AIに質問してみたけれど、返ってきたのは教科書に書いてありそうな、当たり障りのない答えだった。「やっぱりまだ使えないな」と思って閉じてしまった。——そんな経験はありませんか。
実はこれ、AIの性能というより聞き方でかなり変わります。しかも、ネットでよく見かける長い「呪文」のようなプロンプトを覚える必要はありません。この記事では、普段の言葉のまま使える7つの直し方をまとめました。
上から順に効き目が大きい順に並べています。全部やる必要はありません。1つ試して十分な答えが出たら、そこで止めて構いません。
コツ1: 「誰が、何のために読むのか」を1行足す
いちばん効くのがこれです。
たとえば「AIについて説明して」と聞くと、当然ながら誰にでも当てはまる説明が返ってきます。AIは相手を知らないので、いちばん無難なところに着地するしかありません。
そこで1行足します。
改善前: AIについて説明して
改善後: 60代の親に、AIとは何かを説明したいです。スマホは使えますが専門用語は苦手です。3分くらいで話せる長さでお願いします。
これだけで、出てくる文章の言葉づかいも長さも変わります。「誰に」「何のために」「どのくらいの長さで」——この3つのうち、わかるものだけ書けば十分です。
コツ2: 「これはダメ」を先に伝える
AIは「こうしてほしい」より「こうはしないでほしい」のほうが、実は伝わりやすいことがあります。良い方向は無数にありますが、避けたい方向ははっきりしているからです。
箇条書きは使わないでください。文章でお願いします。
カタカナの専門用語は避けて、日本語で言い換えてください。
「〜と言えるでしょう」のような曖昧な締め方はしないでください。
自分が気に入らなかった点を、そのまま「次はこうしないで」と伝えるだけです。1回目の答えが気に入らないのは失敗ではなく、材料が手に入った状態だと考えてください。
コツ3: 一度に全部聞かず、会話を続ける
多くの人がやってしまうのが、1回の質問で完璧な答えを取りに行こうとすることです。それで満足いかないと、そのまま閉じてしまいます。
AIは会話を覚えています。ですから、こう進めるほうが早いです。
1回目: 「新入社員向けの研修資料の構成を考えて」
2回目: 「3番目の項目、うちは製造業なので現場の安全の話を厚くしたいです」
3回目: 「その部分だけ、実際のスライド文面にして」
少しずつ形を寄せていくやり方です。1回で当てようとするより、3回話しかけたほうがたいてい速く着きます。
コツ4: お手本を1つ見せる
言葉で説明しにくいものは、現物を見せるのがいちばんです。
たとえば「もっとうちの会社らしい文章にして」と言っても伝わりません。そこで、過去に自分が書いた文章や、良いと思った他社の文面を貼りつけて、こう頼みます。
この文章の雰囲気と長さに合わせて、今回の案内文を書いてください。
お手本は完璧でなくても、1つあれば十分効きます。文章に限らず、表の形式、メールの締めの言い回し、資料の見出しの付け方など、幅広く使えます。
コツ5: 「わからないところを質問して」と頼む
これは意外と知られていない、効き目の大きい一手です。
この企画書を書いてもらう前に、私に足りない情報を3つ質問してください。
こう頼むと、AIはいきなり書き始めるのをやめて、**「対象は誰ですか」「予算の規模は」「いつまでですか」**といった質問を返してきます。
なぜ効くのか。AIが勝手に埋めていた前提が、表に出てくるからです。自分でも整理できていなかった条件に気づけることも多く、結果として一発で近いものが出てきます。
コツ6: 事実を扱うときは「出典」と「自信の度合い」を求める
AIは、知らないことをそれらしく書いてしまうことがあります。これを「ハルシネーション(幻覚)」と呼びます。悪気があるわけではなく、仕組み上そうなりやすい、というだけの話です。
対策はシンプルです。
出典のURLを付けてください。確認できないものは「不明」と書いてください。
自信がない部分には「要確認」と印を付けてください。
それでも出てきたURLが実在するとは限りません。ですから、事実として使う情報は、リンクを開いて自分の目で確かめるところまでがセットです。特に、数字・日付・人名・法律や制度の名前は要注意です。
逆に言えば、アイデア出し、文章の言い換え、下書き作りのように間違っていてもすぐ気づける作業では、ここまで神経質になる必要はありません。用途によって力の入れどころを変えてください。
コツ7: 入れてはいけない情報を決めておく
聞き方の話から少し離れますが、これは毎回関わってくることなので最後に入れました。
多くのAIサービスでは、入力した内容がAIの改善に使われる場合があります(設定で止められるものもあります)。ですから、貼りつける前に一呼吸置いてください。
避けたほうがよいものの例です。
- 他人の個人情報(氏名・住所・連絡先・健康の情報など)
- 会社の未公開情報、取引先との契約内容
- パスワード、クレジットカード番号、各種の鍵となる文字列
- 職務上の守秘義務がかかっているもの
対処法も簡単です。名前を「A社」「Bさん」に置き換える、数字をぼかす、必要な部分だけ抜き出して貼る。これだけで、使える場面がぐっと増えます。会社で使う場合は、まず社内のルールを確認してください。
まとめ
7つ並べましたが、覚えて帰っていただきたいのは最初の3つです。
- 誰が何のために読むのかを1行足す
- 気に入らなかった点を「次はこうしないで」と伝える
- 1回で当てようとせず、会話を続ける
この3つだけで、返ってくる答えの質はかなり変わります。長い呪文を覚える必要はありません。AIは、察してくれない代わりに、言えば聞いてくれる相手です。人に頼むときと同じで、条件を伝えるほど、欲しいものに近づきます。
うまくいかない日は、AIの能力を疑う前に「この頼み方で、初対面の人に伝わるだろうか」と一度考えてみてください。たいていの場合、直すべきはそこにあります。