日本時間27日22時30分に始まる米国市場は、前日の取引終了後に相次いだハイテク決算が主役になりそうです。エヌビディアが同社として初めて1年先の売上高見通しを示し、2028年1月期に70%の増収を見込むと説明したことが好感され、寄り付き前の時間外取引では株価が5〜6%上昇しています。セールスフォースやクラウドストライクの決算も市場予想を上回りました。21時30分に発表された新規失業保険申請件数は20万3000件と、低水準での推移が続いています。

26日の米国市場(前日終値) 終値 前日比
ダウ工業株30種平均 53,463.88ドル -113.52(-0.21%)
S&P500種株価指数 7,675.70 -1.58(-0.02%)
ナスダック総合指数 26,130.20 -21.10(-0.08%)
27日の株価指数先物(日本時間夕方時点) 水準 前日比
S&P500先物 7,723.25 +33.25(+0.43%)
ナスダック100先物 29,581.25 +291.75(+1.00%)
ダウ先物 53,485.00 -36.00(-0.07%)
ラッセル2000先物 3,008.60 -1.50(-0.05%)
27日21時30分発表の米経済指標 結果 前週
新規失業保険申請件数(8月22日までの週) 20万3000件 20万7000件(4000件減)
4週移動平均 20万5500件
継続受給者数 177万8000人
エヌビディアの1年先ガイダンス 内容
2028年1月期(FY2028)の増収率見通し 前年比+70%
従来の市場予想 約5,700億ドル(+44%程度)
70%成長が示唆する売上高規模 6,900億〜7,000億ドル程度
ジェンスン・フアンCEOの説明 「70%成長分の供給は確保している」「需要はそれをはるかに上回る」
特記事項 同社が1年先の見通しを示すのは初めて
27日寄り付き前の主な個別株(時間外・プレマーケット) 騰落率 材料
エヌビディア +5〜6% 決算と1年先ガイダンス
セールスフォース +14% 通期見通しを上方修正
クラウドストライク +10% 新規ARRが過去最高
オクタ +19%(時間外) サブスクリプション受注残が前年比17%増
ダラー・ゼネラル +13% 1株利益2.48ドル(予想2.00ドル)
ダラー・ツリー -4% 8〜10月期の1株利益見通しが予想を下回る
ディックス・スポーティング・グッズ -28% 業界環境の悪化に言及
セールスフォース 5〜7月期(FY27 Q2)決算 実績・見通し
売上高 113億4,500万ドル(前年同期比+約11%)
通期(FY2027)売上高見通し 461億〜464億ドル(3億ドル上方修正)
8〜10月期 売上高見通し 114億2,000万〜115億ドル
Agentforce・Data 360のARR 約39億ドル(前年比+210%超)
時間外の株価 13%前後の上昇
クラウドストライク 5〜7月期決算 実績
売上高 14億7,000万ドル(予想14億4,000万ドル、前年同期比+26%)
調整後1株利益 0.31ドル(予想0.29ドル)
新規ARR(純増) 3億3,300万ドル(前年比+51%、過去最高)
8〜10月期 売上高見通し(中央値) 15億3,000万ドル
今後の日程(日本時間) 内容
8月28日 0時 8月カンザスシティ連銀製造業景況指数
8月27〜29日 ジャクソンホール会議
8月28日 23時 ウォーシュFRB議長の基調講演(議長就任後初)

何があった?

今夜の米国市場を動かす最大の材料は、前日の取引終了後に発表されたエヌビディアの決算そのものよりも、決算説明会で示された「1年先の見通し」です。同社はこれまで四半期ごとの見通ししか示してきませんでしたが、今回は2028年1月期の売上高が前年比70%増える見込みだと説明しました。ジェンスン・フアンCEOは説明会で「70%成長分の供給は確保している」と述べたうえで、需要はそれをはるかに上回るとも語っています。これまで市場が想定していた同期の売上高はおよそ5,700億ドル(増収率44%程度)だったとされ、70%成長ならば6,900億〜7,000億ドル規模になる計算です。1,000億ドル以上の上振れとなるため、市場では驚きをもって受け止められました。

27日朝の東京市場では、エヌビディアの粗利益率見通しが8〜10月期に74.0%と前四半期の75.0%から下がることが警戒され、半導体関連が失速しました。日経平均は朝方に690円あまり上げたあと3日ぶりに反落し、130円18銭安の6万6131円98銭で引けています。しかし米国の時間外取引では、利益率よりも1年先の需要見通しのほうが重くみられている格好です。エヌビディア株は米東部時間の寄り付き前に5〜6%上昇し、株価指数先物ではナスダック100先物が1.00%高、S&P500先物が0.43%高となる一方、ハイテク比率の低いダウ先物は0.07%安と方向が分かれています。

決算はエヌビディアだけではありませんでした。セールスフォースは5〜7月期の売上高が113億4,500万ドルと前年同期比で約11%増え、2027年1月期通期の売上高見通しを3億ドル引き上げて461億〜464億ドルとしました。AI関連ではAgentforceとData 360の年間経常収益(ARR)が約39億ドルと前年比210%超の伸びを示しています。同社はまたAnthropicとの提携を拡大し、Claudeの利用者がSalesforceのデータや37種類の営業向け機能を使えるようにする「Claudeforce」を発表しました。株価は時間外で13%前後上昇し、寄り付き前には14%高まで買われています。

クラウドストライクは売上高が14億7,000万ドルと市場予想の14億4,000万ドルを上回り、前年同期比26%の増収となりました。調整後1株利益は0.31ドル(予想0.29ドル)です。特に注目されたのが新規の年間経常収益で、純増額が3億3,300万ドルと前年比51%増えて過去最高を記録しました。同社はAIエージェント関連の需要が寄与したと説明しています。オクタも時間外で19%高となり、サブスクリプションの受注残が前年比17%増えたことが材料視されました。

一方、小売の決算は明暗が分かれています。ダラー・ゼネラルは1株利益2.48ドルと市場予想の2.00ドルを上回り、通期見通しも引き上げて13%高となりました。同じディスカウント業態のダラー・ツリーは4〜6月期こそ予想を上回ったものの、8〜10月期の1株利益見通しが0.80〜0.95ドルと市場予想の1.39ドルを下回り、4%安となっています。最も大きく下げたのはディックス・スポーティング・グッズで、28%安と急落しました。競合他社の値引き競争が激しく、消費者の反応も鈍いとして、業界の逆風がさらに強まる可能性に経営陣が言及したためです。

注目ポイント

経済指標では、日本時間21時30分に発表された新規失業保険申請件数が8月22日までの週で20万3000件と、前週の20万7000件から4000件減りました。4週移動平均は20万5500件、継続受給者数は177万8000人です。7月半ばにおよそ60年ぶりの低水準となる18万9000件を付けて以来、申請件数は低い水準で推移しており、解雇が抑制された状態が続いていることを示しています。雇用の底堅さは物価の高止まりと組み合わさると、利上げ観測を支える方向に働きやすい材料です。日本時間28日0時には8月のカンザスシティ連銀製造業景況指数の発表も控えています。

もう一つ、市場で話題になっているのがエヌビディアによる企業買収の報道です。米メディアのThe Informationは、同社がオープンソースAIモデルの共有プラットフォームであるHugging Faceを129億ドルで買収することに合意したと報じました。ただし、正式な契約はまだ結ばれておらず、交渉が破談になる可能性も残ると伝えられています。両社とも公式には確認していないため、現時点では報道の域を出ません。Hugging Faceは2023年の資金調達で評価額45億ドルとされていた企業で、報道が事実であれば、エヌビディアがハードウェアからソフトウェアやモデル配布の領域へさらに踏み込むことになります。

今週最大のイベントは、日本時間28日23時に予定されるウォーシュFRB議長のジャクソンホール会議での基調講演です。議長就任後としては初めての講演にあたり、新議長が金融政策の枠組みをどう説明するかに関心が集まっています。市場では9月のFOMCでの利上げが4割程度、日銀の9月利上げが9割程度織り込まれているとの見方が伝えられており、日米双方の金融政策が同時に意識されやすい局面です。為替は27日の東京時間を通じて1ドル=159円台前半で推移しました。今月の高値は18日に付けた159円78銭前後、今週の安値は158円71銭前後とされ、レンジ内の動きが続いています。

ひとこと解説

**ガイダンス(会社見通し)**とは、企業が自ら示す今後の業績予想のことです。米国企業は日本のように通期の予想を必ず開示する慣行がなく、四半期ごとに次の四半期の売上高や利益率のレンジを示すのが一般的です。株価は終わった期の実績よりもこれから先の見通しに反応しやすいため、実績が市場予想を上回ってもガイダンスが弱ければ株価が下がる、という現象がしばしば起こります。今回のエヌビディアのように、企業が普段は示さない1年先の数字に踏み込むと、それ自体が経営陣の自信を示すメッセージとして受け取られることがあります。ただしガイダンスはあくまで会社側の想定であり、達成が保証されたものではない点には注意が必要です。

**プレマーケット(寄り付き前取引)**は、米国市場の通常取引が始まる午前9時30分(米東部時間)より前に行われる時間外取引です。決算の多くは通常取引の終了後に発表されるため、その反応はまず時間外取引に現れ、翌日のプレマーケットへと引き継がれます。ここでの値動きは通常取引が始まったあとに縮んだり反転したりすることも多く、参加者が限られるぶん値が飛びやすい性質があります。ニュースで「時間外で◯%高」と報じられていても、その日の終値が同じ方向で終わるとは限りません。

出典