17日夜の米国市場は、日本時間21時30分に発表される8月のニューヨーク連銀製造業景気指数と、23時の8月NAHB住宅市場指数が焦点です。前週末14日は7月の小売売上高が前月比0.6%減と昨年10月以来のマイナスに落ち込み、8月のミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)も51.0へ急低下したことで、主要3指数はそろって反落しました。消費の減速が意識されたあとの週明けとなります。

前週末(8月14日)の米国市場 終値 前日比
ダウ工業株30種平均 53,732.41 -107.58(-0.20%)
S&P500種株価指数 7,785.76 -13.23(-0.17%)
ナスダック総合指数 26,729.16 -73.87(-0.28%)
VIX指数(恐怖指数) 14.25 -0.38
前週末(8月14日)のその他指標 水準 前日比
米10年債利回り 4.69% +0.05
NY原油(WTI・9月限) 82.40ドル +1.15
NY金(12月限) 4,437.30ドル +16.90
ドル円 159.32円 -0.18
ユーロドル 1.1570ドル +0.0042
ユーロ円 184.33円 +0.45
先週(8月14日終了週)の週間騰落率 騰落率 連続
ダウ工業株30種平均 -0.56% 3週ぶり反落
S&P500種株価指数 +0.36% 3週続伸
ナスダック総合指数 +0.14% 3週続伸
7月小売売上高(8月14日発表・米商務省) 結果 予想 前回
前月比 -0.6% +0.1% +0.2%
除自動車(前月比) -0.3% -0.2%
コントロールグループ(前月比) -0.4%
8月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値(8月14日発表) 結果 予想 前回
指数 51.0 55 55.2
1年先の期待インフレ率 4.3% 4.2% 4.2%
5〜10年先の期待インフレ率 3.3% 3.3% 3.3%
今夜の主な予定(日本時間) 内容 予想 前回
21時30分 米8月ニューヨーク連銀製造業景気指数 11.5 15.6
23時00分 米8月NAHB住宅市場指数 33 34
主要な企業の決算発表はなし
9月FOMCの織り込み(CMEフェドウォッチ・8月13日23時10分時点) 確率
0.25%利上げ 34.4%
据え置き 65.6%

何があった?

小売売上高が予想外のマイナスに落ち込んだ — 財経新聞によると、米商務省が14日に発表した7月の小売売上高は前月比0.6%減と、市場予想の0.1%増に反してマイナスとなりました。昨年10月以来の減少で、下落率は昨年5月以来の大きさです。トレーダーズ・ウェブによると、自動車を除いた数字も0.3%減、消費の基調をみるコントロールグループも0.4%減と、内訳も総じて弱い内容でした。同日発表の6月企業在庫は前月比0.0%と、前回の0.4%増から横ばいに鈍化しています。

消費者マインドも急低下した — ロイターによると、ミシガン大学が14日に発表した8月の消費者信頼感指数(速報値)は51.0と、7月の55.2から低下し3カ月ぶりのマイナスとなりました。財経新聞によると市場予想は55で、これも下回っています。ロイターは、中東情勢の緊迫化を受けた生活費上昇への懸念が重しになったと伝えており、信頼感の低下は政治的立場を問わず幅広くみられ、特に共和党支持層で前月からの下げ幅が大きかったとしています。一方で1年先の期待インフレ率は4.3%と7月の4.2%から上昇し、6月以来の高さとなりました。5〜10年先は3.3%で予想どおりです。

3指数はそろって反落した — 株探ニュースによると、14日のダウ工業株30種平均は107.58ドル(0.20%)安の5万3732.41ドル、S&P500種株価指数は13.23ポイント(0.17%)安の7785.76、ナスダック総合指数は73.87ポイント(0.28%)安の2万6729.16で取引を終えました。日本経済新聞は、低調な経済指標と中東情勢の不透明感が重しになったと伝えています。ただしVIX指数は14.25と前日から0.38低下しており、株安のわりに投資家心理は落ち着いていました。週間では、S&P500種が0.36%高、ナスダック総合が0.14%高とそろって3週続伸し、S&P500種は週内に取引時間中と終値の双方で過去最高値を更新しています。ダウ平均だけは0.56%安と3週ぶりに反落しました。

金利と原油の動きは指標の内容と食い違った — 財経新聞によると、小売売上高の発表直後は景気減速への懸念から米10年債利回りが4.625%まで低下し、ドルも主要通貨に対して売られました。しかしトレーダーズ・ウェブによると、14日の米10年債利回りは前日比0.05ポイント高い4.69%で引けており、日中の低下を打ち消して上昇に転じています。ミシガン大の1年先期待インフレ率が上振れたことも意識されたとみられます。NY原油(WTI・9月限)は1.15ドル高の82.40ドルと上昇しました。

イランをめぐる情勢が原油と為替の背景にある — 株探ニュースによると、米国とイランが6月17日に署名した60日間の暫定的な停戦合意は8月16日に期限を迎えました。ホルムズ海峡ではイランによる船舶への攻撃が続く一方、米軍は報復攻撃を見送り経済制裁の強化に向かう見通しで、供給の混乱懸念からNY原油先物が反発する動きがみられています。外為どっとコムも、イラン情勢が不透明ななか中東有事を意識したドル買いがドル円の下値を支えていると指摘しています。

東京市場は日経平均が5日続伸で引けた — 17日の日経平均株価は前週末比506円45銭(0.74%)高の6万9220円25銭と5日続伸しました。半面、TOPIXは13.09ポイント安の4184.11と9営業日ぶりに反落しています。日本経済新聞によると、17日17時の円相場は1ドル=158円95〜97銭と3営業日続伸しました。前週末のニューヨーク終値の159円32銭からは円高方向で、今夜の米国市場はやや円高・ドル安に振れた水準からのスタートとなります。

注目ポイント

  • 今夜の2指標は、いずれも「消費の次」を確かめる材料です。 ニューヨーク連銀製造業景気指数は、ニューヨーク州の製造業経営者へのアンケートをもとにした景況感の指標で、月の前半に発表される数少ない当月分のデータです。外為どっとコムによると8月の市場予想は11.5と、7月の15.6からの低下が見込まれています。NAHB住宅市場指数は住宅建設業者の景況感を示すもので、みんかぶFXによると予想は33、前回は34です。金利水準が高いまま推移するなかで、製造業と住宅という金利の影響を受けやすい2分野がどう反応しているかが確認できます。

  • 今夜も決算という個別材料は乏しく、指標への反応が出やすい一日です。 外為どっとコムによると、今夜は主要企業の決算発表が予定されていません。逆に言えば、指標が予想から外れた場合はその動きが指数にそのまま出やすい構図です。

  • 弱い指標が必ずしも株安につながらない局面でもあります。 前週末は消費指標の下振れで3指数が下落しましたが、指標の弱さは利上げ観測の後退という形で株式にとってプラスに働く面もあります。実際、CMEフェドウォッチでみた9月15〜16日のFOMCにおける0.25%利上げの確率は、13日23時10分時点で34.4%と据え置き優勢の状態が続いていました。前週末の弱い指標がこの織り込みをさらに動かしたかどうかは、今週の値動きから読み取ることになります。

  • 期待インフレ率の上昇は無視しにくい数字です。 消費者マインドが急低下する一方で、1年先の期待インフレ率は4.3%と6月以来の高さに上がりました。景気の弱さと物価見通しの上振れが同時に出る組み合わせは、金融政策の判断を難しくします。ロイターが指摘するように中東情勢によるガソリン価格への警戒が背景にあるとすれば、今後の原油相場が期待インフレ率を通じて金融政策観測にも影響しうる経路が意識されます。

  • 今週の主役は小売決算とFOMC議事要旨です。 外為どっとコムと財経新聞によると、18日にホーム・デポの決算と7月住宅着工件数、19日にターゲットとロウズの決算およびFOMC議事要旨(7月28〜29日会合分)、20日にウォルマートの決算と新規失業保険申請件数・景気先行指数、21日に8月PMI速報値が予定されています。フィスコによると、7月のFOMCは据え置きだったものの3人のメンバーが利上げを主張しており、議事要旨ではその議論の中身が確認できます。前週末に統計で示された消費の弱さを、小売各社の決算がどう裏づけるか(あるいは覆すか)が今週の軸です。

  • その先には翌週の2大イベントが控えます。 財経新聞によると、来週にはジャクソンホール会合とエヌビディアの決算が控えており、市場ではそれまで様子見ムードが強まりやすいとの見方が出ています。大きな方向感が出にくい一方、指標一つひとつへの短期的な反応は大きくなりやすい時期です。

ひとこと解説

今夜発表されるニューヨーク連銀製造業景気指数は、正式には「エンパイア・ステート製造業景況調査」といいます。名前は長いのですが、仕組みはとてもシンプルです。ニューヨーク州の製造業約200社の経営者に「先月と比べて景気はどうですか」と尋ね、「良くなった」と答えた企業の割合から「悪くなった」と答えた企業の割合を引く。それだけです。

この作り方から、読むときのコツが2つ出てきます。

1つめは、ゼロが分かれ目だということ。プラスなら改善と答えた企業のほうが多く、マイナスなら悪化と答えた企業のほうが多い、という意味になります。今回の予想は11.5ですから、「7月ほどの勢いはないけれど、改善と答える企業のほうが多い状態は続く」という見立てです。ここでよくある誤解が、「15.6から11.5に下がる=景気が悪化する」という読み方です。実際には、11.5でもプラスである限り景気は改善しています。下がるのは改善のペースであって、水準そのものではありません。この指標は景気の速度計であって、距離計ではないと考えると混乱しません。

2つめは、振れが大きいということ。回答企業が200社程度と少なく、しかも「良い・悪い」の二択に近い聞き方なので、数社の気分の変化で数値が数ポイント動きます。1か月の上下だけで判断せず、数か月の傾向で見るのが定石です。

それでもこの指標が注目されるのは、その月のデータがその月の半ばに出てくるという速さのためです。多くの経済統計は翌月以降にしか出ません。今夜の数字は8月の景況感であり、市場が手にできる8月分の最初の材料の一つになります。同じ方式の調査はフィラデルフィア連銀など各地区の連銀も実施しており、これらが出そろうと、月末に発表されるISM製造業景況感指数の予想材料としても使われます。

もう一つのNAHB住宅市場指数も考え方は同じで、全米住宅建設業協会が住宅建設業者に景況感を尋ねる調査です。ただしこちらは50が分かれ目で、50を下回ると「良くない」と答える業者のほうが多いことを意味します。予想の33は、この基準からするとかなり低い水準です。住宅ローン金利が高いまま推移していることが背景にあり、住宅は金利政策の影響が最も早く表れる分野の一つとされています。

こうした「アンケート型」の指標は、実際の生産や販売の金額を数えたハードデータに対して、ソフトデータと呼ばれます。ソフトデータは速い代わりに、気分やニュースの影響を受けやすい。前週末のミシガン大学の指数が急低下した一方で、同じ日の小売売上高という実額の統計も弱かったことは、「気分だけの悪化ではないかもしれない」というシグナルにもなります。ソフトデータとハードデータが同じ方向を向いたときは、その傾向を軽く見ないほうがいい。 今夜と今週の数字を並べて見る意味は、そこにあります。


出典: