14日夜の米国市場は、日本時間21時30分に発表される7月の小売売上高が最大の焦点です。前日はPPI(生産者物価指数)の鈍化を受けてS&P500種株価指数が史上最高値を更新し、9月利上げの確率は34.4%まで低下しました。物価が落ち着くなかで消費がどう動いているかが問われます。

前日(8月13日)の米国市場 終値 前日比
ダウ工業株30種平均 53,839.99 +69.72(+0.13%)
S&P500種株価指数 7,798.99 +50.49(+0.65%)
ナスダック総合指数 26,803.03 +214.54(+0.81%)
フィラデルフィア半導体株指数(SOX) 12,456.00 +56.62
前日(8月13日)のその他指標 水準 前日比
米10年債利回り 4.64% -0.05
NY原油(WTI・9月限) 81.25ドル -2.02
NY金(12月限) 4,420.4ドル -47.1
ドル円 159.50円 +0.08
ユーロドル 1.1528ドル +0.0002
7月PPI(8月13日発表) 結果 前回
前月比 0.0% -0.1%
前年比 +4.7% +5.5%
コア指数(前月比) +0.2% +0.4%
コア指数(前年比) +4.2% +4.7%
今夜の主な予定(日本時間) 内容
21時30分 米7月小売売上高
23時00分 米8月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値(1年先・5年先の期待インフレ率を含む)
主要な企業の決算発表はなし
今夜の経済指標の市場予想 予想
7月小売売上高(前月比) +0.3%
同・コア(前月比) +0.2%
9月FOMCの織り込み(CMEフェドウォッチ・8月13日23時10分時点) 確率 前日
0.25%利上げ 34.4% 40.6%
据え置き 65.6% 59.4%

何があった?

PPIの鈍化でS&P500が史上最高値を更新した — トレーダーズ・ウェブによると、13日発表の7月PPIは前月比0.0%と横ばいにとどまり、前年比は4.7%と前回の5.5%から伸びが縮みました。コア指数も前月比0.2%、前年比4.2%へ鈍化しています。ロイター(ニューズウィーク日本版)によると、これを受けてS&P500種は50.49ポイント(0.65%)高の7798.99と終値で史上最高値を更新。ナスダック総合は214.54ポイント(0.81%)高の2万6803.03、ダウ工業株30種平均は69.72ドル(0.13%)高の5万3839.99ドルで引けました。財経新聞は、原油価格の下落とPPIの結果が好感され、長期金利の低下でナスダックが終日堅調だったと伝えています。

9月利上げの織り込みはさらに一段下がった — トレーダーズ・ウェブによると、CMEグループのフェドウォッチで見た9月15〜16日のFOMCにおける0.25%利上げの確率は、13日23時10分時点で34.4%と、前日の40.6%から低下しました。据え置きは59.4%から65.6%へ上昇しています。12日のCPIに続いてPPIでも物価の伸びの鈍化が確認されたことで、市場は9月の据え置きに傾いた形です。米10年債利回りは4.64%と前日から0.05ポイント低下しました。

買われた銘柄と売られた銘柄の差が大きかった — ロイター(ニューズウィーク日本版)によると、13日はサンディスクが13.7%高、マイクロン・テクノロジーが4.2%高と半導体関連が買われ、ネットフリックスが5.4%高、メタ・プラットフォームズが2.8%高、マイクロソフトも1%程度上昇しました。半面、前日の引け後に決算を発表したシスコシステムズは8.4%安、タペストリーは16%超の下落となっています。インフラストラクチャー・キャピタル・アドバイザーズのジェイ・ハットフィールド氏は同記事で、足元の上昇を業績に裏打ちされたものだと述べています。財経新聞によると、セクターでは自動車・自動車部品とソフトウエア・サービスが上昇し、素材が小幅に下げました。

東京市場は7万円の手前で伸び悩んで引けた — 14日の日経平均株価は405円21銭(0.59%)高の6万8713円80銭と4日続伸し、TOPIXは21.16ポイント高の4197.20で8日続伸、3日連続の最高値となりました。前夜の米ハイテク株高を受けて上げ幅は一時1300円近くに広がりましたが、7万円が近づくと週末を控えた利益確定売りに押されています。8月限のSQ値は6万9702円13銭で、当日の日経平均の高値6万9608円24銭に届かない「幻のSQ」となりました。

注目ポイント

  • 小売売上高は「物価の次」に来る数字 — 今週はCPI、PPIと物価指標が続き、いずれも伸びの鈍化を示しました。今夜の小売売上高は、その物価環境のもとで消費が実際にどう動いたかを見る指標です。外為どっとコムによると市場予想は前月比+0.3%、コアが+0.2%で、見どころはコアが前月のマイナスから戻るかどうかとされています。なお本記事の執筆時点では発表直後のため、結果の数値は確認できていません。

  • 強すぎても弱すぎても解釈が割れやすい局面 — 9月据え置きの織り込みが65.6%まで高まったあとだけに、消費が想定以上に強ければ利上げ観測が再び強まる余地があり、逆に弱すぎれば景気の減速が意識されます。物価の鈍化を好感してきた足元の相場にとって、今夜の数字は方向が一つに定まりにくい材料です。

  • 23時のミシガン大には期待インフレ率が付いてくる — 外為どっとコムによると、8月のミシガン大学消費者信頼感指数の速報値では、1年先と5年先の期待インフレ率も同時に公表されます。実績の物価が落ち着いてきたなかで、消費者が先行きの物価をどう見ているかは、FRBが繰り返し重視してきた項目です。指数本体の水準だけでなく、この2つの数字も合わせて確認したいところです。

  • 今夜は決算という個別材料が乏しい — 外為どっとコムによると、今夜は主要企業の決算発表が予定されていません。今週相場を動かしてきたAI・半導体関連の決算という材料が途切れるぶん、指標への反応がそのまま指数の動きに出やすい一日になります。

  • 来週は小売大手の決算が集中する — 外為どっとコムによると、18日にホーム・デポ、19日にターゲットとロウズ、20日にウォルマートの決算が控えます。19日27時にはFOMC議事要旨、21日22時45分には製造業・サービス部門PMIの速報値も予定されています。今夜の小売売上高で見えた消費の姿を、来週は企業側の決算で確かめる流れになります。

ひとこと解説

今夜の主役である**小売売上高(Retail Sales)**は、米国の小売業とフードサービスの売上を集計した統計です。米国の国内総生産(GDP)は7割前後を個人消費が占めるとされ、その消費の動きを毎月いち早く知らせてくれるのがこの指標です。「消費の体温計」と呼ばれることもあります。

読むときに知っておきたいのが、総合の数字だけを見ても消費の実力はわかりにくいという点です。ニュースで「小売売上高、コアは+0.2%の予想」といった書き方が出てくるのは、そのためです。総合には自動車の販売が含まれますが、自動車は1台あたりの金額が大きく、しかも月ごとの振れが大きいので、たまたま自動車が売れた月は総合が押し上げられます。そこで自動車を除いた数字を見るのが定番になっており、これが「除自動車」やその先の「コア」と呼ばれる系列です。総合とコアの方向が食い違ったときは、どこで差がついたのかを確かめると、消費の実態に近づけます。

もう一つ、意外と誤解されやすいのがこの統計は金額ベースだという点です。物価が上がれば、同じ量しか買っていなくても売上高は増えます。今週のようにCPIやPPIが鈍化している局面では、価格の押し上げが弱まるぶん、売上高の伸びも抑えられやすい。逆に言えば、物価が落ち着いているのに売上高が伸びていれば、それは「値上がりで増えた」のではなく「買う量が増えた」可能性が高いことになります。物価指標と消費指標を同じ週にまとめて見ると、こうした読み分けができます。

そして、この数字が金融政策に結びつく道すじも押さえておきましょう。中央銀行が利上げを検討するのは、景気が強すぎて物価が上がり続けそうなときです。消費が強ければ企業は値上げしやすく、物価は下がりにくい。だから消費が想定以上に強いと「利上げがまだ必要かもしれない」という見方につながり、弱ければその逆になります。今夜の数字が9月のFOMCをめぐる織り込みを動かしうるのは、この経路があるからです。

最後に、実務的な注意点を一つ。小売売上高は後から改定されることが多い統計としても知られます。速報値に大きく反応した相場が、翌月の改定で見方を修正する場面は珍しくありません。発表直後の値動きは一つの反応にすぎず、消費の傾向は数か月分を並べて初めて見えてきます。単月の数字に一喜一憂しすぎない、というのはこの指標にこそ当てはまる姿勢です。


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