12日の米国株式市場は、注目された7月の消費者物価指数(CPI)が市場予想どおりの鈍化を示し、指数によって明暗の分かれる一日となりました。ナスダック総合指数は3日ぶりに反発し、フィラデルフィア半導体株指数は2.48%高と大きく上昇した一方、NYダウは小幅ながら3日続落しています。今夜13日は日本時間21時30分に7月の生産者物価指数(PPI)が発表されます。

米国市場(8月12日終値) 終値 前日比
NYダウ工業株30種平均 53,770.27ドル -21.58(-0.04%)
S&P500種株価指数 7,748.50 +20.30(+0.26%)
ナスダック総合指数 26,588.488 +143.042(+0.54%)
フィラデルフィア半導体株指数 12,399.376 +300.904(+2.48%)
米7月CPI(8月12日発表) 結果 市場予想 6月実績
総合・前月比 +0.1% +0.1% -0.4%
総合・前年同月比 +3.4% +3.4% +3.5%
コア(食品・エネルギー除く)・前月比 +0.2% +0.2%
コア・前年同月比 +2.5% +2.5% +2.6%
商品・為替 水準 前日比
WTI原油9月物(8月12日) 83.27ドル/バレル +0.07(+0.1%)
金12月物(8月12日) 4,467.50ドル/トロイオンス +26.4(+0.6%)
ドル円(13日3時21分時点) 159円50銭近辺
ユーロ円(同) 183円78銭
今夜の主な予定(米国時間13日) 内容
経済指標 7月生産者物価指数(日本時間21時30分)
前日引け後の決算 シスコシステムズ(2026年6月期通期・第4四半期)

何があった?

CPIは予想と寸分たがわぬ着地だった — 日本経済新聞によると、12日発表の7月の米CPIは前年同月比3.4%上昇と市場予想に一致し、6月の3.5%上昇から伸びが鈍りました。食品とエネルギーを除くコア指数も前年同月比2.5%上昇と予想どおりで、6月の2.6%から鈍化しています。前日12日の記事でお伝えした市場予想が、総合3.4%・コア2.5%でしたから、結果は予想の数字をそのままなぞった形です。日本経済新聞は、この結果を受けて米連邦準備理事会(FRB)の早期利上げ観測が後退し、インフレ鈍化を好感した買いが入ったと伝えています。7日の雇用統計が予想外のマイナスとなって以降、上下に振れやすかった市場の金利観にとっては、ひとまず落ち着きどころが示された一日でした。

指数によって反応が分かれた — 日本経済新聞のマーケットデータによると、ナスダック総合指数は143.042ポイント(0.54%)高の26,588.488と3営業日ぶりに反発し、S&P500種株価指数も20.30ポイント(0.26%)高の7,748.50で終えました。ブルームバーグは、S&P500が過去最高値に接近し、ハイテク株の比重が高いナスダック100指数が1カ月ぶりの高値で引けたと伝えています。その一方でNYダウは21.58ドル(0.04%)安の53,770.27ドルと、小幅ながら3日続落しました。日本経済新聞によると、ダウは取引時間中の多くで高い水準を保っていたものの、マイクロソフトやアマゾン・ドット・コムといった大型ハイテク株に利益確定や持ち高調整の売りが出て、上値が抑えられた形です。ホームデポは最高経営責任者(CEO)が数カ月の医療休職に入ると発表したことで3%を超える下落となり、ナイキ、トラベラーズ、IBMも下げました。

半導体とAIインフラ関連が上昇をけん引した — 日本経済新聞のマーケットデータによると、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は300.904ポイント(2.48%)高の12,399.376と、前日の0.87%高からさらに上げ幅を広げました。同紙によると、ダウ構成銘柄ではエヌビディアのほかキャタピラー、シスコシステムズ、ウォルマート、ハネウェル・テクノロジーズ、アメリカン・エキスプレスが上昇し、AIインフラ関連ではコアウィーブやネビウス・グループが好決算を受けて急伸しました。指数全体の動きは小さくても、その中身はAI・半導体に資金が集まる展開だったことになります。

シスコは引け後にAI受注見通しを引き上げた — シスコシステムズは12日の取引終了後に2026年6月期通期および第4四半期決算を発表し、売上高・利益とも四半期・通期で過去最高となり、ガイダンスの上限を上回ったと公表しました。TradingKeyによると、同社はAI関連のハイパースケーラー向け受注見通しを従来の50億ドルから90億ドルへ引き上げており、時間外取引で株価は3%程度上昇しています。

東京市場は最高値圏で13日を迎える — 12日の東京市場は日経平均株価が553円84銭高の6万7524円06銭で6万7000円台を回復し、TOPIXは38.39ポイント高の4139.00と最高値を更新しました。今日13日は、前夜の半導体指数の大幅高という追い風を受けての取引開始となります。

注目ポイント

  • 市場が見るのは「利上げが遠のいたかどうか」 — 日本経済新聞は、CPIの鈍化を受けてFRBの早期利上げ観測が後退したと伝えています。焦点は9月15〜16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)ですが、CPIが予想どおりに収まったことで、少なくとも今回の統計が利上げ方向へ材料を押しやることにはなりませんでした。

  • 半導体関連の値動きに注目が集まりやすい — SOXが2.48%高となり、シスコがAI向け受注見通しを大幅に引き上げたことで、AI・半導体を巡る需要の話題が続いています。12日の東京市場でも東京エレクトロンやキオクシアホールディングスといった銘柄が相場をけん引しており、今日もこの流れが意識されやすい地合いです。

  • 今夜はPPIが控える — みんかぶの経済指標データによると、今夜発表の7月PPIの市場予想は前月比プラス0.2%、前年同月比プラス4.9%(6月はマイナス0.3%、プラス5.5%)、コアが前月比プラス0.3%、前年同月比プラス4.2%(同プラス0.2%、プラス4.7%)です。CPIが落ち着いた一方で、PPIの前年比は4%台後半と高い水準が予想されており、企業段階の物価は消費者段階とは違う顔を見せています。

  • ドル円は160円が意識される水準に戻った — みんかぶによると、13日3時21分時点のドル円は159円50銭近辺と、160円の節目に近づいています。同社は、8月の円は日米協調介入後の上昇分の半分をすでに失っており、介入への警戒が終わったと判断するのは時期尚早との見方を伝えています。為替の水準は輸出関連企業の業績見通しに影響するため、東京市場でも意識されやすい材料です。

  • 原油と金はそろって水準を切り上げている — 日本経済新聞によると、12日のWTI原油9月物は0.07ドル(0.1%)高の1バレル83.27ドルと5営業日続伸し、金12月物は26.4ドル(0.6%)高の1トロイオンス4,467.50ドルで4営業日続伸しました。金は取引時間中に4,502.7ドルまで上昇し、6月上旬以来およそ2カ月ぶりの高値を付けています。中東情勢を背景としたエネルギー輸送への懸念が、引き続き相場の背景にあります。

ひとこと解説

今回のCPIは「インフレ鈍化」と報じられました。ただ、数字そのものは前年同月比プラス3.4%です。ここで押さえておきたいのが、「インフレ率が下がること」と「物価が下がること」はまったく別物だという点です。

前年同月比プラス3.4%というのは、去年の7月に100円だったものが今年の7月には103.4円になっている、という意味です。6月がプラス3.5%でしたから、値上がりのペースはたしかに緩んでいます。しかし物価そのものは上がり続けています。坂道を上る車がアクセルを少し緩めた状態と言えばイメージしやすいでしょうか。速度は落ちましたが、車は前に進んでいますし、標高はさらに高くなっています。

このように**上昇率が縮んでいく状態を「ディスインフレ」**と呼びます。物価水準そのものが下がる「デフレ」とは区別される言葉です。ニュースで「インフレが和らいだ」「物価の伸びが鈍化した」と表現されるとき、その多くはディスインフレを指しており、店頭の値札が去年より安くなったという話ではありません。「鈍化したのに生活は楽にならない」という実感とニュースの見出しがずれて感じられるのは、この違いが原因です。累積した値上がりは、伸び率が下がっても消えないからです。

では、なぜ市場は伸び率の鈍化を歓迎するのでしょうか。中央銀行が金利を動かすときに見ているのが、物価の水準ではなく変化のペースだからです。値上がりのペースが速すぎれば、それを抑えるために金利を上げる必要が出てきます。逆にペースが落ち着いてくれば、利上げを急ぐ理由は薄れます。今回のCPIが「早期利上げ観測の後退」につながったのは、この理屈です。株式市場にとって金利は資金調達コストであり、将来の利益を評価するときの割引率でもあるため、利上げ観測の強弱がそのまま株価の反応に表れます。

もう一つ、今夜のPPIと合わせて見ておくと理解が深まります。CPIが前年比3.4%であるのに対し、PPIの予想は前年比4.9%です。PPIは企業が出荷する段階の価格を測る指標で、いわば物価の川上にあたります。川上の価格が高い伸びを保っているとき、それがどこまで川下の消費者価格に流れ込むのかは、その時々の企業の価格転嫁のしやすさによって変わります。片方の数字だけで「インフレは終わった」と判断できるものではない、という距離感を持っておくと、明け方に飛び込んでくる見出しに振り回されずに済みます。


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