今週(8月24日〜28日)の東京株式市場を振り返ります。前週に日米の長期金利上昇で3週ぶりに下げた相場は、今週は静かに水準を戻しました。日経平均株価は週間で389円20銭高と2週ぶりに反発し、TOPIX(東証株価指数)は7営業日続けて上昇しています。ただし1日の値動きを見ると、朝の高安がそのまま終値につながらない日が続きました。相場が本当に動いたのは、週末28日夜のジャクソンホール会議です。就任後初の基調講演に臨んだウォーシュFRB議長がインフレへの強い警戒を示し、金利先物が織り込む9月の利上げ確率は約40%から約60%へと跳ね上がりました。ドル円は7月30日の為替介入以降で初めて160円台を回復しています。まずは数字から見ていきます。
| 日付 | 日経平均終値 | 前営業日比 | TOPIX終値 | 前営業日比 |
|---|---|---|---|---|
| 8/24(月) | 65,528.09円 | -488.27(-0.74%) | 4,073.29 | +6.00(+0.15%) |
| 8/25(火) | 65,856.43円 | +328.34(+0.50%) | 4,093.67 | +20.38(+0.50%) |
| 8/26(水) | 66,262.16円 | +405.73(+0.62%) | 4,111.02 | +17.35(+0.42%) |
| 8/27(木) | 66,131.98円 | -130.18(-0.20%) | 4,117.22 | +6.20(+0.15%) |
| 8/28(金) | 66,405.56円 | +273.58(+0.41%) | 4,146.71 | +29.49(+0.72%) |
週間では、日経平均は前週末(8月21日)の終値66,016円36銭から**389円20銭高い66,405円56銭(+0.59%)で1週間を終え、2週ぶりの上昇となりました。TOPIXは4,067.29から4,146.71へ79.42ポイント高(+1.95%)**と、日経平均の3倍を超える上昇率です。指数の中身が幅広く買われた週だったことがわかります。
| 米国市場の週間騰落 | 8月21日終値 | 8月28日終値 | 週間の変化 |
|---|---|---|---|
| NYダウ工業株30種 | 53,277.01ドル | 53,559.99ドル | +282.98(+0.53%) |
| S&P500種株価指数 | 7,674.37 | 7,711.76 | +37.39(+0.49%) |
| ナスダック総合指数 | 26,180.45 | 26,402.42 | +221.97(+0.85%) |
| 週末(8月28日)の米国市場 | 終値 | 前日比 |
|---|---|---|
| NYダウ工業株30種 | 53,559.99ドル | -9.45(-0.02%) |
| S&P500種株価指数 | 7,711.76 | -19.23(-0.25%) |
| ナスダック総合指数 | 26,402.42 | -138.93(-0.52%) |
| 今週の主な経済指標・決算 | 結果 | 予想・前回 |
|---|---|---|
| 米 8月消費者信頼感指数(8/25) | 7カ月ぶりの低水準 | — |
| 米 7月PCE価格指数・前年比(8/26) | +3.7% | 予想+3.6% |
| 同・コアPCE価格指数(前年比) | +3.3% | 予想と一致 |
| 米 4〜6月期実質GDP改定値(前期比年率) | +1.5% | 速報値から変わらず |
| エヌビディア5〜7月期 売上高(8/26引け後) | 962億ドル(前年同期比2倍) | 予想を上回る |
| 同・次期売上高見通し | 1,080億ドル | 予想を上回る |
| 米 新規失業保険申請件数(8/27) | 20万3,000件 | — |
| 日本 8月東京都区部CPI・コア(8/28) | 前年比+1.8% | 予想+1.7%、前月+1.7% |
| 同・生鮮食品及びエネルギーを除く総合 | 前年比+2.0% | — |
| 日本 7月完全失業率(8/28) | 2.4% | 前月2.5% |
| 同・有効求人倍率 | 1.18倍 | 前月1.18倍 |
| 金利・為替・商品 | 水準 | 備考 |
|---|---|---|
| 米10年債利回り(8月28日) | 一時4.69% | 週を通じて4.6〜4.7%台 |
| 米2年債利回り(同・講演後) | 4.23%前後→4.29%台 | ウォーシュ講演を受けて上昇 |
| ドル円(8月29日1時時点) | 160.04円 | 7月30日の介入後で初の160円台回復 |
| ドル円(東京時間・8月28日) | 159円20〜40銭台 | 講演前は方向感に乏しい展開 |
| NY原油(WTI・8月25日) | 81ドル台 | 前日比約4.5%下落 |
| 9月の米利上げ確率(金利先物) | 約40%→約60% | ウォーシュ議長の講演後 |
何があった?
24日(月)は日経平均が488円27銭安と続落する一方、TOPIXは3日続伸しました。 指数と中身の方向が食い違う展開は前週末21日から2営業日続いています。アドバンテストとソフトバンクグループの2銘柄だけで日経平均を563円押し下げた一方、東証プライムの値上がり銘柄は843と値下がりの662を上回りました。売買代金は約7兆636億円と4月以来の低水準です。米国市場ではベッセント財務長官による対イラン制裁の発表とトランプ大統領の対カナダ50%関税表明が重なり、ダウは140ドル15セント高となる一方でナスダックは0.76%安と、資金の向かう先が分かれました。
25日(火)は朝方に918円安まで売られたあと切り返し、328円34銭高で3日ぶりに反発しました。 前日の米半導体株安を引き継いで下げて始まった相場が、前引けにかけて水準を戻すという一日でした。古河電気工業が10.34%高、イビデンが6.30%高となるなど、前週に売られた電線・電子部品株に買い戻しが入っています。同日の米国市場では、イランをめぐる緊張の緩和観測からWTI原油が4%超下落し、長期金利も低下したことで主要3指数がそろって上昇しました。
26日(水)は405円73銭高で続伸し、TOPIXは5日続伸となりました。 朝方はエヌビディアの決算発表を控えた持ち高調整で半導体関連が売られ、下げ幅は一時450円を超えましたが、日銀の利上げ観測を背景に銀行や証券、保険といった金融関連が買われて流れが変わりました。東証プライムの売買代金は6兆7,057億円と、約4カ月ぶりに7兆円を割り込んでいます。この日の米国市場では7月のPCE価格指数が前年比3.7%と市場予想の3.6%を上回り、3指数はそろって小幅安で終えました。
そして26日の米国市場引け後、エヌビディアが5〜7月期決算を発表しました。 売上高は962億ドルと前年同期比で2倍を超え、次期の売上高見通しも1,080億ドルと市場予想を上回る内容です。時間外では粗利益率の低下見通しを嫌気して一度下げましたが、翌27日の通常取引では8.74%高と大きく買われました。同じ日、セールスフォースが22.58%高、クラウドストライクが20.50%高、オクタが28.63%高となり、AI・ソフトウエア関連が全面高です。ナスダック総合は1.57%高、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は2.33%高となりました。
27日(木)の東京市場は、その好決算を受けて朝方692円53銭高まで上昇したものの、終値は130円18銭安と3日ぶりに反落しました。 メモリー価格の上昇が半導体各社のコストに響くとの見方から、買いが続かなかった形です。この日は日銀の氷見野良三副総裁が埼玉県での講演で「毎回の金融政策決定会合において、しっかりと議論する」と述べ、基調的な物価上昇率について「これまで以上に上振れリスクを意識する必要がある」との認識を示しました。9月18日の決定会合に向けた思惑が、銀行株を支える構図が続いています。
28日(金)は273円58銭高で反発し、TOPIXは7日続伸で週を終えました。 前日の米ハイテク株高を受けて上げ幅は一時710円84銭まで広がりましたが、後場にかけて縮小しています。朝8時30分に発表された8月の東京都区部CPI(生鮮食品を除く)は前年比1.8%上昇と市場予想の1.7%を上回り、7月の1.7%からも伸びが拡大しました。7月の完全失業率は2.4%と1年ぶりの低水準です。物価と雇用の両方が日銀にとって利上げを検討しやすい方向に振れた一日でした。
この週の締めくくりが、日本時間28日23時のウォーシュFRB議長による初のジャクソンホール基調講演です。 議長は、基調的なインフレが目標に向かって十分な速度で低下していると確信できなければ「我々にはすべきことがある(work to do)」と述べ、短期金利が二つの使命を果たすための主要な手段であると明言しました。7月のPCE価格指数は3.7%で、インフレは6年以上にわたり目標を上回っています。金利先物が織り込む9月の利上げ確率は講演前の約40%から約60%へ上昇し、米2年債利回りは4.23%前後から4.29%台へ、ドル円は160.04円まで上昇しました。株式市場は講演直後こそダウが208ドル高まで買われましたが、引けにかけて伸び悩み、3指数はそろって小幅安で1週間を終えています。
注目ポイント
今週の日経平均の上げ幅は0.59%にとどまりましたが、TOPIXは1.95%上昇しました。 この差は、相場を押し上げたのが一部の値がさ半導体株ではなく、銀行・証券・保険といった金融関連や、内需・サービス関連を含む幅広い銘柄だったことを示しています。日銀の利上げ観測が強まる局面で金融株が買われるのは、政策金利が上がると貸出金利と預金金利の差(利ざや)が広がるとの見方が背景にあります。前週までの「金利上昇=株安」という単純な図式とは、様子が変わってきました。
エヌビディアの決算は、株価を1日は動かしましたが、週全体を動かす力にはなりませんでした。 27日にナスダックが1.57%高と反発したあと、28日は0.52%安です。売上高が前年同期比で2倍という数字が出てもなお指数が伸び悩んだ背景には、次期の粗利益率見通しやメモリー価格の上昇といった「中身」への目線があります。決算の見出しの数字だけでなく、利益率や見通しの前提まで見る投資家が増えている局面といえます。
売買代金の細り方も今週の特徴でした。 24日は約7兆636億円と4月以来の低水準、26日は6兆7,057億円と約4カ月ぶりに7兆円を割り込んでいます。夏枯れと呼ばれる季節要因に加え、エヌビディア決算とジャクソンホールという2つの大きなイベントを前に、動きにくい地合いが続いたためとみられます。28日は約8兆1,223億円まで回復しました。
来週以降の焦点は、9月の日米の金融政策会合に移ります。 米国では9月のFOMC、日本では9月18日の日銀金融政策決定会合が控えます。今週明らかになったのは、FRBが利上げの可能性を排除していないこと、そして日銀も追加利上げの議論を続ける姿勢であることです。ドル円が160円台に乗せたことで、為替が日本の物価と政策判断に与える影響も、あらためて論点になりそうです。
ひとこと解説
「利上げ確率が40%から60%に上昇」とは何を指すのでしょうか。 これは誰かがアンケートを取った数字ではなく、金利先物(フェデラルファンド金利先物)という金融商品の価格から逆算された数値です。この先物は将来の政策金利の水準を売買する商品なので、その価格を見れば「市場参加者が全体としてどの程度の確率で利上げを見込んでいるか」を推定できます。実際にお金を賭けている人たちの総意が数字になっている、と考えるとイメージしやすいかもしれません。
ですからこの確率は予言ではなく、あくまで「今の時点で市場がどう身構えているか」を表す温度計です。今週のように議長の一言で40%から60%へ動くことも珍しくありませんし、その後の経済指標次第でまた動きます。ニュースでこの数字を見かけたときは、確率そのものより「前と比べてどちらに動いたか」に注目すると、市場の空気の変化を読み取りやすくなります。
もう一つ、「ジャクソンホール会議」も今週のキーワードでした。 これは毎年8月末に米ワイオミング州ジャクソンホールで開かれる経済シンポジウムで、世界の中央銀行関係者や経済学者が集まります。FRB議長がここで金融政策の方向性を示唆することが多いため、市場が最も注目する年中行事の一つになっています。今回はウォーシュ議長にとって就任後初の登壇であり、その分だけ関心が集まりました。
出典
- 日経平均株価が反発 終値273円高の6万6405円 - 日本経済新聞
- ダウ工業株30種平均(NYダウ)【DJI】の株価・基本情報 - 株探(米国株)
- S&P500種株価指数【SPX】の株価・基本情報 - 株探(米国株)
- NASDAQ総合指数【IXIC】の日足株価時系列データ - 株探(米国株)
- US Stocks Close Lower; Nasdaq Falls 0.52% - Bloomingbit
- Warsh says Fed has 'work to do' if above-target inflation persists - Nikkei Asia
- ドル円は160円台を回復。ウォーシュ議長講演を受けたドル全面高=NY為替 - みんかぶFX
- ドル高止まり、ウォーシュFRB議長のタカ派発言織り込む=ジャクソンホール講演 - 株探ニュース
- ウォーシュFRB議長、ジャクソンホール基調講演を開始 - Investing.com