今週(9月7日〜11日)の東京株式市場を振り返ります。日経平均株価は週間で1009円60銭安と、前週に続いて2週連続の下落となりました。2週続けて下げ幅が1000円を超えたことになります。週の初めは半導体株の急伸で1378円高と派手に始まりましたが、そこから先を支配したのは株式そのものの材料ではなく、原油と金利でした。中東情勢の緊迫で原油相場は週間9%超の上昇となって1バレル=100ドル台に定着し、日本の長期金利は11日に一時3.000%と節目に到達しています。そして週末に発表された米8月の消費者物価指数(CPI)を受け、来週のFOMCで利上げが決まるとの見方は約87%まで高まりました。まずは数字から見ていきます。

日付 日経平均終値 前営業日比 TOPIX終値 前営業日比
9/7(月) 66,399.84円 +1,378.90(+2.12%) 4,125.80 +22.57(+0.55%)
9/8(火) 65,269.33円 -1,130.51(-1.70%) 4,050.33 -75.47(-1.83%)
9/9(水) 65,142.78円 -126.55(-0.19%) 4,046.64 -3.69(-0.09%)
9/10(木) 65,270.95円 +128.17(+0.20%) 4,054.58 +7.94(+0.20%)
9/11(金) 64,011.34円 -1,259.61(-1.93%) 4,028.30 -26.28(-0.65%)

週間では、日経平均は前週末(9月4日)の終値65,020円94銭から**1,009円60銭安い64,011円34銭(-1.55%)で1週間を終えました。TOPIXは4,103.23から4,028.30へ74.93ポイント安(-1.83%)**です。前週は日経平均の下落率がTOPIXの2倍近くありましたが、今週は逆にTOPIXのほうが大きく下げています。

米国市場の週間騰落 9月4日終値 9月11日終値 週間の変化
NYダウ工業株30種 53,414.25ドル 52,573.29ドル -840.96(-1.57%)
S&P500種株価指数 7,718.60 7,656.98 -61.62(-0.80%)
ナスダック総合指数 26,506.99 26,333.04 -173.95(-0.66%)
米国市場の日々の終値 NYダウ S&P500 ナスダック総合
9/7(月) レーバーデーで休場
9/8(火) 52,786.07(-628.18) 7,673.52(-45.08) 26,421.41(-85.58)
9/9(水) 52,380.66(-405.41) 7,636.36(-37.16) 26,253.34(-168.07)
9/10(木) 52,064.10(-316.56) 7,591.70(-44.66) 26,081.73(-171.62)
9/11(金) 52,573.29(+509.19) 7,656.98(+65.28) 26,333.04(+251.32)
週末(9月11日)発表の米8月CPI 結果 市場予想
消費者物価指数(前月比) +0.4% +0.4%
消費者物価指数(前年同月比) +3.4% +3.4%(7月も+3.4%)
コアCPI(前月比) +0.3% +0.2%
コアCPI(前年同月比) +2.4%
そのほかの週末の米指標 結果 前回・備考
9月ミシガン大学消費者マインド指数(速報) 47.8 予想51.0、8月51.7
同・1年先の期待インフレ率 4.6% 6月以来の高さ
原油(9月11日の清算値) 水準 前日比 週間
WTI原油先物 100.05ドル -2.43(-2.37%) +9.4%
北海ブレント原油先物 104.61ドル -3.02(-2.81%) +8.7%
金利・為替 水準 備考
米10年物国債利回り(9/10) 4.9606% 2023年10月以来の水準
同(9/11の引け) 5%をわずかに下回る水準 CPI後にいったん低下後、上昇
新発10年物国債利回り(9/11) 一時3.000%、引け2.973% 節目に到達
新発20年物国債利回り(9/11) 3.796%
ドル円(9/8・東京) 一時152円台後半 2月中旬以来の円高水準
ドル円(9/11・NY) 153円24銭(高値154円48銭) 前週末は155円34銭
9月FOMCの利上げ織り込み(CME FedWatch) 確率
1週間前 約50%
9月10日(PPI発表後) 約72%
9月11日(CPI発表後) 約87%

何があった?

週の始まりは、今週唯一といっていい「株の材料」で動きました。 7日(月)の日経平均は1,378円90銭高の6万6,399円84銭と大幅続伸しています。米マイクロン・テクノロジーが先端メモリーを増産すると伝わり、AI関連産業の成長期待から半導体関連に買いが集中しました。ただしこの上昇は、指数の見た目ほど広がりのあるものではありません。東証プライムの値下がり銘柄は全体の56.9%と過半を占めており、前引け時点ではアドバンテストとソフトバンクグループの2銘柄だけで日経平均を約757円押し上げていました。米国市場はレーバーデーで休場だったため、この日の材料は東京市場が単独で消化した形です。

8日(火)は一転して1,130円51銭安の大幅反落となりました。 主役は為替です。円は東京市場で一時1ドル=152円台後半と、2月中旬以来およそ半年ぶりの円高・ドル安水準をつけ、自動車や電子部品など輸出関連に売りが広がりました。日銀の利上げ加速観測に加え、日米の通貨当局がともに円安是正に前向きだとの受け止めが円買いを呼んだ格好です。東証プライムでは値下がり銘柄が74.5%に達し、TOPIXの下落率(1.83%)は日経平均(1.70%)を上回りました。前日に9%高となったキオクシアホールディングスが反落するなど、月曜に買われた銘柄がそのまま売りの対象になっています。

9日(水)からは、相場の重心が完全に原油と金利へ移りました。 この日の日経平均は126円55銭安と小幅な続落でしたが、前場には原油高を追い風に石油・非鉄金属などの資源関連が買われて一時500円超高となる場面があり、後場は日銀の利上げペース加速観測に押されてマイナス圏に沈むという、方向感の定まらない一日でした。前日8日の米国市場ではサウジアラビアのエネルギー施設への攻撃が伝わってダウが628ドル安となっており、9日の米国市場でも米イランの応酬激化で北海ブレント原油が1バレル=101ドル台、米10年債利回りが一時4.857%と2023年11月以来の高水準をつけ、ダウは405ドル安と3日続落しています。

10日(木)は値幅1,000円近い振れ幅のなか、128円17銭高とわずかに反発しました。 朝方は前日の米国市場と原油高を嫌気して一時956円安の6万4,186円68銭まで売られましたが、台湾積体電路製造(TSMC)の8月売上高が前年同月比53.3%増と好調だったことを手がかりに半導体関連が買い戻され、大引けにかけてプラス圏へ浮上しています。一方で米国市場では8月の生産者物価指数(PPI)が市場予想を上回り、WTI原油が1バレル=102ドル台、米10年債利回りが4.9606%まで上昇。ダウは316ドル56セント安と4日続落し、FOMCの利上げ織り込みは60.4%から72%台へ切り上がりました。

11日(金)は9月限のメジャーSQ算出日と重なり、日経平均は1,259円61銭安と大幅反落しました。 下げ幅は一時2,062円32銭に達し、8月4日以来の安値水準まで沈んでいます。売りの材料は3つ重なりました。サウジアラビアの8月の原油生産が1990年以来の低水準に落ち込んだと伝わってWTIが前日に一時104ドル台と約4カ月ぶりの高値をつけたこと、米10年債利回りが4.9%台にあり国内の新発10年債利回りも一時3.000%と節目に乗せたこと、そして円安と原油高が同時に進むことで輸入コストの負担増が意識されたことです。業種別では保険業が2.25%高、海運業が1.28%高となる一方、非鉄金属は3.52%安、電気機器は2.03%安と、AI・半導体関連が売りの中心になりました。

そして日本時間11日21時30分、今週最大の数字が出ます。米8月のCPIです。 総合は前月比0.4%上昇・前年同月比3.4%上昇と予想どおりでしたが、食品とエネルギーを除いたコアが前月比0.3%上昇と、予想の0.2%を0.1ポイント上回りました。市場はこれを「利上げの条件が整った」と受け止め、CMEのFedWatchが示す9月FOMCでの利上げ確率は前日の約72%から約87%へ上昇しています。1週間前は約50%でしたから、わずか5営業日で見方が大きく振れたことになります。一方で株式市場は下げませんでした。イラン国営メディアが湾岸諸国とオマーンでホルムズ海峡について協議すると報じたことで原油が反落し、WTIは2.37%安の100.05ドル、ブレントは2.81%安の104.61ドルで週を終えています。原油の一服を受けて米長期金利も高値から落ち着き、ダウは509ドル19セント高、S&P500は0.86%高、ナスダック総合は0.96%高と、4日続落にようやく歯止めがかかりました。

それでも週間では3指数がそろって下落し、ナスダック総合は3週ぶりの下落です。金曜の反発は、今週積み上がった下げの一部を戻したにすぎませんでした。

注目ポイント

  • 今週の主語は一貫して原油でした。 WTIは週間9.4%高、ブレントは8.7%高で、WTIが週の終値で100ドルを超えたのは5月以来です。ホルムズ海峡をめぐる緊張、サウジのエネルギー施設への攻撃、同国の8月の原油生産が1990年以来の低水準に落ち込んだとの報道が積み重なりました。原油高は企業のコストを押し上げるだけでなく、物価を通じて金融政策に直結します。今週の株安は「株が売られた」というより、原油が金利を動かし、その金利が株の評価を押し下げたという連鎖として見るほうが実態に近いでしょう。

  • 日本の長期金利が3.000%に到達しました。 新発10年物国債利回りは11日に一時この水準をつけ、引けは2.973%でした。3%台に乗せたのは2日に続いて2度目で、今回は原油高と円安によるインフレ圧力が背景にあります。金利が上がると、将来の利益を現在価値に割り引く際の割引率が大きくなるため、成長期待で買われている銘柄ほど理論上の評価が下がりやすくなります。11日に非鉄金属や電気機器が大きく下げ、逆に運用利回りの改善が見込まれる保険業が上昇したのは、この構図がそのまま業種別の明暗に出た例です。

  • 日経平均とTOPIXの下落率が前週と逆転した点も、今週の特徴です。 前週は日経平均の下落率がTOPIXのほぼ2倍でしたが、今週はTOPIX(-1.83%)が日経平均(-1.55%)を上回って下げています。月曜に半導体株の急伸で日経平均だけが跳ね上がり、その後は市場全体が金利上昇の影響を受けたためです。株探は、日本のAI・半導体株の戻りが諸外国に比べて鈍く、それらの影響を受けやすい日経平均の回復を抑えていると指摘しています。

  • 来週は日米の金融政策会合が並びます。 米国は15〜16日のFOMC(現在の政策金利は3.50〜3.75%)、日本は17〜18日の日銀金融政策決定会合(同1.0%程度)です。米国では利上げ確率が約87%まで高まり、9月会合は経済見通し(SEP)とドットチャートが公表される回にもあたります。日本については、9月会合で1.25%程度への引き上げを軸に検討しているとの報道が前週に出ています。両会合が同じ週に続くため、金利にも為替にも振れやすい地合いが続きそうです。

ひとこと解説

「コアCPI」とは何でしょうか。 CPI(消費者物価指数)は、私たちが日々買うモノやサービスの値段が全体としてどれくらい動いたかを示す統計です。このうち、値動きが激しい食品とエネルギーを除いて算出したものを米国では「コアCPI」と呼びます。今週の米8月CPIでは、総合が予想どおりだったのにコアが予想を0.1ポイント上回ったことが材料になりました。たった0.1ポイントの差で見方が動くのは、中央銀行が物価の「基調」を見るときにコアを重視しているからです。原油高で総合が上下するのは一時的な現象かもしれませんが、コアまで上がっているなら、値上がりが経済全体に広がりつつあるというサインとして読まれます。

日本で「コアCPI」というと生鮮食品のみを除いた指数を指し、食品とエネルギーの両方を除いた指数は「コアコアCPI」と呼び分けます。同じ「コア」でも国によって中身が違うため、海外の記事を読むときは何を除いた数字なのかを確認すると誤解を避けられます。

もう一つ、今週注目されたのが「期待インフレ率」です。 ミシガン大学が毎月発表する消費者マインド指数には、消費者が1年後の物価上昇率をどう見ているかという調査項目が含まれます。9月速報ではこれが4.6%と6月以来の高さになりました。実際の物価が3.4%であるのに対し、人々の予想のほうが高いということです。期待インフレ率が重要視されるのは、「これから値上がりしそうだ」という予想そのものが、賃上げ要求や早めの買い物を通じて実際の物価を押し上げてしまう性質があるからです。中央銀行が「インフレ期待の安定」を繰り返し強調するのはこのためで、今回のように期待が切り上がると、金融政策を引き締め方向に傾ける材料として受け止められやすくなります。

出典