今夜の米国市場は、日本時間22時45分に発表されるS&Pグローバルの8月PMI速報値が今週最後の主要指標です。木曜までの4日間でS&P500種株価指数は1.9%、ナスダック総合指数は2.5%下げており、3週続いた週間上昇が途切れる可能性が出ています。株価指数先物は朝の時点で上昇して推移していますが、下げの原因となった長期金利の高止まりは続いたままです。

今夜の主なイベント 日本時間
米8月S&Pグローバル製造業PMI速報値 21日 22:45
米8月S&Pグローバルサービス業PMI速報値 21日 22:45
米8月S&Pグローバル総合PMI速報値 21日 22:45
米国株式市場の取引開始 21日 22:30
22時45分発表のPMI速報値 市場予想 前月
製造業PMI(8月) 53.7 53.9
サービス業PMI(8月) 53.9 54.6
総合PMI(8月) 54.5
20日の米国市場(前日終値) 終値 前日比
ダウ工業株30種平均 52,759.21ドル -703.84(-1.31%)
S&P500種株価指数 7,641.16 -66.82(-0.87%)
ナスダック総合指数 26,067.17 -263.92(-1.00%)
フィラデルフィア半導体株指数(SOX) 11,800.01 +61.79(+0.53%)
VIX指数 16.01 +1.12(+7.52%)
今週ここまでの騰落(木曜終値時点) 週間騰落率
S&P500種株価指数 -1.9%
ナスダック総合指数 -2.5%
21日朝(米国時間)の水準 水準 前日比
ダウ先物 53,149.00 +300.00(+0.57%)
ナスダック100先物 29,488.25 +187.75(+0.64%)
ラッセル2000先物 3,022.40 +23.20(+0.77%)
NY原油(WTI・9月限) 87.24ドル +0.41(+0.47%)
NY金 4,640.60ドル +69.20(+1.51%)
ビットコイン 76,665.80ドル +4,768.09(+6.63%)
金利の水準 利回り 備考
米10年債利回り(20日) 4.71% 前日比+0.07
米30年債利回り(20日) 5.26%
米30年債利回り(17日) 5.31% 2007年以来の高水準

何があった?

今週の主役は株ではなく債券でした。 17日の米債券市場で30年債利回りが6ベーシスポイント上昇して5.31%を付け、2007年以来の高水準となりました。ブルームバーグは、政府支出の拡大、長期債の発行増、そしてFRBの目標を5年にわたって上回り続けているインフレが背景にあると伝えています。売りは年限の長い国債に集中しており、原油高が今後の物価を押し上げるリスクを市場が織り込みにいった形です。20日には10年債利回りも一時4.71%と前日比0.07%上昇し、株式市場の重荷になりました。

財務省の国債買い戻し拡大は、効果が長続きしませんでした。 ベッセント財務長官は、長期債の買い戻し規模を1回あたり20億ドルから少なくとも40億ドルへと倍増させると表明しました。19日はこれを好感して主要3指数がそろって反発したものの、20日には10年債・30年債の利回りがそろって元の高い水準に戻っています。市場は、連邦政府の債務規模に比べれば買い戻しは限定的な対策だと受け止めた格好です。

ウォルマート決算が消費関連株を巻き込みました。 20日に発表された2027年1月期第2四半期決算は、売上高・調整後EPSとも市場予想を上回りましたが、米国の既存店売上高が予想に届かず、通期の利益見通しも市場予想を下回りました。株価は10.46ドル(9.15%)安の103.84ドルと急落し、ホーム・デポやアマゾンなど消費関連にも売りが広がっています。ガソリン価格の上昇が家計の支出を圧迫しているとの説明が、消費の減速懸念につながりました。

イランを巡る動きが原油を押し上げています。 ベッセント財務長官は20日、来週月曜にイランへの「経済戦争」の具体策を記者会見で明らかにすると述べました。イラン産原油の購入や資金移転、洋上での船舶間積み替えに関与する国に対して制裁を徹底する方針で、「史上最も厳しい制裁」を科すとしています。同時に、大規模な戦闘の再開はおそらくないとの見通しも示しました。WTI原油の9月限は20日に一時89ドルと7月下旬以来の高値を付けています。ホルムズ海峡の航行が滞ったままであることも、供給面の警戒につながっています。

株式以外では暗号資産が大きく動きました。 ビットコインは21日朝の時点で7万6665ドルと前日比6.63%高となり、週間では20%を超える上昇となっています。トランプ大統領がホワイトハウスでの会合で暗号資産の規制枠組みを定める法案の成立を議会に促したことがきっかけとされ、19日には1時間で10億ドルを超える売り持ちの清算も報じられました。金も21日朝に4,640.60ドルと1.51%上昇しています。

注目ポイント

  • 今夜のPMIは、今週の「金利上昇の物語」に一石を投じる位置にあります。 製造業の予想は53.7、サービス業は53.9で、いずれも前月(53.9、54.6)からわずかに低下する見込みです。50を上回っていれば景気は拡大していることを示すため、予想通りなら「拡大は続くが勢いはやや鈍化」という内容になります。ただし、PMIには企業が仕入れ価格や販売価格の動向を答える項目も含まれており、原油高が価格指標に表れているかどうかは債券市場が注視するところです。

  • 強すぎても弱すぎても株には向かい風になりうる、やや難しい局面です。 今の米国市場は9月のFOMCで利上げがあるかどうかを見ています。PMIが上振れれば景気の強さは好材料である一方、利上げ観測を強めて長期金利を押し上げる可能性があります。逆に大きく下振れれば金利は落ち着きやすいものの、消費の減速懸念が改めて意識されかねません。指標の方向がそのまま株価の方向になるとは限らない、という点は押さえておきたいところです。

  • 決算発表は小粒で、週末を前にした持ち高調整が出やすい日です。 今夜はユビキティとBJ'sホールセール・クラブが決算を予定していますが、指数全体を動かすほどの規模ではありません。むしろ、金曜であること、そして来週に大型イベントが控えていることが、ポジションを大きく傾けにくくさせる要因になります。

  • 来週26日に材料が集中します。 7月のPCE(個人消費支出)物価指数と4〜6月期GDPの改定値が同日に発表され、その日の取引終了後にエヌビディアの決算が控えています。物価と金利、そしてAI関連の業績という、今の市場が最も気にしている3つのテーマが1日に並ぶ形です。外為どっとコムのレポートは、この26日を今後1週間の分岐点と位置づけています。

  • その後には27〜29日のジャクソンホール会議があります。 今年のテーマは「金融イノベーション:決済と政策への含意」で、70を超える国から約120人の中央銀行関係者やエコノミストが集まります。5月に就任したウォーシュFRB議長にとって初めての同会議での講演が28日に予定されており、9月15〜16日のFOMCの約3週間前という時期からも注目度が高い日程です。

  • 3週続いた上昇が途切れるかどうかは、今夜の引けで決まります。 木曜までにS&P500は1.9%安、ナスダックは2.5%安で、7月下旬以来となる週間下落の可能性が出ています。前の週まで3週連続で上昇していたことを踏まえると、上げ相場のなかでの一服なのか、金利上昇を受けた調整の入り口なのかを判断する材料が、今夜そろうことになります。

ひとこと解説

今夜発表されるPMI(購買担当者景気指数)は、経済指標のなかでもやや変わった性格を持っています。GDPや小売売上高が「いくら売れたか」という金額を集計するのに対し、PMIは企業の購買担当者にアンケートを取って作られる指標だからです。

質問はとてもシンプルで、「先月と比べて生産は増えましたか、変わりませんか、減りましたか」といった三択が中心です。増えたと答えた人の割合に、変わらないと答えた人の割合の半分を足す — こうして計算されるため、PMIは50が境目になります。50を上回れば前月より活動が拡大した企業のほうが多く、50を下回れば縮小した企業のほうが多い、という読み方です。53.7という予想値は「拡大している」ことを示しますが、前月の53.9より低いということは「拡大のペースがわずかに落ちた」という意味になります。水準と方向を分けて見るのがコツです。

金額ではなく回答の割合で作るため、PMIには2つの利点があります。ひとつは速さです。今夜発表されるのは「速報値(フラッシュ)」と呼ばれるもので、月内の回答が一定程度集まった段階で確報より先に出されます。そのぶん、その月の景気の変化をいち早く映します。もうひとつは景気の転換点をとらえやすいことです。金額の統計は水準が高いまま伸びが鈍ることがありますが、PMIは「増えた/減った」を直接聞くので、増加から減少への切り替わりが数字にはっきり表れます。

もう一点、今夜の文脈で重要なのが製造業とサービス業を分けて出すという構造です。米国の経済活動はサービス業の比重が大きいため、市場が重く見るのはサービス業PMIのほうです。今回の予想は製造業53.7、サービス業53.9とほぼ並んでいますが、前月からの下げ幅はサービス業(54.6→53.9)のほうが大きい見込みです。消費の減速がウォルマート決算で意識された直後だけに、サービス業の数字がどう出るかは注目されやすい状況にあります。両方を合成したものが総合PMI(コンポジット)で、前月は54.5でした。

そしてPMIには、景況感だけでなく価格の項目が含まれています。仕入価格指数と販売価格指数がそれで、企業が「仕入れ値が上がった」「販売価格に転嫁した」と答えた割合を示します。原油が7月下旬以来の高値圏にあり、30年債利回りが2007年以来の水準まで上がっている今の市場では、この価格指標が物価の先行きを占うヒントとして読まれます。CPI(消費者物価指数)は消費者が払う値段を後から集計しますが、PMIの価格指標は企業の現場でいま何が起きているかをより早く示す、という関係です。

最後に、指標を見るときの一般的な注意点をひとつ。市場が反応するのは数字の絶対値そのものよりも、事前の市場予想との差であることがほとんどです。53.7という予想が出ている以上、それに近い数字が出れば材料としては消化済みとみなされ、値動きは限られます。逆に大きく下振れたり上振れたりすれば、予想からの乖離の大きさに応じて債券と為替がまず動き、その後に株式が反応する、という順序をたどることが多くなります。数字を見るときは「良いか悪いか」ではなく「予想と比べてどうか」を先に確認する — これはPMIに限らず、あらゆる経済指標に共通する読み方です。


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