1日の東京市場で日経平均株価は前日比96円59銭安の6万6215円34銭と小幅に続落しました。朝方は700円を超える下げで始まりましたが、その後は急速に水準を戻しています。一方でTOPIXは25.57ポイント高の4181.86と9日続伸し、指数間の差がこの日も鮮明でした。債券市場では新発10年物国債利回りが一時3.000%と、1996年9月以来およそ30年ぶりの水準まで上昇しています。

1日の東京市場 終値 前日比
日経平均株価 66,215円34銭 -96.59(-0.15%)
TOPIX 4,181.86 +25.57(+0.62%、9日続伸)
売買動向(東証プライム) 数値
売買代金 概算7兆5000億円
値上がり銘柄数 843
値下がり銘柄数 657
変わらず 50
上昇した業種 33業種中26業種
業種の方向 内容
買われた業種 電気・ガス、鉱業、石油・石炭製品、鉄鋼
売られた業種 サービス、非鉄金属、小売
日経平均への寄与度(大引け) 押し下げ/押し上げ
東京エレクトロン 約146円の押し下げ
ファーストリテイリング 約96円の押し下げ
アドバンテスト 約75円の押し下げ
リクルートホールディングス 約72円の押し下げ
フジクラ 約41円の押し下げ
ソフトバンクグループ 約50円の押し上げ
キオクシアホールディングス 約24円の押し上げ
豊田通商 約23円の押し上げ
金利・為替 水準 前日比
新発10年物国債利回り 一時3.000% +0.060
ドル円(東京市場) 159円59銭〜159円98銭で推移 ドル高方向
ユーロ円(東京市場) 185円43銭〜185円69銭
ユーロドル(東京市場) 1.1603〜1.1624ドル
1日発表の主な経済指標 結果 市場予想 前回
4〜6月期法人企業統計・全産業設備投資額(ソフトウェア含む、前年比) +1.6% -0.3%
4〜6月期経常利益(金融・保険を除く全産業、前年比) +24.6%
8月au じぶん銀行 日本製造業PMI(確報値) 54.9 速報値55.1 54.5(7月)
8月消費者態度指数(2人以上世帯、季節調整値) 35.5 34.9(前月比+0.6)
8月中国レーティングドッグ製造業PMI 51.5 50.9(7月)

何があった?

朝の東京市場は、前夜の米国株安をそのまま引き継ぐ形で始まりました。米軍とイランの攻撃の応酬を受けて原油が急伸し、米長期金利が上昇したことが重荷となり、日経平均は一時700円を超える下げとなっています。ところが、その後は先物への買いや韓国株の上昇に支えられて水準を切り上げ、一時はプラス圏を回復する場面もありました。終わってみれば下げ幅は96円59銭にとどまり、朝の急落からはほとんど戻した格好です。

指数の中身を見ると、下げているのは日経平均だけという構図が前営業日から続いています。東証プライムでは値上がり843銘柄に対して値下がりは657銘柄、33業種中26業種が上昇しました。それでも日経平均がマイナスで終わったのは、指数寄与度の大きい銘柄に売りが集まったためです。東京エレクトロンだけで約146円、ファーストリテイリングで約96円、この2銘柄で約242円分を押し下げました。アドバンテスト(約75円)、リクルートホールディングス(約72円)、フジクラ(約41円)と、AI・半導体関連や値がさ株が下位に並んでいます。押し上げ側はソフトバンクグループの約50円が最大で、キオクシアホールディングス、豊田通商が続きました。

買われた業種の並びは、前夜からのニュースをそのまま映しています。上昇上位は電気・ガス、鉱業、石油・石炭製品、鉄鋼で、原油高が収益改善につながると見られる分野に資金が向かいました。鉄鋼では、欧州系証券が日本製鉄の目標株価を840円から940円へ引き上げたと伝わり、同社株が大幅反発しています。報道されている支給材価格が実現すれば、2027年3月期下期の鋼材価格が4年ぶりの本格的な値上げになるとの見方が示されました。一方で下落したのはサービス、非鉄金属、小売でした。

債券市場の動きは、この日の株式市場以上に目立ちました。新発10年物国債利回りは前日比0.060%高い3.000%まで上昇し、1996年9月以来およそ30年ぶりの高さをつけています。日米の中央銀行がインフレ抑制のために利上げに動くとの観測が強まったことに加え、財政への不安も重なり、幅広い年限で国債が売られました。この日実施された10年物国債の入札はやや低調な結果だったと伝えられています。

為替は、朝方に159円59銭をつけたあとドル買いが優勢となり、東京時間の午後には159円98銭まで上昇しました。米連邦準備制度理事会(FRB)の早期利上げ観測から米長期金利が高止まりしたことが背景です。前週末に7月末の協調介入後で初めて160円台に乗せて以降、160円をはさんだ攻防が続いています。

注目ポイント

この日発表された国内の経済指標は、企業部門の堅調さを示す内容でした。4〜6月期の法人企業統計では、金融業・保険業を除く全産業の経常利益が前年同期比24.6%増と7四半期連続の増加。季節調整済みでは前期比11.0%増の37.7兆円と、4四半期連続で過去最高を更新しました。製造業・非製造業ともに売上の伸びが加速し、売上高経常利益率も改善しています。

一方で設備投資は、ソフトウェアを含む全産業ベースで前年比1.6%増。市場予想の0.3%減を上回りはしたものの、季節調整済みの前期比は1.5%増にとどまりました。「企業収益は好調、設備投資は低調」という近年の構図は変わっていない、というのがエコノミストの見立てです。この統計は4〜6月期GDPの2次速報の基礎資料になるため、来週の改定値がどう動くかが次の確認点になります。

景況感の指標も強めでした。8月のau じぶん銀行 日本製造業PMIは確報値で54.9。速報値の55.1からは下方修正されたものの、7月の54.5からは上昇し、8カ月連続の拡大となりました。新規輸出受注は2018年1月以来の速さで増え、雇用も堅調に伸びています。ただし原材料と石油価格の上昇、そして円安によって投入価格が上がり、販売価格の上昇も続いているとされています。原油高と円安が企業のコストに効き始めていることが、指標の中身からも読み取れます。

家計側では、内閣府が発表した8月の消費者態度指数(2人以上世帯、季節調整値)が前月比0.6ポイント上昇の35.5となり、4カ月連続の改善となりました。構成する4項目のうち「暮らし向き」が1.0ポイント、「耐久消費財の買い時判断」が1.9ポイント上昇した一方、「収入の増え方」が0.5ポイント、「雇用環境」が0.2ポイント低下しています。基調判断は「持ち直しの動きがみられる」が据え置かれました。海外では、8月の中国レーティングドッグ製造業PMIが7月の50.9から51.5へと改善しています。

日本時間の今夜は、22時45分に米製造業PMI確報値、23時に8月のISM製造業景況指数、7月のJOLTS求人件数、7月の建設支出が控えています。今週は4日(金)の8月米雇用統計に向けて、雇用と景況感に関する材料が連日並ぶ日程です。

ひとこと解説

長期金利が3%に乗るとはどういうことか。ここでいう長期金利とは、新しく発行された満期10年の日本国債が市場で売買されるときの利回りのことです。国債は価格と利回りが逆に動くため、「利回りが上がった」は「国債が売られて価格が下がった」と同じ意味になります。3.000%という水準は1996年9月以来、およそ30年ぶりです。長期金利は住宅ローンの固定金利や企業の社債発行コストの目安になるため、家計と企業の双方に時間差で効いてきます。株式市場との関係では、金利が上がると将来の利益を現在価値に割り戻すときの割引率が上がるため、成長期待で買われている銘柄ほど評価が下がりやすい、という整理がされます。この日、AI・半導体関連が売られる一方で資源や公益といった分野が買われたのは、その典型的な反応の形でした。

法人企業統計とGDPの関係も押さえておくと便利です。法人企業統計は財務省が四半期ごとに企業の売上高・利益・設備投資を集計するもので、内閣府が公表するGDPの設備投資項目を推計し直すための基礎データになります。GDPは最初に1次速報が出たあと、この統計を取り込んで2次速報(改定値)が発表される仕組みです。そのため、法人企業統計の設備投資が事前の想定より強ければGDP改定値が上振れやすく、弱ければ下振れやすい、という関係が生まれます。市場が発表当日にこの統計へ反応するのは、数字そのものよりも「次のGDPがどちらに動きそうか」を測る材料として見ているためです。

売買代金は、その日に取引が成立した金額の合計です。この日の東証プライムは概算で7兆5000億円でした。株価が動いた幅だけを見ていると、値動きの背後にどれだけの資金が動いていたのかが分かりません。同じ「小幅安」でも、薄商いのなかで数銘柄の売りに押されたのか、大きな資金が入れ替わった結果なのかで意味は変わります。値上がり銘柄数と値下がり銘柄数、業種別の騰落と合わせて見ると、指数の数字だけでは見えない市場の中身に近づけます。

出典