今夜の米国市場は、寄り付き前に発表された小売大手ウォルマートと農機大手ディアの決算、そして日本時間21時30分に出そろった経済指標が焦点です。前日は米財務省による国債買い戻し拡大を受けて主要3指数がそろって反発しており、その流れが続くかどうかが見どころになります。

今夜の主なイベント 日本時間
米新規失業保険申請件数(発表済み) 20日 21:30
米8月フィラデルフィア連銀製造業景況指数(発表済み) 20日 21:30
米7月景気先行指数(CB) 20日 23:00
米国株式市場の取引開始 20日 22:30
21時30分に発表された指標 結果 市場予想 前回
新規失業保険申請件数(8月15日までの週) 20.6万件 21.0万件 20.9万件
継続受給者数 179.9万件
8月フィラデルフィア連銀製造業景況指数 47.4 25.0 41.4
直前の市場水準 水準 備考
米10年債利回り 4.58% 19日の米国市場で0.08%低下
米20年債入札・最高落札利回り 5.204% 20日未明に実施
ドル円 158円40銭近辺(20日16時21分) 東京時間に一時200日移動平均線を下回る
WTI原油先物(19日終値) 85.32ドル 前日比0.053ドル安(0.06%安)
19日の米国市場(前日終値) 終値 前日比
ダウ工業株30種平均 53,463.05ドル +119.65(+0.22%)
S&P500種株価指数 7,707.98 +16.22(+0.21%)
ナスダック総合指数 26,331.09 +41.38(+0.16%)

何があった?

まず決算です。ウォルマートは2027年1月期第2四半期の売上高が1,879億4,000万ドルと前年同期比5.9%増(為替の影響を除くと5.1%増)、調整後の1株利益は0.81ドルとなりました。市場予想の売上高約1,868億ドル、調整後EPS0.74ドルをいずれも上回っています。営業利益は28.8%増、世界のeコマース売上高は23%増と伸びが続きました。

通期見通しも引き上げています。2027年1月期の純売上高の伸びをこれまでの3.5〜4.5%から4〜5%へ、調整後EPSを2.75〜2.85ドルから2.80〜2.87ドルへと変更しました。背景の一つが関税の還付で、同社は約29億ドルの還付を受け取る資格があるとし、残りは1億ドル弱まで受領が進んだと説明しています。この分は下期に商品価格の引き下げへ振り向ける方針で、第3四半期の調整後EPS見通しは0.62〜0.64ドルと、目先の利益を抑えて価格競争力に回す形になっています。

一方で米国既存店売上高は2.6%増と、市場予想の3.7%増を下回りました。薬価の上限規制が効いたヘルス&ウェルネス部門が0.8ポイント分の押し下げ要因となり、これを除いた中核商品の既存店は3.4%増です。決算の全体像は堅調でしたが、既存店の伸びの鈍さと客数・客単価の弱さが意識され、寄り付き前の取引では株価が6%程度下落したと伝えられています。

農機大手のディアは2026年10月期第3四半期(8月2日締め)の純利益が13億7,900万ドル、1株利益5.10ドルと前年同期の4.75ドルから増加し、市場予想を上回りました。売上高・収益合計は126億800万ドルで5%増です。部門別では主力の生産・精密農業が6%減となった一方、小型農業・芝生が12%増(営業利益率18.4%)、建設・林業が18%増(同12.1%)と、非農機部門が全体を押し上げました。通期の純利益見通しは47億5,000万〜50億ドルへとレンジを絞り込んでいます。

経済指標では、8月15日までの週の新規失業保険申請件数が20.6万件と市場予想の21.0万件を下回りました。8月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数は47.4と、市場予想の25.0、前月の41.4をいずれも大きく上回っています。

注目ポイント

一つ目は、指標の強さと金融政策の関係です。19日に公表された7月28〜29日のFOMC議事要旨では、多くの参加者が「インフレの低下が進まなければ追加の引き締めが必要になる」との認識を示し、一部は同会合での利上げを望ましいとしていました。政策金利は3.50〜3.75%に据え置かれています。市場はこの内容を「警戒したほどタカ派ではない」と受け止めましたが、今夜の雇用と製造業の指標がそろって強い数字となったことで、景気の底堅さがあらためて確認された形です。景気指標の強さは企業業績には追い風とされる一方、金融引き締めの継続観測とも結び付きやすく、株式市場がどちらを重く見るかが分かれ目になります。

二つ目は、決算の中身と株価の反応がずれる場面です。ウォルマートは売上高・利益・通期見通しのいずれも改善しましたが、寄り付き前は売りが優勢と伝えられました。市場が見ているのが「今期の数字」ではなく「既存店の伸びが続くかどうか」だったためで、良い決算が必ずしも株高につながらない典型例と言えます。ディアについても、増益と見通しの絞り込みという内容に対し、農機本体の需要が引き続き弱い点をどう評価するかで受け止めが変わりそうです。

三つ目は、来週にかけての日程です。カンザスシティー連銀の経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)は8月27〜29日に開かれ、5月に就任したウォーシュFRB議長にとって初の講演が28日午前(現地時間)に予定されています。今年のテーマは「金融イノベーション:決済と政策への含意」です。エヌビディアの決算も現地時間26日に控えています。9月16日のFOMCを前に材料が集中する週が近づいており、今週後半は積極的な持ち高を取りにくいとの見方もあります。

なお、半導体関連には別の重荷もあります。19日は米紙報道でオープンAIの4〜6月期の売上高が67億ドル、営業損失が1〜3月期の93億ドルから123億ドルへ拡大したと伝えられ、AI関連投資の持続性への懸念から半導体株が売られました。指数全体が反発するなかで半導体だけが弱いという構図が続くかどうかも、今夜の見どころの一つです。

ひとこと解説

関税の還付とは。 輸入時にいったん支払った関税が、制度変更や法的な判断によって払い戻されることを指します。ウォルマートの場合、受け取った資金を利益として計上せずに商品価格の引き下げへ回すと説明しています。会計上は一時的に利益を押し上げる要因になりますが、それを値下げに使えば足元の利益率は下がります。決算の数字を見るときは、一時的な要因がどこに効いているかを分けて捉える必要があります。

景況指数の「ディフュージョン・インデックス」という作り。 フィラデルフィア連銀の指数は、地区内の製造業に「前月より良くなったか、悪くなったか」を尋ね、「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた割合を引いて算出します。ゼロが分かれ目で、プラスなら改善と答えた企業のほうが多いという意味です。生産量や売上高そのものを測る統計ではないため、水準の大きさがそのまま景気の強さの倍率を表すわけではない点には注意が必要です。月ごとの振れも大きく、2026年は5月のマイナス0.4から7月の41.4まで大きく動いています。

継続受給者数とは。 失業保険を2週目以降も受け取り続けている人の数です。新規申請件数が「新しく職を失った人の流入」を示すのに対し、継続受給者数は「まだ再就職できていない人の滞留」を示します。新規申請が低い水準でも継続受給者数が増えていれば、解雇は少ないが再就職は進みにくい状態と読まれます。今回は継続受給者数が179.9万件でした。

出典