13日夜の米国市場は、日本時間21時30分に発表される7月の生産者物価指数(PPI)が最大の焦点です。前日のCPIが予想どおりに着地したことで9月利上げの織り込みは34%まで低下しており、卸売段階の物価でも鈍化が確認できるかが問われます。引け後にはアプライド・マテリアルズの決算が控えています。

前日(8月12日)の米国市場 終値 前日比
ダウ工業株30種平均 53,770.27 -21.58(-0.04%)
S&P500種株価指数 7,748.50 +20.30(+0.26%)
ナスダック総合指数 26,588.49 +143.04(+0.54%)
フィラデルフィア半導体株指数(SOX) 12,399.38 +300.90(+2.49%)
前日(8月12日)のその他指標 水準 前日比
米10年債利回り 4.698% +0.008
VIX指数 14.55 -0.73
NY原油(WTI) 83.27ドル +0.07
NY金 4,467.5ドル +26.4
シカゴ日経225先物(円建て) 68,510円 +850
今夜の主な予定(日本時間) 内容
21時15分 ハマック・クリーブランド連銀総裁が討論会に参加
21時30分 米7月PPI、新規失業保険申請件数
21時40分 バーキン・リッチモンド連銀総裁が講演
寄り付き前 タペストリーの決算
引け後 アプライド・マテリアルズの決算
米30年債入札(250億ドル)
今夜の経済指標の市場予想 予想 前回
7月PPI(前年比) +4.9% +5.5%
7月PPI(前月比) +0.2% -0.3%
7月コアPPI(前年比) +4.1% +4.7%
7月コアPPI(前月比) +0.3% +0.2%
新規失業保険申請件数 20.2万件 19.9万件

何があった?

前日は指数の方向がきれいに分かれた — 株探によると、12日のダウ工業株30種平均は21.58ドル安の5万3770.27ドルと3日続落した一方、S&P500種は20.30ポイント高の7748.50、ナスダック総合は143.04ポイント高の2万6588.49と3日ぶりに反発しました。同じ日にダウが下げてナスダックが上げる展開です。OANDA証券は、AI関連企業の好決算で買い意欲が高まる一方でダウ構成銘柄の約5割がマイナス圏で推移したと伝えており、指数全体が一方向に動くというより物色の選別が進んだ形でした。フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は300.90ポイント(2.49%)高の1万2399.38と大きく上昇し、株探によると米10年債利回りは4.698%、VIX指数は14.55へ低下しています。

CPIは予想どおり、9月利上げの織り込みは後退した — みんかぶによると、12日発表の米7月消費者物価指数(CPI)はコア指数が前月比0.2%上昇・前年比2.5%上昇と、2021年3月以来の低い伸びに並びました。総合は前年同月比3.4%上昇で、いずれも市場予想に一致しています。これを受けて短期金融市場では9月利上げの確率が低下し、みんかぶによると13日時点のCMEフェドウォッチでは9月の利上げが34%、据え置きが66%と、CPI発表前の45%程度から下がりました。FRBは7月28〜29日のFOMCでFF金利の誘導目標を3.50〜3.75%に据え置いており、三井住友DSアセットマネジメントによるとウォーシュ議長は会見で、インフレ率を2%目標へ戻す取り組みを緩めることはないと強調しています。

AI関連の一部銘柄が大きく買われた — みんかぶによると、12日はAI関連企業の好決算を受けて買い意欲が高まり、コアウィーブが19.28%高、スーパー・マイクロ・コンピューターが19.02%高となりました。一方、外為どっとコムによると、引け後に決算を発表したシスコシステムズは時間外取引で4%超下落しています。同じAI・データセンター関連でも、決算の中身次第で反応が大きく割れている状況です。

東京市場は日銀報道で上げ幅を縮めて引けた — 13日の日経平均株価は784円53銭高の6万8308円59銭と3日続伸、TOPIXは7日続伸で最高値を更新しました。前夜の米CPIを受けた半導体株買いで上げ幅は一時1200円を超えましたが、ブルームバーグが日銀は9月か10月の会合で利上げを視野に入れていると報じたことで後場に伸び悩んでいます。米国の利上げ観測が後退する一方で日本の利上げ観測が強まる、という日米の逆方向の動きが今週の相場の背景にあります。

注目ポイント

  • PPIはCPIの「答え合わせ」ではなく別の物差し — 今夜のPPIは総合が前年比4.9%、コアが4.1%への鈍化が見込まれています。前月からの低下幅は総合で0.6ポイント、コアで0.6ポイントと小さくありません。みんかぶは、総合・コアとも無難な結果となればFRBの利上げ観測が一段と後退し、ドルが売られる可能性があると伝えています。ただしPPIとCPIは対象が異なるため、CPIが落ち着いてもPPIが上振れる展開はあり得ます。なお本記事の執筆時点では発表直後のため、結果の数値は確認できていません。

  • 前月比のハードルは前回より高い — 前年比では鈍化が見込まれる一方、前月比の予想は総合が+0.2%、コアが+0.3%で、前回の総合-0.3%・コア+0.2%からは伸びが加速する形の予想です。前年比の鈍化は1年前の水準が高かったことの裏返しでもあるため、足元の勢いを見るには前月比も合わせて確認する必要があります。

  • 地区連銀総裁の発言が指標と重なる時間帯 — 21時15分にハマック・クリーブランド連銀総裁、21時40分にバーキン・リッチモンド連銀総裁の登壇が予定されています。指標発表の直前直後という時間帯で、内容次第では指標への反応と発言への反応が重なる可能性があります。ジャクソンホール会議は8月27〜29日に開催予定で、市場の視線はそこへ向かい始めています。

  • 半導体の決算が引け後に控える — 外為どっとコムによると、引け後にアプライド・マテリアルズが決算を発表します。半導体製造装置の大手で、今日の東京市場でも同業のアドバンテストや東京エレクトロンが上場来高値圏まで買われた流れがあるだけに、内容は翌14日の東京市場にも波及しやすい位置にあります。寄り付き前にはタペストリーの決算も予定されています。

  • 30年債入札は金利の需給を映す — 250億ドル規模の米30年債入札が予定されています。落札結果が低調だと長期金利の上昇要因となり、株式の評価にも影響します。米10年債利回りは4.698%と、CPI後もほぼ横ばいの水準です。

ひとこと解説

今夜の主役であるPPIは生産者物価指数(Producer Price Index)の略で、企業が商品やサービスを出荷するときの価格、つまり卸売段階の物価を測る指標です。私たちが店頭で払う値段を測るCPI(消費者物価指数)とは、見ている場所が違います。

なぜ2つも必要なのでしょうか。値段は原材料から始まって、加工され、卸を経て、最後に店頭に並びます。PPIはこの流れの川上から中流を、CPIは川下を見ています。川上の物価が上がると、企業はやがてその分を販売価格に転嫁するので、数か月遅れてCPIに現れることがあります。だからPPIは「CPIの先行指標になりうる」と説明されることが多いのです。

ただし、この関係は思われているほど単純ではありません。PPIには企業向けサービスや輸出向けの品目が含まれる一方、CPIに大きく効く家賃はPPIにほとんど入りません。逆にCPIには輸入品が入りますが、PPIは国内生産者が対象です。中身が違うので、片方が落ち着いてももう片方が動くことは普通に起こります。今夜のPPIが「CPIの答え合わせ」ではないというのは、こういう意味です。

もう一つ、FRBが実際に最も重視しているのはPCEデフレーターという第3の物価指標で、CPIでもPPIでもありません。ではなぜ市場がPPIに注目するかというと、PCEデフレーターの構成項目の一部はCPIとPPIの実額から計算されるためです。つまりPPIが出た時点で、月末に出るPCEの姿がある程度推し量れる。市場が今夜の数字を待つのは、金融政策の判断材料に直結する数字が、ここで一部先に見えるからです。

そして今、日米の中央銀行は逆を向いています。米国はCPIの鈍化で9月利上げの確率が34%まで下がり、日本は9月か10月の利上げが視野に入ったと報じられています。金利差が縮む方向の材料が両側から出ている構図で、これは為替を通じて日本株の輸出企業にも効いてきます。今夜の数字を見るときは、株価の上下だけでなく、米金利とドル円がどちらへ動いたかを一緒に確認しておくと、明日の東京市場の出発点が見えやすくなります。


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