来週(8月17日〜21日)の東京市場は、国内の決算シーズンが一巡し、経済統計と米小売大手の決算が相場の材料になる週を迎えます。日経平均株価は前週まで4営業日続伸して6万8713円80銭まで戻し、心理的節目の7万円が視野に入ってきました。まずは足元の位置と予想レンジを整理します。

項目 数値
日経平均 先週末終値(8/14) 68,713.80円(前日比 +405.21円、+0.59%)
TOPIX 先週末終値(8/14) 4,197.20(前日比 +21.16、+0.51%)※3日連続で最高値
日経平均の週間騰落(8/10〜8/14) +3,107円09銭(+4.74%、2週連続の上昇)
来週の予想レンジ(ザイ・オンライン) 66,000〜72,000円
ドル円 予想レンジ(外為どっとコム) 158円台前半〜161円台前半
S&P500 予想レンジ(外為どっとコム) 7,650〜8,050ポイント
週末(8月14日)の米国市場 終値 前日比
NYダウ工業株30種 53,732.41ドル -107.58(-0.20%)
S&P500種株価指数 7,785.76 -13.23(-0.17%)
ナスダック総合指数 26,729.16 -73.87(-0.28%)
ドル円(15日4時時点) 159円37銭

先週は米国の7月消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)がそろって鈍化し、早期利上げ観測の後退が日本株を押し上げました。ただし週末14日の米7月小売売上高は前月比0.6%減と予想外のマイナスとなり、米主要3指数はそろって小幅安で週を終えています。「物価は落ち着いてきたが、消費は弱いかもしれない」という宿題を持ち越した状態で来週を迎えます。

来週の注目日程

  • 8月17日(月): 日本の4〜6月期GDP速報値(内閣府)、米8月ニューヨーク連銀製造業景気指数
  • 8月18日(火): 米7月住宅着工件数・建設許可件数、ホーム・デポ決算
  • 8月19日(水): 日本6月機械受注、米FOMC議事要旨(7月28〜29日会合分)、ターゲット決算、アナログ・デバイセズ決算
  • 8月20日(木): 日本7月貿易統計、ウォルマート決算、米8月フィラデルフィア連銀製造業景気指数、米7月景気先行指標総合指数、米新規失業保険申請件数
  • 8月21日(金): 日本7月全国消費者物価指数(CPI)米8月PMI速報値
  • 翌週の8月27〜29日: カンザスシティ連銀主催のジャクソンホール会議(今年のテーマは「金融イノベーション:決済と政策への含意」)

注目ポイント

  • 週の入口は国内GDPです。 17日に発表される4〜6月期の実質GDP速報値について、時事通信がまとめた民間10社の予測平均は前期比0.5%増、年率換算で2.1%増と、3四半期連続のプラス成長を見込んでいます。大和総研は8月10日の改訂版予測で年率2.5%増(前期比0.6%増)、ニッセイ基礎研究所は年率2.4%増(同0.6%増)としています。背景として挙げられているのは、食料品の値上がりが一服するなかで実質賃金の改善が続き、個人消費が底堅かったこと、AI・半導体需要が設備投資を押し上げたことです。一方で輸出は中東向けの落ち込みからマイナスが見込まれています。この数字は、株価そのものよりも日銀の政策判断をめぐる見方を通じて相場に効いてくる材料です。

  • 19日のFOMC議事要旨は「反対票3人の中身」が焦点になります。 対象となる7月28〜29日の会合では、FF金利の誘導目標が3.50〜3.75%に据え置かれました。据え置きは5会合連続ですが、クリーブランド連銀のハマック総裁、ダラス連銀のローガン総裁、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁の3人が0.25%の利上げを主張して反対票を投じています。12人中3人の反対は多い部類で、議事要旨ではその主張の根拠や、据え置きを支持した委員がどこまで利上げに近づいていたかが文章として現れます。もっとも、この会合は先週のCPI・PPIより前の議論である点は割り引いて読む必要があります。市場が織り込む9月FOMCでの0.25%利上げ確率は、CMEグループのフェドウォッチで見て13日23時10分時点で34.4%と、前日の40.6%から低下していました。

  • 20日のウォルマート決算は、14日の弱い小売売上高への「企業側からの答え合わせ」になります。 18日のホーム・デポ、19日のターゲット、20日のウォルマートと米小売大手の決算が3日連続で並びます。統計が示した消費の減速が実際の売上や客数にどう表れているのか、そして各社が通期見通しをどう扱うのかが確認されることになります。外為どっとコムは、S&P500が8,000ポイントの節目を超えられるかどうかは消費の底堅さと金利低下が両立するかにかかっていると指摘しています。

  • 21日は日米の物価統計が同じ日に並びます。 国内の7月全国CPIと、米国の8月PMI速報値です。直近の国内コアCPI(生鮮食品を除く総合)は6月分が前年同月比1.6%上昇で、5か月連続の1%台にとどまりました。日銀の政策金利が1.0%まで引き上げられている状況で物価が2%を下回って推移しているため、7月分がどちらに振れるかは9月の日銀会合をめぐる見方に直結します。米PMIについては、外為どっとコムがサービス部門の販売価格指数に注目しています。企業がコスト上昇を価格に転嫁できているかを月次で早く確認できる項目だからです。

  • 株式市場の見方は「AI・半導体以外への広がり」に集まっています。 株探は、先週のTOPIXが週間終値ベースで2週連続の最高値を更新したことについて、AI・半導体株ブームが一巡しても資金が株式市場から離れていないことを意味すると解説しています。そのうえで、インフレが鈍化する一方で米景気の底堅さが維持される展開が好ましく、逆に米経済指標が強すぎればFRBの利上げ観測が再び高まって調整リスクが意識されると指摘しています。ザイ・オンラインも、日経平均が13週移動平均線を上抜けたことで7万円回復が意識される局面としつつ、7万円に接近して膠着感が強まる場合には主力大型株から中小型株へ資金が移る展開もありうるとしています。

  • 為替は160円をめぐる攻防が続きそうです。 外為どっとコムは来週のドル円について158円台前半〜161円台前半のレンジを想定し、日銀の追加利上げ観測と160円台をめぐる攻防が方向性を左右するとしています。テクニカルには159円60銭前後(フィボナッチ50%戻し)と100日移動平均線の160円01銭が上値の抵抗、158円57銭前後が下値の支持帯として挙げられています。日経新聞も、円相場は1ドル=160円の節目を意識した動きになりそうだと伝えており、7月末の日米協調介入の記憶から、160円に近づくほど介入警戒が強まりやすい構図です。加えて、原油は中東情勢が引き続き波乱要因として挙げられています。

ひとこと解説

来週の注目材料に挙がっているFOMC議事要旨は、名前のわりに中身が知られていない資料です。読み方のコツを整理しておきます。

まず、時間の順番から。米国の金融政策を決めるFOMC(連邦公開市場委員会)が開かれると、市場は3段階で情報を受け取ります。1段階目が会合直後に出る「声明文」。政策金利をどうするかと、ごく短い理由が数百語で書かれた文書です。2段階目がその直後の議長会見。記者の質問を通じて、声明文に書かれなかったニュアンスが出てきます。そして**3段階目が、約3週間後に公表される「議事要旨(minutes)」**です。来週19日に出るのは、7月28〜29日の会合について書かれたものにあたります。

議事要旨には、声明文にはない「議論の過程」が入ります。参加者がどんな経済の見方を示したか、意見がどこで割れたか、次にどんな条件がそろえば動くと考えているか。特に7月の会合は、12人中3人が利上げを主張して反対票を投じた会合でした。反対した人が何を根拠にそう考えたのか、そして据え置きに賛成した人たちがどれくらい迷っていたのかは、声明文だけでは分かりません。それが文章として出てくるのが議事要旨です。

読むときに知っておくと便利なのが、独特の人数表現です。議事要旨では参加者の人数を数字で書かず、"a few"(数人)、"some"(何人か)、"several"(複数)、"many"(多く)、"most"(大半)、"almost all"(ほぼ全員)といった単語で表します。厳密な定義があるわけではありませんが、市場関係者はこの言葉の強弱を前回の議事要旨と比べて、「利上げに前向きな人が増えたのか減ったのか」を推し量ります。日本語の記事で「利上げを主張したのは複数の参加者にとどまった」といった書き方を見かけるのは、この表現を訳しているためです。

一方で、注意点もあります。議事要旨は過去の議論の記録であって、予告ではありません。 来週出るのは3週間以上前の会合の内容で、その後には先週のCPI・PPI・小売売上高という重要な材料が続いています。会合の時点では強く見えた懸念が、いまはもう薄れていることもある。だから議事要旨が公表された直後に相場が動いても、その動きが長続きしないことは珍しくありません。逆に、市場が予想していたより意見の対立が大きかった(あるいは小さかった)ことが分かると、金利や為替が素直に反応することもあります。

もうひとつ。議事要旨は全文が公開されますが、逐語録ではありません。 誰がどの発言をしたかは基本的に伏せられ、要約された形で書かれます(発言者名まで入った完全な記録は5年後に公開されます)。つまり、私たちが読めるのは「編集された議事のまとめ」です。だからこそ、どの言葉を選んだかに意味が出てくる、とも言えます。19日の夜に「FOMC議事要旨」という見出しを見かけたら、金利の数字ではなく、意見の分布がどう伝えられているかに目を向けてみると、報道の読み方が少し変わってくるはずです。


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