2日の東京株式市場で日経平均株価は前日比1,889円70銭(2.85%)安の6万4325円64銭と大幅に3日続落しました。終値としては約1カ月ぶりに6万5000円台を割り込んでいます。国内の長期金利が1996年9月以来となる3.015%まで上昇したことに加え、米国とイランの戦闘激化による原油高が重なり、東証33業種すべてが下落する全面安となりました。前日まで9日続伸していたTOPIXも反落しています。

2日の東京市場 終値 前日比
日経平均株価 64,325円64銭 -1,889.70(-2.85%、3日続落)
TOPIX 4,081.60 -100.26(-2.40%)
2日のザラ場の推移 水準 前日比
寄り付き 65,195円43銭 -1,019.91
前引け 64,473円16銭 -1,742.18
大引け 64,325円64銭 -1,889.70
2日の売買状況 数値
東証プライム市場の売買高 24億1,905万株
東証プライム市場の売買代金 8兆344億円
値上がり銘柄の比率 6.4%
値下がり銘柄の比率 92.3%(1,400銘柄超)
上昇した業種 0業種(33業種すべて下落)
2日の金利・原油・為替 水準 備考
新発10年物国債利回り(日本) 一時3.015% 1996年9月以来、約30年ぶりの高水準
米10年物国債利回り 4.803% 前日の4.730%から上昇、2025年1月以来の高さ
WTI原油先物 90ドル台 約1カ月ぶりの高値圏
ドル円(東京市場) 159円91銭〜160円39銭 午前10時時点で160円28〜29銭(前日比30銭の円安)
ユーロ円(東京市場) 185円18銭〜185円75銭
2日の主な個別株 動き 備考
ソフトバンクグループ 下落 前引け時点で1銘柄で日経平均を約248円押し下げ
東京エレクトロン 下落 前引け時点で約209円分の押し下げ
アドバンテスト 下落 前引け時点で約176円分の押し下げ
TDK、リクルートホールディングス 下落 それぞれ約95円、約79円分の押し下げ
第一三共、塩野義製薬、住友ファーマ 上昇 医薬品セクターは下げが限定的
伊藤園 上昇 決算内容が好感された

何があった?

この日の東京市場は、朝から売り先行の地合いでした。前日の米国市場で主要3指数がそろって3日続落し、米中央軍(CENTCOM)によるイラン革命防衛隊への攻撃開始を受けてWTI原油先物が1バレル90ドル台に乗せていたためです。日経平均先物の夜間取引は1,270円安で終えており、寄り付きは前日比1,019円91銭安の6万5195円43銭と、1,000円を超える下落からのスタートとなりました。

売りを一段と加速させたのが、国内の金利です。長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りは一時3.015%まで上昇しました。前日に約30年ぶりとなる3.000%の大台に乗せたばかりで、そこからさらに水準を切り上げた形です。1996年9月以来の高さになります。米10年債利回りも前日の4.730%から4.803%へ上昇し、2025年1月以来の高い水準をつけました。日米そろって長期金利が上がる展開になったことで、高い成長期待を前提に買われてきた銘柄ほど、将来の利益を現在価値に割り戻したときの評価が目減りしやすくなります。共同通信は、長期金利の上昇が重荷となり、高成長を見込んで買われてきたハイテク株を中心に収益悪化への懸念から売られたと伝えています。

実際、指数を押し下げた顔ぶれはハイテク・半導体関連に集中しました。前引け時点の寄与度では、ソフトバンクグループが1銘柄だけで日経平均を約248円押し下げ、東京エレクトロンが約209円、アドバンテストが約176円と続いています。大引けでは、ソフトバンクグループ、アドバンテスト、東京エレクトロン、リクルートホールディングスの4銘柄で約777円分の押し下げになったとされています。前日までの2営業日は、日経平均が小幅安にとどまる一方でTOPIXが続伸するという「指数の中身が食い違う」相場でしたが、この日はその構図が崩れ、TOPIXも100.26ポイント安と大きく下げています。

業種別では、東証33業種のすべてが下落し、上昇した業種はありませんでした。下げが目立ったのは非鉄金属、サービス業、ガラス・土石製品、電気機器、輸送用機器です。相対的に下落率が小さかったのは医薬品、保険業、海運業でした。個別では第一三共、塩野義製薬、住友ファーマといった医薬品株が上昇し、決算が好感された伊藤園も買われましたが、東証プライム市場で値上がりした銘柄は全体の6.4%にとどまり、値下がりは92.3%、1,400銘柄を超えました。売買代金は8兆344億円、売買高は24億1,905万株です。

為替では円安方向の動きが続きました。原油の輸入コスト増が日本経済の重荷になるとの見方や、日米金利差の意識からドル買い・円売りが優勢となり、東京市場のドル円は午前中に160円39銭まで上昇。午後は原油と米金利の伸び悩みを受けて160円を割り込み、159円91銭まで下げる場面もありました。株安と円安が同時に進む展開だったことになります。

日銀の高田審議委員は、2026年は物価の上振れをより重視した議論が必要な局面になるとの認識を示し、世界的に利上げへの転換が早まる可能性や、物価が予想以上に上振れするリスクも念頭に置く必要があると述べました。国内金利の先高観を後押しする材料と受け止められています。

注目ポイント

この日の下げの特徴は、日本固有の材料というより、世界的な金利上昇という共通の要因が背景にあった点です。日本経済新聞は、インフレ加速や財政拡大への懸念から世界で金利の先高観が強まり、アジアの株式市場が軒並み安になっていると伝えています。日本の長期金利が3%台、米国の長期金利が4.8%台という組み合わせは、この数年の相場が前提としてきた「低い金利」とは異なる環境です。市場の一部では、世界的な金利上昇のあとに株価が急落した1987年のブラックマンデーの再来を懸念する声も出始めた、との指摘もあります。ただし、これはあくまで市場関係者の間で語られている懸念であり、現時点で何かが確定した話ではありません。

もう一つ確認しておきたいのは、下げの中身です。全33業種が下落したという点だけを見ると無差別に売られたように見えますが、医薬品・保険・海運の下げが相対的に小さく、非鉄金属や電気機器の下げが大きいという差はついていました。金利上昇局面では、将来の成長を織り込んで評価されている銘柄と、足元の収益や配当が評価の中心にある銘柄とで、値動きの差が出やすくなります。この日の業種別の並びは、その典型的な形になっていました。

今後の材料としては、日本時間の今夜21時15分に米8月ADP雇用統計(市場予想4.8万人)、23時に米7月製造業受注、3日午前3時にFRBの地区連銀経済報告(ベージュブック)が控えています。4日には8月の米雇用統計も予定されており、金利の方向を左右する数字が続きます。加えて、今夜の引け後にはブロードコムの決算発表があります。中東情勢と原油価格の動きも引き続き相場の前提を動かす要因です。

ひとこと解説

**「金利が上がるとなぜ株が下がるのか」**を、この日の値動きに沿って整理しておきます。株価は、その会社が将来生み出すと見込まれる利益を、現在の価値に割り戻して評価される、という考え方が基本にあります。このとき割り戻しに使う率(割引率)は、国債の利回りなど「リスクを取らずに得られる金利」を土台にしています。金利が上がれば割引率も上がり、将来の利益の現在価値は小さくなります。特に、利益の大部分が何年も先にあると期待されている成長企業ほど、この目減りが大きくなります。この日、半導体関連やソフトバンクグループのような成長期待の大きい銘柄が下げの中心になった一方、医薬品や保険が相対的に踏みとどまったのは、この関係で説明がつきます。

新発10年物国債利回りは、財務省が新しく発行した償還までの期間が10年の国債が、市場でどれくらいの利回りで取引されているかを示す数字で、日本の「長期金利」の代表指標として使われます。国債は価格が上がると利回りが下がり、価格が下がると利回りが上がる、という逆の関係にあります。つまり、利回りが3.015%まで上昇したというのは、国債が売られていることを意味します。この指標が注目されるのは、住宅ローンの固定金利や企業の社債発行の条件など、幅広い資金調達コストの基準になっているためです。

「終値で6万5000円台を割り込んだ」という表現の意味にも触れておきます。株式市場では、区切りのよい数字(この場合は6万5000円)を上回っているか下回っているかが、しばしばニュースの見出しになります。理論的には6万5001円と6万4999円に本質的な差はありませんが、多くの投資家が同じ水準を意識して注文を置くため、実際にその近辺で売買が膨らみやすいという面はあります。ただし、こうした節目は市場参加者の心理を映すものであって、企業の業績や経済の実態が節目をまたいだ瞬間に変わるわけではありません。日々のニュースを読むときは、節目の数字そのものよりも、それを動かした材料(この日であれば金利と原油)のほうに目を向けると、相場の流れをつかみやすくなります。

出典