10日の米国市場は主要3指数がそろって小幅に反落しました。米国とイランの交渉が停滞しているとの観測から原油先物が5%を超えて上昇し、高値圏にあった株式に利益確定の売りが出ています。為替はドル買いが優勢となり、ドル円は1ドル=159円台に乗せました。今日11日の東京市場は「山の日」の祝日で休場となります。
| 米国市場(8月10日終値) | 終値 | 前週末比 |
|---|---|---|
| NYダウ工業株30種 | 53,975.98ドル | -60.95(-0.11%) |
| S&P500種株価指数 | 7,753.11 | -4.53(-0.06%) |
| ナスダック総合指数 | 26,605.36 | -85.26(-0.32%) |
| 商品・為替(8月10日) | 終値 | 前週末比 |
|---|---|---|
| WTI原油先物9月物 | 82.13ドル | +3.95(+5.1%) |
| 金先物12月物 | 4,419.7ドル | +20.0(+0.5%) |
| ドル円(NY市場) | 159.29円 | 前営業日終値157.76円 |
| 前日の東京市場(8月10日終値) | 終値 | 前週末比 |
|---|---|---|
| 日経平均株価 | 66,970.22円 | +1,363.51(+2.08%) |
| TOPIX | 4,100.61 | +25.68(+0.63%) |
何があった?
原油の急伸が株式の重荷になった — 10日のニューヨーク・マーカンタイル取引所でWTI原油先物9月物は前週末比3.95ドル(5.1%)高の1バレル82.13ドルで取引を終えました。日本経済新聞によると、イランが攻撃停止や制裁解除など米国が受け入れ難い条件を提示したと伝わり、ホルムズ海峡の航行正常化を巡る交渉が難航するとの見方が広がったことが背景です。前日にはイエメンの親イラン武装組織フーシがサウジアラビアの石油施設を攻撃したとも伝えられています。欧州の指標となるブレント原油は1バレル86〜87ドル台まで上昇しました。
原油高はエネルギーコストを通じて物価を押し上げる要因になります。インフレへの警戒から米長期金利が上昇し、前週末にS&P500種株価指数が終値の最高値を更新していたこともあって、利益確定の売りが出やすい地合いとなりました。もっともダウの下げ幅は60ドル95セント、S&P500は4.53ポイントと限定的で、下落率はいずれも0.1%前後にとどまっています。
下げをけん引したのは大型ハイテク株の一部 — エヌビディアは3%近く下落しました。英フィナンシャル・タイムズが、同社がアポロ・グローバル・マネジメントやブラックストーンと組み、5000億ドル規模のAIインフラ向け資金調達の枠組みを検討していると報じたことが材料視されています。アップルも部品コストへの懸念から2%程度下げ、ホーム・デポやウォルト・ディズニーも軟調でした。インテルは150億ドルを調達するための株式発行計画を発表し、株価が下げています。
一方でマイクロソフトが2.1%高、アマゾン・ドット・コムが2.0%高、メタ・プラットフォームズが1.3%高と、大型ハイテクの中でも方向は分かれました。原油高の恩恵が意識されたシェブロンのほか、セールスフォース、シスコシステムズも上昇しています。ナスダック総合の下落率(-0.32%)がダウ(-0.11%)より大きかったのは、指数への影響が大きいエヌビディアとアップルの下げを映した形です。
為替はドル買いが優勢、ドル円は159円台へ — ドル円は前営業日のNY終値157円76銭から水準を切り上げ、10日のNY市場では159円29銭で終えました。原油高を受けた「有事のドル買い」に加え、ハマック米クリーブランド連銀総裁が利上げの必要性に言及したことも意識されたと伝えられています。株探によると、ドル円は200日移動平均線を上回る場面もありました。日中には日銀の9月利上げを示唆する報道も伝わりましたが、円買いの反応は一時的にとどまっています。
前日の東京市場は大幅高だった — 10日の日経平均株価は前週末比1363円51銭(2.08%)高の6万6970円22銭と、3営業日ぶりに大幅反発しました。7日の米雇用統計を受けた早期利上げ観測の後退が追い風となり、半導体関連が指数を押し上げた一日でした。同日公表された日銀の7月会合の「主な意見」では、利上げに前向きな意見が複数示されています。
注目ポイント
今日11日の東京市場は「山の日」で休場 — 祝日のため東京証券取引所での売買はありません。次の立ち会いは12日(水)です。今週の東京市場は10日・12日・13日・14日の実質4営業日で、お盆の時期と重なって市場参加者が減りやすい時期にあたります。売買代金が細ると、同じ材料でも株価の振れ幅が大きくなりやすい点は意識されやすいところです。なお休場中も米国市場や為替は動くため、12日の東京市場は2日分の海外の材料をまとめて織り込む形になります。
今週最大の注目は12日発表の米7月消費者物価指数(CPI) — ブルームバーグによると、市場予想は総合が前月比0.1%上昇、コア(食品・エネルギーを除く)が同0.2%上昇です。コアの前年同月比は2.5%上昇と2月以来の小さな伸びが見込まれています。6月は前月比0.4%低下と2020年4月以来の大幅な下げでした。雇用の弱さが確認された直後だけに、物価の数字が加わることで利上げ観測の織り込みがどう動くかが焦点になります。ただし7月の統計には今回の原油急伸は反映されないため、足元のエネルギー価格との時間差には注意が必要です。
東京市場の決算発表は12日以降が本番 — 株探によると、今週の決算発表は12日が207社、13日が218社、14日が360社と後半にかけて増えていきます。決算シーズンは最終盤で、ここまで「増益でも下落」といった反応も繰り返されてきました。指数全体の方向より個別の値動きが目立ちやすい局面が続いています。
ひとこと解説
昨夜の米国市場は「原油が5%上がったので株が下がった」という説明でした。原油の値上がりがなぜ株式市場の重荷になるのか、経路を整理しておきましょう。
まず押さえておきたいのは、原油高には「良い原油高」と「悪い原油高」があるという点です。景気が良くて需要が増えたことで原油が上がるなら、それは経済が元気な証拠であり、株式にとって必ずしも悪材料ではありません。問題は、今回のように供給側の不安で上がるケースです。ホルムズ海峡は世界の原油輸送の要衝で、そこが滞るかもしれないという懸念は「モノが足りなくなるかもしれない」という理由の値上がりです。需要が増えていないのに値段だけ上がるため、経済にとっては純粋なコスト増になります。
ここから株価への経路は大きく2つに分かれます。1つめは企業の利益を通じた経路です。 燃料費や輸送費、原材料費が上がると、それを価格に転嫁できない企業は利益が削られます。航空・運輸・化学・素材といった業種は特に影響を受けやすく、逆に石油関連企業は増益が期待されるため、業種によって反応が正反対になります。10日の米国市場でシェブロンが上昇したのはこの構図です。
2つめは金利を通じた経路です。 こちらのほうが指数全体には効きやすいと言えます。エネルギー価格の上昇は物価全体を押し上げるため、中央銀行が金融引き締めを続ける・強める理由になりかねません。「利上げが必要になるかもしれない」との見方が強まれば債券が売られて長期金利が上がり、金利上昇は将来の利益を重視して買われている成長株(ハイテク株など)の重荷になります。昨夜、ダウよりナスダックの下げが大きかった背景には、この金利の経路があります。
覚えておきたいのは、同じ「原油高」でも上がった理由によって市場の受け止めが変わるということです。ニュースで原油価格を見たときは、数字そのものより「なぜ上がったのか」を確認する。需要が強いのか、供給に不安があるのか。その一言で、株式市場が素直に喜ぶ材料なのか、警戒する材料なのかが見えてきます。
出典:
- NYダウは反落し60ドル安、原油高を嫌気 エヌビディアが下落(日本経済新聞)
- NYダウ、反落で始まる 最高値圏で持ち高調整の売り(日本経済新聞)
- Stock market today: Dow, S&P 500, Nasdaq slip as oil prices climb, Nvidia stock pulls back(Yahoo Finance)
- Dow Slips While the S&P 500 Clings to Friday's Record High(The Motley Fool)
- Stock Market Today (Aug. 10, 2026): Energy, oil prices rise amid fresh concerns over potential Middle East deal(TheStreet)
- NY商品、原油続伸 米・イラン交渉の停滞観測で 金は続伸(日本経済新聞)
- ニューヨーク外国為替市場概況・10日 ドル円、反発(ザイFX!)
- NY外為:ドル・円159円台、200DMA上回る(株探)
- ドル円が159円台に上昇=NY為替速報(みんかぶ)
- 【焦点】米CPI、小幅上昇へ-インフレ鈍化でFRBの懸念和らぐ可能性(ブルームバーグ)
- 7月の米消費者物価、インフレ再燃なら利上げ論に拍車 8月12日発表(日本経済新聞)
- 今週の決算発表予定 楽天グループ、住友鉱、東京海上など(8月10日〜14日)(株探)
- 営業時間・休業日一覧(日本取引所グループ)