し、東証33業種すべてが下落する全面安となっています。国内の長期金利は一時3.015%と1996年9月以来の高さに上昇しました。シカゴ日経225先物の清算値は6万4870円と、大阪の日中終値比で1,020円安でした。
企業の側では、1日の引け後に発表されたデル・テクノロジーズの決算が明るい材料になりました。2027会計年度第2四半期の調整後1株当たり利益は7.04ドル(市場予想4.87ドル)、売上高は469億7000万ドル(同448億4000万ドル)といずれも予想を上回り、通期見通しも調整後1株当たり利益25.50ドル(従来17.90ドル)、売上高1920億ドル(従来1670億ドル、市場予想1738億ドル)へと大幅に引き上げられています。AIサーバー需要の急増が背景で、同社株は時間外取引で10.4%上昇しました。
注目ポイント
今夜の最初の関門は、すでに通過しました。日本時間21時15分に発表された8月のADP全米雇用報告は3万8000人増で、市場予想の4万8000人増、前回の4万4000人増をいずれも下回っています。労働市場の減速を示す内容です。この数字の受け止め方は、今の相場ではやや複雑になります。外為どっとコムは、雇用の伸びの鈍化が示されれば金利上昇圧力が和らぐとの見方があると伝えていました。一方で、4日に控える8月の米雇用統計が下振れするリスクが意識されれば、景気そのものへの懸念が広がる可能性もあります。原油高によるインフレ再燃を警戒して長期金利が上がっているところに、雇用の弱さが重なるという組み合わせであるため、金利が下がることを株式が素直に好感するとは限りません。この日の21時09分時点で米10年債利回りは4.780%と、前日終値の4.803%からわずかに低下していました。
23時には7月の製造業新規受注(前月比、市場予想プラス0.6%、前回マイナス0.3%)が発表され、3日午前3時にはFRBの地区連銀経済報告(ベージュブック)が公表されます。ベージュブックは全米12の地区連銀が地域の企業などから聞き取った内容をまとめたもので、統計には表れにくい足元の景況感や物価・賃金の動きを確認する材料になります。原油高が実体経済にどう波及しているかについての記述があれば、注目される可能性があります。22時45分にはカナダ中銀の政策金利発表も控えています。
企業側の最大の材料は、引け後のブロードコムの決算です。同社は2026会計年度第2四半期に売上高221億8700万ドル(前年同期比48%増)、うちAI半導体が108億ドル(同143%増)と、AI関連が売上高のほぼ半分を占める構成になっています。決算説明会では当四半期に新規で追加されたAI半導体の受注が300億ドルを超えたことも明らかにされました。今回もAI需要の強さが数字で確認されればハイテク株の支えになる、との期待が市場にはあります。ただし、同社は6月にAI半導体の売上高見通しを維持したことで失望売りを浴びた経緯もあり、実績の数字だけでなく先行きの見通しがどう示されるかが反応を左右します。同じく引け後にはHPEとネットアップの決算も予定されています。
為替では日本側の材料が効きました。2日の東京市場でドル円は一時160円39銭まで上昇したものの、日銀の高田審議委員が利上げ幅について「0.25%以外も選択肢」「連続利上げになることもあり得る」との見解を示したことで159円43銭まで下落しています。外為どっとコムは欧米時間の予想レンジを159.100〜160.400円とし、日銀の連続利上げ観測から上値が重い一方、中東不安に伴う原油高がドル買いを支えるため159円台前半では底堅さが期待される、との見方を示しました。株安と円安が同時進行していた前日までとは、やや異なる並びになっています。
ひとこと解説
ADP全米雇用報告は、米国の給与計算代行大手ADP社が、自社が処理している数十万社分の給与データをもとに集計する民間部門の雇用者数の指標です。政府が発表する雇用統計より2日ほど早く出るため、「雇用統計の前哨戦」として扱われます。ただし、両者は集計対象も手法も異なり、数字が食い違うことは珍しくありません。ADPは政府統計を予測するために作られたものではなく、あくまで民間部門の給与データという別の角度からの観測です。今回の3.8万人という数字も、4日の雇用統計がそのまま同じ方向に出ることを保証するものではありません。市場が反応するのは、予想からのズレが大きかった場合や、他の指標と方向がそろった場合が中心になります。
ベージュブックは、FRB(米連邦準備制度理事会)が年8回、FOMC(連邦公開市場委員会)のおよそ2週間前に公表する報告書です。全米を12に分けた各地区連銀が、管内の企業経営者や有識者への聞き取りをまとめたもので、表紙が薄茶色だったことからこの通称が定着しました。特徴は、数値の統計ではなく「言葉」で書かれている点です。「小売の売り上げは緩やかに増加した」「企業は投入コストの上昇を価格に転嫁しにくくなっている」といった記述から、統計に数字として表れる前の変化を読み取ろうとするものです。FOMCの議論の下敷きになるため、金融政策の方向を占う材料として読まれます。
ホルムズ海峡がなぜ原油価格を動かすのかも整理しておきます。ホルムズ海峡はペルシャ湾の出口にあたる幅の狭い海峡で、サウジアラビアやイラク、クウェート、UAEなど中東産油国から輸出される原油タンカーの多くがここを通過します。世界の海上輸送される原油のうち相当な割合がこの一点を通るため、通航に支障が出るとの見方が広がるだけで、実際の供給が減る前から価格が上昇しやすくなります。1日に見られた5%を超えるWTIの急伸は、タンカーへの攻撃が報じられたことで、この「一点集中」のリスクが改めて意識された結果と説明されています。もっとも2日は、WTIが89.49ドル、ブレントが94.48ドルと小幅に反落しました。地政学リスクを材料とする値動きは、緊張の高まりで急騰し、事態が想定の範囲内と受け止められると戻る、という往復を繰り返しやすい性質があります。
出典
- 1日のNY市場は続落(フィスコ) - Investing.com
- 米国株式市場は続落、対イラン紛争激化による原油高を警戒 - 財経新聞
- ニューヨーク株式市況 - 野村證券
- NY株式 1日終値(共同通信) - Yahoo!ニュース
- 【見通し】NY株見通し-もみ合いか 8月ADP雇用統計などの経済指標に注目 - 外為どっとコム
- 米国株見通し:下げ渋りか、雇用関連指標と決算発表を注視(フィスコ) - Investing.com
- 今日の注目スケジュール:豪GDP、NZ中央銀行が政策金利発表、米ADP雇用統計など - 財経新聞
- 【指標】8月ADP全米雇用報告 +3.8万人、予想 +4.8万人 - Myforex
- NY原油:急伸で90.55ドル、ホルムズ海峡でタンカー攻撃を受け供給リスクが急浮上(フィスコ) - Investing.com
- 原油3日続伸、ブレント原油が96ドル超え-米イラン衝突激化で供給懸念 - Investing.com
- 米国債10年(アメリカ10年物国債利回り)金利・チャート・推移 - 日本経済新聞
- デルの株価、四半期決算と通期ガイダンス引き上げを受けて時間外取引で10%急騰 - Investing.com
- 【Broadcom決算(2026年度 第2四半期)】AI半導体バックログ$730億 - bloomo
- 米ブロードコム株価が急落 AI半導体の売上高見通し維持で - 日本経済新聞
- 【ドル/円、今夜の見通し】ドル/円、159円台前半へ下落…高田日銀審議委員「連続利上げになることもあり得る」 - 外為どっとコム
- ドル円午前の為替予想、有事のドル買いで160円台回復も米雇用情勢に不透明感 - 外為どっとコム
- 日経平均大引け:前日比1889.70円安の64325.64円 - 財経新聞