日本時間1日22時30分に始まる米国市場は、前日にダウ工業株30種平均が374ドル安と続落した流れを引き継いで9月相場入りします。米軍とイランの攻撃応酬を受けてWTI原油は1バレル85.76ドルまで上昇し、米10年債利回りは4.79%台へ上昇しました。今夜は23時にISM製造業景況指数と7月のJOLTS求人件数が発表され、引け後にはデル・テクノロジーズの決算が控えています。

8月31日の米国市場(前営業日終値) 終値 前日比
ダウ工業株30種平均 53,185.90ドル -374.09(-0.70%)
S&P500種株価指数 7,686.14 -25.62(-0.33%)
ナスダック総合指数 26,370.89 -31.53(-0.12%)
フィラデルフィア半導体株指数(SOX) 11,535.05 +65.39
8月の月間騰落率 騰落率
ダウ工業株30種平均 +1.34%(5カ月連続の上昇)
ナスダック総合指数 +3.93%
1日の株価指数先物(日本時間13時30分時点) 水準 前日比
S&P500先物 7,696.00 -3.00
ナスダック100先物 29,490.50 -22.50
NYダウ先物 +13ドル
1日夜の主な予定(日本時間) 内容 市場予想 前回
22時45分 米8月製造業PMI(確報値) 53.2
23時00分 米8月ISM製造業景況指数 55.2 55.6
23時00分 米7月JOLTS求人件数 731万〜738万件(集計により差) 735.9万件
23時00分 米7月建設支出(前月比) +0.2% -0.1%
夜間 バーFRB理事の発言(投票権あり)
2日までに 米8月自動車販売 1628万台 1633万台
今週の主な決算 企業
1日(本日) デル・テクノロジーズ
2日 ブロードコム
3日 シエナ
金利・商品・為替 水準 前日比
米10年債利回り(1日21時13分時点、日本経済新聞) 4.79510% +0.04260
WTI原油先物10月限(8月31日終値) 85.76ドル +2.36(+2.8%)
ドル円(1日の東京市場) 159円59銭〜159円90銭台 底堅い
新発10年物国債利回り(日本、1日) 一時3.000% 1996年9月以来の高さ

何があった?

8月最終営業日となった31日の米国市場は続落しました。ダウ平均は374.09ドル(0.70%)安の53,185.90ドル、S&P500は25.62ポイント(0.33%)安の7,686.14、ナスダック総合指数は31.53ポイント(0.12%)安の26,370.89で取引を終えています。いずれも2営業日続けての下落です。

下げの直接のきっかけは中東情勢でした。米軍が30日にイランを攻撃し、イラン側が中東の米軍施設を報復攻撃したと伝わったことで、地政学リスクへの警戒が一気に強まっています。ニューヨーク・マーカンタイル取引所ではWTI原油の10月物が前週末比2.36ドル(2.8%)高の1バレル85.76ドルまで上昇しました。原油高はインフレ再燃の連想につながりやすく、米長期金利の上昇を通じて株式にも重荷となる、という順番で売りが広がった形です。フィスコによれば、セクター別では自動車・自動車部品が上昇した一方、小売が下落しました。

もっとも、指数の中身を見ると一方的な下げではありません。フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は65.39ポイント上昇して11,535.05となり、前週末に412ポイント下げた反動もあって半導体関連には買いが入っています。ナスダック総合の下げが0.12%にとどまった一方でダウが0.70%下げたという並びは、ジャクソンホール会議の直後だった28日(ダウはほぼ横ばい、SOXが大幅安)とちょうど反対の形です。金利と地政学という同じ材料でも、日によって売られる場所が入れ替わっている状態が続いています。

月間で見れば、8月は上昇でした。ダウ平均は1.34%高と5カ月連続の上昇、ナスダック総合は3.93%高です。月末2日間の下げを含めてもプラスを確保して9月に入った、というのが出発点になります。

日本市場では、この日新発10年物国債利回りが一時3.000%と1996年9月以来およそ30年ぶりの水準に上昇しました。日経平均株価は朝方に700円超下げたあと切り返し、96円59銭安の6万6215円34銭で引けています。TOPIXは25.57ポイント高の4181.86と9日続伸しました。ドル円は東京時間に159円59銭から159円90銭台へじり高となり、外為どっとコムは欧米時間の予想レンジを159円000銭〜160円500銭としています。

注目ポイント

今夜の最大の材料は、日本時間23時に発表される2つの指標です。8月のISM製造業景況指数は市場予想55.2、前回(7月)は55.6。7月のJOLTS求人件数は前回が735.9万件で、市場予想は集計元によって731万件台から738万件台まで幅があります。いずれも週末4日の8月雇用統計に向けた地ならしの位置づけで、労働需給と景況感がどちらに傾くかが9月のFOMCに向けた金利観測に直結します。フィスコは、この2つが想定より弱い内容なら売り要因になりやすいと指摘しています。同じ23時には7月の建設支出(前月比予想プラス0.2%、前回マイナス0.1%)、22時45分には8月の製造業PMI確報値(予想53.2)も発表されます。金融当局からは、投票権を持つバーFRB理事の発言が予定されています。

企業側では、今夜の引け後にデル・テクノロジーズの決算が控えます。2日にはブロードコム、3日にはシエナと、AI関連の決算が3日続く日程です。財経新聞は、これらの決算が相場を支える可能性もあるとの見方を伝えています。金利上昇は将来の成長期待で買われている銘柄に逆風となりやすい一方、AI投資の需要が数字で確認されれば話は変わります。今週のハイテク株は、この2つの力の綱引きで振れ幅が決まる展開になりそうです。

季節性についての指摘も出ています。外為どっとコムは、歴史的に9月は主要株価指数が下落しやすい月として知られており、夏休みから戻った投資家によるポートフォリオ調整が上値を抑える可能性があるとして、今夜の見通しを「もみ合い」としました。財経新聞の見通しは「下げ渋りか」で、原油高と金利高から売りが出やすい一方、FRBの早期利上げ観測が一服していることが過度な下げを抑えるとの整理です。実際、日中の株価指数先物は方向感を欠いており、13時30分時点でS&P500先物が3.00ポイント安、ナスダック100先物が22.50ポイント安、NYダウ先物は13ドル高と、指数によってプラスとマイナスが入り混じっていました。

為替の面では、日本側にもう一つの材料があります。G7・G20財務相・中央銀行総裁会議に合わせて、ベッセント米財務長官が片山さつき財務相および植田日銀総裁と会談する予定と伝えられています。ドル円が160円をはさむ水準にあるなかでの会談であり、為替介入への思惑と絡めて内容が注目される、という位置づけです。日本の長期金利が30年ぶりの3%に乗り、米長期金利も4.79%台にある状況で、日米双方の金利がどう動くかが円相場の方向を左右します。

ひとこと解説

ISM製造業景況指数は、全米供給管理協会(ISM)が製造業の購買担当者に毎月アンケートを行い、新規受注・生産・雇用・入荷遅延・在庫の5項目を集計してつくる指数です。50が「拡大」と「縮小」の分かれ目で、50を上回れば景気が拡大方向にあると読みます。米国の月初に発表される指標のなかでは最も早いグループに入るため、その月の景気の方向を測る出発点として使われます。今夜の予想55.2は、前回の55.6からわずかに減速しつつも拡大圏を保つ、という見立てです。数値そのものに加えて、内訳の「雇用」と「仕入価格」の項目が、雇用統計とインフレの両方を占う手がかりとして見られます。

JOLTS求人件数は、米労働省が公表する「求人・労働異動調査」の求人数のことです。企業が「今すぐ人を採りたい」と表明している数を集計したもので、労働市場の需要側の強さを示します。失業者1人あたり何件の求人があるかという比率とセットで語られることが多く、この比率が高いほど人手不足で賃金が上がりやすい、という関係になります。ただしこの統計は約2カ月遅れで発表される点に注意が必要です。今夜出るのは7月分で、8月分は10月まで分かりません。速報性より、雇用統計だけでは見えない需給の厚みを確かめるための指標、という位置づけです。

原油高がなぜ株安につながるのかも整理しておきます。経路は主に2つです。1つ目は企業のコスト面で、輸送費や燃料費が上がると多くの企業の利益が圧迫されます(逆に石油関連企業の利益は増えるため、業種によって向きが逆になります)。2つ目は金利を経由する経路で、エネルギー価格の上昇は物価全体を押し上げるため、中央銀行が利下げを遅らせる、あるいは利上げに動くとの見方が強まり、長期金利が上昇します。金利が上がると将来の利益を現在価値に割り戻す際の割引率が上がるため、成長期待で評価されている銘柄ほど株価の理論値が下がる、という関係です。31日の米国市場で原油高と金利上昇が同時に起き、株式が売られたのは、この2つ目の経路が主に働いた結果と説明されています。

出典