29日の米国市場は、ダウ工業株30種平均が1,153ドル安と急落しました。米連邦公開市場委員会(FOMC)は5会合連続で政策金利を据え置きましたが、短期金利が下がる一方で長期金利が上昇し、インフレへの警戒が株式市場の重荷となりました。

指数(7月29日終値) 終値 前日比
NYダウ 51,594.14 -1,153.18(-2.19%)
S&P500 7,316.15 -112.63(-1.52%)
ナスダック総合 24,442.94 -433.97(-1.74%)
SOX(フィラデルフィア半導体株指数) 10,447.49 -588.19(-5.33%)
金利・政策(7月29日) 水準 前日比
FF金利の誘導目標 3.50〜3.75% 据え置き(5会合連続)
米2年債利回り 4.236% -0.04%
米10年債利回り 4.657% +0.05%
米30年債利回り 5.193% +0.09%超
参考 水準 前日比
日経225先物(9月限、30日夜間取引終値) 61,040円 -1,410円
ドル円(30日3:38時点) 163円59銭

何があった?

29日の米国市場を動かしたのは、FOMCの結果そのものよりも、その後の債券市場の反応でした。

FRBは政策金利の誘導目標を3.50〜3.75%に据え置きました。据え置きは5会合連続です。ただし決定は全会一致ではなく、採決は9対3。クリーブランド連銀のハマック総裁、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁、ダラス連銀のローガン総裁の3人が0.25%の利上げを主張して反対に回りました。声明では「経済活動は堅調なペースで拡大している」とした一方、エネルギー価格の変動や供給面の圧力を背景に「インフレは引き続き高止まりしている」との認識が示されています。ウォーシュFRB議長は記者会見で2%の物価目標に触れ、必要かつ適切と判断すれば行動をためらわないと述べました。

据え置き自体は市場の予想通りでしたが、9月の利上げを示唆する踏み込んだ内容は示されませんでした。これを受けて政策金利の見通しを映しやすい2年債利回りは4.236%へ4bp低下します。ところが長期の金利は逆方向に動きました。10年債利回りは4.657%へ5bp上昇し、30年債利回りは5.193%へ9bpを超える上昇となりました。短期が下がり長期が上がる、いわゆるイールドカーブのスティープ化です。ウォーシュ議長も会見で、前回会合以降に国債利回りが上昇していることに言及しています。

この動きは、FRBがインフレへの対応で後手に回るのではないかという見方として受け止められました。CNBCは、ダウ平均の下げが2025年4月以来で最大の1日となったと伝えています。S&P500の11業種のうち8業種が下落し、下落率が最も大きかったのは資本財(3.24%安)、次いで情報技術(2.50%安)でした。半導体株の下落は4営業日連続で、SOX指数は5.33%安。データセンター設備を手がけるヴァーティブは四半期の売上高が市場予想に届かず17%安となりました。

取引終了後には大型ハイテク2社の決算が明暗を分けました。マイクロソフトは4〜6月期の売上高が前年同期比18%増の約900億ドルとなり市場予想を上回り、調整後の1株利益は4.74ドル。Azureの売上高は43%増で年間売上高が1,000億ドルを超えました。時間外取引では株価が上昇し、上げ幅は一時8%程度に達したと伝えられています。一方メタ・プラットフォームズは売上高が28%増の608億ドルと予想を上回ったものの、調整後の1株利益は6.18ドルで市場予想(7.13ドル)に届きませんでした。2026年通期の設備投資計画はレンジの下限を引き上げ、従来の1,250〜1,450億ドルから1,300〜1,450億ドルとしています。時間外取引では下げ幅が9%を超える場面がありました。

今日の東京市場の注目点

  • 先物は大幅安の水準 — 大阪取引所の日経225先物(2026年9月限)は、30日午前6時までの夜間取引を前日比1,410円安の6万1,040円で終えました。29日の日経平均の終値(6万1,434円19銭)を394円ほど下回る水準です。米国の株安と半導体売りの継続が、そのまま東京市場に持ち込まれる形の始まりが想定されます。
  • 半導体売りは4日目に — SOX指数の下落は4営業日連続で、この間の下げは大きなものになっています。29日の東京市場では日経平均が930円安となる一方でTOPIXが小幅高となり、下げが値がさの半導体株に集中する構図が続いていました。同じ形が繰り返されるかが焦点です。
  • 日銀会合は今日から2日間 — 日銀の金融政策決定会合は30〜31日の日程で、今日はその1日目です。結果の公表と展望レポートは31日、総裁の記者会見は同日15:30に予定されています。政策金利は6月の会合で0.75%程度から1.00%程度へ引き上げられたばかりで、三井住友DSアセットマネジメントは今回は据え置きを予想しています。同社によると、市場が織り込む0.25%利上げの確率は7月28日時点で9月が28.2%、10月が79.4%、12月が98.5%です。
  • 今夜は米GDPとPCE — 日本時間今夜21:30に米国の4〜6月期GDPと6月の個人消費支出(PCE)が発表されます。インフレ指標であるPCEは、長期金利が上昇している今の局面では受け止め方が注目されやすい指標です。同日には英中銀の政策金利発表、ユーロ圏の4〜6月期GDPと失業率の公表も予定されています。
  • 為替は163円台半ば — ドル円はFOMCの結果後に163円台後半から水準を下げ、30日3:38時点で163円59銭でした。日米の金融政策が相次いで示される日程の途中にあたります。

ひとこと解説

「FRBが金利を据え置いたのに、金利が上がって株が下がった」という29日の動きは、政策金利と長期金利が別物であることを知っておくと理解しやすくなります。

FRBが決めるのはFF金利(フェデラルファンド金利)の誘導目標、つまり銀行同士が翌日返す資金をやり取りするときの、ごく短い期間の金利です。これを起点に、期間の短い国債の利回りが動きます。2年債利回りは「今後2年ほどの間にFRBがどう動くか」という市場の予想を映しやすい金利で、29日はこれが低下しました。利上げを示唆する内容が出なかったためです。

一方、10年債や30年債といった期間の長い金利は、FRBが直接決めるものではありません。長い期間にわたる物価上昇率の見通しや、経済成長の見方、国債の需給といった要素で決まります。29日はこちらが上昇しました。政策金利は動かないのに長期の物価見通しへの警戒が残る、という受け止めが背景にあります。

短期金利と長期金利の差が広がることを、金利の期間ごとの並びを描いた曲線にたとえて「イールドカーブのスティープ化」と呼びます。長期金利の上昇は、企業が資金を借りるコストや住宅ローン金利に影響するほか、将来の利益を現在の価値に換算する際の割引率を高めるため、株式の評価にも関わってきます。ニュースで「金利上昇」という言葉を見たときは、どの期間の金利の話なのかを確かめると、市場が何を心配しているのかが見えやすくなります。


出典: