今週(8月31日〜9月4日)の東京株式市場を振り返ります。前週に2週ぶりの反発を見せた相場は、今週は一転して下げに転じました。日経平均株価は週間で1384円62銭安と2週ぶりの反落、TOPIX(東証株価指数)も9営業日続伸のあと足踏みしています。値動きの中心にあったのは「金利」でした。国内の新発10年物国債利回りが2日に3.015%と約30年ぶりの水準まで上昇し、同じ日に日経平均は1889円70銭安の全面安。その後は米ウォラーFRB理事の発言で米金利が低下し、逆に日銀の9月利上げ観測が強まったことで、円は1日で約4円も上昇しました。そして週末4日夜の米雇用統計が、その前提をもう一度ひっくり返しています。まずは数字から見ていきます。
| 日付 | 日経平均終値 | 前営業日比 | TOPIX終値 | 前営業日比 |
|---|---|---|---|---|
| 8/31(月) | 66,311.93円 | -93.63(-0.14%) | 4,156.29 | +9.58(+0.23%) |
| 9/1(火) | 66,215.34円 | -96.59(-0.15%) | 4,181.86 | +25.57(+0.62%) |
| 9/2(水) | 64,325.64円 | -1,889.70(-2.85%) | 4,081.60 | -100.26(-2.40%) |
| 9/3(木) | 64,214.48円 | -111.16(-0.17%) | 4,102.04 | +20.44(+0.50%) |
| 9/4(金) | 65,020.94円 | +806.46(+1.26%) | 4,103.23 | +1.19(+0.03%) |
週間では、日経平均は前週末(8月28日)の終値66,405円56銭から**1,384円62銭安い65,020円94銭(-2.09%)で1週間を終え、2週ぶりの下落となりました。TOPIXは4,146.71から4,103.23へ43.48ポイント安(-1.05%)**です。下落率で見ると日経平均のほうが2倍近く大きく、値がさのハイテク株が指数を押し下げた週だったことがわかります。
| 米国市場の週間騰落 | 8月28日終値 | 9月4日終値 | 週間の変化 |
|---|---|---|---|
| NYダウ工業株30種 | 53,559.99ドル | 53,414.25ドル | -145.74(-0.27%) |
| S&P500種株価指数 | 7,711.76 | 7,718.60 | +6.84(+0.09%) |
| ナスダック総合指数 | 26,402.42 | 26,506.99 | +104.57(+0.40%) |
| 週末(9月4日)の米国市場 | 終値 | 前日比 |
|---|---|---|
| NYダウ工業株30種 | 53,414.25ドル | -271.86(-0.51%) |
| S&P500種株価指数 | 7,718.60 | -29.11(-0.38%) |
| ナスダック総合指数 | 26,506.99 | -77.07(-0.29%) |
| 今週の主な経済指標 | 結果 | 予想・前回 |
|---|---|---|
| 米 8月ISM製造業景況指数(9/1) | 54.6 | 予想55.2、前回55.6 |
| 米 7月JOLTS求人件数(9/1) | 727.1万件 | 予想733.2万件、前回718.2万件 |
| 米 8月ADP雇用統計(9/2) | +3.8万人 | 予想+4.7万人、前回+4.6万人 |
| 米 8月ISM非製造業景況指数(9/3) | 55.4 | 予想54.1、前回54.1 |
| 米 新規失業保険申請件数(9/3) | 20.6万件 | 予想20.5万件 |
| 米 7月貿易収支(9/3) | -886億ドル | 6月-712億ドル |
| 米 8月雇用統計・非農業部門雇用者数(9/4) | +16万2000人 | 予想+5万5000人 |
| 同・失業率 | 4.1% | 予想4.1%、前月4.1% |
| 同・平均時給(前年同月比) | +3.1% | — |
| 6〜7月分の改定 | 計+5万5000人の上方修正 | 7月は-2.3万人→+2.1万人 |
| 金利・為替・商品 | 水準 | 備考 |
|---|---|---|
| 新発10年物国債利回り(9/2) | 一時3.015% | 1996年9月以来、約30年ぶりの高水準 |
| 同(9/4) | 一時2.905%へ低下 | 週後半は低下 |
| 米10年物国債利回り(9/2) | 4.803% | 2025年1月以来の高さ |
| 同(9/4) | 4.78%台 | 雇用統計後に上昇 |
| ドル円(9/1・NY) | 160円20銭前後 | 週前半は160円台 |
| ドル円(9/4・東京17時) | 156円32〜33銭 | 3日続伸、一時155円25銭近辺 |
| ドル円(9/4・NY) | 156円75銭→155円34銭 | 雇用統計後にドル買い、その後円買い |
| WTI原油先物(9/4) | 91.27ドル | 約5週間ぶりの高値圏 |
| NY金先物12月限(9/4) | 4,476.74ドル | -1.38% |
何があった?
31日(月)と1日(火)は、日経平均が小幅安、TOPIXが上昇という「ねじれ」で始まりました。 31日の日経平均は前引け時点で1043円安まで売られながら、終値は93円63銭安まで戻しています。前場は半導体関連の下げが重く、アドバンテストと東京エレクトロンの2銘柄だけで日経平均を約721円押し下げていました。一方でTOPIXは8日続伸です。1日も日経平均は96円59銭安、TOPIXは25.57ポイント高の9日続伸となりました。この日は新発10年物国債利回りが一時3.000%と、1996年9月以来およそ30年ぶりに3%の大台に乗せています。原油高を受けて電気・ガス、鉱業、石油・石炭製品、鉄鋼といった資源・エネルギー関連が買われ、33業種中26業種が上昇しました。
流れが変わったのは2日(水)です。日経平均は1889円70銭安の6万4325円64銭と急落し、東証33業種すべてが下落する全面安となりました。 終値で6万5000円台を割り込んだのは約1カ月ぶりです。国内の長期金利は3.015%まで上昇し、米10年債利回りも4.803%と2025年1月以来の高さをつけました。加えて米国とイランの戦闘激化でWTI原油が90ドル台に乗せ、「金利上昇」と「資源高」が同時に重なった格好です。東証プライムの値下がり銘柄は全体の92.3%にあたる1400銘柄超、売買代金は8兆344億円に膨らみました。前日まで9日続伸だったTOPIXも100.26ポイント安と反落しています。
この局面で日銀をめぐる報道が相次ぎました。 1日には植田和男総裁がG20後の共同会見で、利上げについて9月を含む毎回の決定会合でしっかり議論する姿勢を示しています。2日には、日銀が9月17〜18日の金融政策決定会合で政策金利を現在の1%程度から1.25%程度へ引き上げる案を軸に検討している、と共同通信が報じました。金利の先高観が国内債券市場に直接効いた週だったといえます。
3日(木)は、米国発の材料で空気が変わりました。 前日2日の米国市場は8月のADP雇用統計が3.8万人増と予想を下回り、ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁の発言もあってダウが295ドル高と4営業日ぶりに反発しています。東京市場は寄り付きこそ399円高で始まりましたが、買いは続かず111円16銭安で4日続落しました。理由は為替です。日銀の利上げ観測に加え、ベッセント米財務長官の発言をきっかけに円安是正への思惑が広がり、円相場は1日で約4円上昇して1カ月ぶりの155円台をつけました。
4日(金)は日経平均が806円46銭高と5営業日ぶりに反発しました。 3日の米国市場でウォラーFRB理事が、インフレ指標が落ち着いていれば9月会合での据え置きを支持すると述べたことでダウが624ドル高となり、日米の長期金利がそろって低下したことが支えです。国内の新発10年債利回りは一時2.905%まで下がりました。ただしTOPIXは1.19ポイント高とほぼ横ばいで、情報・通信業が3.55%高となる一方、鉱業は2.83%安、海運業は2.38%安と、指数の中身は大きく分かれています。円は東京時間に一時155円25銭近辺と約1カ月ぶりの高値をつけました。
そして週の締めくくりが、日本時間4日21時30分に発表された8月の米雇用統計です。 非農業部門雇用者数は16万2000人増と市場予想の5万5000人増を大きく上回り、3月以来の大きな伸びとなりました。失業率は4.1%で横ばい、6月・7月分も合わせて5万5000人の上方修正で、7月分は2万3000人減から2万1000人増へと符号が反転しています。今週の市場は「弱い雇用」を前提に米利上げ観測を後退させていただけに、この結果は前提の修正を迫るものでした。CMEのFedWatchが示す9月利上げの確率は前日の49%から60%へ上昇し、別の集計でも発表前の約55%から約62%へ切り上がっています。米10年債利回りは4.78%台へ上昇し、ダウは271ドル86セント安、S&P500は0.38%安、ナスダック総合は0.29%安と、3指数がそろって下落して1週間を終えました。
注目ポイント
今週最大のテーマは、日米で金利の方向が逆を向いたことです。 米国では雇用の弱さから利上げ観測がいったん後退し、日本では日銀の追加利上げ観測が強まりました。その結果として日米の予想政策金利差が縮まり、ドル円は週前半の160円台から一時155円台前半へと5円近く動いています。輸出企業にとっては円高が業績の重荷になる一方、金融関連には金利上昇が追い風という構図が、日経平均とTOPIXの動きの差にも表れました。
2日の1889円安は、株価そのものよりも「国内金利が3%に乗った」という事実の重さを示すものでした。 新発10年物国債利回りが3%台に乗せたのは1996年以来です。金利が上がると、企業の借入コストが増えるだけでなく、株式と比べた債券の魅力が相対的に高まります。33業種すべてが下がるという反応は、個別企業の事情ではなく市場全体の前提が動いたときに起こりやすい形です。
原油の上昇も今週を通じた重石でした。 米国とイランの戦闘再開を受けてWTI原油は週を通じて水準を切り上げ、4日は91.27ドルと約5週間ぶりの高値圏にあります。ホルムズ海峡を通過する商船の数が10日平均の約15隻に対し木曜は4隻にとどまったとの報道もあり、供給への警戒が価格に織り込まれています。原油高は物価を押し上げる方向に働くため、金利の話とも地続きです。
来週は日米の金融政策会合が並びます。 米国は9月15〜16日のFOMC、日本は9月17〜18日の日銀金融政策決定会合です。米国では雇用統計を受けて利上げ確率が6割前後まで戻り、日本では1.25%への引き上げが検討されていると報じられています。両方が同じ週に来るため、為替も金利も振れやすい地合いが続きそうです。
ひとこと解説
「新発10年物国債利回り」とは何でしょうか。 これは、政府が新しく発行した償還まで10年の国債が、市場でいくらの利回りで売買されているかを示す数字です。日本では長期金利の代表的な指標として扱われ、住宅ローンの固定金利や企業の社債の条件など、幅広い金利の土台になっています。今週この利回りが3.015%まで上がったことがニュースになったのは、1996年以来の水準だったからです。
国債は「価格が上がると利回りが下がり、価格が下がると利回りが上がる」という逆の関係にあります。今週のように利回りが上がったということは、国債が売られた(価格が下がった)ということです。日銀が利上げに動くとの見方が強まると、より高い金利がつく将来の国債のほうが有利になるため、今ある国債は売られやすくなります。金利のニュースを見るときは、「利回りが上がった=債券が売られた=金融政策の先行きに変化がありそう」という順序で読むと、株価の反応ともつながって理解しやすくなります。
もう一つ、「雇用統計の改定」も今週の重要な論点でした。 米雇用統計は速報値が発表されたあと、調査対象の回収が進むにつれて過去2カ月分が改定されます。今回は6月・7月が合わせて5万5000人上方修正され、7月は「2万3000人の減少」から「2万1000人の増加」へと方向そのものが変わりました。1回の発表の数字だけで景気の強弱を判断すると、後から前提が変わってしまうことがあるということです。ニュースで雇用統計を見るときは、当月の数字と一緒に改定幅にも目を向けると、実際の雇用の流れをつかみやすくなります。
出典
- Stock Market Today (Sept. 4, 2026): Dow falls 300 points after strong jobs report - TheStreet
- U.S. stocks lower at close of trade; Dow Jones Industrial Average down 0.51% - Investing.com
- Stock market news for Sept. 4, 2026 - CNBC
- Fed rate hike back in focus after strong jobs report - Reuters / Investing.com
- What a Blowout August Jobs Report Means for a September Rate Hike - Kiplinger
- 9月4日のNY為替概況 - 財経新聞
- 外為17時 円相場、3日続伸 一時155円台前半 日米金利差の縮小見込む - 日本経済新聞
- 円急騰し1カ月ぶり155円台 1日で4円上昇、円安是正に思惑 - 日本経済新聞
- 日銀、9月利上げを検討 政策金利1.25%が軸 - 共同通信
- 植田日銀総裁、利上げは9月含め毎回の決定会合でしっかり議論-G20後の共同会見 - Bloomberg
- 日経平均、終値1889円安 世界金利高でよぎる「うたげの終わり」 - 日本経済新聞
- Oil heads for weekly gain as US-Iran fighting resumes - Reuters / Yahoo Finance