7日の米国市場はS&P500種株価指数が終値の最高値を更新し、ナスダック総合指数も1.3%高となりました。同日発表の7月の米雇用統計が予想外の雇用者数減少となり、早期の利上げ観測が後退したためです。主要3指数はそろって週間で4月中旬以来の大きな上昇率となりました。今日の東京市場は244社の決算発表と日銀の「主な意見」公表が予定されています。

米国市場(8月7日終値) 終値 前日比
NYダウ工業株30種 54,036.93ドル +151.83(+0.28%)
S&P500種株価指数 7,757.64 +47.68(+0.62%) ※最高値
ナスダック総合指数 26,690.62 +342.26(+1.30%)
米10年債利回り 4.65% -0.03%
週間騰落率(8月3日〜7日) 騰落率
NYダウ +2.96%
S&P500 +3.58%
ナスダック総合 +5.19%
7月の米雇用統計 結果 市場予想
非農業部門雇用者数 -2万3000人 +8万3000人
5月・6月分の改定 計10万3000人の下方修正
失業率 4.1%(前月から低下)
平均時給(前年同月比) +3.2% +3.5%
前週末の東京市場(8月7日終値) 終値 前日比
日経平均株価 65,606.71円 -76.55(-0.12%)
TOPIX 4,074.93 +19.08(+0.47%)

何があった?

雇用の減速が「利上げ観測の後退」として受け止められた — 7日に発表された7月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比2万3000人の減少となり、8万3000人程度の増加という市場予想から大きく下振れました。減少は5カ月ぶりです。さらに5月分と6月分が合計10万3000人下方修正され、労働市場の勢いは事前に見えていたよりも弱かったことになります。平均時給の伸びも前年同月比3.2%と予想の3.5%を下回りました。一方で失業率は4.1%へ低下しています。

この結果を受けて、市場が織り込む9月の利上げ確率は大きく低下しました。ロイターによると、CMEフェドウォッチでは前日の55%程度、1週間前の67%程度から約44%へ下がっています(ブルームバーグは40%程度への低下と伝えています)。米10年債利回りは前営業日比0.03%低い4.65%で終え、金利低下を追い風にハイテク株が買われる展開となりました。ナスダック総合の上昇率(+1.30%)がダウ(+0.28%)を大きく上回ったのは、この構図を映しています。

個別では決算と需給の材料が目立った — S&P500構成銘柄では、エアビーアンドビーが17.4%高と上昇率トップになりました。アトラシアンは35.3%高と1日の上昇率として過去最大を記録し、マイクロチップ・テクノロジーも13.9%高と15カ月超ぶりの大幅高となっています。スペースXは15.8%高の133.11ドルで引け、2営業日で約23%上昇しました。こちらは決算ではなく、上場後初めてのロックアップ(売却制限)解除を通過したことが材料と伝えられています。

為替は統計発表後に円高が進んだあと、水準を戻した — ドル円は統計発表前の1ドル=158円30銭台から、発表直後の数分間で1円60銭ほど円高が進み、一時156円60銭台をつけました。3日以来の円高・ドル安水準です。ただしその後は戻し、NY市場の終値は157円80〜90銭近辺でした。

前週末の東京市場は日経平均とTOPIXが逆方向に — 7日の日経平均は76円55銭安の6万5606円71銭と小幅に続落しました。前場はAI・半導体関連への売りで一時1000円を超える下げとなりましたが、後場は買いが優勢となり下げ渋っています。TOPIXは19.08ポイント高の4074.93と上昇しました。日経平均は値がさの半導体株の影響を受けやすいため、こうしたねじれが生じることがあります。なお日経平均は週間では1244円69銭(1.93%)の上昇でした。

注目ポイント

  • 今日は決算発表が244社 — 楽天グループ、住友金属鉱山、サンリオ、ソニーフィナンシャルグループ、スクウェア・エニックス・ホールディングスなどが予定されています。決算シーズンは最終盤に入っており、今週は12日が207社、13日が218社、14日が360社と後半にかけて増えていきます。先週は「増益でも下落」といった反応も繰り返されており、指数全体の方向より個別の値動きが目立ちやすい局面です。

  • 日銀の「主な意見」が公表される — 7月30〜31日の金融政策決定会合の議論を整理した「主な意見」が、本日公表される予定です。同会合では政策金利が1.0%で据え置かれた一方、高田委員が連続利上げを主張して反対票を投じています。委員の間でどの程度意見が割れているかを読み取る材料として、金利や為替の見方に影響しうる公表物です。このほか6月の国際収支、7月の景気ウオッチャー調査も予定されています。

  • 明日11日は「山の日」で東京市場は休場 — 今週の東京市場は10日・12日・13日・14日の実質4営業日ですが、11日が祝日で分断される形になります。お盆の時期と重なり市場参加者が減りやすいため、売買代金が細ると同じ材料でも株価の振れ幅が大きくなりやすい点は意識されやすいところです。なお週の最大の注目は12日発表の米7月消費者物価指数(CPI)で、雇用の弱さに物価の数字が加わることになります。

ひとこと解説

7日の米国市場で15.8%高となったスペースXの材料として伝えられたのが、ロックアップの解除です。決算でも新事業でもないのに株価が2営業日で2割以上動く。この「ロックアップ」とは何でしょうか。

ロックアップとは、新規上場(IPO)にあたって、創業者・役員・ベンチャーキャピタルなどの既存株主が、一定期間は持ち株を売らないと約束する取り決めです。 期間は90日〜180日程度が一般的です。上場直後は市場に出回る株数が限られており、そこに大株主の持ち株が一斉に売りに出れば、株価は急落しかねません。それを防ぎ、上場後の値動きを落ち着かせる目的で設けられています。

ここで効いているのは業績ではなく需給です。株価は「その会社にどれだけ稼ぐ力があるか」だけでなく、「今この瞬間、売りたい人と買いたい人がどれだけいるか」でも動きます。ロックアップが解除されると、それまで売れなかった株が売れるようになる。つまり潜在的な売り手が一気に増えるため、解除日が近づくにつれて「売られるのではないか」という警戒が先回りして株価の重荷になりやすいのです。

ではなぜ今回は上がったのか。警戒されていた予定が実際に通過し、結果として想定ほどの売りが出なかったと市場が受け止めた場合、それまでの重荷が外れる形で買い戻しが入ることがあります。 相場でよく言われる「悪材料出尽くし」がこれにあたります。逆に、解除後に実際の売却が続けば株価は下がり続けます。どちらになるかは事前には決まっておらず、事後にしか分かりません。

覚えておきたいのは、こうした需給要因による値動きは日程があらかじめ分かっているという点です。ロックアップの期間や解除日は上場時の目論見書などに記載されており、誰でも確認できます。決算や経済指標と同じように、値動きの背景に「予定されていたイベント」が潜んでいることがある、という視点を持っておくと、突然に見える急騰・急落の理由を整理しやすくなります。


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