来週(8月24日〜28日)の東京市場は、週の後半に材料が集中する日程を迎えます。米国時間26日にエヌビディアの決算と7月の個人消費支出(PCE)デフレーターが重なり、27日から29日にはジャクソンホール会議が開かれて、28日にはウォーシュFRB議長が就任後初の基調講演に臨みます。今週が「債券主導」の週だったのに対し、来週はAI関連の業績と金融政策の言葉が同時に試される構図です。まずは足元の位置から確認します。

項目 数値
日経平均 先週末終値(8/21) 66,016.36円(前日比 -200.43円、-0.30%)
TOPIX 先週末終値(8/21) 4,067.29(前日比 +7.56、+0.19%)
日経平均の週間騰落(8/17〜8/21) -2,697円44銭(-3.93%、3週ぶりの下落)
来週の予想レンジ(ザイ・オンライン) 63,000〜68,000円
来週の予想レンジ(フィスコ) 64,500〜68,500円
ドル円 予想レンジ(外為どっとコム・ハロンズFX) 157円30銭〜160円20銭
週末(8月21日)の米国市場 終値 前日比
NYダウ工業株30種 53,277.01ドル +517.80(+0.98%)
S&P500種株価指数 7,674.37 +33.21(+0.43%)
ナスダック総合指数 26,180.46 +113.29(+0.43%)
米10年債利回り 4.74% +0.04
米30年債利回り 5.27% +0.02
ドル円(NY市場) 158円台後半から159円台前半へ上昇
WTI原油先物 87ドル台で底堅く推移

来週の注目日程

日付 予定
8/24(月) ベセント米財務長官がイランへの追加制裁の詳細を説明
8/25(火) 独8月Ifo企業景況感指数(17:00)、米8月消費者信頼感指数(23:00)
8/26(水) 豪7月CPI(10:30)、米4〜6月期GDP改定値・米7月個人所得/個人消費支出(21:30)、セールスフォース決算
8/26(水)米国時間 エヌビディア決算(日本時間27日朝)
8/27(木)〜29(土) ジャクソンホール会議。27日にマーベル・テクノロジー決算
8/28(金) 8月東京都区部CPI(8:30)、外国為替平衡操作の実施状況、ウォーシュFRB議長の基調講演

週の前半は、材料待ちのなかで中東情勢が意識されそうです。 ベセント米財務長官は8月20日、イランに対して「歴史上最も厳しい」制裁措置を講じる方針を表明し、24日に記者会見を開いて具体的な内容を説明するとしています。イランからの原油購入など経済取引を続ける第三国も対象に含める構えとされており、すでに87ドル台で底堅く推移している原油相場に関わる材料です。株予報コラムは、制裁が発表されれば原油高を通じた下押し圧力が予想される一方、土壇場で見送りとなり和平に向けた動きが進めば株式市場は好感すると見込まれる、と両方向の可能性を挙げています。

26日は、この週で最も情報量の多い日になります。 日本時間21時30分に米国の4〜6月期GDP改定値と7月の個人所得・個人消費支出が同時に発表されます。このうちPCEデフレーターは、FRB(米連邦準備理事会)が物価の判断で最も重視する指標です。財経新聞によると、7月のコアPCE価格指数の市場予想は前月比0.2%上昇(前回は0.1%上昇)で、インフレの鈍化ペースが緩やかであることが確認される内容が想定されています。同じ日の米国時間午後には、エヌビディアが2027年1月期第2四半期(7月26日締め)の決算を発表します。同社は現地時間26日午後1時20分に決算を公表し、午後2時から電話会議を開く予定で、日本時間では27日の早朝にあたります。

27日から29日はジャクソンホール会議です。 米カンザスシティ連銀が主催する経済シンポジウムで、今年のテーマは「資金決済分野における金融イノベーションとその政策的含意」。大和総研によれば、ステーブルコインやトークン化預金といった新しい決済手段への政策対応が議論される見通しです。ただし市場の関心はテーマそのものより、5月に就任したウォーシュFRB議長による初の基調講演(28日)に集まっています。

28日は国内でも材料があります。 朝8時30分に8月の東京都区部CPIが発表されます。財経新聞によると市場予想は総合が前年比1.9%上昇、生鮮食品を除くコアが同1.7%上昇です。全国CPIの先行指標とされ、今週21日に発表された7月の全国コアCPI(前年比1.8%上昇)に続く材料になります。同じ日には7月30日〜8月26日分の外国為替平衡操作の実施状況(いわゆる介入実績)も公表されます。

注目ポイント

  • 予想レンジは各社で幅がありますが、意識される水準はおおむね重なっています。 ザイ・オンライン(ラカンリチェルカの村瀬智一氏)は6万3000〜6万8000円、フィスコは6万4500〜6万8500円を示しています。ザイ・オンラインは25日移動平均線水準での底堅さが意識されているとし、週後半は値動きが荒いながらも底堅さが見られ、AI・半導体関連にリバウンド狙いの資金が流入する可能性を挙げています。一方で外為どっとコムは6万5000円割れへの警戒に言及しており、同じ地合いを見ても強弱の読みは分かれています。予想レンジは「そうなる」という保証ではなく、各社が想定する振れ幅の目安として受け取るのが適当です。

  • エヌビディア決算は、内容と株価の反応が一致するとは限りません。 フィスコは、前回は好決算にもかかわらず株価が下落した経緯を踏まえ、今回も決算発表後は売りが先行する可能性は高いと指摘しています。BigGoも同様に、好決算後に売りが出るリスクに触れています。決算そのものより、発表までにどれだけ期待が織り込まれているかが反応を左右しやすい局面です。国内では半導体関連が今週18日に集中的に売られ、値ごろ感が出てきているとの見方もあり、日本時間27日朝の反応は東京市場にそのまま伝わります。なお27日にはマーベル・テクノロジーの決算も控えており、BigGoは同社株が直近安値から50%以上上昇していることから出尽くし感を指摘しています。

  • ウォーシュ議長の講演は、「何を言うか」だけでなく「どこまで言わないか」が論点です。 大和総研は、ウォーシュ議長がフォワード・ガイダンス(先行きの政策方針をあらかじめ示すこと)に消極的な姿勢を貫いており、利上げ・利下げの方向性を直接示す可能性は低いと見ています。注目されるのはインフレ抑止への姿勢をどの程度明確にするか、期待インフレ率の高止まりにどう対応するかといった点で、大和総研自身は物価・雇用情勢の改善を踏まえ利上げを急ぐ必要性は限定的と判断しています。一方でBigGoは、フォワード・ガイダンスへの消極姿勢が明確になれば株式市場にはネガティブに働きうるとしています。今週19日に公表された7月のFOMC議事要旨で「インフレの低下が進まなければ追加の引き締めが必要」との認識が多数だったことと合わせて読む場面になりそうです。

  • 為替は158円と160円の間で方向性を探る展開が想定されています。 外為どっとコム(ハロンズFX)は来週のドル円について157円30銭〜160円20銭のレンジを予想し、上値の抵抗として160円00銭〜160円24銭(25日・100日移動平均線)、下値の支持として158円03銭〜158円33銭(200日移動平均線)を挙げています。同社は26日のPCE次第で、インフレの高止まりが確認されれば160円を試す展開、鈍化が示されれば158円割れから157円台への下落もありうる、という見立てを示しています。日米の金利差と、日銀の追加利上げ観測が綱引きする構図です。

  • 28日の介入実績は、日銀の政策観測とセットで見られます。 日本経済新聞によると、7月末の日米協調介入を受けてOIS(翌日物金利スワップ)市場が織り込む日銀の9月利上げ確率は8割近くまで高まっており、野村證券は次回利上げ時期のメインシナリオを10月から9月へ前倒ししています。フィスコは28日の外国為替平衡操作の実施状況を、9月の追加利上げの可能性を判断する材料のひとつとして挙げています。同じ日の東京都区部CPIと合わせて、金曜の朝に国内材料が重なる日程です。

  • 今週の下げの主因だった長期金利は、来週も背景に残ります。 株予報コラムは、日銀の早期利上げ観測と原油高がインフレ懸念を強めており、長期金利は下がりにくい状況が続くと予想しています。外為どっとコムも、米財務省による国債の買い戻し拡大は効果が限定的で、インフレと財政への不安が重荷になると指摘しています。米30年債利回りは今週5.27%で引けており、2007年以来の水準圏にあります。個別の決算や講演がどう出るにせよ、金利という土台の部分は今週から地続きだという点は押さえておきたいところです。

ひとこと解説

来週の最大の注目イベントとされるジャクソンホール会議は、名前はよく聞くのに中身が説明されにくい催しです。基本から整理しておきます。

正式には「経済政策シンポジウム」といい、米カンザスシティ連銀が毎年8月下旬、ワイオミング州のジャクソンホールという山あいの保養地で開いている学術会合です。参加するのは各国の中央銀行関係者、経済学者、政策担当者など。ここで重要なのは、この会議は金融政策を決める場ではないということです。政策金利を決めるのはFOMC(米連邦公開市場委員会)であって、ジャクソンホールで何かが決議されるわけではありません。

ではなぜ市場が注目するのか。理由は、普段は語られないことが語られる場だからです。FOMC後の記者会見では、議長は目の前の決定について答えます。それに対してジャクソンホールの基調講演は、学術会合という性格上、もう少し長い時間軸の話、たとえば「中央銀行は何を目標に据えるべきか」「経済構造の変化をどう政策に織り込むか」といった枠組みの話がしやすい。市場関係者が耳を澄ませるのは、そうした「考え方」の手がかりです。

そして今年の特殊事情が、ウォーシュ議長にとって初めての基調講演である点です。5月に就任した新議長が、この場で自分の政策哲学をどう語るのか。ここで鍵になるのが、来週の解説記事にたびたび出てくるフォワード・ガイダンスという言葉です。

フォワード・ガイダンスとは、中央銀行が将来の政策方針をあらかじめ言葉で示すことを指します。「当面は金利を据え置く」「物価目標の達成が見通せるまで緩和を続ける」といった表明がこれにあたります。狙いは市場の予想を安定させることで、金融政策の効果を今の金利だけでなく将来の金利観にも及ぼす、という考え方に基づいています。

ただし、これには弱点もあります。約束めいた言葉を出すと、経済が想定と違う動きをしたときに方針を変えにくくなる。無理に守ればタイミングを逃し、あっさり破れば言葉の信頼が損なわれます。ウォーシュ議長がフォワード・ガイダンスに消極的とされるのは、この点を重く見ているためだと説明されています。データを見てその都度判断する、という姿勢です。

投資家にとって、これは受け取れる情報の量が減ることを意味します。方向性が示されないぶん、市場は経済指標のひとつひとつに自分で意味づけをしなければならない。26日のPCEのような指標が出るたびに相場が動きやすくなる、という副作用が生じます。BigGoが「フォワード・ガイダンスへの消極姿勢が明確になれば株式市場にネガティブ」としているのは、この不確実性の増加を指しています。

読み方のコツを二つ。ひとつは、講演直後の値動きを結論と思わないこと。基調講演は数十分におよぶ文章で、そのうちどの部分が重視されるかは時間をかけて定まっていきます。ひとつの見出しに反応した最初の動きが、その後戻ることは珍しくありません。

もうひとつは、議長以外の発言にも材料があることです。ジャクソンホールには各国の中銀関係者が集まるため、会期中は関連する発言や取材が相次ぎます。外為どっとコムは、日銀の氷見野副総裁の発言も追加利上げの時期を占ううえで重要になるとしています。金曜の1本の講演だけでなく、木曜から土曜にかけて断続的にニュースが出てくる3日間だと考えておくと、来週後半の相場は追いやすくなるはずです。


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