日本時間28日22時30分に始まる米国市場は、23時に予定されるウォーシュFRB議長のジャクソンホール基調講演を待つ展開です。議長就任後としては初めての基調講演で、市場の関心はインフレと利上げ再開の可能性に集まっています。個別ではペイパルがアドベントとストライプによる買収断念の報道を受けて時間外に急落した一方、ギャップは決算と通期見通しの引き上げを好感されてプレマーケットで大幅高となっています。
| 27日の米国市場(前日終値) | 終値 | 前日比 |
|---|---|---|
| ダウ工業株30種平均 | 53,569.44ドル | +105.56(+0.19%) |
| S&P500種株価指数 | 7,730.99 | +55.29(+0.72%) |
| ナスダック総合指数 | 26,541.35 | +411.16(+1.57%) |
| ナスダック100指数 | 29,641.56 | +417.04(+1.43%) |
| 28日の株価指数先物(米東部時間の朝時点) | 前日比 |
|---|---|
| ダウ先物 | +99ドル(+0.18%) |
| S&P500先物 | +7.50(+0.10%) |
| ナスダック先物 | -43.25(-0.15%) |
| 28日の主な予定(日本時間) | 内容 |
|---|---|
| 23時00分 | ウォーシュFRB議長 ジャクソンホール基調講演 |
| 23時00分 | 8月のミシガン大学消費者信頼感指数(確報値) |
| 同日 | MNIシカゴPMI、カンザスシティ連銀サービス業活動指数 |
| 8月のミシガン大学消費者信頼感指数(速報値・8月14日発表) | 数値 |
|---|---|
| 消費者信頼感指数 | 51.0(市場予想54.2、7月55.2) |
| 1年先の期待インフレ率 | 4.3%(前月4.2%) |
| 長期の期待インフレ率 | 3.3%(前月から変わらず) |
| 28日プレマーケットの主な個別株 | 動き | 材料 |
|---|---|---|
| ペイパル | 時間外で12%安、プレマーケットで一時16%安 | アドベント・ストライプ連合が買収断念と報道 |
| ギャップ | 27日の時間外で11.5%高、28日プレマーケットで16%超高 | 決算が予想を上回り通期見通しを引き上げ |
| マーベル・テクノロジー | 241.45ドル(-1.49%) | 決算は予想超えも時間外で下落 |
| アイレン(IREN) | 40.53ドル(+2.40%) | — |
| アファーム | 77.49ドル(+1.35%) | — |
| 米長期金利 | 水準 |
|---|---|
| 10年物国債利回り(28日) | 4.7%近辺(2営業日続けて上昇したあと) |
何があった?
前日27日の米国市場は3指数がそろって上昇しました。エヌビディアの決算と1年先の売上見通しが好感され、S&P500は55.29ポイント高の7730.99、ナスダック総合指数は411.16ポイント高の26541.35で引けています。もっともAP通信によれば、指数を押し上げたのはエヌビディアの寄与が大きく、S&P500構成銘柄の多くはむしろ下落していました。実際、この日上昇したS&P500のセクターはテクノロジーのみだったとThe Streetは伝えています。指数の上昇率とその中身がかならずしも一致しない、という点は押さえておきたいところです。
28日の株価指数先物は方向感を欠いた動きになりました。ヤフーファイナンスによると米東部時間の朝の段階でダウ先物が99ドル高、S&P500先物が7.50ポイント高だった一方、ナスダック先物は43.25ポイント安と小幅に下落しています。ベンジンガも同様に、S&P500とナスダック100の先物が小幅安、ダウ先物が小幅高というまちまちの動きを伝えました。前日にエヌビディア決算で膨らんだハイテクの上昇分を、いったん整理する動きが出ている格好です。
個別で最も大きく動いたのはペイパルです。ブルームバーグは28日、投資ファンドのアドベント・インターナショナルと決済大手ストライプの連合が、ペイパルの買収検討を取りやめたと報じました。この買収は1株60.50ドル、総額530億ドル超という規模で、実現していれば過去最大級のLBO(レバレッジド・バイアウト)になるとみられていた案件です。ペイパルの取締役会は提示額を不十分と判断していたと伝えられており、資金調達や規制上のハードルも指摘されていました。7月に買収提案が報じられた際、ペイパル株は同月だけで32.5%上昇していただけに、その分の巻き戻しが出た形です。時間外では12%安、プレマーケットでは一時16%安と報じられています。
半導体のマーベル・テクノロジーは、27日の取引終了後に2027年1月期第2四半期(5〜7月期)決算を発表しました。売上高は27億3900万ドルと前年同期比37%増で四半期として過去最高、非GAAPベースの1株利益は0.94ドルでした。データセンター部門の売上高は前年同期比46%増と伸びが加速し、全社売上高に占める比率は1年前の74%から79%に高まっています。8〜10月期の売上高見通しは中央値で約31億5000万ドルと市場予想の約30億4000万ドルを上回りましたが、株価は時間外で下落しました。シリコンアングルは、AI関連への期待が高いぶん市場がより大幅な上振れを織り込んでいた可能性を指摘しています。
小売のギャップは対照的な反応でした。5〜7月期の調整後1株利益は0.52ドルと市場予想の0.49ドルを上回り、売上高は37億ドル(前年同期比2%減)でした。既存店売上高は全社で1%減でしたが、ギャップブランドが10%増と伸びた一方、オールドネイビーは4%減と明暗が分かれています。調整後営業利益率は7.1%、調整後粗利益率は41.4%で前年同期から0.2ポイント改善しました。通期の調整後1株利益見通しを2.35〜2.45ドルへ引き上げたことも受け、株価は27日の時間外で11.5%高、28日のプレマーケットでは16%超の上昇と報じられています。
注目ポイント
今夜の最大の焦点は、日本時間23時のウォーシュFRB議長による基調講演です。ジャクソンホール会議は8月27日から29日にかけてカンザスシティ連銀が主催する年次シンポジウムで、今年のテーマは「金融イノベーション:決済と政策への影響」です。ウォーシュ氏は今年5月22日に第17代FRB議長へ就任しており、議長として初めてのジャクソンホール講演になります。
市場が知りたいのは、インフレが目標を上回り続けるなかで、FRBが年末まで様子見を続けるのか、それとも利上げを再開するのかという点です。報道によれば、市場は9月の利上げの可能性を3分の1程度織り込んでおり、7月の会合では3人の高官が0.25%の利上げを求めて反対票を投じました。26日に発表された7月のPCE物価指数はコアが前年同月比3.3%上昇(市場予想3.2%)、総合が3.7%上昇(同3.6%)と、いずれも予想をわずかに上回っています。
ただし、ウォーシュ議長はこれまでフォワードガイダンス(将来の政策方針を事前に示すこと)に消極的な姿勢をとってきました。三井住友DSアセットマネジメントは、今回も目先の政策の道筋よりも大きな枠組みの問いが提示される可能性があり、明確なメッセージは見込みにくいとの見方を示しています。一方で、金利の方向性に触れないままだった場合には失望につながりかねない、との指摘も出ています。いずれにせよ、講演の内容次第で今夜から週明けにかけての値動きが変わりやすい局面です。
同じ23時には、8月のミシガン大学消費者信頼感指数の確報値も発表されます。8月14日の速報値は51.0と市場予想の54.2を大きく下回り、3カ月ぶりの低下となりました。あわせて公表された1年先の期待インフレ率は4.3%と前月の4.2%から上昇しています。中央銀行にとって期待インフレ率は物価の先行きを占ううえで重視される指標であり、講演と同時刻に出てくることもあって、いつも以上に注目されそうです。
債券市場では、10年物国債利回りが28日に4.7%近辺で推移しています。2営業日続けて上昇したあとの水準で、講演を前に大きくは動いていません。トレーディングエコノミクスは、長期ゾーンの利回りがインフレと財政赤字への懸念から高い水準にとどまっていると伝えています。
ひとこと解説
ジャクソンホール会議は、米ワイオミング州のジャクソンホールで毎年8月下旬に開かれる経済シンポジウムです。カンザスシティ連銀が主催し、各国の中央銀行関係者や経済学者が集まります。FOMC(連邦公開市場委員会)のような政策を決める場ではありませんが、FRB議長が金融政策の考え方を比較的自由に語る場として知られ、過去には政策転換の予兆が読み取られたこともあります。「会議そのものでは何も決まらないのに市場が注目する」のは、こうした背景があるためです。
フォワードガイダンスは、中央銀行が将来の政策方針をあらかじめ言葉で示すことを指します。「当面は金利を据え置く」といった説明で市場の予想を安定させるねらいがありますが、状況が変われば約束が足かせになるという批判もあります。ウォーシュ議長がこの手法に消極的とされるのは、政策の自由度を確保したいという考え方によるものとされています。フォワードガイダンスが減れば、市場は経済指標そのものを見て判断する場面が増えるため、指標発表時の値動きが大きくなりやすいという副作用も指摘されています。
**LBO(レバレッジド・バイアウト)**は、買収先の資産や将来生み出す現金を担保に多額の借り入れを行って企業を買収する手法です。少ない自己資金で大型の買収ができる一方、金利水準が高い局面では調達コストが重くなり、話がまとまりにくくなります。今回のペイパルの案件で約500億ドルの銀行融資が前提とされていたと報じられているように、LBOの成否は金利環境と切り離せません。買収報道で株価が上がり、断念報道で下がるという値動きは、買収プレミアム(買収価格と市場価格の差)への期待が付いたり外れたりすることで起きています。
出典
- How major US stock indexes fared Thursday 8/27/2026 - AP / 10tv.com
- Stock Market Today (Aug. 27, 2026): Tech stands alone as sole S&P 500 sector to advance after Nvidia earnings - TheStreet
- ナスダック100の振り返りと見通し:ハイテク株主導で水準切り上げ - OANDA
- NYダウは反発、NVIDIA一時10%高 セールスフォースも急伸 - 日本経済新聞
- Stock market today: Dow, S&P 500, Nasdaq futures hold steady as the focus turns to Kevin Warsh's Jackson Hole speech - Yahoo Finance
- Stock Market Today: S&P 500, Nasdaq 100 Futures Slip Ahead of Kevin Warsh's Jackson Hole Speech - Benzinga
- Fed Chair Warsh Gives His First Jackson Hole Speech Friday Morning - centraljersey.com
- Jackson Hole 2026: Warsh's First Fed Speech & Market Impact Guide - XTB
- 2026年8月ジャクソンホール会議プレビュー - 三井住友DSアセットマネジメント
- ジャクソンホール会議とウォーシュFRB議長 - マネースクエア
- PayPal Deal Talks End as Advent, Stripe Group Abandons Acquisition Effort - Bloomberg
- PayPal Stock Crashes Over 15% in Pre-Market Today - TipRanks
- PayPal Drops 12% Overnight on Dead Stripe Deal - Benzinga
- Marvell Technology, Inc. Reports Second Quarter of Fiscal Year 2027 Financial Results - Marvell
- Marvell's stock sinks despite earnings beat and strong guidance - SiliconANGLE
- Gap Inc. Reports Second Quarter Fiscal 2026 Results - PR Newswire
- Gap shares rise sharply on earnings beat and raised guidance - Yahoo Finance
- Gap (NYSE:GAP) Misses Q2 CY2026 Sales Expectations, But Stock Soars 11.5% - StockStory
- 米ミシガン大消費者信頼感、8月速報値51.0 3カ月ぶり低下 - ロイター / ニューズウィーク日本版
- 【速報】米・8月ミシガン大学消費者信頼感指数速報値は51.0 - ザイ・オンライン
- 7月の米PCE物価指数は横ばい、利上げ観測再び強まる - Forbes JAPAN
- US 10 Year Treasury Note Yield - Trading Economics