5日夜の米国市場は、日本時間21時15分に7月のADP全米雇用リポート、23時00分に7月のISM非製造業景況指数と、労働市場と景況感の指標が続けて発表されます。前日4日はNYダウが907ドル高で4営業日続伸して最高値を更新しており、上昇が続いた後の相場が指標をどう消化するかが焦点です。

指数(8月4日終値) 終値 前日比
NYダウ 54,085.88 +907.47(+1.71%)
S&P500 7,736.52 +136.02(+1.79%)
ナスダック総合 26,584.99 +671.09(+2.59%)
ナスダック100 29,733.16 +956.36(+3.32%)
SOX指数 12,179.26 +748.91(+6.55%)
その他の指標(8月4日) 数値
米10年債利回り 4.614%
WTI原油先物(9月限) 80.28ドル(-0.48ドル、-0.59%)
ドル円(NY終値) 157.839円
今夜の主な発表(日本時間) 内容
21:15 7月ADP全米雇用リポート(市場予想 +6万5000人/6月 +9万8000人)
22:45 7月サービス部門・総合PMI(改定値)
23:00 7月ISM非製造業景況指数(市場予想 54.5/6月 54.0)

何があった?

4日はイラン情勢の緩和期待で全面高 — 米国とイランの外交交渉が合意に近づいているとの観測が広がり、投資家のリスク選好姿勢が回復しました。ベッセント米財務長官がホルムズ海峡の開放などで近く合意に至る可能性に言及したことがきっかけです。供給途絶への警戒が薄れたことでWTI原油先物は続落し、9月限は80.28ドルで引けました。原油安がインフレ懸念を和らげる形で米長期金利も低下し、金利低下がハイテク株買いを後押しするという流れが重なっています。NYダウは構成銘柄の約8割がプラス圏で推移し、キャタピラー、シスコ・システムズ、IBM、アムジェン、セールスフォースなどが上昇。半面、ナイキ、アマゾン・ドット・コム、ユナイテッドヘルス・グループ、シェブロン、コカ・コーラは下げています。S&P500は6月2日以来約2カ月ぶりに史上最高値を更新しました。

半導体とパランティアが指数を押し上げ — 4日の上昇率はナスダック総合の2.59%に対しSOX指数が6.55%と、半導体セクターの戻りが際立ちました。ナスダック100ではパランティア・テクノロジーズが指数上昇のけん引役となり、アーム・ホールディングスADR、マーベル・テクノロジー、サンディスク、インテルなども上昇しています。パランティアは前日引け後に発表した4〜6月期決算で売上高が前年同期比93%増の19億3500万ドル、希薄化後EPSが41セントと市場予想を上回り、通期見通しも引き上げました。米民間部門の売上高が149%増の7億6400万ドルに伸びたことが、AIネイティブ企業との競合や海外政府の内製化に対する警戒感を和らげたと受け止められています。この流れが5日の東京市場にも波及し、日経平均は2342円高で引けました。

今夜は雇用と非製造業の2本立て — ADP全米雇用リポートは民間雇用の増加数を示す統計で、市場予想は前月比6万5000人増と、6月の9万8000人増から伸びの鈍化が見込まれています。ISM非製造業景況指数は米経済の約7割を占めるサービス業の景況感を示すもので、予想は54.5と6月の54.0から小幅改善の見通しです。4日に発表された6月のJOLTS求人件数が市場予想を下回っていたこともあり、労働市場の減速度合いに関心が集まりやすい地合いです。

注目ポイント

  • 大型決算が寄り前と引け後に集中 — 米国時間5日の取引開始前にはウォルト・ディズニー、イーライリリー、ウーバー・テクノロジーズ、CVSヘルス、クラフト・ハインツ、フィリップス66などが決算を発表します。取引終了後(日本時間6日早朝)にはウエスタン・デジタル、ドアダッシュ、イーベイ、エクスペディア・グループ、アップラビン、モトローラ・ソリューションズ、オキシデンタル・ペトロリアム、メットライフなどが控えます。消費関連からエネルギー、ヘルスケアまで業種が分散しており、指数全体というより業種ごとの明暗が出やすい構成です。

  • 本命は7日の米雇用統計 — 今夜のADPは民間調査であり、政府統計である米雇用統計(非農業部門雇用者数)とは集計方法が異なります。7日には7月分の米雇用統計が発表予定で、今週の労働市場関連指標はここに向けた材料と位置づけられます。ADPの結果が雇用統計の予想を大きく動かす場合もあれば、両者の方向が食い違う場合もあります。

  • 原油と金利の低下が続くか — 今回の上昇の土台には、原油安と長期金利の低下がありました。イラン情勢を巡る交渉の行方次第では、この2つの前提が変わる可能性があります。米10年債利回りは4日に4.614%へ低下していますが、指標の内容によっては再び水準が動く場面もありえます。

  • ドル円は157円台後半、介入の余韻 — 4日のドル円は157.958円まで上昇後に157.201円まで下押しし、157.839円で引けました。日米の協調介入が実施された後だけに、当局の動向を意識した神経質な値動きが続いています。指標発表時は振れ幅が大きくなりやすい時間帯です。

ひとこと解説

今夜発表されるADP雇用統計と、7日に控える米雇用統計。どちらも「アメリカの雇用」を測る統計ですが、性格はかなり違います。

ADP雇用統計は、給与計算サービスを手がける民間企業ADPが、自社の顧客企業の給与データをもとに集計して発表する民間統計です。対象は民間部門のみで、公務員は含まれません。政府統計より数日早く出るため、「雇用統計の前哨戦」として注目されます。

一方の米雇用統計(正式には雇用状況統計)は、米労働省労働統計局が発表する政府統計です。事業所への調査から算出する非農業部門雇用者数と、世帯への調査から算出する失業率という、性格の違う2つの数字が同時に出ます。政府部門も含み、調査規模も大きいため、市場が最も重視するのはこちらです。

注意したいのは、両者の数字はしばしばズレるということです。集計対象も手法も違うので当然なのですが、「ADPが強かったから雇用統計も強い」と単純につながるわけではありません。過去には方向が逆になった例も珍しくありません。

では、ADPを見る意味はどこにあるのか。ひとつは発表が早いことそのものです。市場は雇用統計を待つ間、手がかりの少ない状態に置かれます。そこにADPという数字が入ると、予想が修正され、金利や為替が動きます。数字の正確さというより、「相場が反応するタイミングを作る」役割が大きいわけです。

もうひとつは業種別の内訳です。ADPはレジャー・宿泊、金融、製造といった業種ごとの増減も公表するため、どの分野で雇用が増減しているかの手がかりになります。

指標発表の前に「予想」を確認しておくと、当日の値動きが読み解きやすくなります。相場が反応するのは数字の絶対値ではなく、予想からのズレだからです。予想通りなら大きく動かず、上振れ・下振れしたときに動く——この原則を頭に入れておくと、指標カレンダーの見え方が変わってきます。


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