24日夜の米国市場は、注目度の高い経済指標の発表がない一日です。財経新聞が伝えたフィスコの見通しによると、米株先物は小幅安で推移しており、売り先行の展開が見込まれています。最大の材料は日本時間25日未明に予定されるベッセント米財務長官の記者会見で、週の後半には26日のエヌビディア決算と27〜29日のジャクソンホール会議という二大イベントが控えます。

前週末21日の米国市場 終値 前日比
ダウ工業株30種平均 53,277.01ドル +517.80(+0.98%)
S&P500種株価指数 7,674.37 +33.21(+0.43%)
ナスダック総合指数 26,180.46 +113.29(+0.43%)
米10年債利回り 4.733%
米30年債利回り 5.273%
24日夕方時点(日本時間) 水準 前日比・時刻
S&P500先物 7,680.50 -7.25
ナスダック100先物 29,269.75 -90.50
米10年債利回り 4.709% -0.0244(21時15分時点)
ドル円 158円93銭〜158円95銭 +0.11円(+0.06%、21時29分時点)
WTI原油先物 85.53ドル -1.53(-1.75%、8時19分時点)
今夜の主な予定(日本時間) 内容
21時30分 米7月シカゴ連銀全米活動指数(予想-0.05、前回-0.02)
22時30分 米国市場が取引開始
23時30分 3カ月物・6カ月物の財務省短期証券入札
25日3時ごろ ベッセント米財務長官の記者会見(対イラン制裁)
今週の主な日程 内容
25日 6月住宅価格指数、S&Pケース・シラー住宅価格指数、7月新築住宅販売件数、8月コンファレンスボード消費者信頼感指数/インテュイット決算
26日 4〜6月期GDP改定値、7月耐久財受注、7月個人所得・個人支出・PCEデフレーター/エヌビディア、セールスフォース、クラウドストライク、シノプシス、HP決算
27日 新規失業保険申請件数/マーベル・テクノロジー、ベスト・バイ決算/ジャクソンホール会議(27〜29日)開幕
28日 8月シカゴ購買部協会景況指数、ウォーシュFRB議長の基調講演

何があった?

前週末の米国市場は3指数そろって反発した — 財経新聞によると、21日のダウ平均は517.80ドル高の5万3277.01ドル、ナスダック総合指数は113.29ポイント高の2万6180.46、S&P500は33.21ポイント高の7674.37で取引を終えました。上昇率で見るとダウが0.98%、S&P500とナスダックがいずれも0.43%で、ダウの上げが他の2指数を大きく上回っています。Yahoo!ニュースに掲載されたLIMOの記事は、資金が値がさのハイテクよりも金融・景気敏感株に向かった一日だったと整理しました。実際にテスラが5.14%高、ゴールドマン・サックスが3.73%高、モルガン・スタンレーが3.25%高となる一方、インテルは2.24%安、エヌビディアは0.98%安と、半導体関連はむしろ売られています。

8月のPMI速報値は、製造業とサービス業で方向が分かれた — 21日に発表されたS&Pグローバルの8月PMI速報値は、製造業が53.2(7月53.9、市場予想53.9)と予想外に低下して3月以来の低水準となる一方、サービス業は56.8(7月54.6、予想54.0)と低下予想に反して上昇しました。総合は56.0(7月54.5、予想54.0)です。この総合指数の位置づけについては報道に差があり、ブルームバーグとBigGoファイナンスは2022年以来、あるいは52カ月ぶりの高水準と伝えた一方、財経新聞は「過去最高」と表現しています。BigGoファイナンスによれば、S&Pグローバルはこの結果をもとに第3四半期のGDP成長率を3%前後と試算しました。財経新聞が伝えたフィスコの見通しは、製造業の弱さよりもサービス業の強さが買い材料になったと整理しています。

今夜は「大きな指標がない日」にあたる — インベスティング・ドットコムによると、24日に予定されている米経済統計はシカゴ連銀全米活動指数(前回-0.02)と財務省短期証券の入札程度で、同社は主要な経済イベントの予定はないとしています。ザイ・オンラインも同様に、この日は注目度の高い米経済指標の発表がないと伝えました。シカゴ連銀全米活動指数の市場予想は-0.05です。

そのかわり、深夜の記者会見が最大の材料になる — 時事通信によると、ベッセント米財務長官は対イラン追加制裁について「歴史上最も厳しい制裁」を実施すると表明し、詳細を24日の記者会見で公表する予定です。同長官は現在のイラン港湾への海上封鎖に加えて追加制裁を講じる方針を示し、イランから石油を購入するなど経済取引を続ける国に対しても制裁発動を辞さないとしています。一方で「恐らく大規模な軍事行動の再開はない」とも述べ、経済的な圧力を優先する姿勢を示しました。ザイ・オンラインの経済指標カレンダーは、この会見を日本時間25日午前3時ごろとしています。

原油はこの日の朝方、下落して推移していた — 日本経済新聞のマーケットデータによると、WTI原油先物は24日8時19分時点で1バレル85.53ドルと、前日比1.53ドル(1.75%)安でした。ただし財経新聞が伝えたフィスコの見通しは、米・イランの緊張を背景に原油価格は強含んでおり、インフレ懸念につながっていると指摘しています。制裁の中身が原油の供給に及ぶものかどうかで、今夜の価格の振れ方は変わり得ます。

財政健全化策の発表も、同じ週の材料として意識されている — 日本経済新聞によると、ベッセント長官は20日、「今週末か来週初めに財政健全化への取り組み強化を発表する」と述べ、歳出と歳入の両面で健全化策を具体化することで数千億ドルを捻出できるとの見通しを示しました。同長官は足元の金利上昇について、根本的なファンダメンタルズを反映していないとも主張しています。財経新聞が伝えたフィスコの見通しは、トランプ政権の歳出をめぐる懸念で長期金利が不安定になっているとしたうえで、今週の財政健全化策の発表への期待が下値を支える可能性を挙げました。

東京市場は続落して取引を終えた — 日本経済新聞によると、24日の日経平均株価は488円27銭安の6万5528円9銭と続落し、TOPIXは6.00ポイント高の4073.29と3日続伸しました。BigGoファイナンスによれば、日経平均は前週(17〜21日)に週間で3.9%下げています。日本の新発10年物国債利回りは24日15時13分時点で2.880%と、前日比0.005ポイント上昇しました。

注目ポイント

  • 指標が乏しい日の値動きは、材料そのものよりも「待ちの姿勢」を映しやすくなります。 財経新聞が伝えたフィスコの見通しは、24日の米国市場について売り先行のあと、売り一巡後はエヌビディア決算やジャクソンホール会議の内容を見極めるムードになると整理しました。東京市場でもこの日のプライム市場の売買代金は約7兆636億円と4月以来の低水準です。日米ともに、週の後半へ材料が集中している日程そのものが、動きにくさの背景にあります。

  • 記者会見は、原油と金利の両方に同時に効く可能性があります。 制裁が原油の供給に影響する内容であれば原油価格を通じてインフレ観測に、財政健全化策の具体化が伴えば米国債の需給を通じて長期金利に、それぞれ働きかける形になります。同じ会見が2つの異なる経路で株式市場に伝わり得るという点で、通常の経済指標とは性格が違います。

  • エヌビディアの決算は、日本時間27日早朝の発表になります。 会社ガイダンスは第2四半期の売上高で910億ドルのプラスマイナス2%、つまり892億〜928億ドルの範囲です。市場予想については、約920億ドルと伝える媒体と872億ドルとする集計があり、出所によって差があります。前四半期のデータセンター部門売上高は752億ドルで、前年同期比92%増でした。財経新聞が伝えたフィスコの見通しは、前回は市場予想を上回る決算のあとに株価が下落したと指摘しており、数字そのものより発表後の反応が注目される構図です。

  • ジャクソンホール会議のテーマは「金融イノベーション:決済と政策への影響」です。 TradingKeyによると、会議はワイオミング州のジャクソンレイク・ロッジで27〜29日に開かれ、ウォーシュFRB議長は28日午前に就任後初となる基調講演を行う予定です。外為どっとコムによれば、同じ28日には非農業部門雇用者数の年次ベンチマーク改定の速報値も予定されています。講演と雇用者数の改定値が近い時間帯に重なる日程です。

  • 為替は200日移動平均線の水準をはさんだ攻防が続いています。 外為どっとコムは、ドル円について200日移動平均線の158円36銭をめぐる攻防が焦点だとし、8月24日から31日の予想レンジを157円00銭〜160円50銭としました。同社は、米長期金利が4.7%台まで戻したにもかかわらずドルが主要通貨に対して軟調だった点を挙げ、金利の水準を重く見るか、金利が戻してもドルが買われなかった事実を重く見るかで見方が分かれると整理しています。

  • 米長期金利は、24日の夕方時点では前日を下回っていました。 日本経済新聞のマーケットデータによると、米10年債利回りは24日21時15分時点で4.709%と、前日比0.0244ポイント低い水準です。前週末21日は4.733%でした。東京市場の取引時間中は日米の長期金利上昇が株価の重荷として語られましたが、夕方以降は米金利がやや低下する形で戻しています。

ひとこと解説

今夜の材料を並べると、対イラン制裁と財政健全化策という、どちらも「政府の政策」が主役になっています。このうち財政の話は、株式市場のニュースでも「財政赤字への懸念で長期金利が上昇」という形で頻繁に登場しますが、国の借金の話がなぜ金利を動かし、そこからどう株式市場に伝わるのかは、案外整理されないまま使われがちです。

出発点は、国債の価格と利回りが逆に動くという関係です。国債は、満期に決まった額が戻り、それまで決まった利息が支払われる商品です。買うときの価格が安ければ、同じ利息と満期の受け取りに対して手元に残る利回りは高くなります。逆に価格が高ければ利回りは低くなります。ニュースで「国債が売られて利回りが上昇した」と言うとき、この2つは別々の出来事ではなく、同じ現象を裏表から見た表現です。

そのうえで、財政赤字がどう効くのかを考えます。国の歳出が歳入を上回れば、その差額は借金、つまり国債の発行で埋めることになります。**赤字が拡大すれば、市場に出てくる国債の量が増えます。**買い手の量が変わらないまま供給だけが増えれば、価格は下がりやすくなり、その裏返しで利回りは上がります。ブルームバーグによると、米国の2026会計年度の累計財政赤字はすでに1兆8000億ドルに達し、前年同期比で5%拡大しています。社会保障や医療関連の支出に加えて、政府債務の利払い費そのものが支出を押し上げているとされます。

ここで厄介なのが、利払い費が増えると、それがまた赤字を膨らませるという循環です。金利が上がれば新しく発行する国債の利息も高くなり、利払い費が増えます。利払い費が増えれば赤字が拡大し、国債の発行がさらに必要になります。市場がこの循環を意識し始めると、財政に関するニュース一つで長期金利が動きやすくなります。財政の規律に厳しい目を向ける債券市場の参加者を「債券自警団(ボンド・ビジランテス)」と呼ぶことがありますが、日本経済新聞もこの言葉を使って米国債への圧力を論じています。

だからこそ、財政健全化策の発表は金利を落ち着かせる材料として期待されるわけです。歳出を抑える、あるいは歳入を増やす道筋が具体的に示されれば、将来の国債発行が想定より少なくて済むという見方につながります。ベッセント長官が数千億ドルを捻出できると述べたのは、この文脈での発言です。もっとも、期待が先行して実際の内容が伴わなければ、逆の反応になることもあります。発表があること自体と、その中身が市場の想定に届くかどうかは別の話です。

同じ構図は米国だけのものではありません。日本の新発10年物国債利回りは24日時点で2.880%です。ブルームバーグの債券週間展望は、国内外の財政拡張への懸念を背景に、日本の長期金利が1996年以来30年ぶりとなる3%をうかがう展開になり得ると伝えています。財政と金利の関係は、いま日米の両方で同時に意識されているテーマだと言えます。

最後に、注意点を2つ。1つは、長期金利は財政だけで決まるわけではないということです。インフレ率の見通し、中央銀行の政策、景気の強さ、海外投資家の資金の動きなど、複数の要因が同時に働きます。財政赤字が拡大していても金利が下がる局面はありますし、その逆もあります。24日の夕方時点で米10年債利回りが前日を下回っていたのも、財政の材料が消えたからではなく、別の要因が同時に働いた結果と見るのが自然です。

もう1つは、金利上昇が株式市場に与える影響は業種や銘柄で異なるという点です。同じ金利上昇でも、利ざやが拡大しやすい金融株と、将来の利益への期待で株価が形成されている高PER(株価収益率)銘柄では、受け止め方が正反対になり得ます。21日の米国市場で金融株が買われる一方で半導体株が売られたのは、その典型的な現れ方の一つです。金利と株価の関係そのものについては、当サイトの入門記事「金利と株価の関係【超入門】」でも整理しています。

出典