前日11日の米国株式市場は主要3指数がそろって続落しました。ホルムズ海峡の再開期待が後退して原油が一段と上昇するなか、CPI発表を控えた様子見と主要ハイテク株への売りが重荷となった一日です。今夜12日は、日本時間21時30分に今週最大の材料である7月の消費者物価指数(CPI)が発表されます。

米国市場(8月11日終値) 終値 前日比
NYダウ工業株30種平均 53,791.85ドル -184.13(-0.34%)
S&P500種株価指数 7,728.20 -24.91(-0.32%)
ナスダック総合指数 26,445.45 -159.91(-0.60%)
フィラデルフィア半導体指数 12,098.47 +104.61(+0.87%)
商品・為替(8月11日) 水準 前日比
WTI原油9月物 83.39ドル/バレル +1.26(+1.53%)
ドル円(フィスコ集計時点) 159円17銭
米7月CPIの市場予想(8月12日21時30分発表) 予想 6月実績
総合・前月比 +0.1% -0.4%
総合・前年同月比 +3.4% +3.5%
コア(食品・エネルギー除く)・前年同月比 +2.5% +2.6%
今夜の主な予定(米国時間12日) 内容
経済指標 7月消費者物価指数(日本時間21時30分)
決算 アムコー・テクノロジー、アルファ・アンド・オメガ・セミコンダクター、シスコシステムズ
翌13日 7月生産者物価指数(PPI)

何があった?

ハイテク株の売りが指数を押し下げた — トレーダーズ・ウェブによると、11日はイラン高官の発言を受けてホルムズ海峡の再開期待が後退し、原油先物が上昇したことでインフレ再燃への警戒が強まりました。そこにCPI発表前の様子見が重なり、主要ハイテク株に売りが出ています。同社の集計では、AI部門の組織改編を発表したアルファベットが3.84%安、アマゾン・ドット・コムが2.09%安、オラクルが3.69%安、アップルが1.09%安でした。S&P500の11業種のうち上昇したのは公益、エネルギー、資本財の3業種のみで、コミュニケーションを筆頭に8業種が下落しています。

その裏で半導体だけは買われていた — 日本経済新聞のマーケットデータによると、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は104.611ポイント(0.87%)高の12,098.472と、前日の2.94%安から反発しました。トレーダーズ・ウェブによるとKLAが4.01%高となるなど、個別の半導体銘柄に買い戻しが入っています。12日の東京市場で東京エレクトロンやキオクシアホールディングスといった半導体関連が買われ、日経平均が553円高、TOPIXが最高値を更新したのは、この流れを引き継いだものでした。米国の指数全体が下げていても、その中身は一様ではなかったことになります。

原油は水準を切り上げたまま — フィスコによると、11日のWTI原油9月物は1.26ドル(1.53%)高の1バレル83.39ドルで終えました。10日に約5%急伸した後も水準を維持した形です。同社の集計では、決算が市場予想を下回ったオン・ホールディングスが下落した一方、AI関連ではライオット・プラットフォームズがアンソロピックとの契約を材料に買われ、エヌビディアとの提携が期待されたブラックストーンやアポロ・グローバル・マネジメントも上昇しました。引け後に決算を発表したスーパー・マイクロ・コンピューターは、見通しが上振れたことを受けて時間外取引で買われています。

今夜の主役はCPI — 外為どっとコムによると、7月CPIの市場予想は総合が前月比プラス0.1%(6月はマイナス0.4%)、前年同月比がプラス3.4%(同プラス3.5%)、コア指数の前年同月比がプラス2.5%(同プラス2.6%)です。コアの前月比予想は時事通信がプラス0.2%、モーニングスターがプラス0.1%と機関によって差があります。CNBCによると、予測市場は物価の落ち着いた結果を織り込んでいました。なお本記事は発表直後の時点で執筆しており、実際の結果の確報は反映していません。

注目ポイント

  • 焦点は9月の利上げ観測 — 外為どっとコムは、CPIが予想を上回れば9月15〜16日のFOMCでの利上げ確率が高まり、下回れば利上げ観測が後退するとの見方を示しています。7日の雇用統計が予想外のマイナスとなって以降、市場の金利観は上下に振れやすい状態が続いており、今夜の数字はその材料が一つ増える場面です。

  • 総合とコアの差が開いている — 予想段階で総合が前年比プラス3.4%、コアがプラス2.5%と0.9ポイントの開きがあります。エネルギーや食品を含むかどうかで見え方が変わるため、どちらの数字を見るかで印象が変わりやすい発表になりそうです。

  • 7月の統計に8月の原油高は入らない — 発表されるのは7月分で、8月に入ってからの原油急伸は反映されません。この点は12日の東京市場の記事でも触れたとおりで、統計の数字と足元のエネルギー価格には時間差があります。反映されるとすれば来月以降の統計です。

  • 物価統計は明日も続く — フィスコによると、13日には7月の生産者物価指数(PPI)の発表が控えます。CPIが「お店の値札」なら、PPIは企業の出荷段階の価格です。今夜の結果だけで物価の全体像が決まるわけではない点は押さえておきたいところです。

  • 決算はシスコシステムズに注目が集まりやすい — フィスコは今夜の決算としてアムコー・テクノロジー、アルファ・アンド・オメガ・セミコンダクター、シスコシステムズを挙げ、AI向け設備投資が材料視されやすいとしています。同社は今夜の相場について、中東情勢の長期化懸念から売りが続きやすいものの、売り一巡後は様子見が広がるとの見方を示しています。

ひとこと解説

今夜のCPIの市場予想は、総合が前年比プラス3.4%、コアがプラス2.5%です。同じ7月の物価を測っているのに、1ポイント近い差があります。この**「コア」という言葉の意味**を整理しておきましょう。

コア指数とは、価格の振れが大きい品目をあえて計算から外した物価指数です。米国のコアCPIは食品とエネルギーを除いて計算します。なぜ除くのかというと、この2つは天候や産油国の情勢といった、金融政策とは無関係な理由で大きく動くからです。ホルムズ海峡を巡る緊張で原油が数日のうちに5%上がる。これは中央銀行が金利を上げ下げしても止められません。物価全体の底流にある動きを見たいとき、こうした品目のノイズは判断を狂わせる要因になります。そこで、あえて外した数字も併せて見るわけです。

ここから、総合とコアの差そのものが情報になるという読み方が出てきます。総合がコアを上回っているなら、除いた品目、つまりエネルギーや食品が全体を押し上げているということです。逆に総合がコアを下回れば、それらが物価を押し下げていることになります。今夜の予想のように総合3.4%・コア2.5%という並びは、「サービスや家賃といった幅広い部分は落ち着いてきているが、エネルギーなどが全体の数字を高くしている」という構図を示唆します。同じ「インフレ率」でも、どちらの数字を引用するかで受ける印象がかなり変わることが分かります。

もう一点、前月比と前年同月比の違いも押さえておくと混乱しません。7月の総合の予想は前月比プラス0.1%と非常に小さい一方、前年同月比は3.4%と大きな数字です。前月比は「先月から今月にかけての1カ月の変化」、前年同月比は「12カ月間の積み重ね」なので、単位が違うと考えるのが正確です。6月の前月比がマイナス0.4%だったのに前年比が3.5%だったのも同じ理由で、直近1カ月が下がっても、それ以前の11カ月分の上昇が残っていれば前年比は高いままになります。

注意したいのは、コアが「本物のインフレ」で総合が「見せかけ」というわけではないという点です。家計が実際に払うのはガソリン代も食料品代も含んだ総合の物価であり、生活実感に近いのはむしろ総合のほうです。コアはあくまで政策判断のための道具であって、暮らしの物価を測る指標ではありません。ニュースで数字を見かけたら、それが総合なのかコアなのか、前月比なのか前年比なのかを確認する。この一手間だけで、同じ発表を巡って強気と弱気の解説が並ぶ理由が見えやすくなります。


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