10日の米国株式市場は、主要な経済指標の発表がない静かな一日となる見込みです。前週末7日の雇用統計を受けた金利低下の流れが残る一方、ホルムズ海峡を巡るイランの新たな要求が伝わっており、12日発表の7月消費者物価指数(CPI)を前に様子見となりやすい地合いです。

米国市場(8月7日終値) 終値 前日比
NYダウ工業株30種平均 54,036.93ドル +151.83(+0.28%)
S&P500種株価指数 7,757.64 +47.68(+0.62%)
ナスダック総合指数 26,690.62 +342.27(+1.30%)
債券・為替・商品(8月7日) 終値 前日比
米10年債利回り 4.6495% -0.0344ポイント
米2年債利回り 4.1925%
ドル円 157円80〜90銭
WTI原油9月物 78.18ドル/バレル +0.89
金先物12月物 4,399.70ドル/トロイオンス +100.10
今週の主な日程(米国時間) 内容
10日(月) 主要な経済指標の発表なし
11日(火) スーパー・マイクロ・コンピューター、コアウィーブ、ルーメンタムの決算
12日(水) 7月CPI、米10年債入札、シスコシステムズ、ネビウスの決算
13日(木) 7月PPI、新規失業保険申請件数、米30年債入札、アプライド・マテリアルズの決算、バーキン・リッチモンド連銀総裁とハマック・クリーブランド連銀総裁の講演
14日(金) 7月小売売上高、ミシガン大学消費者態度指数(8月速報値)

何があった?

今夜は手がかりとなる指標がない — OANDA証券の資料によると、10日の米国市場では主要な経済指標の発表予定がありません。前週末に発表された7月の米雇用統計を消化しながら、12日のCPIを待つ構図になります。財経新聞は今夜の見通しについて「伸び悩みか」としたうえで、FRBの引き締めへの警戒が和らいだことで好決算銘柄には買いが入りやすい、と伝えています。

前週末7日の米国市場では、7月の非農業部門雇用者数が前月比2万3000人の減少と、市場予想の8万人程度の増加に反してマイナスに転じました。平均時給の伸びも前月比0.1%と昨年12月以来の低さで、失業率は4.1%に低下しています。この結果を受けて9月の利上げ観測が後退し、みんかぶによると金利先物が織り込む9月の利上げ確率は発表前の約55%から約40%へ低下しました。米10年債利回りは4.6495%へと低下し、金利低下を追い風にナスダック総合指数が1.30%高、S&P500種は7,757.64で終値の最高値を更新しています。

イラン情勢が再び意識される場面も — 日本経済新聞によると、イラン最高安全保障委員会のゾルガドル事務局長は8日、ホルムズ海峡を開放する条件として、米国に戦闘で生じた被害の補償を求めるとの声明を出しました。米軍によるイラン港湾の封鎖解除と周辺地域からの撤退、制裁の解除、資産の凍結解除もあわせて要求しています。アラグチ外相は海峡の新たな航路についてオマーンとの合意が「非常に近い」と述べた一方、通航の本格再開は米国の対応次第だとしており、交渉の先行きは不透明さを増しています。

こうした報道を受け、10日朝の東京時間7時14分時点では、ダウ平均先物(9月限)が54,041.00と前日比111ドル安、S&P500先物が7,771.25の8.50ポイント安となる一方、ナスダック100先物は29,862.00と小幅高で、指数によって方向が分かれていました。その後は持ち直し、財経新聞によると東京時間13時30分時点でS&P500先物は7,786.50(+6.75)、ナスダック100先物は29,891.00(+56.25)と小幅高で推移しています。

大型決算は明日以降に集中する — 今週の米国企業の決算は11日以降に集まります。11日にはスーパー・マイクロ・コンピューター、ルーメンタム、そしてAI向けのGPUクラウドを手がけるコアウィーブが控えます。コアウィーブは米東部時間11日午後5時に2026年4〜6月期の決算を発表する予定です。12日にはシスコシステムズとネビウス、13日には半導体製造装置のアプライド・マテリアルズとタペストリーが続きます。

東京市場は明日休場 — 日本は11日が「山の日」で、東京市場は休場となります。10日の日経平均株価は前週末の米国株高を受けて1,363円51銭(2.08%)高の6万6970円22銭と大幅反発しており、今夜の米国市場の結果は、12日の東京市場の寄り付きまで持ち越されることになります。

注目ポイント

  • 週の主役は12日のCPI — ブルームバーグによると、7月のCPIは前月比0.1%上昇、変動の大きい食品とエネルギーを除くコアCPIは前月比0.2%上昇、前年同月比では2.5%上昇が市場予想となっています。前年比2.5%は今年2月以来の低い伸びにあたります。6月のCPIはエネルギー価格の下落が響いて前月比0.4%低下と大きく落ち込んでおり、その反動が出るかどうかも見どころです。7月下旬のFOMCでは3人のメンバーが利上げを支持して据え置きに反対票を投じており、物価の鈍化が確認されればその構図に変化が生じる可能性があります。

  • 雇用の弱さと物価がそろって出そろう週 — 前週末の雇用統計で労働市場の減速が示され、今週は12日のCPI、13日のPPI、14日の小売売上高と、物価と消費の数字が続きます。景気の減速と物価の鈍化が同時に確認されるのか、それとも物価だけが下がらないのかで、金融政策を巡る見方は変わりやすくなります。13日にはバーキン・リッチモンド連銀総裁とハマック・クリーブランド連銀総裁の講演も予定されており、指標を受けた当局者の受け止めが伝わる場面です。

  • 原油と地政学が金利観に影響しうる — ホルムズ海峡は世界の原油輸送の要衝で、通航の停滞が続けばエネルギー価格を通じて物価に跳ね返ります。7日のWTI原油9月物は78.18ドルと前日比0.89ドル上昇しました。物価の鈍化を織り込みつつある市場にとって、エネルギー価格は前提を崩しかねない変数であり、交渉の進展・後退はニュースヘッドラインとして株価にも伝わりやすい局面です。

  • 12日・13日には国債入札もある — 12日に米10年債、13日に米30年債の入札が予定されています。入札の需要が弱いと長期金利の上昇要因となり、金利低下を支えに買われてきたハイテク株の重荷になることがあります。CPIと同じ日に10年債入札が重なる12日は、債券市場の動きにも目が向きやすい一日です。

ひとこと解説

前週末7日の市場で目を引いたのが、金(ゴールド)先物12月物が1日で100.10ドル上昇し、1トロイオンス4,399.70ドルと約2カ月ぶりの高値水準になったことです。株価も同時に上がっているのに、なぜ金まで買われたのでしょうか。

金は、利息も配当も生まない資産です。 持っていても、預金のように利息がつくわけでも、株式のように配当が出るわけでもありません。値上がり益しか期待できない資産、と言い換えてもよいでしょう。この性質が、金利との関係を決めています。

金利が高いとき、お金を国債や預金に置いておけば、それだけで確実な利息が入ってきます。金を持つということは、その利息を受け取る機会を手放すことを意味します。経済学ではこれを**機会費用(きかいひよう)**と呼びます。金利が高い局面では金を持つ機会費用が大きくなり、金は相対的に選ばれにくくなります。逆に金利が低下すると、利息を諦めるコストが小さくなるため、金の相対的な魅力が増します。7日は雇用統計の下振れで米長期金利が低下しました。金が買われた背景のひとつは、この金利低下です。

もうひとつの背景が、有事の逃避先としての性格です。金は特定の国が発行する紙幣や債券とは違い、発行体の信用に依存しません。政情不安や紛争、通貨への不信が意識される局面では、「どの国の信用にも紐づかない資産」として買われやすくなります。ホルムズ海峡を巡る情勢が続いていることも、金への資金流入と無関係ではないと見られています。

ここで押さえておきたいのは、「株が下がると金が上がる」という単純な逆相関ではないという点です。7日のように、金利低下という共通の材料で株と金がそろって上昇することは珍しくありません。金の値動きを読むときは、株価との対比ではなく、金利の方向リスクへの警戒感という2つの軸に分けて眺めると、ニュースの意味がつかみやすくなります。また金はドル建てで取引されるため、ドルの強弱も価格に影響します。円建てで金を見ている場合は、金そのものの動きと為替の動きが混ざっている点にも注意が必要です。


出典: