21日の東京株式市場は、日経平均株価が前日比200円43銭(0.30%)安の6万6016円36銭と3営業日ぶりに反落しました。一方でTOPIXは7.56ポイント(0.19%)高の4067.29と続伸し、プライム市場の値上がり銘柄数は883と値下がりの622を上回っています。指数と中身の方向が食い違った一日でした。

21日の東京市場 終値 前日比
日経平均株価 66,016.36円 -200.43(-0.30%)
同 高値/安値 66,125.88円/65,260.22円 安値は10時6分(-956.57円)
TOPIX 4,067.29 +7.56(+0.19%)
同 高値/安値 4,071.77/4,034.78
東証プライム市場指数 2,097.60 +0.19%
東証REIT指数 1,797.51 -15.79
プライム市場の中身 内容
売買代金 7兆9,134億3,200万円
出来高 22億859万株
値上がり/値下がり/変わらず 883銘柄/622銘柄/51銘柄
業種別(33業種) 18業種が上昇、15業種が下落
上昇が目立った業種 海運、保険、石油・石炭製品、卸売、鉱業
下落が目立った業種 その他製品、医薬品、精密機器、非鉄金属
目立った個別銘柄(21日) 終値 前日比
ファーストリテイリング 73,510円 -2,770(-3.63%)
任天堂 8,599円 -182(-2.07%)
日本郵船 7,101円 +306(+4.50%)
INPEX 3,954円 +85(+2.20%)
アドバンテスト 35,900円 +540(+1.53%)
日経平均への寄与度(15時時点) 押し下げ 押し上げ
1位 ファーストリテイリング -236.53円 アドバンテスト +65.17円
2位 ソフトバンクグループ -96.54円 キオクシアHD +36.61円
3位 リクルートHD -29.67円 東京エレクトロン +26.15円
4位 フジクラ -24.34円 KDDI +24.74円
5位 信越化学工業 -14.58円 伊藤忠商事 +13.33円
7月 全国消費者物価指数(8時30分発表) 前年比 前月
生鮮食品を除く総合(コアCPI) +1.8% +1.6%
総合 +1.9% +1.6%
生鮮食品・エネルギーを除く総合 +1.9% +1.7%
エネルギー +0.6% -0.4%
生鮮食品を除く食料 +3.0% +3.1%
金利・為替(21日) 水準 備考
新発10年物国債利回り 2.875% 前日比+0.030(15時19分時点)、一時2.885%まで上昇
ドル円 159円08〜10銭(10時時点) 前日比64銭の円安・ドル高
同 午後のレンジ 158円86銭〜159円13銭 159円付近でもみ合い
ユーロ円 185円87〜88銭(10時時点) 前日比61銭の円安・ユーロ高

何があった?

朝は956円安まで下げ、そこから7割以上を戻した — ロイター(ニューズウィーク日本版掲載)によると、日経平均は前日の米国株安を受けて売り先行で始まり、10時6分に前日比956円57銭安の6万5260円22銭まで下げ幅を広げました。この時点では前日の890円高をすべて帳消しにした計算になります。しかしそこからは押し目買いが入り、大引けは200円43銭安まで下げ幅を縮めました。朝方の下げ幅の8割近くを取り戻したことになります。フィスコは、売り一巡後に下げ幅を縮小しつつも終日軟調な推移だったと整理しています。

日経平均とTOPIXが逆方向に動いた — 日経平均が0.30%下落した一方、TOPIXは0.19%上昇して続伸しました。ウエルスアドバイザーによると、プライム市場の騰落銘柄数は値上がり883、値下がり622、変わらず51で、業種別でも33業種中18業種が上昇しています。値上がり銘柄のほうが多く、上昇業種のほうが多いのに、日経平均だけが下げた形です。なお、TOPIXは前日の4059.73から続伸したものの、18日の終値4140.22には届いておらず、水準としては週前半より低いところにあります。

下げをつくったのは値がさ株、とりわけファーストリテイリングだった — 株探によると、15時時点でファーストリテイリングは1銘柄だけで日経平均を236円53銭押し下げていました。同社の終値は前日比2770円(3.63%)安の7万3510円です。前日の米国市場でウォルマートが9.15%安と急落し、既存店売上高の伸び悩みから消費の減速が意識されたことが、日本の小売株にも波及しました。日本経済新聞も、米長期金利の上昇を受けた前日の米株安の流れを引き継ぎ、ファーストリテイリングなど小売株の下げが目立ったと伝えています。任天堂も182円(2.07%)安と軟調で、業種別では「その他製品」が下落上位に並びました。

原油高と中東情勢が、資源・海運・保険を押し上げた — 上昇率トップの業種は海運でした。日本郵船は306円(4.50%)高の7101円と大きく上げています。鉱業や石油・石炭製品も上昇し、INPEXは85円(2.20%)高の3954円となりました。前日の米国市場でWTI原油が2.46%高となった流れが、資源関連や運賃の上昇が意識される海運に波及した形です。日本経済新聞は、米国とイランの対立が再び深まるとの警戒が背景にあると伝えています。半導体関連にも買い戻しが入り、アドバンテストは540円(1.53%)高、寄与度でも押し上げ1位でした。

国内では7月の全国CPIが発表され、伸びが2カ月連続で拡大した — 総務省が8時30分に発表した7月の全国消費者物価指数は、生鮮食品を除くコアCPIが前年比1.8%上昇と、前月の1.6%上昇から伸びが拡大しました。ロイターによると、この数字は民間調査機関の予測中央値と一致しています。総合は1.9%上昇(前月1.6%)、生鮮食品・エネルギーを除くコアコアも1.9%上昇(前月1.7%)といずれも加速しました。内訳ではエネルギーが0.6%上昇と前月の0.4%下落からプラスに転じています。債券市場では新発10年物国債利回りが一時2.885%と前日比0.040%上昇し、15時19分時点でも2.875%(前日比+0.030%)と高い水準を保ちました。

注目ポイント

  • 「指数が下がった日」と「株が売られた日」は同じではありません。 21日はまさにその典型でした。値上がり銘柄が883、値下がりが622ですから、数のうえでは買われた銘柄のほうが多い。上昇した業種も18で下落の15を上回っています。それでも日経平均はマイナスで終わりました。ニュースの見出しが「日経平均反落」だけを伝えるとき、市場全体が売られたように受け取ってしまいがちですが、この日の中身はむしろ逆でした。

  • ファーストリテイリング1銘柄の影響力が改めて可視化されました。 15時時点の押し下げ寄与は236円53銭で、同時点の日経平均の下げ幅348円64銭のおよそ7割にあたります。押し下げ2位のソフトバンクグループ(96円54銭)を加えれば、2銘柄で333円分。日経平均が株価水準の高い銘柄の影響を強く受ける仕組みであることが、そのまま数字に表れた一日です。

  • 前日の米国市場の「ウォルマート・ショック」が、業種を選んで伝わりました。 20日の米国では生活必需品小売が売られ、半導体は逆行高でした。21日の東京市場でも、下げたのは小売や消費関連で、半導体関連にはアドバンテスト、キオクシアHD、東京エレクトロンと押し上げ上位が並んでいます。海を越えても「どのセクターが売られたか」という構図がほぼそのまま引き継がれた形です。

  • 物価の伸びが2カ月連続で拡大し、金利に目が向きやすい状況が続きます。 コアCPIは1.8%と2%を下回ってはいるものの、方向としては加速しています。エネルギーが前月の下落からプラスに転じたのは、足元の原油高が国内物価にも表れ始めていることを示す変化です。長期金利は18日に一時2.945%と1996年9月以来の水準を付けたあと、21日も2.87〜2.88%台と高止まりしています。原油高、円安、物価上昇という材料が同じ方向に並んでいる点は押さえておきたいところです。

  • 来週26日のエヌビディア決算が意識され始めています。 ロイターが伝えた市場関係者のコメントでは、主力の半導体関連については来週のエヌビディア決算待ちだとの見方が示されました。21日は買い戻しが入ったものの、大きく持ち高を傾ける動きは限られています。週末を前にした持ち高調整も重なり、売買代金は7兆9134億円と、活況ではあるものの方向感の乏しい一日でした。

  • 為替は159円付近で膠着しました。 10時時点で1ドル=159円08〜10銭と前日比64銭の円安・ドル高。午後も158円86銭〜159円13銭のレンジでもみ合い、株式市場に対して新たな材料を出さない展開でした。円安は輸出関連にとっては追い風ですが、原油高と重なると輸入物価を押し上げる要因にもなります。この日のCPIでエネルギーがプラスに転じたことと、無関係ではありません。

ひとこと解説

21日は、日経平均とTOPIXの計算方法の違いがそのまま数字になって現れた日でした。ニュースで両方の指数が並んで報じられる理由が、この日ほどはっきり見える相場はそう多くありません。

日経平均株価は株価平均型の指数です。採用されている225銘柄の株価を足し合わせ、除数と呼ばれる数で割って算出します。単純化すれば「株価の平均」なので、株価の絶対額が大きい銘柄ほど、指数を動かす力が強くなります。会社の規模が大きいかどうかではなく、1株あたりの値段が高いかどうかが効いてくる、という点がポイントです。こうした銘柄を市場では「値がさ株」と呼びます。

ファーストリテイリングの株価は7万3510円です。日経平均の水準が6万6016円ですから、1株の値段が指数の水準そのものに近い。この銘柄が3.63%下げると、指数への影響は236円53銭にもなります。一方、株価が数百円の銘柄が同じ3.63%下げても、指数への影響は数円にとどまります。同じ下落率でも、指数へのインパクトが桁違いになるわけです。

対してTOPIXは時価総額加重型です。各銘柄の時価総額(株価×発行済株式数)に応じて重みを付けます。株価が1万円でも発行済株式数が少なければ影響は小さく、株価が1000円でも株式数が膨大なら影響は大きい。「市場全体でどれだけのお金が動いたか」に近い指数だと考えると分かりやすいでしょう。

この違いが、21日の逆方向の動きを生みました。値上がり銘柄が883と過半を占め、海運や保険、資源関連が買われていた。TOPIXはこの広がりを拾ってプラスになりました。ところが日経平均のほうは、値がさ株であるファーストリテイリングとソフトバンクグループの下げが重すぎて、他の883銘柄の上昇では埋めきれなかった。どちらの指数も間違ってはおらず、測っているものが違うだけです。

ここから引き出せる実務的な視点は、指数を1つだけ見て「今日の相場」を判断しないということです。日経平均が下げた日にTOPIXが上げていたら、それは「特定の値がさ株が売られただけで、市場全体はむしろ買われていた」というサインかもしれません。逆に、日経平均が大きく上げているのにTOPIXが冴えない日は、少数の主力株が指数を引っ張っているだけ、という読み方ができます。

もう一つの物差しが、この記事の表にも入れた騰落銘柄数です。値上がりと値下がりのどちらが多いかを見るだけで、相場の広がりが分かります。専門的には「マーケットブレッドス(市場の幅)」と呼ばれる考え方で、883対622という数字は、指数の200円安という見出しとはかなり違う景色を映しています。

なお、どちらの指数が優れているという話ではありません。日経平均は1950年から続く長い歴史があり、過去との比較がしやすい。TOPIXはプライム市場の全銘柄を対象とするため、市場全体の実態に近い。用途が違うので、両方を並べて見るのがいちばん自然な使い方です。21日のような日は、その並べ方の意味を確認する良い機会でした。


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