26日の米国市場は、ダウ工業株30種平均が113ドル52セント安の5万3463ドル88セント、S&P500種が0.02%安、ナスダック総合が0.08%安と、主要3指数がそろって小幅に下落しました。7月のPCE価格指数が前年比3.7%と市場予想の3.6%を上回り、インフレの高止まりが意識されています。取引終了後に発表されたエヌビディアの5〜7月期決算は売上高が前年同期比2倍の962億ドルと市場予想を上回りましたが、次期の粗利益率見通しが低下したことなどから、時間外取引で株価は下落しました。今日の東京市場は、寄り付きからこの決算を織り込む展開になりそうです。

26日の米国市場 終値 前日比
ダウ工業株30種平均 53,463.88ドル -113.52(-0.21%)
S&P500種株価指数 7,675.70 -1.58(-0.02%)
ナスダック総合指数 26,130.20 -21.10(-0.08%)
ラッセル2000指数 +0.50%
26日発表の米経済指標 結果 予想・前回
7月PCE価格指数(前年比) +3.7% 予想+3.6%
同(前月比) +0.2% 6月から加速
7月コアPCE価格指数(前年比) +3.3% 予想と一致
7月実質個人消費支出(前月比) 横ばい
4-6月期実質GDP(改定値、前期比年率) +1.5% 速報値から変わらず、予想と一致
同・個人消費(改定値) +3.4% 速報値+3.2%から上方修正
26日の主な個別株の動き 騰落率・材料
アバクロンビー&フィッチ +35%(決算が予想を上回り通期見通しを上方修正)
メタ・プラットフォームズ +1%超(SNS依存訴訟で29州と約167億ドルの和解に合意)
エヌビディア -1.6%(取引時間中、決算発表を控えた持ち高調整)
アリババ集団 下げ渋り(AI投資向け100億ドルの株式売り出しで一時急落)
エヌビディア 5〜7月期決算(26日取引終了後) 実績・見通し
売上高 962億ドル(前年同期比+106%、市場予想約922億ドル)
1株利益 2.22ドル(前年同期1.05ドル、+111.4%)
粗利益率(実績) 75.0%(前年同期72.7%)
8〜10月期 売上高見通し 1,080億ドル±2%(市場予想約1,039億ドル)
8〜10月期 粗利益率見通し 74.0%(前四半期の75.0%から低下)
時間外の株価 2%程度の下落
前営業日(26日)の東京市場 終値 前日比
日経平均株価 66,262.16円 +405.73(+0.62%、続伸)
TOPIX 4,111.02 +17.35(+0.42%)
東証プライム 売買代金 6兆7,057億円 約4カ月ぶりの低水準
東証プライム 売買高 18億5,350万株
その他の指標 水準 備考
米10年債利回り 4.67%前後 26日の取引中に上昇
ドル円 159円42〜43銭 27日2時時点(共同通信)
NY原油 続落 ホルムズ海峡をめぐる供給懸念の後退
今後の主な日程(日本時間) 内容
8月27〜29日 ジャクソンホール会議(カンザスシティ連銀主催)
8月28日 23時(米東部時間10時) ウォーシュFRB議長の講演(議長として初の基調講演)

何があった?

26日の米国市場を動かした最大の材料は、7月のPCE価格指数でした。総合の前年比は3.7%と市場予想の3.6%をわずかに上回り、前月比では0.2%の上昇と6月から伸びが加速しています。FRBが最も重視するコアPCEは前年比3.3%と予想通りでしたが、物価が目標を大きく上回る水準で高止まりしている構図は変わりませんでした。

この結果を受けても、FRBが年内に利上げを実施するとの市場の見方に大きな変化はなく、債券市場では売りが優勢となりました。米10年債利回りは取引中に4.67%前後まで上昇し、相対的に短期債の下落が目立つ展開でした。短期金融市場は12月までの利上げをほぼ完全に織り込んでいるとされます。金利上昇は株式の評価を押し下げる方向に働きやすく、3指数はいずれも小幅ながらマイナス圏で取引を終えています。

同時に発表された4-6月期の実質GDP改定値は前期比年率1.5%増と速報値から変わらず、市場予想と一致しました。ただし内訳では個人消費が速報値の3.2%増から3.4%増へ上方修正されており、消費の底堅さがあらためて確認された形です。物価が高止まりするなかで消費が強いという組み合わせは、利上げ観測を支える材料になります。

個別では、アバクロンビー&フィッチが35%高と急騰しました。四半期決算が市場予想を上回り、通期の業績見通しを引き上げたことが好感されています。同社は新学期商戦に向けた勢いが続いていると説明しました。メタ・プラットフォームズは1%超上昇しています。SNSの依存性をめぐって29州が起こした訴訟で、約167億ドルを支払う和解に合意したと伝わりました。和解には競合他社にも同様の保護措置を求める条項が含まれるとされています。アリババ集団は、AI投資の資金を調達するための100億ドル規模の株式売り出しを発表して一時急落しましたが、その後は下げ幅を縮めました。

そして市場の最大の関心事だったエヌビディアの決算は、取引終了後に発表されました。5〜7月期の売上高は962億ドルと前年同期の467億ドルから106%増え、QUICK・ファクトセットがまとめた市場予想の約922億ドルを上回っています。1株利益も2.22ドルと前年同期の1.05ドルから倍増しました。8〜10月期の売上高見通しは1,080億ドル(上下2%)と、市場予想の約1,039億ドルを上回る強気な内容です。それでも時間外取引で株価は2%程度下げました。粗利益率の見通しが8〜10月期で74.0%と、5〜7月期の75.0%から低下することが示されたためとみられます。メモリーや設備投資、資金調達にかかるコストの上昇が利益率を圧迫し始めているとの指摘が出ています。

注目ポイント

今日の東京市場は、エヌビディアの決算が寄り付き前に出そろった状態でのスタートとなります。日経平均への寄与度が大きいアドバンテストや東京エレクトロン、キオクシアホールディングスといった半導体関連の値動きが、指数全体を左右しやすい構図です。売上高と次期見通しはいずれも市場予想を上回った一方で、利益率の低下という不安材料も同時に示されたため、市場がどちらを重くみるかで方向感が分かれる可能性があります。オプション市場からは決算通過後に上下5%程度の変動が想定されていたと報じられており、過去の決算後と比べればボラティリティの見込みは落ち着いていたようです。

前営業日26日の東京市場を振り返ると、日経平均は405円73銭高の6万6262円16銭と続伸しました。25日の米株高を引き継ぎ、中東情勢への過度な警戒が後退したことも支えとなっています。物色の中心は銀行・保険・証券といった金融セクターで、指数への寄与ではアドバンテストとソフトバンクグループの2銘柄だけで約362円分を押し上げました。ただし東証プライムの売買代金は6兆7,057億円と約4カ月ぶりの低水準で、参加者の少なさが続いている点は留意が必要です。

来週以降を見据えると、27日から29日にかけて開かれるジャクソンホール会議が次の焦点になります。今年のテーマは金融イノベーションと決済・政策への影響で、70カ国以上から約120人の当局者やエコノミストが参加する予定です。最大の注目は日本時間28日23時に予定されるウォーシュFRB議長の基調講演で、議長就任後としては初めての場となります。市場では9月のFOMCでの利上げがおよそ3分の1の確率で織り込まれているとされ、新議長が自身の政策の枠組みをどう語るかが金利と為替の両面に影響しそうです。為替は27日未明の時点で1ドル=159円台前半で推移しており、円安基調が続いています。

ひとこと解説

**粗利益率(グロスマージン)**は、売上高から製造にかかった直接の費用(原価)を引いた粗利益が、売上高に対して何%にあたるかを示す指標です。今回のエヌビディアのように売上高が大きく伸びていても、粗利益率が下がると1ドルの売上から手元に残る利益は薄くなります。半導体では、メモリーなどの部材価格や生産委託費用が上がると原価が膨らみ、この比率が低下します。市場が売上高の絶対額だけでなく利益率の推移に注目するのは、成長のスピードと収益の質を切り分けて評価するためです。

ジャクソンホール会議は、米カンザスシティ連銀が毎年8月にワイオミング州ジャクソンホールで開く経済シンポジウムです。各国の中央銀行総裁や学者が集まり、金融政策の枠組みや長期的な経済課題を議論します。FRB議長の講演が政策転換の方向性を示唆する場になった例が過去に複数あるため、市場では年間を通じて注目度の高いイベントの一つとされています。ただし講演は個別の政策決定を予告するものではなく、考え方の説明が中心である点には注意が必要です。

出典