来週(8月31日〜9月4日)は、米国の労働市場に関するデータが月曜から金曜まで途切れずに続き、4日に発表される8月の雇用統計が週の最大の材料になります。28日のジャクソンホール講演でウォーシュFRB議長がインフレへの警戒を示し、金利先物が織り込む9月の利上げ確率が6割台まで上昇したばかりです。その観測が、実際の経済指標で裏づけられるのか修正されるのかが問われる週になります。まずは足元の位置から確認します。

項目 数値
日経平均 先週末終値(8/28) 66,405.56円(前日比 +273.58円、+0.41%)
TOPIX 先週末終値(8/28) 4,146.71(前日比 +29.49、+0.72%)
東証プライム売買代金(8/28) 概算8兆1,223億円
日経平均の週間騰落(8/24〜8/28) +389円20銭(+0.59%、2週ぶりの上昇)
来週の予想レンジ(ザイ・オンライン) 64,000〜69,000円
来週の予想レンジ(外為どっとコム) 65,000〜68,000円
日経225先物の予想レンジ(フィスコ) 64,000〜68,000円
ドル円 予想レンジ(外為どっとコム・ハロンズFX) 157円50銭〜160円80銭
S&P500 予想レンジ(外為どっとコム) 7,550〜7,900ポイント
週末(8月28日)の米国市場 終値 前日比
NYダウ工業株30種 53,559.99ドル -9.45(-0.02%)
S&P500種株価指数 7,711.76 -19.23(-0.25%)
ナスダック総合指数 26,402.42 -138.93(-0.52%)
米国債利回り(8月28日) 終値水準 前日比
2年債 4.36% 約+12bp
10年債 4.72% 約+5bp
30年債 5.22% 約+2bp
2年-10年の利回り差 36.60bp近辺 平坦化
2年-30年の利回り差 85.90bp近辺 平坦化
CME FedWatchが示す利上げ確率(8月28日時点) 確率
9月FOMCで政策金利が3.50〜3.75%となる確率 約61%
10月FOMCで同水準となる確率 約49%
年内に利上げが行われる確率 約67%

来週の注目日程

日付 予定
8/31(月) 日本:7月鉱工業生産、7月小売業販売額。G20財務相・中央銀行総裁会議が開幕(米アッシュビル、9/1まで)
9/1(火) 日本:4〜6月期法人企業統計、8月消費動向調査。米:8月ISM製造業景況指数、7月JOLTS求人件数(23:00)
9/2(水) 日本:8月マネタリーベース。米:8月ADP雇用統計(21:15)、ベージュブック。加:カナダ銀行政策金利(22:45、予想2.25%)
9/3(木) 米:8月ISM非製造業景況指数(23:00、予想54.3・前回54.1)、新規失業保険申請件数
9/4(金) 日本:7月家計調査。米:8月雇用統計(21:30、非農業部門雇用者数の予想+5.5万人・前回-2.3万人、失業率の予想4.1%・前回4.1%)

週の入口はG20です。 8月31日から9月1日にかけて、米ノースカロライナ州アッシュビルでG20財務相・中央銀行総裁会議が開かれます。外為どっとコム(ハロンズFX)は、片山財務相とベッセント米財務長官が接触する初めての機会になるとして、為替に関するやり取りの有無を焦点に挙げています。フィスコも、週前半のG7・G20での「外圧の高まりの有無」を注視すべき点として挙げました。7月30日に日米協調介入が実施され、その後ドル円が160円台を回復した直後というタイミングです。

9月1日からは、米国の労働市場データが立て続けに出てきます。 1日にISM製造業景況指数とJOLTS(雇用動態調査)求人件数、2日にADP雇用統計とベージュブック(地区連銀経済報告)、3日にISM非製造業景況指数と新規失業保険申請件数、そして4日に8月の雇用統計です。財経新聞によると、非農業部門雇用者数の市場予想は前月比5万5,000人増で、前回7月は2万3,000人の減少でした。失業率の予想は4.1%で、前回と同水準です。

フィスコは、この一連の指標について「大幅に想定を下振れない限り、早期の追加利上げ実施を織り込む動きが優勢となっていく」との見方を示しています。 雇用統計についても、前回悪化の反動から強い内容が予想され、早期利上げ観測により長期金利が高水準を維持すればドル買いに振れやすい、としています。

国内では、月末月初の経済統計が並びます。 31日に7月の鉱工業生産と小売業販売額、9月1日に4〜6月期の法人企業統計と8月の消費動向調査、2日に8月のマネタリーベース、4日に7月の家計調査が発表されます。加えて外為どっとコムは、9月2日の日銀・高田創審議委員の発言を、9月18日の金融政策決定会合をにらむ材料として挙げています。

企業決算では、ザイ・オンラインがブロードコムとヒューレット・パッカード・エンタープライズの発表を来週の注目材料として挙げています。 8月26日のエヌビディア決算(5〜7月期の売上高962億ドル、前年同期比106%増、うちデータセンター部門890億ドル・同117%増)を受けたAI関連の評価が、別の企業の数字でどう確かめられるかという週になります。

注目ポイント

  • 予想レンジは各社で幅がありますが、上下の目安はおおむね重なっています。 ザイ・オンラインは6万4000〜6万9000円、外為どっとコムは6万5000〜6万8000円、フィスコは日経225先物で6万4000〜6万8000円を示しています。外為どっとコムは、足元で6万5000〜6万7000円台のレンジが続いているとしたうえで、6万7000〜6万7500円付近が上値のメドとして意識され、ここを明確に上抜ければ6万9000円台が視野に入る一方、下値のサポートは6万5000円としています。予想レンジは「そうなる」という保証ではなく、各社が想定する振れ幅の目安です。

  • 上値を抑えている要因として、複数の見方が米長期金利を挙げています。 外為どっとコムは、米長期・超長期ゾーンの金利上昇が上値を抑えているとし、その背景としてインフレ懸念、財政赤字と国債増発、AI投資に伴う社債発行の増加という3点を挙げました。フィスコも、米長期金利の上昇が国内ハイテク株にとって逆風となる可能性が高いと指摘しています。8月28日の米10年債利回りは4.72%、30年債は5.22%です。

  • 指標の「強い・弱い」よりも、それが金利にどう波及するかという見方が目立ちます。 外為どっとコムのS&P500見通しは、経済指標を単純に強弱で判断するのではなく、その結果がFRBの政策観測を通じて米金利に影響するかを考える必要があるとしています。同社の見立てでは、S&P500の一段高には米長期金利の落ち着きが必要で、直近高値7,815ポイント前後が抵抗、下値のメドは7,625〜7,650ポイントと7,530〜7,550ポイントです。雇用が強ければ株高、という単純な図式では読みにくい局面といえます。

  • 国内では、9月中間期末の権利取りが意識される時期に入ります。 フィスコは、9月中間期末の権利取りを見据えるとグロース株よりバリュー株に優位性があるとし、9月はハイテク株に慎重な姿勢が必要との見方を示しました。同社が意識するセクターとしては、ブロードコム決算をにらむ半導体関連、セールスフォースの好決算を受けた情報ソフト株、防衛関連が挙がっています。ザイ・オンラインも、キオクシアホールディングス、アドバンテスト、東京エレクトロンといった半導体関連の動向に注目するとしています。

  • 為替は160円をはさんだ攻防が想定されています。 外為どっとコム(ハロンズFX)は来週のドル円について157円50銭〜160円80銭のレンジを予想し、上値では100日移動平均線の160円00銭を突破できるかが焦点、下値では200日移動平均線の158円42銭が支持になるとしています。同社は、これを割り込めば157円台への調整が強まる可能性にも触れました。9月の日銀利上げ観測自体は維持されているとしており、日米双方の金融政策観測が同時に動く週になりそうです。

ひとこと解説

米雇用統計は、なぜ月に一度これほど注目されるのでしょうか。 FRB(米連邦準備理事会)には「物価の安定」と「雇用の最大化」という二つの使命があり、金融政策はこの両方をにらんで決められます。雇用統計はそのうち雇用側の状況を月次で示す代表的な統計で、非農業部門雇用者数(前月からの増減)と失業率が特に見られます。今回のように前回が2万3,000人の減少で、今回の予想が5万5,000人の増加という場合、実際の数字が予想からどちらにどれだけ離れるかで、政策の見通しが動きやすくなります。

あわせて覚えておきたいのがISM景況指数です。 全米供給管理協会(ISM)が企業の購買担当者へのアンケートをもとに作る指数で、製造業と非製造業(サービス業)の2種類があります。50を上回れば景気の拡大、下回れば縮小を示すとされる目安があり、雇用統計より数日早く出るため、月初の景気の温度感を測る指標として使われます。米国経済はサービス業の比重が大きいため、非製造業の数字も同じくらい注目されます。

ベージュブックという聞き慣れない資料も来週出てきます。 これは全米12の地区連銀が管内の企業などから集めた聞き取りをまとめた経済報告で、表紙が茶色いことからこう呼ばれます。統計の数字とは違い、現場の企業が価格や人手についてどう語っているかが載るため、統計に表れる前の変化を読み取る材料として使われます。FOMC(米連邦公開市場委員会)の約2週間前に公表されるのが通例で、来週の公表もその位置づけにあたります。

出典