今週(8月10日〜14日)の東京株式市場を振り返ります。米国で消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)がそろってインフレの鈍化を示し、米連邦準備理事会(FRB)の早期利上げ観測が後退したことが週を通じた追い風となりました。日経平均株価は4営業日続伸して約1カ月ぶりの高値水準を回復し、TOPIX(東証株価指数)は3日連続で最高値を更新しています。一方、週末の米国市場では7月の小売売上高が予想外のマイナスとなり、主要3指数はそろって小幅安で1週間を終えました。まずは数字から見ていきます。
| 日付 | 日経平均終値 | 前営業日比 | TOPIX終値 | 前営業日比 |
|---|---|---|---|---|
| 8/10(月) | 66,970.22円 | +1,363.51(+2.08%) | 4,100.61 | +25.68(+0.63%) |
| 8/11(火) | 「山の日」で休場 | — | — | — |
| 8/12(水) | 67,524.06円 | +553.84(+0.83%) | 4,139.00 | +38.39(+0.94%) ※最高値 |
| 8/13(木) | 68,308.59円 | +784.53(+1.16%) | 4,176.04 | +37.04(+0.89%) ※最高値 |
| 8/14(金) | 68,713.80円 | +405.21(+0.59%) | 4,197.20 | +21.16(+0.51%) ※最高値 |
週間では、日経平均は前週末(8月7日)の終値65,606.71円から**3,107円09銭高い68,713.80円(+4.74%)で1週間を終え、2週連続の上昇となりました。TOPIXも4,074.93から4,197.20へ122.27ポイント高(+3.00%)**で、8営業日続伸しています。
| 米国市場の週間騰落 | 8月7日終値 | 8月14日終値 | 週間の変化 |
|---|---|---|---|
| NYダウ工業株30種 | 54,036.93ドル | 53,732.41ドル | -304.52(-0.56%) |
| S&P500種株価指数 | 7,757.64 | 7,785.76 | +28.12(+0.36%) |
| ナスダック総合指数 | 26,690.62 | 26,729.16 | +38.54(+0.14%) |
| 週末(8月14日)の米国市場 | 終値 | 前日比 |
|---|---|---|
| NYダウ工業株30種 | 53,732.41ドル | -107.58(-0.20%) |
| S&P500種株価指数 | 7,785.76 | -13.23(-0.17%) |
| ナスダック総合指数 | 26,729.16 | -73.87(-0.28%) |
| 今週の米経済指標 | 結果 | 市場予想 | 前回 |
|---|---|---|---|
| 7月CPI(前年同月比・8/12) | +3.4% | +3.4% | +3.5% |
| 7月コアCPI(前年同月比) | +2.5% | +2.5% | +2.6% |
| 7月PPI(前月比・8/13) | 0.0% | — | -0.1% |
| 7月PPI(前年比) | +4.7% | — | +5.5% |
| 7月小売売上高(前月比・8/14) | -0.6% | +0.1% | +0.2% |
| 同・除自動車(前月比) | -0.3% | +0.2% | -0.2% |
| 8月ミシガン大消費者信頼感指数・速報(8/14) | 51.0 | 55 | 55.2 |
| 同・1年先期待インフレ率 | 4.3% | 4.2% | 4.2% |
| 同・5〜10年先期待インフレ率 | 3.3% | 3.3% | 3.3% |
| 為替・金利(8月15日4時時点) | 水準 |
|---|---|
| ドル円 | 159円37銭 |
| 8月14日の値幅 | 158円60銭〜159円53銭 |
| ユーロ円 | 184円32銭 |
| 米10年債利回り | 4.69%台まで上昇 |
何があった?
10日(月)は1,363円51銭高と大幅反発で始まりました。 前週末に発表された米7月雇用統計が予想外のマイナスとなり、米国の早期利上げ観測が後退した流れをそのまま引き継いだ形です。日経平均は3営業日ぶりに大きく上昇し、7月15日以来およそ4週間ぶりの高値水準となる6万6970円22銭で引けました。半導体関連が指数を押し上げ、リクルートホールディングスはストップ高となっています。東証プライムの売買代金は8兆388億円でした。
11日(火)は「山の日」の祝日で休場でした。 東京市場の取引はなく、24時間動く為替市場ではドル円が1ドル=159円台で小動きにとどまりました。市場の関心は翌12日に発表される米CPIへ向かっています。
12日(水)は553円84銭高で、TOPIXが最高値を更新しました。 前夜に発表された米7月CPIは前年同月比3.4%上昇と市場予想にぴたりと一致し、コア指数も予想どおりの2.5%へ鈍化。インフレ鈍化を好感した買いが半導体関連に集まりました。日経平均は6万7000円台を回復し、TOPIXは38.39ポイント高の4139.00と、7月6日に付けた最高値を上回っています。休場明けで2日分の海外材料を消化する一日でもありました。
13日(木)は784円53銭高。ただし上げ幅は一時1200円を超えていました。 米CPIを受けたAI・半導体買いが続いた一方、後場に日銀の早期利上げ観測を伝える報道が流れると伸び悩みました。TOPIXは7日続伸で連日の最高値です。この日の夜に発表された米7月PPIは前月比0.0%と横ばい、前年比も4.7%と前回の5.5%から伸びが縮み、CPIに続いて物価の鈍化が確認されました。CMEグループのフェドウォッチで見た9月FOMCの0.25%利上げ確率は、13日23時10分時点で34.4%と前日の40.6%から低下しています。
14日(金)は405円21銭高で4日続伸し、7万円の手前で失速しました。 前夜の米ハイテク株高を受けて上げ幅は一時1300円近くに広がり、取引時間中には約1カ月ぶりに6万9600円台を回復しましたが、心理的節目の7万円が近づくと週末を控えた利益確定売りに押されました。この日算出された8月限のSQ値(特別清算指数)は6万9702円13銭で、当日の日経平均の高値6万9608円24銭に届かない「幻のSQ」となっています。東証プライムの売買代金はSQ絡みの商いも加わって10兆3156億円に膨らみました。個別ではアドバンテストが上場来高値を連日で更新し、日銀の追加利上げ予想を背景に地方銀行株が買われる一方、金利上昇による利払い負担が意識された不動産株は軟調でした。
そして14日夜、米国市場は「消費の弱さ」に直面しました。 7月の小売売上高は前月比0.6%減と、0.1%増という予想に反してマイナスに転じました。自動車を除いたベースでも0.3%減、消費の基調を映すコントロール・グループも0.4%減です。株探によると、アマゾン・ドット・コムがプライムデーを前年の7月から6月に前倒しした反動やサッカーW杯の反動が指摘されており、短期金融市場が織り込む12月までの利上げ確率は前日の90%程度から80%程度へ後退しました。23時発表の8月ミシガン大学消費者信頼感指数の速報値も51.0と、7月の55.2から3カ月ぶりに低下しています。NYダウは107ドル58セント安、S&P500種は13.23ポイント安、ナスダック総合は73.87ポイント安と、3指数そろって小幅な下落で週の取引を終えました。
注目ポイント
同じ材料で、日米の株価の伸びに大きな差がつきました。 今週の主役は「米国のインフレ鈍化」でしたが、その恩恵を大きく受けたのは日本株のほうです。日経平均が週間4.74%高となったのに対し、S&P500は0.36%高、ナスダック総合は0.14%高、NYダウにいたっては0.56%安と、米国の主要指数はほぼ横ばいで週を終えました。米金利の低下が世界的にAI・半導体関連への買いを促すなか、日経平均は値がさの半導体銘柄の影響を強く受ける構成のため、指数の上昇率として現れやすかったという面があります。指数の性格の違いが、そのまま騰落率の差になった1週間でした。
TOPIXは「最高値」、日経平均は「1カ月ぶりの高値」という段階の違いがあります。 TOPIXは12日から3日連続で終値ベースの最高値を更新し、8営業日続伸しました。一方の日経平均は7月15日以来の水準を回復した段階で、7月に付けた高値の更新には至っていません。時価総額加重型のTOPIXが先に最高値圏へ到達しているという事実は、上昇が半導体関連だけに偏っているのではなく、幅広い銘柄に買いが入っていることを示しています。
週の後半で材料の性質が「物価」から「消費」へ移りました。 12日のCPI、13日のPPIまでは、物価の鈍化が利上げ観測の後退を通じて株高につながるという分かりやすい流れでした。ところが14日の小売売上高とミシガン大の指数は、物価ではなく消費と景況感の弱さを示す内容です。利上げ観測の後退という点では株価にプラスに働きうる一方、消費の減速は企業の売上そのものに関わります。米国株が同日に小幅安で終えたのは、この二面性を市場が測りかねたことの表れとも読めます。
弱い指標が出たのに米長期金利は上昇しました。 ミシガン大の1年先の期待インフレ率が4.3%と、予想の4.2%と前回の4.2%をわずかに上回ったことが背景にあります。景気の弱さは金利を押し下げる方向に働きますが、消費者が先行きの物価上昇を強く見込めば金利は下がりにくい。米10年債利回りが4.69%台まで上昇したのは、この綱引きの結果です。「弱い指標=金利低下」と単純に決めつけられない局面であることは、頭に入れておきたいところです。
国内では日銀の9月追加利上げ観測が上値の重荷として定着しつつあります。 13日の報道以降、地方銀行株が買われ不動産株が売られるという業種間の差がはっきりと出ました。ただしこれはあくまで市場の予想であり、日銀が方針を決めたわけではない点は区別が必要です。
来週は決算一巡後、マクロ材料が中心の週になります。 国内の決算発表シーズンは今週で最終盤を迎えました。米国では18日にホーム・デポ、19日にターゲットとロウズ、20日にウォルマートと小売大手の決算が集中し、今週の小売売上高で見えた消費の姿を企業側から確かめる流れになります。19日にはFOMC議事要旨、21日には製造業・サービス部門PMIの速報値も控えます。財経新聞は、来週の東京市場について短期的な過熱感を解消しながらの値固め的な展開を想定する見方を伝えています。
ひとこと解説
今週いちばん地味に、しかし確実に相場を動かした数字が期待インフレ率です。ミシガン大学の指数と一緒に発表される「1年先4.3%」「5〜10年先3.3%」という数字がそれにあたります。名前は難しそうですが、中身は驚くほど素朴です。
期待インフレ率とは、人々がこの先の物価上昇率をどれくらいだと思っているかを表した数字です。ミシガン大学の調査の場合、全米の消費者に電話などで「1年後、モノやサービスの値段は何パーセント上がっていると思いますか」と聞き、その回答を集計します。実際に上がった物価を測るCPIが「過去の実績」なのに対し、期待インフレ率は「これからの予想」であり、しかも専門家ではなく普通の家計の肌感覚が元になっている、という点が特徴です。
なぜ中央銀行がこれをそこまで重視するのか。理由は、予想が実際の物価をつくってしまうからです。「来年は物価が5%上がりそうだ」と多くの人が考えれば、労働者はそれに見合う賃上げを求め、企業は賃金上昇分を織り込んで値上げを計画します。その結果、本当に物価が5%上がる。予想が現実を引き寄せるこの循環を、経済の世界では期待の「アンカー(錨)が外れる」といいます。逆に、多くの人が「物価は2%くらいで落ち着くだろう」と思い続けていれば、一時的にエネルギー価格が跳ね上がっても、物価全体は元の水準へ戻りやすくなります。錨がきいている状態です。
だから中央銀行の関係者は、CPIの単月の数字よりも期待インフレ率の変化に神経を使います。実績の物価が高くても、期待が動いていなければ「一時的な現象」と判断できる。反対に、実績が落ち着いてきても期待が上振れしていれば、金融引き締めをやめる判断はしにくくなります。今週の米国はまさに後者の構図でした。CPIもPPIも鈍化を示したのに、金曜に出た1年先の期待インフレ率は前回と予想をわずかに上回った。弱い小売売上高が出たにもかかわらず米長期金利が4.69%台まで上昇したのは、この一点が意識されたためと説明されています。
読むときのコツを二つ挙げておきます。ひとつは、1年先と5〜10年先を分けて見ること。1年先はガソリン価格などの身近な値段に強く引っ張られるため、月ごとの振れが大きくなります。より重要なのは長期のほうで、5〜10年先が動かないかぎり「錨はきいている」と判断されるのが一般的です。今回はその長期が3.3%と前回・予想どおりで、市場の反応が限定的だったのはこのためでもあります。
もうひとつは、これはあくまでアンケートの結果であるという点です。実際の物価でも、市場が付けた価格でもありません(債券市場から算出するBEI=ブレークイーブン・インフレ率という別の指標もあります)。調査対象者の気分や、ニュースで何が大きく報じられたかにも左右されます。単月の上下に意味を求めすぎず、数か月の並びで方向を見る。今週のように、実績の物価と人々の予想が食い違う場面でこそ、その姿勢が役に立ちます。
出典:
- 東証大引け 日経平均が4日続伸 米株高支え TOPIXは連日高値(日本経済新聞)
- 日経平均は405円高と4日続伸、8月限は「幻のSQ」に=14日後場(株式新聞Web)
- 日経平均終値405円高 アドバンテスト最高値はAIラリー再来の合図か(日本経済新聞)
- 日経平均大引け 3日続伸 784円高の6万8308円、TOPIXは連日高値(日本経済新聞)
- TOPIX、取引時間中の史上最高値上回る=東京株式市場(時事通信/Yahoo!ニュース)
- 週末の持ち高調整などで重い展開【クロージング】(財経新聞)
- 来週の日経平均見通し|一時1,000円超の上昇で69,000円台に!来週70,000円突破なるか?(外為どっとコム マネ育チャンネル)
- 日経平均株価 過去データ(Investing.com)
- ニューヨーク株式市況(野村證券)
- NYダウ・ナスダック・S&P500の推移とチャート(株式マーケットデータ)
- NYダウ平均株価 過去データ(Investing.com)
- S&P500 過去データ(Investing.com)
- ナスダック総合 過去データ(Investing.com)
- 米国・欧州・アジア株式市場 海外マーケット最新ニュース(日本経済新聞)
- 弱い米小売売上高で米利上げ期待がさらに後退 アマゾンプライムデーやW杯の反動も(株探)
- 【市場反応】米7月小売売上高は予想外のマイナス1年ぶり低水準、ドル売り(ザイ・オンライン)
- 米小売売上高0.6%減 7月、予想大幅に下回る(共同通信/Yahoo!ニュース)
- 【市場反応】米8月ミシガン大消費者信頼感指数速報値予想下回る、ドル安値圏(Fisco/Investing.com)
- ニューヨーク外国為替市場概況・4時 ドル円、小動き(ザイ・オンライン)
- 9月FOMCでの0.25%利上げ確率、34.4%に低下 据え置き65.6%に上昇(トレーダーズ・ウェブ/Yahoo!ファイナンス)
- S&P500見通し(8/14〜21)|8,000ポイント到達は消費次第 ウォルマート・ターゲット決算に注目(外為どっとコム マネ育チャンネル)
- ミシガン大学消費者信頼感指数(トレーダーズ・ウェブ)