日本時間26日21時30分に発表された米7月のPCE(個人消費支出)価格指数は前年同月比3.7%の上昇と6月から横ばいで、市場予想の3.6%をわずかに上回りました。FRB(米連邦準備制度理事会)が重視するコアPCEは前年比3.3%と3カ月連続で同じ水準です。今夜の米国市場は、取引終了後(日本時間27日朝)に発表されるエヌビディアの決算が最大の注目材料となります。

26日21時30分発表の米経済指標 結果 予想 前回
7月PCE価格指数(前年比) +3.7% +3.6% +3.7%
7月PCE価格指数(前月比) +0.2% +0.1% -0.1%
7月コアPCE価格指数(前年比) +3.3% +3.3% +3.3%
7月コアPCE価格指数(前月比) +0.2%
7月個人所得(前月比) +0.4%(+1,151億ドル) +0.2%
7月個人消費支出(前月比) +0.2%(+363億ドル) +0.2%
7月耐久財受注(速報、前月比) +1.1%(3,393億ドル) +0.6% +0.3%
同・輸送用機器を除く +0.4% +0.8%
4-6月期実質GDP(改定値、年率) +1.5% +1.5%(速報値)
7月の家計統計の内訳 内容
可処分所得 +1,259億ドル(+0.5%)
実質個人消費支出 +13億ドル(前月比+0.1%未満)
サービスへの支出 +862億ドル
財への支出 -499億ドル
個人貯蓄額 7,120億ドル
貯蓄率 3.0%
発表前の米株先物・市場水準(日本時間26日夕) 水準 前日比
S&P500先物(ES) 7,690.50 -1.50(-0.02%)
ダウ先物(YM) 53,716.00 +71.00(+0.13%)
ナスダック100先物(NQ) 29,227.25 -49.50(-0.17%)
ラッセル2000先物(RTY) 3,012.70 -1.70(-0.06%)
米10年債利回り 4.64%
WTI原油 80.46ドル -1.47%
北海ブレント 86.65ドル -1.12%
金(スポット) 4,625.22ドル
エヌビディア(時間外) 213.05ドル +2.19%
エヌビディア決算のポイント 内容
発表時刻 米東部時間26日16時20分ごろ(日本時間27日5時20分ごろ)、電話会議は同17時(日本時間6時)
会社側ガイダンス 売上高910億ドル±2%(約892億〜928億ドル)
市場予想(売上高) 約919億〜923億ドル
市場予想(1株利益) 約2.08〜2.09ドル
オプション市場が織り込む変動率 上下5.4〜5.6%程度
同変動率に相当する時価総額 約2,800億〜2,860億ドル(時価総額は約5兆1,100億ドル)
過去12四半期の決算後の平均変動率 7.4%
今夜以降の主な日程(日本時間) 内容
26日23時30分 米週間石油在庫統計(EIA)
27日5時20分ごろ エヌビディア 5-7月期決算
米国市場の取引終了後 クラウドストライク、オクタの決算
27日 日銀・氷見野副総裁の講演
27〜29日 ジャクソンホール会議(カンザスシティ連銀主催)
28日23時 ウォーシュFRB議長 基調講演

何があった?

今夜の米国市場を動かす材料は、すでに取引開始前から出そろっています。日本時間26日21時30分、米商務省経済分析局(BEA)が7月の個人所得・個人消費支出統計を発表しました。PCE価格指数は前年同月比3.7%の上昇と6月から変わらず、市場予想の3.6%をわずかに上回りました。前月比では0.2%の上昇で、こちらも予想の0.1%を上回っています。エネルギーと食品を除いたコアPCEは前年比3.3%、前月比0.2%で、前年比は5月・6月・7月と3カ月連続で3.3%が続いていることになります。

内訳をみると、家計の姿はやや複雑です。個人所得は1,151億ドル(0.4%)増、可処分所得は1,259億ドル(0.5%)増と伸びた一方、個人消費支出の増加は363億ドル(0.2%)にとどまりました。しかも物価変動を除いた実質ベースでは13億ドル増と、前月比の伸びは0.1%にも届いていません。名目の支出増のほとんどが値上がり分だったという計算になります。支出の中身も、サービスが862億ドル増えた一方で財が499億ドル減っており、モノの消費が落ち込んでいます。貯蓄率は3.0%でした。

同じ時刻に発表された7月の耐久財受注(速報)は前月比1.1%増の3,393億ドルと、市場予想の0.6%増を上回りました。ただし押し上げたのは輸送用機器で、こちらは2.3%増の1,162億ドル。輸送用機器を除いたベースでは0.4%増と、予想の0.8%増には届いていません。設備投資の裾野が広がっているとまでは言いにくい内容です。4-6月期の実質GDP改定値は年率1.5%増と、7月末に発表された速報値から変わりませんでした。

株式市場は指標発表を前に様子見でした。日本時間26日夕の時点で、S&P500先物は0.02%安、ナスダック100先物は0.17%安、ダウ先物は0.13%高と方向感を欠く展開です。米10年債利回りは4.64%、WTI原油は前日に続き軟調で80.46ドル、北海ブレントは86.65ドルとなっています。一方で、この日決算を発表するエヌビディアは時間外で2.19%高の213.05ドルと買われていました。

注目ポイント

最大の焦点は、米国市場の取引終了後に発表されるエヌビディアの5-7月期決算です。会社側は前四半期の決算発表時に、今回の売上高を910億ドル±2%(約892億〜928億ドル)と見込むと示していました。市場予想は約919億〜923億ドル、1株利益は約2.08〜2.09ドルと、会社ガイダンスの上限寄りに位置しています。発表は米東部時間26日16時20分ごろ、日本時間では27日の朝5時20分ごろの見込みで、電話会議はその40分後です。

市場がどれだけの振れを見込んでいるかは、オプション市場から読み取れます。報道によれば、オプション価格が織り込む決算後の変動率は上下5.4〜5.6%程度。同社の時価総額は約5兆1,100億ドルに達しているため、この変動率は2,800億〜2,860億ドル規模の時価総額の増減に相当します。ただし過去12四半期の決算後の平均変動率は7.4%とされており、今回の織り込みはそれより控えめです。同社の売上高はAI(人工知能)向け半導体の需要を映す指標として世界的に参照されており、結果と次の四半期見通しが、日本を含む半導体関連株の27日以降の値動きにも波及しやすい構図です。今夜はほかに、クラウドストライクとオクタも取引終了後に決算を発表します。

金融政策をめぐる論点も見逃せません。今回のPCEは、コアが3.3%で下げ止まる一方、前月比が予想を上回るという「高止まり」を示す内容でした。市場では9月のFOMC(米連邦公開市場委員会)について、政策金利の据え置きと0.25%の利上げの見方が拮抗していると伝えられており、CMEのFedWatchでは据え置きが約6割、利上げが約4割とされていました。7月のFOMC議事要旨では採決が9対3と、約20年ぶりの大きさの意見の割れが明らかになっています。

そのうえで、今週後半には27〜29日のジャクソンホール会議が控えます。5月22日に第17代FRB議長に就任したケビン・ウォーシュ氏にとって初めての基調講演で、日本時間28日23時に予定されています。今年のテーマは「金融イノベーション:決済と政策への含意」です。新議長が初回の講演で自らの政策観をどう示すかに関心が集まっており、8月17日に30年債利回りが2007年以来の水準となる5.31%を付けた債券市場からも注視されています。

日本側の材料としては、日銀の利上げ観測が続いています。市場では9月の金融政策決定会合で政策金利が現行の1.0%から1.25%へ引き上げられるとの見方が8割程度織り込まれていると伝えられており、26日の東京市場で銀行株が買われた背景にもなりました。27日には氷見野副総裁の講演が予定されています。26日の東京市場は日経平均が405円73銭高の6万6262円16銭、TOPIXが17.35ポイント高の4111.02で取引を終えています。

ひとこと解説

**PCE価格指数の「前月比」と「前年比」**は、同じ物価指標でも見ている時間の長さが違います。前年比はその月の物価水準を1年前と比べたもので、季節的な要因が打ち消されるため、インフレの大きなトレンドをつかむのに向いています。一方の前月比は直前の1カ月でどれだけ動いたかを示すため、変化の兆しをいち早く捉えられますが、そのぶん一時的な要因で振れやすいという弱点があります。今回のように「前年比は横ばいだが前月比は予想を上回った」というケースでは、トレンドとしては変わっていないものの、足元で下がりにくくなっている、と読み解かれることが多くなります。FRBは政策判断にあたって両方を並べて見ています。

**オプション市場が織り込む変動率(インプライド・ムーブ)**とは、決算発表などのイベント直後に株価がどれだけ動くと市場参加者が見込んでいるかを、オプションの価格から逆算した数値です。オプションは将来の一定価格で売買する権利で、大きな値動きが予想されるほどその権利の値段は高くなります。そこから「上下◯%程度の変動が織り込まれている」と算出できるわけです。あくまで市場の見込みであって予測の的中を保証するものではありませんが、その銘柄の決算にどれだけの緊張感が持たれているかを測る目安として使われます。過去の平均変動率と比べることで、今回の織り込みが強気か控えめかを相対的に評価することもあります。

出典