日本時間31日22時30分に始まる米国市場は、前週末のジャクソンホール会議で強まった9月の利上げ観測を引きずったまま週明けを迎えます。日中の株価指数先物は3指数とも軟調で推移し、米10年債利回りは4.7%台と高止まりしています。今夜は23時30分に8月のダラス連銀製造業景況指数が発表され、そこから週末4日の8月雇用統計まで、労働市場と景況感を測る指標が連日並ぶ週です。

28日の米国市場(前営業日終値) 終値 前日比
ダウ工業株30種平均 53,559.99ドル -9.45(-0.02%)
S&P500種株価指数 7,711.76 -19.23(-0.25%)
ナスダック総合指数 26,402.42 -138.93(-0.53%)
ラッセル2000指数 2,972.37 -41.97(-1.39%)
フィラデルフィア半導体株指数(SOX) 11,469.66 -412.51
先週(8月24〜28日)の週間騰落 騰落率
ダウ工業株30種平均 +0.53%
ナスダック総合指数 +0.85%
31日の株価指数先物(日本時間13時30分時点) 水準 前日比
S&P500先物 7,692.75 -29.25
ナスダック100先物 29,346.50 -145.25
NYダウ先物 -161ドル
31日の主な予定(日本時間) 内容 市場予想 前回
21時00分 ドイツ8月消費者物価指数(CPI、前年比) 2.9% 2.8%
23時30分 米8月ダラス連銀製造業景況指数 1.6 1.3
今週の米主要指標(日本時間) 内容
9月1日 8月ISM製造業景況指数、7月JOLTS求人件数、建設支出
9月2日 8月ADP雇用統計、FRBベージュブック、製造業受注
9月3日 8月ISM非製造業景況指数、貿易収支、新規失業保険申請件数
9月4日 21時30分 8月米雇用統計
金利・商品・為替(28日) 水準
米10年債利回り(31日21時12分時点、日本経済新聞) 4.722%(-0.0055)
WTI原油先物10月限 83.34ドル(-0.19、-0.23%)
ドル円(NY終値) 160円09銭(レンジ159円41銭〜160円20銭)
ユーロドル(NY終値) 1.1585ドル
ポンドドル(NY終値) 1.3527ドル
直近の米物価指標(8月26日発表) 前年同月比 市場予想
7月PCE物価指数(総合) +3.7% +3.6%
7月PCEコア指数 +3.3% +3.2%

何があった?

先週の米国市場は、週を通してみれば上昇でした。外為どっとコムによれば、ダウ平均は週間で0.53%高、ナスダック総合は0.85%高です。週初は米長期金利の低下と買い戻しが支えとなり、週半ばにはエヌビディアとセールスフォースの好材料を受けてハイテク株が買われました。流れが変わったのは週末28日です。ジャクソンホール会議でウォーシュFRB議長がインフレへの警戒姿勢を強調したことで利上げ観測が急速に高まり、米金利が上昇。半導体株を中心に利益確定売りが強まり、3指数はそろって反落して週を終えました。

28日の下げ幅そのものは大きくありません。ダウは9ドル45セント安、S&P500は19.23ポイント安、ナスダック総合は138.93ポイント安です。ただ中身を見ると、値動きの偏りがはっきり出ています。フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は412.51ポイント下落して11,469.66となり、小型株中心のラッセル2000も41.97ポイント(1.39%)安と、大型ハイテクや内需・小型株に売りが集中しました。金利上昇に弱いとされる領域が売られ、指数全体は小幅安にとどまる、という典型的な構図です。フィスコによれば、寄り付き後はシカゴPMIや消費者信頼感の悪化を受けて売りが出ていたところに、議長講演が重なりました。

ウォーシュ議長の発言で市場が反応したのは、「インフレが目標に向けて明確に、十分なスピードで前進することを確信する必要がある」という趣旨の一節です。労働市場については安定しているとの認識を示しており、物価に軸足を置く姿勢が読み取れる内容でした。背景には、8月26日に発表された7月のPCE物価指数があります。総合が前年同月比3.7%、変動の大きい食品とエネルギーを除くコアが3.3%と、いずれも市場予想をわずかに上回り、コアは6月と同じ伸び率でした。物価の鈍化が止まっているという事実が、講演の内容に説得力を与えた形です。

金利先物市場の織り込みは、この一週間で大きく動きました。CMEのフェドウォッチによる9月FOMCでの0.25%利上げの確率は、8月21日時点の39.9%から57%へ上昇しています(bitcoin.com集計)。実現すれば政策金利の誘導目標は現行の3.50〜3.75%から3.75〜4.00%になります。外為どっとコムは、講演前の35.4%から59.5%へ上昇したという別の集計時点の数字を伝えており、いずれにせよ「五分五分未満」から「五分超」へと重心が移ったことは共通しています。

注目ポイント

今夜の直接の材料は、日本時間23時30分に発表される8月のダラス連銀製造業景況指数です。市場予想は1.6、前回は1.3。ゼロ近辺での推移が続いており、テキサス州の製造業が拡大と縮小の境目にあることを示しています。地区連銀の景況感指数は、翌日以降に出るISM製造業景況指数の先行指標として参照されることがあり、今週の指標ラッシュの入り口という位置づけです。もっとも単月のブレが大きい指標でもあるため、これ一本で相場の方向が決まる性格のものではありません。

週を通して見れば、主役は労働市場です。1日に8月のISM製造業景況指数と7月のJOLTS求人件数、2日にADP雇用統計とFRBのベージュブック、3日に8月のISM非製造業景況指数、そして4日の日本時間21時30分に8月の米雇用統計が発表されます。9月の利上げが「指標次第」という位置づけになった以上、雇用の伸びと賃金の上昇率がそのまま金利観測に跳ね返る構図です。フィスコによれば、今週はハマック・クリーブランド連銀総裁、グールズビー・シカゴ連銀総裁、ウォラーFRB理事の講演も予定されており、当局者の発言も金利を動かす材料になり得ます。

企業決算では、外為どっとコムが水曜日に予定されているブロードコムの決算を今週最大の注目材料として挙げています。デル・テクノロジーズやヒューレット・パッカード・エンタープライズといったAIインフラ関連の決算も控えており、AI投資の持続性を確かめる週でもあります。金利上昇は高PER銘柄の逆風になりやすい一方、業績の裏づけが示されれば話は変わります。金利と業績という2つの力がどちらに傾くかが、今週のハイテク株の振れ幅を決めることになりそうです。

日本市場との関係でいえば、31日の東京市場は朝方に1000円超下げた日経平均が後場に切り返し、93円63銭安の6万6311円93銭で引けました。半導体関連が売られる一方、幅広い銘柄には買いが入り、TOPIXは8日続伸しています。フィスコは、半導体・AI関連からソフトウェアや金融株へ資金がシフトする可能性を指摘していました。米国市場でも28日はSOXが大きく下げる一方でダウの下げは9ドルにとどまっており、日米で似た「中身の入れ替わり」が起きているようにも見えます。今夜の米国市場が、この構図を追認するのか、それとも金利上昇で全面安に振れるのかが、明日の東京市場の出発点になります。

ひとこと解説

地区連銀の景況感指数とは、全米12の連邦準備銀行が担当地域の企業に対して行うアンケート調査をもとにした指数です。ニューヨーク連銀、フィラデルフィア連銀、ダラス連銀などが毎月公表しています。「前月より良くなった」と答えた企業の割合から「悪くなった」の割合を引く方式(ディフュージョン・インデックス)が一般的で、ゼロが良い・悪いの分かれ目になります。今夜のダラス連銀の予想値1.6は、ゼロをわずかに上回る程度、つまり「ほぼ横ばい」を意味します。全国レベルのISM指数より先に出るため、方向感を測る手がかりとして見られます。

PCE物価指数は、個人消費支出をもとに算出する物価指標で、FRBが政策判断の際に重視する指標です。消費者物価指数(CPI)と比べると、対象品目の構成比が実際の消費行動の変化に応じて更新される点や、医療費など企業・政府が負担する部分も含む点が異なります。FRBが掲げる「2%の物価安定目標」は、このPCE総合指数の前年同月比を指しています。7月の3.7%という数値は目標の1.8倍を超える水準で、コアの3.3%も同様です。ウォーシュ議長がインフレを強調した背景には、この数字があります。

指数間で下げ方が違うことには意味があります。28日はダウが0.02%安とほぼ横ばいだった一方、SOXは大幅安、ラッセル2000は1.39%安でした。ダウは30銘柄の株価平均型で、生活必需品や金融など景気の変動に比較的強い銘柄を多く含みます。SOXは半導体関連に特化した指数で、将来の成長期待を織り込んだ高PER銘柄が中心のため、金利が上がると理論上の株価評価が下がりやすい性質があります。ラッセル2000は小型株中心で、借入コストの上昇が業績に直結しやすい企業が多く含まれます。同じ「金利上昇」というニュースでも、指数によって受け止め方が変わるのはこのためです。

出典