5日の米国市場は主要3指数の方向がそろわず、NYダウは前日比263ドル高と5営業日続伸して最高値を更新した一方、ナスダック総合は5営業日ぶりに反落しました。7月のADP全米雇用リポートが市場予想を下回り、大型ハイテク株から医薬品など内需系へ資金が移る動きが目立っています。

指数(8月5日終値) 終値 前日比
NYダウ 54,349.12 +263.24(+0.49%)
S&P500 7,723.55 -12.97(-0.17%)
ナスダック総合 26,363.44 -221.55(-0.83%)
その他の指標 数値
7月ADP全米雇用リポート +4万4000人(市場予想 +6万5000人/6月 +9万8000人)
7月ISM非製造業景況指数 54.1(市場予想 54.5/6月 54.0)
円相場(ISM発表直後) 1ドル=157円48銭近辺
日経平均株価(5日終値) 66,300.44円(+2,342.91、+3.66%)

何があった?

指数の中身が入れ替わった一日 — NYダウは5営業日続伸で終値ベースの最高値を更新しましたが、S&P500とナスダック総合は下落しました。前日4日はナスダックが2.59%高となるハイテク主導の上昇でしたが、5日はその流れが反転しています。ダウを押し上げたのはアムジェンが4.6%高、イーライリリーが4.9%高となった医薬品や、3.6%高のウォルト・ディズニーといった顔ぶれで、ヘルスケアセクター全体では1.3%上昇しました。ダウは30銘柄の株価平均型指数で、ハイテク以外の業種の比重が相対的に高いぶん、こうした日は3指数の中で強く出やすくなります。

IT・ハイテクには戻り売り — 上場後初の四半期決算を発表したスペースXは13.6%安と急落しました。売上高は大きく伸びたものの、AI関連への支出の大きさが警戒された形です。AMDは7.04%安で、決算の数字自体は市場予想を上回ったとされる一方、期待の高さには届かなかったと受け止められました。アルファベットC株は4.05%安、ウーバー・テクノロジーズはブラジルでの競争激化が意識され5.29%安となっています。半面、増収見通しを示したショッピファイは16.98%高、著名投資家による大量取得が伝わったシェイク・シャックは12.25%高、旅行需要の底堅さが好感されたブッキング・ホールディングスは6.56%高と、材料のあった銘柄には買いが入りました。

雇用と景況感はそろって減速方向 — 日本時間5日夜に発表された7月のADP全米雇用リポートは前月比4万4000人の増加で、市場予想の6万5000人増を下回り、6月の9万8000人増からも大きく減速しました。同じ夜の7月ISM非製造業景況指数も54.1と、市場予想の54.5をやや下回っています。ISMは50が景況感の拡大と縮小の分かれ目とされ、54.1は拡大圏にとどまる水準ですが、伸びは緩んだ格好です。指標発表後のドル円は1ドル=157円48銭近辺と、ドルがやや軟調に推移しました。中東情勢では、イエメンのフーシ派が紅海での攻撃を主張したと伝わり原油が買い戻される場面もありましたが、相場を大きく振り回すには至っていません。

注目ポイント

  • 東京市場は米国の「ちぐはぐ」をどう受け止めるか — 5日の日経平均は2342円91銭高の6万6300円44銭と大幅続伸し、前夜の米ハイテク高をそのまま映した一日でした。今回はハイテクが売られ、ダウが上げるという逆方向の組み合わせです。日本株は半導体・AI関連の値がさ株の影響が大きいため、ダウの最高値更新とナスダックの反落のどちらを重く見るかで、朝の値動きは変わりやすくなります。

  • 決算発表がピークを迎える — 6日はソフトバンクグループやJX金属など322社が決算発表を予定しています。指数全体の方向感より、個別企業の内容に対する反応が値動きを左右しやすい局面が続きます。

  • 7日には7月の米雇用統計 — ADPが予想を下回ったことで、政府統計である米雇用統計への関心はいっそう高まりました。労働市場の減速がどの程度確認されるかは、米金利や為替を通じて日本株にも波及しうるポイントです。

ひとこと解説

5日の米国市場のように、ダウは上がったのにナスダックは下がるという日には、しばしば「セクターローテーション」という言葉が使われます。

セクターとは、企業を事業内容で分類したグループのことです。情報技術、ヘルスケア、金融、エネルギー、生活必需品、資本財といった区分があり、同じ株式市場の中でも景気や金利の局面によって強い業種と弱い業種が入れ替わります。この資金の移動をセクターローテーションと呼びます。市場全体からお金が抜けたのではなく、市場の中で置き場所が移ったというイメージです。

5日は情報技術系の大型株が売られる一方、医薬品などヘルスケアが買われました。ヘルスケアや生活必需品、電力といった業種は、景気が減速しても需要が大きくは落ちにくいと考えられており、ディフェンシブ(守り)セクターと分類されます。反対に、景気の強さで業績が大きく振れる半導体や資本財、旅行関連などは景気敏感セクターと呼ばれます。雇用や景況感の指標が弱めに出た日にディフェンシブ系が相対的に買われやすいのは、この性格の違いが意識されるためです。

ここで押さえておきたいのは、セクターローテーションは「次に何が上がるか」を教えてくれる矢印ではないという点です。実際には、資金が移ったように見えても翌日には戻ることもありますし、たまたま決算が集中しただけということもあります。5日の場合も、スペースXやAMDの決算という個別要因が同時に効いており、景気観だけで説明できるわけではありません。

指数の数字だけを追っていると「相場が上がった/下がった」の一言で終わってしまいますが、どの業種が買われ、どの業種が売られたかを並べて見ると、その日に市場が何を気にしていたのかが少し立体的に見えてきます。3指数の騰落がバラバラな日ほど、この見方が役に立ちます。


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