31日の東京株式市場で日経平均株価は反落し、前週末比93円63銭(0.14%)安の6万6311円93銭で取引を終えました。前週末のジャクソンホール会議を受けた米利上げ観測から半導体関連に売りが先行し、前引け時点では1000円を超える下げでしたが、後場にかけて急速に水準を切り上げ、ほぼ高値圏で引けています。TOPIXは9.58ポイント(0.23%)高の4156.29と8日続伸となりました。

31日の東京市場 終値 前週末比
日経平均株価 66,311.93円 -93.63(-0.14%、反落)
TOPIX 4,156.29 +9.58(+0.23%、8日続伸)
日経平均の一日の推移 水準 前週末終値(66,405.56円)比
始値(9時00分) 65,668.51円 -737.05
前引け(11時30分) 65,361.60円 -1,043.96
後場寄り付き(12時30分過ぎ) 65,676.04円 -729.52
終値(15時00分) 66,311.93円 -93.63
東証プライム市場の商い 内容
出来高 約26億7,487万株
売買代金 約9兆3,583億円
値上がり・値下がり 値上がり銘柄数が値下がりを上回る
前場終了時点の日経平均寄与度 寄与度
アドバンテスト(値下がり寄与1位) 約-535円(-535.82)
東京エレクトロン(同2位) 約-186円
上記2銘柄の合計 約-721円
ファーストリテイリング(値上がり寄与1位) +20.11
主な個別銘柄の動き 場面
キオクシアホールディングス、ソフトバンクグループ、Appier Group 大引けにかけて上昇
アドバンテスト、ソニーフィナンシャルグループ 下落
ファーストリテイリング、トヨタ自動車、スズキ、富士フイルム、東京海上 前場から上昇
東京エレクトロン、イビデン、TDK、村田製作所 前場は下落
東証業種別(前場〜後場) 方向
電気・ガス業、鉱業、輸送用機器 上昇
証券・商品先物取引業、機械、電気機器 下落
国内債券市場(31日) 水準
新発10年物国債利回り(日本経済新聞、15時05分時点) 2.940%(前営業日比+0.015%)
10年債利回り(フィスコ集計) 2.907%
2年債・5年債・20年債(フィスコ集計) 1.702%・2.184%・3.809%
長期国債先物9月限 125円97銭(始値125円98銭、高値126円10銭、安値125円88銭)
為替(東京時間31日) レンジ
ドル円 159円73銭〜160円20銭
ユーロ円 185円17銭〜185円58銭
ユーロドル 1.1579〜1.1594ドル
中国の8月PMI(31日発表、国家統計局) 数値 前月比
製造業PMI 49.8% +0.6ポイント
非製造業PMI(商務活動指数) 49.0% 横ばい
総合PMI産出指数 49.5% +0.2ポイント

何があった?

週明けの東京市場は、大幅安で始まりました。前週末28日のジャクソンホール会議でウォーシュFRB議長が物価重視の姿勢を示し、9月の米利上げ観測が強まったことが背景です。外為どっとコムによれば、CMEのフェドウォッチによる9月利上げの織り込みは講演前の35.4%から59.5%へ跳ね上がっています。米長期金利の上昇は、成長期待を織り込んだ高PER銘柄に逆風となりやすく、東京市場では半導体関連が売りの中心になりました。日経平均は737円05銭安の6万5668円51銭で寄り付き、前場は売りに押される展開が続きます。

前場の下げを主導したのは、値がさの半導体関連でした。フィスコの集計によると、前場終了時点の値下がり寄与トップはアドバンテストで、この1銘柄だけで日経平均を約535円押し下げています。2位の東京エレクトロンが約186円で、2銘柄の合計で約721円の押し下げ寄与でした。日経平均の前引けは1043円96銭安の6万5361円60銭。ほかにもイビデン、TDK、村田製作所といった電子部品関連が売られ、東証業種別では機械、証券・商品先物取引業、電気機器が下落率の上位に並びました。月末にあたることから、資産配分を調整するリバランスの売りが出やすかったことも指摘されています。

流れが変わったのは後場です。12時30分過ぎに729円52銭安の6万5676円04銭で始まった後場は、そこから一貫して水準を切り上げ、大引けにかけて下げ幅をほぼ帳消しにしました。終値は93円63銭安の6万6311円93銭で、ほぼこの日の高値圏です。日本インタビュ新聞は、キオクシアホールディングスやソフトバンクグループ、Appier Groupが急伸したと伝えており、朝方に売られたAI・半導体関連の一角に押し目買いが入ったことが戻りの原動力になったとみられます。一方でアドバンテストは終日安く、指数を押し下げる要因として残りました。同じ半導体関連でも、値がさの装置株と、需給や個別材料で動くメモリー関連とで方向が分かれた一日です。

指数間の差も特徴的でした。日経平均が0.14%安だったのに対し、TOPIXは0.23%高と8営業日続けて上昇しています。8月19日以降、TOPIXは一貫した上昇基調が続いており、この日も途切れませんでした。東証プライムの値上がり銘柄数は値下がりを上回っており、指数の見た目ほど相場全体は弱くなかったことになります。前場からファーストリテイリングやトヨタ自動車、スズキ、富士フイルム、東京海上などが買われ、業種別では電気・ガス業、鉱業、輸送用機器が上昇しました。売買代金は約9兆3583億円と、前週末の約8兆1223億円から大きく膨らみ、9兆円台に乗せています。出来高は約26億7487万株でした。

注目ポイント

株式より緊張感が高かったのは、むしろ債券市場かもしれません。共同通信は、この日の日経平均の重荷として「長期金利の上昇」を挙げています。日本経済新聞のマーケットデータでは、新発10年物国債利回りは15時05分時点で2.940%と前営業日から0.015%上昇しました(フィスコ集計の業者間の水準は2.907%と、やや低い数値が示されています)。長期国債先物9月限は125円97銭で引け、日中は125円88銭から126円10銭のレンジで推移しました。日本の長期金利は8月に入って2.9%台での推移が続いており、3%という節目が意識される水準にあります。米国の利上げ観測に加えて、国内でも日銀の追加利上げ観測が根強いことが、金利の上がりやすい地合いをつくっています。

為替は、朝方に警戒された円安の加速までは起きませんでした。ドル円は前週末のニューヨーク市場で160円09銭で引けたあと、東京時間には160円20銭まで上昇したものの、その後は159円73銭まで水準を下げています。フィスコは、160円を上抜けたことで為替介入への警戒感が一段と強まっていると指摘しており、財務省がこの水準を意識しているとの見方が上値を抑えた形です。もっとも下値も限られ、レンジは50銭弱にとどまりました。9月の米利上げが指標次第という見方に傾いたことで、前週に一気に進んだ織り込みが一部巻き戻された面もあります。

海外では、31日午前に中国の8月の購買担当者景気指数(PMI)が発表されました。製造業PMIは49.8%と前月から0.6ポイント上昇し、市場予想を上回りましたが、好不況の分かれ目である50%は2カ月連続で下回っています。調査対象21業種のうち16業種で前月から改善しました。企業規模別では大型企業が50.6%(前月比+1.1ポイント)と50%台を回復した一方、中型企業は49.4%(同-0.3ポイント)、小型企業は47.9%(同+0.5ポイント)と、規模による差が残っています。非製造業の商務活動指数は49.0%で前月と横ばい、総合PMI産出指数は49.5%(同+0.2ポイント)でした。改善はしているものの、収縮圏にとどまるという評価です。

今週は、米国の労働市場を測る指標が連日で控えています。1日に8月のISM製造業景況指数と7月のJOLTS求人件数、2日にADP雇用統計、3日に8月のISM非製造業景況指数、そして4日(日本時間21時30分)に8月の米雇用統計が発表されます。9月の利上げが「指標次第」という位置づけになった以上、これらの結果が為替と金利を通じて日本株にも波及しやすい構図です。この日の東京市場が示したように、朝方の外部環境で大きく振れても中身では買いが入るという展開は、今週も繰り返される可能性があります。

ひとこと解説

指数寄与度は、個々の銘柄が日経平均を何円押し上げた(押し下げた)かを示す数値です。日経平均は構成銘柄の株価を単純に合計して除数で割る「株価平均型」の指数なので、株価水準の高い銘柄(値がさ株)ほど指数への影響が大きくなります。この日、アドバンテスト1銘柄で約535円の押し下げというのは、日経平均の前引けの下げ幅1043円96銭の半分以上を1銘柄で説明できてしまう計算です。指数が下げていても、それが市場全体の下落なのか、特定の値がさ株の下落なのかは、寄与度を見ると区別がつきます。

日経平均とTOPIXの方向が分かれるのは、指数の作り方が違うからです。TOPIXは東証の対象銘柄を時価総額で加重した指数で、日経平均のように株価水準の高い銘柄が突出して効くことはありません。この日のように日経平均がマイナス、TOPIXがプラスという組み合わせは、「値がさのハイテク株は下げたが、幅広い銘柄は上げた」という状態を意味します。値上がり銘柄数が値下がりを上回っていたことも、これと整合的です。ニュースの見出しになるのは日経平均ですが、相場の広がりを見るならTOPIXや騰落銘柄数もあわせて確認すると、印象が変わることがあります。

月末のリバランスとは、年金基金や投資信託などの機関投資家が、月末や四半期末に資産配分を目標比率に戻す売買のことです。たとえば株式が値上がりして目標比率を超えた場合、超過分を売って債券などに振り向けます。相場観に基づく売買ではなく、あらかじめ決められたルールに従った機械的な売買である点が特徴で、月末の特定の時間帯に売買代金が膨らむ一因になります。この日の売買代金が9兆円台に乗せた背景にも、こうした月末要因があったとみられます。ただし、リバランスによる価格の振れは一時的なものにとどまることが多いとされます。

出典